経営戦略策定に役立つフレームワーク10選!活用する際のポイントも紹介
- 経営戦略策定に役立つフレームワークとは?
- 経営戦略の作り方とは?
- フレームワークを活用する際のポイントとは?
経営戦略を策定する際にフレームワークを活用すると、優先順位の明確化や策定時間の短縮を図れます。どのようなフレームワークを使うべきでしょうか。
この記事では、経営戦略策定に役立つフレームワークや活用時のポイント、経営戦略の作り方を紹介します。最後まで読めば、経営戦略策定への理解が深まり、事業の成功につながるでしょう。
経営戦略策定に役立つフレームワークを知りたい方、経営戦略の作り方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
経営戦略とは
経営戦略とは、企業の経営目標や企業理念を達成するために策定する戦略です。事業や部署単位での具体的な施策ではなく、中長期的な経営方針や組織全体の方向性を示します。
経営戦略を策定する目的は、経営資源を有効活用することです。人材や資金、設備などを集中的に投じる分野を決め、収益拡大や安定経営の実現を目指します。
経営戦略策定に役立つフレームワーク10選
経営戦略を策定する際におすすめのフレームワークを10個紹介します。
- 3C分析
- SWOT分析
- PEST分析
- VRIO分析
- ファイブフォース分析
- 4P分析
- STP分析
- AIDMA
- AISAS
- SIPS
個々の特徴を理解し、目的に合ったフレームワークを使いましょう。
3C分析
3C分析とは自社と顧客、競合他社の関連性から自社の強みと弱みを把握できるフレームワークです。主に調査できる内容を以下にまとめました。
主な調査内容 | |
---|---|
Company(自社) | ・自社商品の強みと弱み ・市場シェア率 ・顧客からの評価 |
Competitor(競合他社) | ・商品の強みと弱み ・ターゲット層 ・市場シェア率 ・顧客からの評価 |
Customer(顧客) | ・顧客ニーズ ・顧客属性 |
分析対象が3つに限定されているため、使いやすいフレームワークです。競合他社のターゲット層や市場シェア率など、外的環境の分析にも対応しています。
顧客ニーズや市場動向が頻繁に変動する業界の場合は、定期的に分析する機会を設けなければなりません。SWOT分析と併用すると、より精度の高い分析結果が得られるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析とは内部環境と外部環境、双方の分析に対応したフレームワークです。以下4つの要素から得られた結果を経営戦略に反映します。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
自社の強みと弱み、外部からの脅威を客観的な視点で把握できる点が特徴です。競合他社の動向や市場ニーズを踏まえた経営戦略を立案でき、リスクヘッジの強化を図れます。以下にSWOT分析の事例をまとめました。
内部環境 | 外部環境 | |
---|---|---|
強みの事例(Strength/Opportunity) | ・商品ラインナップが充実 ・食材の味や安全面への高評価 ・業界での売上がトップクラス ・顧客ロイヤリティの高さ | ・市場規模の拡大 ・顧客ニーズの変化 |
弱みの事例(Weakness/Threat) | ・配送までにやや時間がかかる傾向 ・販売価格は他社に比べて高めの設定 | ・競合他社の台頭 ・人手不足 ・物価高 |
外部環境の分析には時間がかかるため、内部環境の分析よりも先に取りかかりましょう。
PEST分析
PEST分析とは、自社を取り巻く外的リスクの分析に特化したフレームワークです。以下4つの要素を分析すると、自社にどのような影響を及ぼし、どのような事態に備えるべきかを予測できます。
主に想定されるリスク | |
---|---|
Politics(政治) | ・法改正 ・税率変更 ・紛争や戦争の勃発 |
Economy(経済) | ・株価変動 ・資材やエネルギーなどの高騰 ・キャッシュレス化 |
Society(社会) | ・感染症拡大 ・少子高齢化 ・地域格差 |
Technology(技術発展) | ・DXの推進 ・AIの登場 ・ドローンの活用 |
PEST分析における外的要因は、自社ではコントロールできない脅威も多いです。調査の方向性を間違えると予測が外れ、調査に費やした時間が無駄になるケースも珍しくありません。必要に応じて専門家への調査も検討しましょう。
PEST分析は調査対象が増える傾向が強いため、3C分析やSTP分析など利用しやすいフレームワークと併用するのが有効です。
VRIO分析
VRIO分析とは、4つの観点から経営資源を評価するフレームワークです。以下4つの要素から内部環境を分析します。
- Value(経済的価値)
- Rareness(希少性)
- Imitability(模倣可能性)
