事業所得と雑所得の違いは何?具体的な事例を紹介!

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2023年05月08日
事業所得と雑所得の違いは何?具体的な事例を紹介!
この記事で解決できるお悩み
  • 事業所得や雑所得に分類されるのはどんな収入?
  • 事業所得と雑所得の違いは何?
  • 事業所得として認められるためには何が必要?

個人事業主であれば、確定申告の際に事業所得と雑所得の違いについて理解しておく必要があるでしょう。事業所得と雑所得は勘定項目の違いであるだけでなく、課税所得額や他の所得の赤字との相殺などに関係するからです。

この記事では、さまざまな収入を得た場合に事業所得と雑所得のどちらに仕訳すべきかについて解説します。事業所得と雑所得の違いについても詳しく説明するので、個人事業主の方はぜひ参考にしてください。

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【具体例あり】この収入は事業所得?雑所得?

給与以外の収入から必要経費を引いた金額が所得となり、所得が20万円を超えたら確定申告が必要となります。

昨今、収入を得る方法は多様化しているので、自分の収入が事業所得か雑所得か判断が難しいと感じる方もいるでしょう。事業所得と雑所得では書類への記入方法が異なるだけでなく、赤字の取り扱いが異なります。収入ごとの区分についてご紹介します。

事業所得と雑所得の大まかな分類は以下の通りです。

雑所得 ・オークションやフリマの収入 ・給与所得者の副業 ・太陽光発電の売電 ・家庭教師 ・公的年金 ・印税や講演料 ・FXや仮想通貨
事業所得 ・フリーランスの収入

ネットオークションやフリマでの収入

自分が仕入れた商品をネットオークションやフリマで販売して得た利益は、基本的に雑所得に分類されます。 国税庁HPには、以下のように記載されています。

例えば次のような所得については、一般的には、それぞれ雑所得に該当します。インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による所得

ただし、商品を仕入れずに自宅にあった古着や家財を売り払う場合には、所得が20万円を超えても非課税となり、確定申告の必要はありません。

給与所得者の副業

会社から給与所得を得ている場合、副業で得た収入は基本的に雑所得に分類されます。サラリーマンが行う副業には動画編集料やモデル料、ブログのアフィリエイトなどがあります。

会社が休みの日にハンドメイドアクセサリーを作って販売しているケースも、所得金額が大きくならない限りは雑所得です。給与所得者の副業が事業所得として認められるのはまれなケースといえます。

太陽光発電の売電

2012年より、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって一般家庭でも売電が行えるようになりました。

自宅で太陽光発電を行い、電力会社に余った電気を売って得た収入は雑所得です。一般的な住宅が行う太陽光発電の売電は営利目的ではなく、使い切れなかった分のみを売却するため事業所得にはなりません。

ただし、自宅で会社を経営していて、事業用電力を発電するために太陽光パネルを設置しているケースでは、事業所得と見なされることもあり得ます。

家庭教師

本業と家庭教師の仕事を並立している場合、家庭教師による収入は雑収入に分類されます。

一方で家庭教師として複数の生徒を抱えている、家庭教師以外の収入がない場合は事業所得に当てはまります。派遣会社に登録して家庭教師として働く場合も、フリーランス契約と同等に扱われて事業所得と見なされます。

公的年金

国民年金や厚生年金、共済年金などの公的年金を受け取っている場合、収入は雑所得です。所得税法では所得区分を10種類に分けていますが、雑所得は他の9つの所得のいずれにも当てはまらないものを指します。公的年金は給与所得や不動産所得、一時所得など他の9つの所得に当てはまらないので雑所得に分類されるのです。

民間の保険会社から受け取る個人年金も雑所得として確定申告します。ただし、満期保険金は一時所得になるので注意が必要です。

印税や講演料

書籍を書いた際に得られる印税、セミナーの講師として得た講演料は、基本的に雑所得です。サラリーマンであれば給与所得を得ていて、その他に印税や講演料を受け取るでしょう。副業として印税や講演料を受け取っているのであれば、雑所得と見なされます。

