MVP開発とは?アジャイル・Pocとの違いや進め方・導入事例3選を解説

株式会社GeNEE
監修者
株式会社GeNEE 代表取締役 日向野卓也
最終更新日:2024年03月18日
MVP開発とは?アジャイル・Pocとの違いや進め方・導入事例3選を解説
この記事で解決できるお悩み
  • MVP開発とは?
  • MVP開発の種類は?
  • MVP開発を導入する際の注意点は?

MVP開発とは、必要最低限の機能を備えたプロダクトの開発を指します。製品やサービスの開発にあたって、最小限の要素でユーザーのニーズを検証する手法です。MVP開発は、起業や新規事業をスタートする際、成功率を高めるために有効なアプローチです。

この記事では、製品開発手法を探している方向けに、MVP開発の特徴やほかの開発手法との違い、進め方を解説します。記事を読み終わった頃には、MVP開発に対する理解を深められるでしょう。

「MVP開発を導入したい」「プロダクト開発の失敗を避けたい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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MVP開発とは

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MVP開発を下記の流れで解説します。

  • 最小限の要素で検証する手法
  • リーンスタートアップのプロセスの1つ

最小限の要素で検証する手法

MVP開発とは最小限の要素で検証する手法です。MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、日本語では「最小限の実行可能製品」と訳されます。必要最低限の機能で早期リリースし、顧客からのフィードバックをもとに改善を繰り返す開発手法です。

従来の開発手法とは異なり、完璧な製品を目指すのではなく、仮説検証と迅速な改善サイクルを重視します。たとえばSNSアプリの場合、ログイン機能やプロフィール登録、投稿機能のみを実装し、ユーザーの反応に基づいて他の機能を追加します。

リーンスタートアップのプロセスの1つ

MVPはリーンスタートアップのプロセスの1つです。リーンスタートアップとはスタートアップ企業が効率的に成長するための手法です。最小限の資源を使い、仮説を立てて検証し、製品やサービスを迅速に開発・改善します。

リーンスタートアップを実現することで、コストを抑えつつ市場に導入し、実際のフィードバックを得ることが可能です。最小限のコストで効率的なプロダクト開発が実現できます。

MVP開発とアジャイル開発・PoCの違い

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MVP開発とアジャイル開発・PoC開発の違いを下記の流れで解説します。

  • MVP開発とアジャイル開発の違い
  • MVP開発とPoCの違い

MVP開発とアジャイル開発の違い

MVP開発とアジャイル開発の違いは下記のとおりです。

  MVP開発 アジャイル開発
目的 顧客ニーズの検証 製品開発の迅速化
機能 最小限 段階的に追加
開発期間 短期 長期
顧客との関わり 密接 適宜

MVP開発は最小限の機能で早期リリースを目指します。アジャイル開発は長期的な開発において優先度の高い機能から段階的に実装することで迅速な完成を目指します。

MVP開発は顧客ニーズの検証に特化した開発手法で、アジャイル開発は製品開発の迅速化に特化した開発手法です。MVP開発は、市場に必要な最小限の機能を提供することに焦点を当てています。

アジャイル開発は、機能ごとに分割して開発を進め、優先度の高い機能からリリースしていく特徴があります。

MVP開発 商品検索・カート機能のみ実装し顧客反応を検証
アジャイル開発 優先度の高い機能から実装し、決済・レビュー機能などを追加

MVP開発とPoCの違い

MVP開発とPoCの違いは下記のとおりです。

  MVP開発 PoC
目的 顧客ニーズの検証 技術的実現可能性の検証
機能 最小限の機能 限定的な機能
成果 製品の方向性決定 技術的な課題の洗い出し

MVP開発とPoCは製品開発の手法ですが、目的が異なります。MVP開発は製品の初期バージョンを開発し、市場に投入する前の段階で重要です。

PoCは、Proof of Conceptの略で「概念実証」と訳される言葉です。PoCは、技術的な実行可能性の調査が目的であるため、製品の開発とは異なります。

MVP開発は最小限機能での早期リリースが目的であり、POCは限定機能でリリースをして課題を洗い出すことを目的としています。たとえば、AIチャットボットの開発で見るMVP開発とPoCの違いは下記のとおりです。

MVP開発 顧客との会話機能のみを実装しニーズを検証
PoC AI技術を用いた会話機能の実現可能性を検証

MVP開発が求められる背景

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MVP開発が求められる背景には、現代のビジネス環境がかつてないほどのスピードで変化していることが挙げられます。市場環境は日々変化しているため、ユーザーのニーズが複雑化しています。

従来の開発手法では、完璧な製品を求め開発期間が長くなるため市場の変化に対応できません。ユーザーニーズに合致しない製品の開発を避けるため、仮説検証と迅速な改善サイクルを重視した、MVP開発が求められます。

