「これに懲りず」はお詫びの表現としてふさわしい？正確な意味とより適切な謝罪の表現を学ぼう

「これに懲りず」が意味すること

「懲りる」という表現は、「失敗をしてしまい、痛手を受けたために二度と同じことはしないと思い定めること」を意味しています。ですから、「これに懲りず」という表現は、「失敗をして大変な思いをしたけれど、再挑戦する」という意味を含んでいます。

失敗した本人が「これに懲りず」という表現を使うと、再び頑張ろうとする前向きな決意表明の言葉となります。一方、第三者が失敗した人へこの表現を使う場合には、目標へ向かって再チャレンジを促す激励の言葉へと変化するわけです。

「これに懲りず」の正しい使い方

「これに懲りず」という表現を本人以外の人へ向けて使う場合、「あなたは特定のことに関して失敗しました」と確言していることになります。ですから、基本的にこの表現は自分よりも立場が上の人へ使うことはなく、目上の人が目下の人へ使うものです。

例えば、親が試験に不合格だった子どもに対して「これに懲りず頑張りなさい」というのは適切な用法です。また、子ども自身が「これに懲りず頑張ります」というのも問題ありません。一方、子どもが親に対してこの表現を使うのは本来の意図に合わないことです。

「これに懲りず」はビジネスシーンにあまり向かない

「これに懲りず」という表現は敬語ではありません。ですから、ビジネスシーンでこの表現を活用する場面が非常に限られているということを銘記しておきましょう。

「これに懲りず」の使用が適切と言える場面

「これに懲りず」という表現が適切と言えるビジネスシーンは、上司が失敗した部下を励ます時です。プロジェクトがうまくいかなかったり、取引先に断られてしまったりした時に、「反省したならこれに懲りず頑張れ」と声をかけるのはまさに適切です。

ミスをしてしまった社員が同僚や上司の前で「これに懲りず、教訓を学び改めて努力したい」という決意表明をするのも良いでしょう。「懲りず」という表現により「自分がミスをした」と認めていることになり、反省の気持ちを伝えることもできるはずです。

「これに懲りず」を謝罪で用いるのは要注意

クライアントや取引先とのやり取りで「これに懲りず」という表現を用いるのはかなり慎重さが求められます。特に、ミスをして先方へ迷惑をかけてしまった時に、相手に対し決してこの表現を用いることがないようにすべきです。

例えば、「こちらのミスをどうかご容赦ください」という意図を先方へ伝えようとして、「これに懲りず、何卒これからもよろしくお願いいたします」という表現を会話やメールの中で用いる人がいます。

ただ、この文章では「相手に非がある」という意味合いになってしまうため、間違いなく相手の心証を害してしまうことでしょう。また、相手を目下に見ているという印象も与えてしまうため、まったく謝罪にふさわしい文章ではないのです。

迷惑をかけてしまったクライアントや取引先に対して、反省を伝える意図で「これに懲りず精進いたします」という表現を用いる人が見受けられます。もちろん、この表現であれば「自分に非がある」と認めているので、文法上の問題はありません。

ただ、迷惑を受けた側としては、この言葉を聞くと「この担当者は懲りていない」「ミスから学ぶ姿勢がない担当者だ」という受け止め方をしてしまう可能性があるのです。ですから、基本的には「これに懲りず」という表現の使用は避けるのが賢明でしょう。

謝罪をするときは言葉選びが肝要

ビジネスシーンにおいて謝罪をする時には、相手に不利益を与えてしまったことに対する誠実なお詫びの気持ちを伝えなければなりません。ただし、謝罪の表現が状況に合致していないと、相手の印象をさらに悪くしてしまうので注意しましょう。

メールはクリック1つで簡単に転送することができます。ですから、メールを介して謝罪をする場合には、宛先となっている人だけでなく、その上司や経営者が目を通したとしても問題がないよう、言葉選びに細心の注意を払う必要があるでしょう。

社外宛ての謝罪メール

取引先などに謝罪をする場合、直接面会をしてお詫びの気持ちを伝えるのがビジネスの基本です。とはいえ、状況ゆえにそれが難しい場合には、メールで謝罪をすることもあるでしょう。

その際には、「すいません」「ごめんなさい」という表現は稚拙と映るため、避けるのが賢明です。また、ただ「申し訳ありません」という表現を用いるのではなく、「何に関して謝罪しているのか」を文章内で明確にする必要があります。

クライアントからの依頼や要望を実行できなかった場合には、「ご要望に沿えず申し訳ございません」という文章が適しています。一方、商品などの発送が遅れてしまった時には「こちらの不手際により、ご迷惑をお掛け致しました」という表現が良いでしょう。

1つの案件に関して複数のミスをしてしまった場合は、「度重なる非礼を心よりお詫び申し上げます」といったより丁寧な表現を選択すると良いでしょう。

社外宛ての場合、ミスを謝罪することに加えて、同じ失敗が生じないよう新たに対策を講じたことを伝える必要があります。これがないと、先方は「また同じことが起こるリスクが高い」と感じて、契約や取引を打ち切ってしまう可能性があるでしょう。

社内宛ての謝罪メール

社内宛てに謝罪メールを作成する際には、ミスの内容に言及したうえで「失礼いたしました」「お詫びいたします」といった表現を用いると良いでしょう。文末に「同じミスをしないようにいたします」と書き添えることで、誠実な思いが伝わるはずです。

ただし、ミスの内容が資料の添付忘れなど軽微なものではなく、会社の売り上げに影響するような重大なものであるなら、メールではなく直接謝罪に行くのが適切です。

まとめ

「これに懲りず」という表現は、ミスをしてしまった人に対する激励や、失敗をした当人の決意表明などで広く用いられています。ただし、取引先などへ謝罪する際には、誤って相手に対しこの表現を用いてしまわないよう注意が必要です。

メールで謝罪をする場合、その内容はいつまでも記録として残ってしまいます。ですから、作成した文章全体で適切な表現が用いられているかどうか、相手の心証を害するような表現がないか、十分に時間を取って推敲するよう心がけておきましょう。

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