FXや仮想通貨の利益

FXや仮想通貨の取引で利益を得た場合、確定申告では雑所得に分類されます。公的年金と同様、FXや仮想通貨取引で得た利益は9つある所得区分のうちどれにも当てはまらないためです。

まれなケースですが、取引回数や資金が膨大で、すべて記帳管理されているのであれば事業所得と見なされる可能性があります。法人化していない個人が行っている範囲であれば雑所得になると考えてよいでしょう。

フリーランスの収入

フリーランスや個人事業主が本業で得た収入は、事業所得に分類されます。個人事業主やフリーランスは、さまざまな種類の仕事を請け負いますが、事業と関連する収入なので事業所得として確定申告しましょう。

フリーランスとして請け負っている仕事以外に副業をしているのであれば、副業の収入は雑所得にしなければならないので注意が必要です。

事業所得と雑所得の違い4つ

事業所得と雑所得の違い4つ

事業所得と雑所得は、主たる収入の有無以外に上記4つの違いがあります。確定申告では課税所得額や所得税額に大きな影響を与えるので、違いについて知っておくことは重要です。

1. 他の所得が赤字になった時に相殺できるか

事業所得と雑所得の大きな違いは、他の所得が赤字になった時に相殺できるかという点です。これを損益通算(そんえきつうさん)といいます。事業所得の場合、不動産所得や譲渡所得、山林所得の赤字や黒字と相殺が可能です。

例(1)事業所得で500万円の黒字・不動産所得で500万円の赤字が出た場合

たとえば事業所得が500万円の黒字、不動産所得が500万円の赤字だったとしましょう。事業所得の500万円には所得税がかかるはずですが、不動産所得の500万円の赤字と相殺すれば所得がゼロになります。このケースでは所得税を納める必要がなくなるのです。

例(2)山林所得で1,000万円の黒字・事業所得で800万円の赤字が出た場合

山林所得が1,000万円の黒字、事業所得が800万円の赤字だった場合には、所得税は200万円の黒字部分にのみ課税されます。雑所得は、同じ雑所得内での損益通算はできるものの、他の所得の黒字や赤字とは相殺できません。

2. 青色申告の特別控除を受けられるか

事業所得と雑所得において、損益通算以外の大きな違いは青色申告の対象になるかどうかです。事業所得は青色申告の対象で、最大65万円の特別控除が受けられます。雑所得は青色申告の対象にならないので、控除は受けられず所得税額が大きくなるでしょう。

青色申告の特別控除は事業所得からのみ差し引かれるので、控除によって事業所得額が少なくなっても雑所得額はそのまま残ります。事業所得の方が所得税の節税ができる可能性が高いのです。

3. 損失の繰越控除が利用できるか

青色申告のメリットの1つですが、損失の繰越控除ができるかどうかも事業所得と雑所得の違いです。損失の繰越控除とは、赤字が他の所得の黒字と相殺しきれなかった場合に、翌年以降3年にわたって繰り越せる制度を指します。事業所得は損失の繰越控除が認められるのに対し、雑所得では認められません。

たとえば、事業所得で1,000万円の赤字が出たとします。毎年不動産所得の黒字が300万円ずつあった場合、1年目は赤字が相殺しきれません。事業所得であれば、その後3年間に渡って事業所得で発生した赤字を繰り越して、不動産所得の黒字と相殺できるのです。3年間ずっと所得税を節税できるでしょう。

  事業所得の赤字 不動産所得の黒字
1年目 1,000万円 300万円
2年目 700万円 300万円
3年目 400万円 300万円
4年目 100万円 300万円
5年目 赤字なし 300万円

4. 専従者控除が認められるか

青色申告の別のメリットとして、専従者控除が挙げられます。事業所得の場合、家族を従業員にして給与を支払い、全額を専従者給与として必要経費にできるのです。経費が増えれば、所得を圧縮して所得税を減らせます。

雑所得は青色申告が認められないので専従者控除も利用できません。

事業所得の特徴5つ

事業所得の特徴5つ

納税者が得ている収入が事業所得と認められるためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。事業所得と主張するだけでなく、客観的に見て事業所得であると納得してもらう必要があるのです。