- Organization(組織)
VRIO分析は客観的な視点にもとづき、経営資源の強みと弱みを把握できる点が特徴です。短期間で弱点を克服できると、組織力の強化によって市場での優位性確立が望めるでしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは競合他社や新規事業参入社など、外的リスクの分析に有効なフレームワークです。以下5つの脅威を分析すると、競合と比較したうえで自社の優位性や市場での立ち位置を確認できます。
- 競合他社の存在
- 新規参入企業の存在
- 代替品の有無
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
ファイブフォース分析は、自社が属する業界全体の収益構造や今後の成長度合いなどを確認できる点も特徴です。分析結果は、投資額の増減や事業撤退を判断する材料にも活用できます。
調査対象が多岐にわたるため、正確な情報を収集するには多くの時間を確保しなければなりません。
4P分析
4P分析とは自社商品の強みや弱みを把握し、マーケティング戦略に反映できるフレームワークです。以下4項目に関して分析をします。
主な調査内容 | |
---|---|
Product(製品) | ・機能性と品質 ・特徴 ・デザイン ・ブランドイメージ ・サポート内容や保証 |
Price(価格) | ・価格 ・購入方法 ・割引の有無 |
Place(販売場所・流通) | ・販売場所での立地条件 ・製造拠点から販売場所までの配送日数 ・販売場所での在庫管理 ・販売経路 ・流通経路 |
Promotion(販促活動) | ・宣伝方法 ・予算 ・広告の掲載期間 |
4P分析を活用する際は、個人的な印象や感情で分析結果を評価しないよう、注意が必要です。自社のブランドイメージを過大評価した場合、顧客ニーズに合った情報や商品を提供できません。顧客からの支持を得られず、今後の収益やマーケティングにも悪影響を及ぼします。
顧客目線を徹底したうえで、上記4項目を分析しましょう。
STP分析
STP分析とは、マーケティング戦略の策定に活用するフレームワークです。以下3つのステップを踏み、参入市場やターゲット層を決定します。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
セグメンテーションは市場規模や将来性、競合他社の動向など、市場を細部に至るまで分析する作業です。参入事業と販売商品をスムーズに決定できるよう、多くの情報を収集しなければなりません。
ターゲティングは顧客の年齢層や職業、年収など、ペルソナを設定しておき、どのような傾向を持った方に商品を購入して欲しいかを明確化します。ポジショニングは参入市場において、自社が確立したい立ち位置を決めるのが目的です。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAとは商品の認知〜購入に至るまで、一連の流れを5つの段階に分けたフレームワークです。1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱され、多くの企業がマーケティング戦略に活用してきました。
AIDMAでは商品購入に至るまでのステップを以下5つに分けています。
- Attention(注意):商品を認知する
- Interest(興味):商品に関心を持つ
- Desire(欲求):商品を使いたいとの思いが生まれる
- Memory(記憶):日常生活で商品が欲しい感情がよみがえる
- Action(行動):商品を購入する
新聞やテレビ、雑誌など、マスメディアの影響力が大きかった時代に、AIDMAの概念は多くの方が参考にしてきました。インターネットの台頭によって消費者の購買行動が変化すると、AIDMAの進化系であるAISASが登場します。
AISAS(アイサス)
AISASは、消費者がインターネット上で商品やサービスを購入するまでの流れを可視化したフレームワークです。2005年に電通がマーケティング用語の1つとして商標登録をしました。AISASでは、以下5つの単語で商品購入に至るまでの流れを表現しています。
- Attention(注意):SNSやWebサイトなどで商品に関して知る
- Interest(興味):商品への興味や関心が高まる
- Search(検索):機能性や費用対効果などを検索する
- Action(購買):購入価値があると判断した場合に商品を購入する
- Share(共有):想定以上のメリットがあった場合にSNSへ投稿する
AISASはAIDMAと異なり、消費者との相互関係を想定している点が特徴です。インターネットの普及によって、消費者は商品や企業に関する情報を簡単に検索できる環境が整いました。口コミサイトを閲覧すると、実際に商品を利用した方の感想や評価を確認できます。
