ポートフォリオマネジメントとは?プロセスや成功事例を解説!
- ポートフォリオマネジメントとは何?
- ポートフォリオマネジメントのメリット・デメリットは?
- ポートフォリオマネジメントの事例には何がある?
「ポートフォリオマネジメントとは何?」「自社でも実践できる?」とお考えの企業経営者の方、必見です。ポートフォリオマネジメントは、事業や投資先の最適化を目的とした経営手法です。
この記事では、ポートフォリオマネジメントのメリット・デメリットを解説します。記事を読み終わる頃には、具体的な手法がわかります。
ポートフォリオマネジメントを活用した企業事例も紹介するため、経営改善を目指している経営者の方はぜひ参考にしてください。
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ポートフォリオマネジメントとは
ポートフォリオマネジメントとは、投資先や事業の組み合わせを最適化することです。ポートフォリオは書類かばんを意味する言葉で、金融業界では金融資産の一覧表を書類かばんに入れていたことから保有する資産の構成という意味で用いられます。
時代が進むにつれて、ポートフォリオは金融資産だけではなく企業の経営資源や事業を指して使われるようになりました。ポートフォリオマネジメントは「リスクの高い資産と低い資産の組み合わせ」や「安定した事業と将来性があるもののリスクの高い事業の組み合わせ」をより効果的にする方法を指しています。
経営資源分配の見直しはプロダクト・ポートフォリオマネジメント
企業は事業の内容を考慮してポートフォリオマネジメントを行いますが、とくに経営資源の配分を考える場合にはプロダクト・ポートフォリオマネジメントを活用します。通常「PPM分析」と呼ばれるフレームワークで、企業が持つヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源を有効活用するために利用する分析方法です。
PPM分析では、事業を以下の4つに分類します。
- 花形
- 金のなる木
- 問題児
- 負け犬
市場が成長しておりマーケットシェアも大きな花形の事業には今後も投資を続けていくべきです。市場の成長が鈍化しており競合他社より優位に立てない負け犬の事業は、縮小・撤退を検討できるでしょう。経営資源をより成長が見込める事業に投入するため、PPM分析は大いに役立ちます。
ポートフォリオマネジメントの手法
ポートフォリオマネジメントの手法は以下のとおりです。
- マーケットシェア・市場成長率を算出する
- 事業の分類と優先順位を決定する
- 自社と他社の立ち位置を確認し判断を下す
ポートフォリオマネジメントでは、情報収集と分析に時間がかかります。経営資源を効果的に用いるため、時間をかけて正確な分析をするべきです。
1. マーケットシェア・市場成長率を算出する
ポートフォリオマネジメントでは、はじめにマーケットシェアと市場成長率を算出しましょう。マーケットシェアは「自社の売上高÷市場規模」で計算可能です。ポートフォリオマネジメントにおいては、競合他社のマーケットシェアの計算も必須であり、必要な情報は有価証券報告書から得られます。
市場成長率は「当年の市場規模÷前年の市場規模」で算出可能です。市場規模のデータは経済産業省「工業統計調査」や財務省「法人企業統計調査」を参考にしましょう。
2. 事業の分類と優先順位を決定する
マーケットシェアや市場成長率を計算することで、自社の各事業を分類できます。マーケットシェア・市場成長率ともに高い事業は、さらなる投資により利益を伸ばせるでしょう。市場成長率が高くマーケットシェアが低い事業は、投資を続けるか撤退するかを決めなければなりません。
継続する事業のなかでも、優先順位を決めることが大切です。最優先の事業にはより多くの経営資源を投入し、事業の拡大を図ります。優先順位の低い事業にどの程度経営資源を割くかは、リスクマネジメントにおいて重要といえるでしょう。
3. 自社と他社の立ち位置を確認し判断を下す
ポートフォリオマネジメントでは、自社の事業分析だけではなく他社との関係を分析することも必要です。競合他社との位置関係を把握することにより、事業を継続するか否か判断できます。
競合他社との立ち位置を確認すると、シェアを拡大するために必要な要素をピックアップすることが可能です。自社の強みを最大限に活かす施策や弱点を克服するアイデアを実行しやすくなるでしょう。
