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下請けの現状と脱却するためにすべきこととは?

更新日:2020年08月20日
下請けの現状と脱却するためにすべきこととは?

日本の産業の多くは、中小企業が下請けとして種々の作業を行い、業界を支えている状況です。特に製造業でこの傾向が強いとはいえ、ほとんどの業界で何らかの形での下請けがなされています。もちろん、下請けであることのメリットも多いですが、難しい要素もたくさんあります。そのため、中小企業の中には下請けから脱却して、他の企業への依存度を低くしたいと考えているところが多くなっています。しかし、下請け脱却は実際には簡単なことではありません。この目標を成し遂げるためには、今までの考え方とは異なる観点を持たないといけないこともあるのです。

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下請け企業の現実

そもそも下請けが厳しい状況をもたらしているかどうかは、企業によっても異なります。しかし、全体としては余裕のない状況が見られるのが現実です。ある程度安定的な仕事があっても、将来に不安を持つ企業も多くあります。そのため、現実をしっかりと把握することで、長期的になるとしても、脱却のための戦略を練ることができるようになります。

単価が安くなる

下請けの一番の問題とも言えるのが、利益率が悪くなることです。顧客からの依頼を元請けが受け、その後下請け、孫請けと下がっていくにつれ、いわゆる中間マージンが取られていきます。

結果的に、実際の作業をする企業は、本来の単価の数割でしか仕事ができないことも珍しくありません。当然、それだけ利益率が悪くなり、仕事量を増やしても経営が苦しい状況から抜け出せないのです。

業界によっては受注の度に作業内容が異なり、効率よく作業をしていくのが難しいこともあります。ルーティーンワークで負担を減らすこともできず、作業の手間とストレスがかかる割に単価が安いということで、負担が蓄積されてしまう危険性もあります。

人材確保が難しい

日本全体で働き手が少なくなっています。そして、人材はブランド力の強い大企業に集中する傾向が強く見られます。

若い人を中心に、働きたいと希望する地域も都市部に集中していますので、どうしても地元で働く中小企業には優秀な人材が集まりにくい状況となっています。作業に必要な工員数を集めることができるとしても、応募人数が少ないため、どうしても優秀な人材を得ることが難しいのです。

人材確保が難しくなると、企業内で職人を育成し、次世代につなげるのも大変になってきます。長期的に競争力のある会社を作り上げていくために、人材力というのは欠かせないポイントですので、この点における厳しさは下請けの抱える問題と言えます。

納期が厳しく余裕がない

受注する際にはどんな仕事でも納期が決められているものですが、下請けの場合は特に納期が厳しいことが多いです。元請けが下請けまで案件を持って来るまでに時間が経っていますし、最終的な組付けなどをするために、早めの納品を求めるからです。

また、急なトラブルが生じたとしても柔軟に対応することが難しく、とにかく納期を守らないといけないという事情もあります。余裕を持って作業を続けることはなかなかできず、常に納期に追われて働かないといけないのです。

これは作業員にとっても、残業が増える、ストレスがかかる、職場環境が整備されないままで仕事をしないといけない、などの問題を引き起こします。会社全体に負の影響をもたらすことが多いものなのです。

連鎖倒産のリスク

下請けの多くは特定の企業から仕事を請けていて、しかもその数は少数です。そのため、元請けが倒産したり発注をやめてしまったりすると、一気に倒産のリスクが高まります。

元請けへの依存度が非常に高く、それでいて元請けから保護を受けづらいというのが日本の下請け産業の課題ともなっています。現在好調な業績を出しているとしても、将来的に状況が変わる可能性も十分ありますので、依存度を下げていくことがどうしても欠かせない課題となってきます。

下請けからの脱却ができない理由

多くの企業は下請けから脱却したい、少なくとも下請け業務の割合を下げたいと考えています。しかし、実際にそれを成し遂げた企業は少ないのが事実です。そこには、いくつかの理由があります。自社に当てはまる点はないかを考察し、どのように改善していけるかの指針としましょう。

技術力

与えられた仕事だけを行っていて、しかも品質基準をクリアできれば問題ないという状況では、技術力は上がりません。また、専門外のことは何もできないという状況に陥ります。

