青色申告の専従者給与とは?|利用条件や注意点などについて解説

税理士法人烏丸会計事務所
監修者
税理士法人烏丸会計事務所 代表社員・税理士 堀井 優
最終更新日:2022年12月27日
青色申告の専従者給与とは?|利用条件や注意点などについて解説
この記事で解決できるお悩み
  • 専従者給与制度を導入できる条件は?
  • 専従者給与を設定する際の注意点は?
  • 認められる専従者給与に上限はあるのか?

青色申告にはたくさんの特典がありますが、その中でも大きいのが専従者給与です。業務内容によっては家族や配偶者に業務を手伝ってもらう場合もあるでしょう。

その際は、条件を満たすことができる場合にのみ、専従者給与制度を使い、家族の給与の全額を経費として計上することが可能です。

専従者給与の金額を設定する際には、注意すべきポイントがいくつか存在します。ここからは専従者給与の概要や利用するための条件、注意点などを詳しく解説します。

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青色申告専従者で節税効果を高めるためには?

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青色申告者の事業に携わっている親族に支払う給与を、経費として計上することで節税効果を高めることが可能です。青色申告にのみ認められる大きな特典の一つで、一定の要件を満たした場合に「青色専業専従者給与」として計上することができます。

親族に支払った給与は全額控除扱いとなるため、節税のメリットを受けることができるのです。

白色申告の事業専従者控除との違いとは?

似たような制度に、白色申告者が使える「事業専従者控除」があります。

白色申告の場合、親族への給与は経費に計上することができません。その代わり、白色事業主の配偶者であれば最高で86万円、配偶者以外は一人につき50万円が控除として利用できます。

青色事業専従者給与の場合は、親族への給与が全額経費にでき、上限額もありません。

専従者給与制度を利用するには?

青色申告で専従者給与制度を利用する場合には、一定の条件があります。事業を手伝う家族や配偶者がいる場合、以下の2つのポイントに注意が必要です。

  • 3つの条件をクリアする必要がある
  • 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する

3つの条件をクリアする必要がある

青色申告者が専従者給与制度を利用するためには、事業に携わっている親族が以下の3つに当てはまる必要があります。

  1. 青色申告者と生計を共にする親族であること(配偶者など)
  2. 当年度の12月31日時点で満15歳以上であること
  3. 青色申告者の事業に、1年間のうち6カ月以上の期間専従していること

青色申告者の事業を手伝っている15歳以上の高校生や大学生は、青色事業専従者として認められません。青色事業専従者になる条件は、1年間のうち6カ月以上の期間専従することであり、学業がある方は難しいと判断されるためです。

「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する

青色申告をする当年度の翌年3月15日までに、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。提出していない場合、その期間は親族が青色申告者の事業に従事していたとしても経費として計上することはできません。

青色事業専従者に人数制限はありません。新しく青色事業専従者として人数を増やした場合、2カ月以内に届け出をすることで認められます。

記入内容

青色事業専従者給与の届出書で記入する項目は以下のとおりです。

  • 提出先の税務署名と提出日
  • 納税地の選択と自宅または事業所の住所、電話番号
  • 青色申告者の氏名と生年月日(屋号があれば屋号)
  • 適用を受ける年月日
  • 専従者の氏名や続柄、年齢、仕事内容、給与の支給時期、金額
  • 専従者以外の従業員や給与

専従者へ支払う給与に関する項目で記入した支給時期や金額、昇給の基準などを超えて多く支払うことはできません。

専従者以外にも従業員がいる場合は、その従業員へ支払う給与も記入する必要があります。専従者と他の従業員との給与に大きく差がある場合は、認められない可能性があるため注意しましょう。

専従者給与制度の注意点

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専従者給与額を決める際には、なぜその給与額になるのか、一般的な根拠がある必要があります。認められる給与額に上限はありませんが、専従者給与が青色申告者よりも高い金額で設定してしまうと、それは経費として認められません。