ポートフォリオマネジメントのメリット4つ
ポートフォリオマネジメントを行うメリットは以下の4つです。
- 素早い経営判断ができる
- リスクマネジメントに役立つ
- 自社の事業や投資先を客観視できる
- 経営資源や資金を適切に配分できる
今後事業の拡大を検討している企業も、赤字が続いている事業を縮小したいと考えている企業も、ポートフォリオマネジメントを活用できます。経営戦略に基づいた決定をする際にポートフォリオマネジメントは役立つでしょう。
1. 素早い経営判断ができる
ポートフォリオマネジメントは、素早い経営判断を下すのに役立ちます。ポートフォリオマネジメントでは、事業を分類して視覚的に比べることにより、経営資源を投入する価値があるか判断可能です。
市場が大きくマーケットシェアの高い事業は投資を拡大する、収益が出ておらず市場の拡大も期待できない事業は、縮小するなどの判断を下しやすい分析方法といえます。市場成長率や市場占有率により客観的に事業を評価できるため、現状に適した経営判断をしやすいです。
2. リスクマネジメントに役立つ
ポートフォリオマネジメントは、企業のリスクマネジメントにも効果的です。ポートフォリオマネジメントでは、事業の収益性の高さだけではなく、市場の成長や競合他社のマーケットシェアなどのデータもあわせて分析しなければなりません。
競合他社の経営戦略や市場の成長見込みを考慮して分析が行えるため、経営資源の使用用途を慎重に判断できます。事業が失敗する前に縮小・撤退を決定でき、経営リスクを抑えられるでしょう。
3. 自社の事業や投資先を客観視できる
ポートフォリオマネジメントにより、自社の事業や投資先を客観視できる点もメリットです。ポートフォリオマネジメントは、自社と競合他社の強みや弱点、市場の大きさや成長率をもとに自社に優位性があるかを判断します。
創業以来続いている事業や多額の資金を投資した事業でも、収益性が低いことがわかれば縮小・撤退しなければならないでしょう。ヒトやモノ、カネなどの経営資源を投資する価値があるか客観的に判断するうえで、ポートフォリオマネジメントは助けになります。
4. 経営資源や資金を適切に配分できる
ポートフォリオマネジメントを実行すると、経営資源や資金を適切に配分可能です。会社にはヒトやモノ、カネ、情報などの貴重な経営資源があります。どの経営資源も有限であるため、いかに適切に配分するかが重要な課題です。
ポートフォリオマネジメントにより、経営資源や資金の投入先が最適か確認することが可能です。経営資源が偏っている、収益性の低い事業に多くの資金が投じられている状況であれば、再配分することで効果的に経営資源を活用できます。
ポートフォリオマネジメントのデメリット4つ
ポートフォリオマネジメントのデメリットは以下の4つです。
- 事業間の影響が考慮されない
- 将来性があるかは考慮されない
- イノベーションの発生が期待できない
- 企業風土によっては実施できない
PPM分析や3C分析などのフレームワークは、事業の将来性を見極めるのに役立ちますが、デメリットもあります。1つのフレームワークだけで事業の評価を行うことも避けましょう。
1. 事業間の影響が考慮されない
ポートフォリオマネジメントでは、事業間や商品・サービス間の影響を考慮しないデメリットがあります。特定の事業の市場規模やマーケットシェア、競合他社との比較によって評価するため、自社の他事業との関係はほとんど考慮に入れません。
複数の事業を展開している企業の場合、1つの事業や商品が他の事業の影響をまったく受けないことは極めてまれです。事業間や商品間では相乗効果が生まれたり補完しあるため、ポートフォリオマネジメントだけに頼るのは危険といえます。
2. 将来性があるかは考慮されない
ポートフォリオマネジメントで事業を分類する場合、将来性は考慮されません。現在の市場規模や売上高、競合他社と自社の立ち位置をもとにマネジメントを行うためです。
たとえばPPM分析では、前年と当年の市場規模を比較して市場成長率を算出します。市場占有率と市場成長率を縦軸・横軸に競合他社と自社の立ち位置を比較します。将来市場がどの程度伸びるか、他社はどのような施策を行うのかは考慮できないため注意しましょう。
3. イノベーションの発生が期待できない
ポートフォリオマネジメントでは、破壊的イノベーションが期待できない点がデメリットです。ポートフォリオマネジメントは、既存の事業や商品を分析する点で優れていますが、市場成長率や市場占有率が低い事業は経営資源を投入するに値しないと判断されます。