事業所得には主に上記5つの特徴があります。すべての条件を満たす必要はありませんが、1つ満たしたから事業所得と判断されるわけでもありません。

事業所得か雑所得かの判断は過去の判例や税務署の判断に大きく依存していることを覚えておきましょう。

1. 所得が継続的に発生している

事業所得として認められる重要なポイントは、継続的に収入が発生しているかどうかです。これを「反復継続性」といいます。単発の収入を得ていたり、前年度の実績がまったくない状態で収入を得るようになったりした場合には、事業所得として認められないでしょう。

たとえば、作家として働いている人は継続的に印税や原稿料を得ているので事業所得として認められる可能性が高いです。それ以外の人が原稿料を得ていても、事業所得とは認められないでしょう。

2. 営利性がある

その仕事によって収益を上げているかも事業所得においてとても重要です。これを営利性や有償性といいますが、事業とは言えないほど安く商品やサービスを提供しているのであれば事業所得とは認められません。もちろん、無償で提供している場合も事業性が否定されるでしょう。

3. 責任の所在が自分にある

事業を行ううえでの責任を事業主自身が負っているのであれば、事業所得として認められる可能性が高くなります。責任を負わず、自分で独立して事業を行っていない場合には、事業性が否定されるでしょう。

たとえば、自分の名義で融資を申し込んでいれば、事業が失敗した時に自分で責任を取らなければなりません。このケースでは事業所得と認められやすくなります。一方で事業に必要な資金をすべて親が出してくれている場合には、事業所得にはならないでしょう。

4. 客観的にみて事業レベルだと判断できる

客観的に見て、事業性があると見なされる規模も重要です。サラリーマンの場合、給与より副業の収入が少ない、あるいは同程度であれば事業所得と見なされません。

どの程度事業に専念しているかも大事なポイントです。日々その事業に専念しているか、屋号が書かれた名刺を用意して取引しているかなどが考慮されます。従業員や機材などが備えられている場合には、事業性が認められる可能性が高いでしょう。

5. 計画的に営まれている

事業として認められるためには、事業が収益を上げられるように計画されていなければなりません。企画から遂行までが一連の流れで行われており、行き当たりばったりの運営でないことが条件です。

計画性のない突発的な収入は事業所得として認められません。

事業者の観点からは事業所得のメリットが大きい

事業者が確定申告を行う際には、事業所得の方のメリットが大きいです。事業者の観点から見た事業所得と雑所得の違いは以下のとおりです。

  事業所得 雑所得
損益通算 不可
青色申告特別控除 可(最大65万円) 不可
損失の繰越控除 可(最長3年) 不可
専従者控除 不可
帳簿 複式簿記 単式簿記

とくに事業者にとってうれしいのは、事業所得で確定申告すれば青色申告特別控除や損益通算、専従者控除によって所得が圧縮できる点です。帳簿の作成に関しては複式簿記の方が複雑で難しいのですが、会計ソフトを使えば大きな問題にはならないでしょう。

まとめ

事業所得と雑所得には、損益通算や損失の繰越控除などのさまざまな違いがあります。確定申告の際の所得区分によっては、所得税額に大きな違いが出てくるかもしれません。事業所得として認められると思うのであれば、要件を確認したうえで税務署に相談してみましょう。

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監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

一般的にサラリーマンの方の場合、主となる給与収入があるため、副業収入は雑所得に該当することが多いかと思います。ただ、副業の規模が大きくなってきた(金額や取引回数が増加した)場合には事業所得として確定申告することが可能となります。

事業所得として確定申告することは、雑所得と比べ税金上のメリット(青色申告、損失の繰越、専従者給与など)が数多くあります。副業の規模拡大を目指すのも良いかと思います。

確定申告の季節を迎える前に、ご自身の副業が事業所得になるのかどうかなど、事業所得として申告する場合にはどのような書類を準備すべきかなど、事前に国税庁のホームページや税務署の窓口、税理士等に確認しておかれるとよいでしょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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