理想組織研究所ひとラボ

ある飲食業の企業。社員数は62名で、社長は自分の考え方や価値観を各店舗の店長や正社員にしっかり理解してもらいたいと考え、経営理念の策定に踏み切りました。その思いも強く、社長だけでなく各店の店長も交え、自分たちの会社らしい経営理念について、何度も研修形式でのディスカッションを重ねました。社長が大切にする価値観について、店長たちはどう理解し、どう実践しているのか？具体的に、お客様や店舗のスタッフにどう対応するのか？など、店長たちの言葉で語ってもらい、すり合わせをしていきました。研修後には懇親会も催され、ざっくばらんな雰囲気で、また更に意見を交わし合ったそうです。

経営理念も無事に完成した後、社長から「普段、なかなかここまでしっかりとお互いの意見を発表しあう時間が取れないし、（社長としても）色んな意見を聞くことができてよかった。お互いが気づいていない考え方や実践事例などを共有できたこともよかったし、教育の場としても、とても貴重な時間でした」との振り返りの感想でした。
経営理念の作成過程で、社員が様々な価値観や考え方に触れ、それに対して正誤関係なく、お互いの色々な意見を交わす時間は、教育そのものでもあり、普段なかなか経験できない貴重な時間にもなるということを証明してもらった例です。

この企業の社長は独特で、「たくさんの価値観が出たことだし、無理にこれを選別していくのはもったいないので、全部採用するのはどうですか？」ということで、『日めくりカレンダー方式』を取ることに決定しました。つまり、365日毎日違う価値観が載ったものを作るということです。たくさん出た価値観から厳選して絞り込んでいくのが普通のやり方ですが、その逆で、むしろ少し拡張させて同じ価値観でも表現を変えるなどして、（少し余裕を見て）368個にしたのは、驚きと同時になかなかの大変さでしたが、とても印象的です。
卒業文集くらいの厚みのある冊子が出来上がり、その経営理念の冊子は各店・各社員に配布されました。朝礼や会議の時に使用し、また社員個々で、「今日はどれだっけ？」と、その日その日の価値観に触れ、経営理念の理解と浸透が進みました。コロナ禍の厳しい時期もありましたが、結果として売上も大きく落とすことなく、さらに店舗数も拡大し、全5店舗体制になり、また現在も次の店舗候補地を調査中とのことです。