同じ作業しかできない状況だと、元請けからの注文以外に応じるのはかなり厳しいです。当然、下請け脱却のために他の分野に挑戦してみようと思っても、それを成し遂げるだけの技術力がありません。

開発力

物を作る人材とノウハウは十分にあるものの、そのスキルを生かした新しい製品やサービスを開発する力がないというのも下請けの弱点です。下請け脱却のためには、いずれにしても自社独自の商品を売り出していく必要があります。

そこで必要となるのが開発力です。今まで新製品の開発などしてこなかったという会社が多いのも事実ですので、そもそも開発担当自体がいないこともあります。

まずは、開発ができる環境と人材を揃えることから始める必要があるのです。

営業力

今までの元請けとは違う新規顧客を見つけないといけません。そのためには、営業力がないといけません。

しかし、下請け体質が強いと既存顧客からの受注に頼ることに慣れてしまって、新規顧客を獲得しようとする姿勢が弱いものです。方針を転換して営業をかけようと思っても、そのノウハウと人材がないため営業効率が悪く、顧客を得るのも難しい状況が生じます。

営業はしっかりとしたノウハウと能力がないと成果が上がらないものですので、営業力を付けるというのは下請け脱却に欠かせない点なのです。

データ分析と改善

新製品を開発するにも、マーケティングをするにも、データを収集し、解析するというプロセスが必要となります。しかし、与えられた仕事を果たすだけの業務プロセスに陥っていると、データの分析や改善といった習慣を持つのが難しくなります。

そのため、製品がどんな人に売れるのか、ターゲットはどんな物を求めているかなど、客観的なデータを集める体制を整えることは大事です。そして、そのデータを意味のある仕方で分析し、自社の営業や製品開発に役立てられるようにしなくてはなりません。

こうしたデータ利用は一朝一夕でできるものでありませんので、ノウハウを身につけるために本腰を入れて取り組む必要があります。

技術保護

日本の産業の多くは、高い技術を持った下請け中小企業に支えられています。そのため、技術自体は非常に優れたものを持っている企業が多いものです。

しかし、その技術を当たり前のものと思って保護しないと、損をしてしまうこともあります。製造方法や製品の構造などは一つの権利となるものですので、それを保護することで会社の利益を押し上げることにつながります。

現実としては、こうした技術保護はあまりなされておらず、職人が他社もしくは他国に流出してしまったり、技術そのものが盗まれてしまったりすることも多く見られます。自分たちが持っている技術が優れたものであることを意識し、それを保護するという視点を持たないといけません。

こだわり

特に製造業に多く見られる傾向ですが、いわゆる職人気質が強く、こだわりにとらわれてしまうことがあります。今までのやり方に固執してしまって、新しい分野や製品ジャンルに挑戦してみるのが難しくなってしまうのです。

もちろん、こだわりを持つのは大事なことですが、それが足かせになっていないかを冷静に分析すべきです。また、高い技術を持つ職人がそのノウハウを他人に伝えるのを嫌がるという体質も、企業の躍進を阻むものとなります。

長期的な観点から見ても、技術が後世に伝えられなければ、企業の将来が見えてこないというのも問題です。こだわりも必要ですが、要所要所では効率的かつ合理的な判断をすることも重要なのです。

下請けからの脱却計画

上記のような状況を改善しつつ、積極的に下請けからの脱却ができるように戦略を練っていくことが必要です。そのためには、いくつかの押さえておきたいポイントがあります。すべてのことを行うというよりも、自社にとって適用できるものを選んで、確実に実践していくことの方が重要です。

技術の応用戦略

新しい技術を身につけていくのは大変ですので、やはり今まで培ってきた技術を用いて戦略を練るべきです。そのために、今ある技術として何があるのか、どんなことができるのかを分析することから始めます。

細かく保有技術とそれによってできることをリスト化します。その上で、それぞれの技術をどんな分野で応用していけるかの戦略を練っていきます。

必ずしも一つの技術は一つの業界でしか役立たないということはありません。今まで建設機器を作ってきた技術を使って、医療機器の開発ができることもあります。

BtoCへの転換

顧客層を変えることが下請け脱却の一つの重要な転換点となります。下請け会社のほとんどは、BtoBのみで経営を続けています。

もちろん、すべての顧客を変える必要はありませんが、ある程度の割合をBtoCにしていくことで、販売ルートを開拓できます。BtoCはより柔軟な戦略を立てやすいですし、直接の取引ができるため、中小企業であっても経営を安定させやすいというメリットがあります。