適切な専従者給与額を設定するために、以下の2つを参考にしてください。

  • 適切な専従者給与額を設定する
  • 事業主の収入と比較し妥当な金額を設定する

適切な専従者給与額を設定する

同業同職種の給与と比較した時に、差が小さい金額で専従者給与額の設定がされているか確認しましょう。

専従者に月150万円を給与として設定するといった、一般的ではない給与額は不自然です。専従者給与額を設定する場合は、世間一般的に見て妥当な金額であるかに気を付けましょう。

事業主の収入と比較し妥当な金額を設定する

専従者に月150万円を給与として設定しても、事業主との収入とのバランスがとれていれば認められます。

例えば、事業主の月給が300万円で専従者給与が月150万円だと、不自然だと捉えられます。事業主の月給が1,000万円で専従者給与が月150万円の場合は、起こり得る妥当な金額のバランスです。

専従者給与額に上限はないため、事業者と専従者の収入額が不自然ではないかも同時に確認しましょう。

青色申告専従者で節税効果を高めるためには?

青色事業専従者給与の制度を正しく利用することによって、事業主は高い節税効果を見込むことができます。バランスが取れている専従者給与の場合でも、場合によっては損をしてしまうこともあるため注意が必要です。

以下2つのポイントを意識した上で、節税効果を最大限に高めていきましょう。

  • 配偶者控除や扶養控除よりも高い金額で設定する
  • 青色専業専従者の税負担を考慮して設定する

配偶者控除や扶養控除よりも高い金額で設定する

最大38万円の配偶者控除や最大130万円の扶養控除は、配偶者が青色事業専従者になると対象から外れてしまいます。配偶者に青色事業専従者として給与を支払うのであれば、これらの控除額よりも低い金額で設定してしまうと損になります。

配偶者が現在これらの控除を受けている場合は、その金額よりも高い額で設定し得になるように調節しましょう。

青色専業専従者の税負担を考慮して設定する

専従者は一定の額以上を収入として受け取ると、住民税と所得税が発生します。

年間収入が100万円を超えたら住民税が一律10%課税され、103万円を超えると所得税が課税されます。所得税は累進課税のため、給与額が増えれば増えるほど納税額の負担も大きくなり注意が必要です。

専従者の給与額が多くなるほど、事業主側の経費額が増えるため節税に関して得です。専従者側の所得税の負担額は増えるため、お互いの税負担のバランスを考えながら設定していく必要があります。

まとめ

生計を共にしている配偶者や親族に支払う給与を全額経費にできることは、青色申告のみが使える特典の一つです。青色事業専従者給与の制度を利用すると、事業主にとって大きな節税効果を見込めます。

専従者や給与額の上限は決められていないため、適切に給与設定から届け出までのステップを踏んでいきましょう。節税効果を最大限に高めるためにも、配偶者の控除やお互いの税負担を考慮しながらバランスのとれた金額で設定していくとよいでしょう。

監修者のコメント
税理士法人烏丸会計事務所
代表社員・税理士 堀井 優

1967年生 静岡県出身 法政大学経営学部経営学科卒業。証券会社の法人営業、投資信託委託会社を経て、主体的な生き方を求め税理士業界へ。税務会計に携わって27年、地場中小企業中心に上場企業、IT・ネット関連、メディア・広告、大規模宗教法人・社会福祉法人など多くの税務顧問を務め、京都府包括外部監査補助者(2004年)、地域公益法人の監事(2019年〜)に就く。圧倒的な経験と多彩なクライアントから得たノウハウを創業間もない起業家にリーズナブル価格で提供したいとの思いから創業支援センターを立ち上げている。

青色事業専従者給与については、青色申告者に認めれられた恩典と考え、安易な節税目的で事業に従事していない家族などへも支給する方がいらっしゃいます。

しかし、所得税では原則として生計を一にする配偶者等の親族に支払う家賃や給与は必要経費として認められていません。この専従者給与は親族等への給与が経費と認められる唯一の特例なのです。特例ですから、要件を満たさなければなりません。

実際に事業に従事するという労働実態に加え、専従者の要件、届出書の提出により、支給方法や金額も定めておく必要があります。さらに一番大切なことは、その労務の対価として相当であることです。

一見難しそうに思えますが、他の従業員と同等に扱い、同等の金額を基準に支給すればよいのです。青色申告をしている一定の方は、適用要件をしっかりと確認して、是非活用してみましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

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