オンラインでの収益拡大や集客率改善を実現したい企業向けのフレームワークといえるでしょう。
SIPS
SIPSとは、SNSを頻繁に活用する消費者が商品の認知〜購入に至るまで、一連の流れを可視化したフレームワークです。SIPSは4単語の頭文字から形成されており、各単語の意味を以下の表にまとめました。
概要 | ポイント | |
---|---|---|
1. Sympathize(共感する) | ・SNSの投稿内容や商品を販売する企業への共感 ・投稿から企業理念や価値観に共感 ・商品購入に至るまでの出発点 | ・消費者からの共感を意識してSNSを活用する姿勢が必要 ・情報への価値や感情的な共感など、どのタイプの共感を得たいか、事前に意識することが重要 |
2. Identify(確認する) | ・Webサイトやニュース記事などを閲覧し、情報の正確性を確認 ・職場の同僚や家族との会話内容も判断材料の一部に活用 ・参加の決断には、自身にとってメリットのある商品や情報なのか、安心材料が必要 | ・多くの消費者は、商品の購入に慎重になっているとの認識が必要 ・情報や商品が市場にあふれており、リスク回避のために1つでも多くの有益な情報獲得に注力 |
3. Participate(参加する) | ・商品の購入に直接つながらない行動も対象 ・いいねやフォロー、リツイートなども購買行動に該当 ・参加者のレベルは4つに分類 | ・投稿へ反応してくれる消費者は、重要な存在 ・投稿のリツイートやシェアによって、多くの方へ情報が拡散 ・うまく活用できると、広告費の大幅な削減が可能 |
4. Share&Spread(共有・拡散する) | ・SNSをとおして商品に関する情報を友人や家族と共有 ・投稿した消費者が所属するコミュニティが多いほど、情報が拡散 ・拡散した情報を受け取った消費者が、別の方と情報を共有 | ・共感した人が多いほど、収益や企業認知度に影響 ・ターゲットを情報の拡散が望める方に設定 ・消費者が自然に共有したくなるよう、投稿内容の精査が必要 |
SIPSは購買行動の出発点が商品の認知や発見ではなく、共感に設定されている点が特徴です。他の消費者から共感を得られない限り、投稿への返信や高評価、レビューの投稿など、次のステップへの行動は望めません。
いいねやフォローなど、金銭が発生しない行動も購買行動の対象です。商品購入に興味を持った参加者は以下4段階に分類できます。
特徴 | 具体的な行動 | |
---|---|---|
ゆるい参加者(Participant) | ・商品や企業に関して少し興味を持っている ・費用がかからない購買行動を取る ・発信者の情報を時々見ている | ・SNSでいいねやフォローをする ・無料のサンプル品をもらう ・興味を持ったキャンペーンに参加する |
応援者(Fan) | ・商品や企業のブランドイメージに一定の魅力を抱いている ・継続的に利用するかどうか、見極めている ・発信者の情報に興味を持っている | ・商品を購入する ・SNSに投稿する ・ファンクラブへ入会する |
支援者(Loyal Customer) | ・継続的に商品を購入し、売上の大部分を占めている ・商品の世界観や企業のブランドイメージに魅力を抱いている ・特別な価値を見出しており、簡単に競合他社へ乗り換えない | ・有料会員へ長期間登録している ・商品を継続的に購入する ・商品の要望や改善点を指摘する |
伝道師(Evangelist) | ・商品の魅力を他の消費者へ積極的に発信する ・新規顧客獲得に向けた行動を取る ・共感を覚えるきっかけとなる | ・ファン専用のコミュニティを作る ・SNSで新商品やキャンペーンに関する情報を発信する ・友人や家族に商品を紹介する |
1人でも多くの支援者や伝道師を獲得するのが目標です。
経営戦略の作り方
経営戦略を策定する際は、以下の流れに沿って内容を詰めていきます。
- 企業理念やビジョンの策定
- 外部環境と内部環境の分析
- 企業戦略の策定
- 事業戦略の策定
- 機能戦略の策定
作業内容を1つひとつみていきましょう。
企業理念やビジョンの策定
自社の存在意義や果たすべき使命、価値観など、企業理念や将来像を明確化します。企業としての方針を示し、組織全体の一体感や社員のモチベーションを高めるのが狙いです。
どのような価値観を大事にしているのか、どのような企業を目指しているのか、わかりやすい言葉で示しましょう。
外部環境と内部環境の分析
外部環境は経済や社会情勢、技術革新など、自社を取り巻く外的リスクに関して分析します。リスクごとにどのような影響が自社に及ぶかを把握し、事前に対策を取っておくことが目的です。
自力でコントロールできない要因も多く、必要以上に分析や対策に時間を注ぐのは避けましょう。
内部環境では自社商品や人材、組織体制など、経営資源に関して分析をします。経営戦略でコントロール可能な内容も多いため、時間をかけて取り組むことが重要です。
企業戦略の策定