販売ルートの確保

下請けだと、そもそも独自の販売ルートを持っていないことも多いです。そのため、まずは販売ルートを構築することが大事です。

展示会などのイベントを上手に活用して商品をアピールすることによって、新しいルートを開拓できます。その他にも、販売用の自社サイトを作るなど、自前でルートを構築するのも良い手です。

少量生産・受注生産方式

特にBtoC方式で販売をする場合は、少量生産や受注生産の体制を整えると、小回りが利きます。在庫管理や生産管理が面倒になる点はありますが、製品のバリエーションが増えますし、より裾野の広い顧客層を持てるのがメリットです。

マーケティング戦略の立案

どの媒体を使って、どんなターゲット層に訴えていくかというマーケティング戦略の構想を立てないと、成果は上がりません。自前での販売ルートを一切持っていないのであれば、自社サイトを構築するのが効果的です。

また、営業社員を抱えていない場合、営業代行サービスを活用したり、スマートな営業ができるオンライン広告を中心としたマーケティングを行ったりするなどの選択肢があります。

クラウドファンディングの利用

資金面での不安がある場合、クラウドファンディングを利用するのも一つの手です。広く一般から資金を調達できますし、クラウドファンディングサイトに載せるだけでも、一つの宣伝となります。

同時に、資金調達先に実質的な販売ができますので、数量限定ではありますが、販売ルートを確保できます。少なくとも初期段階の試みとして、このサービスを利用するのは理に適った方法と言えるでしょう。

ECサイトでの販売

本格的な販売体制を作るのに資金や手間を取れないというのであれば、オンラインのみでの販売を考慮することもできます。そこで大いに役立つのが、ECサイトの存在です。

Amazonや楽天市場のような超大手のECサイトはもちろんのこと、業界ごとに専門的な物品を販売しているサイトもあります。こうしたところに出品することで、販売窓口を確保できます。

受注や発送などのシステムを作る手間はありますが、効率的なクラウドツールがたくさんありますので、導入して始めるのはそれほど難しくありません。初期コストも他の手段より格段に安く済みますので、リスクを抑えられます。

ある程度既存ECサイトでの経験を積んだら、自前でECサイトを作ることもできますし、さらにオンラインでの販売ルートを広げることも可能です。小企業であっても多くの人に訴求できる手法として、とても優れています。

知財権の保護

下請けとして培ってきた技術や自社ならではの製法などを一つの権利として守ることができます。完全なる独自の技術であれば、特許を取得するなどして、知財権を保護する必要があります。

こうした知財権は、企業にとって重要な資産の一つでもあります。知財権そのものが利益を生み出すこともありますので、無駄にすることなく、しっかりと手続きをして保護するようにしましょう。

新しい分野への挑戦

下請け脱却においては、細かなノウハウや戦略も大事ですが、やはり新しい分野に果敢に挑戦していこうという姿勢が何よりも重要です。もちろん、最初の一歩を踏み出すには勇気がいりますし、失敗することも少なからずあります。

しかし、会社の生き残りと拡大を目標に、チャレンジしていく精神は欠かせません。明確な目標と毅然とした態度、そして目標を達成するためのロジカルな思考を保つようにしましょう。

まとめ

下請けからの脱却には、今までの思考パターンや経営体制を変えることがどうしても欠かせません。その上で、しっかりとした市場の分析と綿密な戦略構想が大切になってきます。

現在はオンラインサービスの向上によって、たとえ小企業であっても販売ルートを持ち、多くの人に訴え、販売することが可能になっています。こうしたチャンスを逃すことなく、新しいステージに立って下請けから脱却できるように、思い切った行動を取るようにしましょう。

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山近 百花
執筆者

法政大学法学部政治学科卒業後、アパレル系の販売職に勤める。全国の店舗対抗の接客スキルを競う大会にて審査員特別賞を受賞した。現職のワンズマインドでは前職の接客経験を活かし前期の営業成績TOPになるまでに至る。営業業務を行う傍ら、現場で見聞きした意見や見地をもとにメディア運用業務も行う。

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