実際には、市場成長率が低い市場で新商品やサービスが展開され、市場が一気に拡大することも珍しくありません。ポートフォリオマネジメントでは、新しいアイデアや商品を生み出す破壊的イノベーションが発生しにくいため、商機を逃すおそれがあります。
4. 企業風土によっては実施できない
ポートフォリオマネジメントは、企業風土や体質によって実施できない場合があります。ポートフォリオマネジメントは中央集権的な企業、つまり社長や経営陣がトップダウン型に経営戦略を決めるタイプの企業に適した手法です。全部門が協力できなければ十分な効果が得られません。
会社内の部門や事業が独立して運営されている、各部門の責任者の裁量が大きいなどのケースではあまり機能しないでしょう。
ポートフォリオマネジメントを活用した企業事例3つ
ポートフォリオマネジメントを活用し、成功した事例を紹介します。
- レゾナック
- 三井物産株式会社
- オムロン
企業によって展開している事業や市場規模、競合他社は異なるものの、基本的な考え方に大きな違いはありません。各企業のポートフォリオマネジメントの手法や施策に注目し、真似できる点や適用できる点を探すことが重要です。
レゾナック
レゾナックは、大手化学メーカーの1つであり個性的な商品を開発・販売していることで知られています。2015年当時は低い営業利益率で収益変動が多い問題を抱えていました。
ポートフォリオマネジメントにより、利益率の高いエレクトロニクス事業により注力し、利益率の低いケミカル事業はM&Aによって事業規模を拡大することで収益性の向上を実現しています。非中核事業は積極的に売却し負債を軽減することで、経営資源を効果的に用いている点も特徴の1つです。
三井物産株式会社
三井物産株式会社は、ポートフォリオ管理委員会を設置することにより経営資源の有効な使い方を目指しています。ポートフォリオ管理委員会では、ポートフォリオマネジメントのほかにも取締役会への経過報告を積極的に行うことで、定期的に事業の優先順位を見直すシステムが構築されています。
三井物産株式会社の事業は、グローバルネットワークを利用した産業横断的付加価値の創出が特徴です。ポートフォリオマネジメントにより、事業ごとの収益性や効果性をチェックし事業の拡大・継続・縮小・撤退を決定しています。
オムロン
オムロンのポートフォリオマネジメントは、ROIC経営によって行われています。ROIC経営とは、調達した資金がどれだけの利益を上げているかを測る財務指標です。調達した資金を最大限利益につなげられる事業を優先して拡大します。
オムロンのポートフォリオマネジメントでは、以下の4つの領域に事業を分類します。
- 成長期待領域
- 投資領域
- 収益構造改革領域
- 再成長検討領域
前者の2領域には引き続き投資を続け、後者の2領域では何らかの改革が必要と判断できるでしょう。
まとめ
ポートフォリオマネジメントは、資金や経営資源を再配分するために有効な手法です。事業を幾つかに分類することで、収益性の高い事業を素早く見分け経営資源を効果的に投入できます。ポートフォリオマネジメントを活用して、事業の取捨選択を賢く行うべきです。
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大学卒業後、信用金庫で融資と営業を経験。リーマンショックの影響で融資先企業の業績が悪化する中、目の前で苦しむ企業を十分に支援できない自らの力不足を痛感。困っている企業の力になりたいと思い投資会社に転職し、中小企業の事業再生業務に従事。多くの再生案件に携わる中で現場の経営に関わりたいという思いが強くなり、副業で経営コンサルティング事業を開始。その後、視野を広げるために信用調査会社に転職し調査業務を行った後に独立。現在は経営者のパートナーとして、戦略立案・計画策定・資金調達・組織作り・人材育成・実行支援などを中心に、経営課題の解決を支援している。
ただ、経営コンサルタントとして支援を行ってきた経験を振り返ってみると、自社の経営状況を正確に把握できている企業はかなり稀だったように思います。
また、客観的な裏付けがないにもかかわらず、これまでの経験などから判断し、実際に調査してみると予想と違っていた、ということも頻繁に起こります。
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