企業戦略とはどの事業領域に集中し、どのように経営資源を配分するかを決めることです。外部環境と内部環境の分析結果をもとに、注力する事業領域を決定します。市場規模や業界の将来性、自社の市場シェア率など、さまざまな点を分析し、事業領域と経営資源の配分を決める流れです。
複数の事業を展開している企業は、今後どの事業で収益拡大や企業認知度向上を目指したいか決定します。非常に重要な決断になるため、時間をかけて企業戦略を策定しましょう。
事業戦略の策定
事業戦略とは他社との差別化や中長期的な経営目標を達成するため、事業単位で立てる戦略のことです。ターゲット層や顧客ニーズ、参入予定の事業領域などを明確化し、市場での優位性確立を目指します。
自社の経営資源を有効に活用し、良質な顧客体験を提供するのも重要な目的の1つです。顧客ロイヤリティの向上によって継続的な商品購入が期待でき、安定した収益確保が望めます。事業戦略を立てる手順を以下にまとめました。
- 外部環境を分析する
- 内部環境を分析する
- 複数の事業戦略案を出す
- 各案のメリットやデメリットなどを評価する
- 総合評価と実現可能性の高さで優先順位をつける
- 事業目標を設定する
- 事業戦略を実行する
3C分析やSWOT分析、PEST分析などのフレームワークを活用すると、スムーズに事業戦略を立てられるでしょう。
機能戦略の策定
機能戦略とは営業戦略や物流戦略、プロモーション戦略など、現場レベル向けの戦略です。たとえば、営業担当者の場合は商談件数や新規顧客獲得数、売上など、短期的な数値目標が課されます。
営業部を統括するマネージャーには、数年後の目標売上や粗利率など、中長期的な目標を設定するかたちです。
機能戦略の立案によって現場で働く人材や既存設備、資金を有効に活用し、事業戦略で立てた目標の達成を目指します。
フレームワークを活用するうえで整理しておくべきポイント
フレームワークを活用して経営戦略を策定する前に、以下3点の内容を把握しておきましょう。
- フレームワークの利用を目的としない
- 複数のフレームワークを活用する
- コンサルタントに協力を依頼する
フレームワークは社内外のリスクや経営資源を把握するための手段に過ぎません。必要以上にフレームワークの利用に固執しないよう、注意が必要です。
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ポイント1. フレームワークの利用を目的としない
フレームワークの利用が目的にならないよう、注意が必要です。フレームワークは経営戦略の策定にかかる手間を減らしつつ、自社の実情に合った内容を盛り込むために活用します。経営資源や自社を取り巻くリスク要因を分析するための手段に過ぎません。
フレームワークは選択肢が多く、種類によって異なる内容を分析できる便利なツールです。種類ごとの特徴を理解する姿勢も重要ですが、目的を見失わないように注意しましょう。
社員同士の意見交換や経営コンサルタントへの相談など、フレームワーク以外にも経営戦略を策定する方法はあります。
ポイント2. 複数のフレームワークを活用する
複数のフレームワークを活用して経営戦略を策定しましょう。多くのフレームワークは内部環境と外部環境の分析、どちらかに特化しているのが一般的です。1つのフレームワークのみでは、自社を取り巻くリスクを正確に把握できません。
複数のフレームワークを活用し、幅広い視点からリスクを分析しておきましょう。たとえば、3C分析とファイブフォース分析を併用すると、競合他社や新規参入企業、買い手の交渉力などを分析したうえで、自社の強みと弱みを把握できます。
ポイント3. コンサルタントに協力を依頼する
リソース不足に悩んでいる企業、客観的な視点での分析を依頼したい企業向けの選択肢です。フレームワークを使いこなすには企業経営やマーケティング、業界の動向など、さまざまな分野の知識を持っていなければなりません。
専門知識を持つ社員を確保できない場合は、経営コンサルタントに依頼しましょう。経営コンサルタントは多くの企業に携わっており、企業経営やフレームワークに関する知識を豊富に持つ存在です。
コンサルティング会社に相談すると、現状分析〜機能戦略の策定まで、経営戦略を作るうえで必要な作業全般を依頼できます。
まとめ
今回の記事では以下の3点に関して述べました。
- 経営戦略策定に役立つフレームワーク
- 経営戦略の作り方
- フレームワークを活用する際のポイント
経営戦略の策定に役立つフレームワークには、3C分析やSWOT分析、STP分析など、豊富な選択肢が挙げられます。フレームワークを使いこなすには企業経営や市場動向など、さまざまな分野に精通していなければなりません。
専門知識を持つ人材が不在の場合は、経営コンサルタントに依頼しましょう。「比較ビズ」を利用すると、必要事項を入力する2分程度で条件に合ったコンサルティング会社を探し出せます。
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