MVP開発は、最小限の機能で製品を早期リリースし、ユーザーからのフィードバックを基に改善を繰り返す開発手法です。市場の変化に迅速に対応し、ユーザーニーズに合致した製品を開発できます。

MVP開発の7種類

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MVP開発には下記の7種類が挙げられます。

  1. ランディングページ|ユーザーの反応を検証する
  2. デモ動画|サービスに事前登録してもらう
  3. プレオーダー|リリース前に購入を募る
  4. オズの魔法使い|ユーザーのニーズを確かめる
  5. コンシェルジュ|サービスと同じ成果を手作業で提供する
  6. プロトタイプMVP|ユーザーからフィードバックをもらう
  7. 競合ツール応用|既存ツールをカスタマイズして代用する

1. ランディングページ|ユーザーの反応を検証する

ランディングページとはユーザーの興味関心を測るための単一ページです。プロダクトやサービスの魅力や利点を簡潔に伝え、ユーザーの興味を引きつけます。ユーザーがランディングページを経由して行う行動を分析し、ニーズや傾向を把握できます。

問い合わせフォームや質問ボックスを設けることで、ユーザーからのフィードバックを収集し、プロダクトやサービスの方向性を改善します。

ランディングページの特徴は下記のとおりです。

  • 製品やサービスのコンセプトを簡潔に説明する
  • ユーザーの課題を明確化し解決策を提示する
  • メルマガ登録や試作品購入などの行動を促す
  • ユーザーからの問い合わせや意見を収集する

ランディングページは、費用や開発期間が短く、手軽にニーズ検証を始められることがメリットです。

2. デモ動画|サービスに事前登録してもらう

デモ動画は、サービスに事前登録してもらうための効果的な手法です。完成していないプロダクトやサービスを説明し、ユーザーの興味を引きつけます。デモ動画を視聴したユーザーの行動や反応を分析することで、需要やニーズを把握できるでしょう。

デモ動画の特徴には下記が挙げられます。

  • システム開発前にユーザーニーズを検証できる
  • ユーザーとのコミュニケーションを密にする
  • 開発に必要な機能を明確化できる
  • 開発コストを削減できる

デモ動画を通じて製品やサービスの特徴や利点を明確に伝えることで、ユーザーの関心を喚起し、事前登録や購入を促すことができます。

3. プレオーダー|リリース前に購入を募る

プレオーダーは、製品やサービスの発売前に事前登録や購入を募る手法です。代表的な例としてクラウドファンディングが挙げられます。プレオーダーを通じて集められたデータを分析し、製品やサービスの改善やマーケティング戦略の最適化に活用できます。

プレオーダーの特徴は下記のとおりです。

  • 製品やサービスの需要を事前に把握する
  • 顧客からの意見や要望を取り入れる
  • 開発資金を調達できる
  • 発売後の顧客満足度向上につながる

プレオーダーには、顧客ニーズと資金調達を同時に実現できることがメリットです。

4. オズの魔法使い|ユーザーのニーズを確かめる

オズの魔法使いは、実際のシステムの代替手段として人間の介入を利用する手法です。システムの一部を人力で操作し、ユーザーには自動化された機能のように見せかけます。開発コストを抑え、製品やサービスの提供価値や需要が検証できます。

オズの魔法使いの特徴には下記が挙げられます。

  • システム開発前にユーザーニーズを検証できる
  • ユーザーとのコミュニケーションを密にする
  • 開発に必要な機能を明確化できる
  • 開発コストを削減できる

オズの魔法使いはコストを削減できるメリットを持ちますが、人力による運用は時間と労力がかかることがデメリットです。ユーザーに不自然な操作をさせないよう、注意が必要です。

5. コンシェルジュ|顧客の要望に対して最適なサービスを提案する

コンシェルジュが利用される例は、サービスと同じ成果を手作業で提供するMVP開発の手法です。人間が介入することで、ユーザーとのコミュニケーションを密にし、ニーズや要望を把握できます。

オズの魔法使いが顧客視点からシステムが存在するように見える手法であるのに対し、コンシェルジュは人間がサービスを提供します。

手作業での提供ながら、ユーザーにリアルな体験を提供することで、製品やサービスの価値を実感させることができるでしょう。コンシェルジュには、翻訳サービスにおける人間の翻訳者による翻訳や、レビューサイトにおける手作業によるレビュー収集があります。

コンシェルジュの特徴には下記が挙げられます。

  • 開発コストが低い
  • 迅速な検証が可能
  • ユーザーニーズを直接把握できる
  • リスクが少ない

コンシェルジュは、ユーザーの意見を吸い上げやすく即効性が高いことが特徴です。

6. プロトタイプMVP|ユーザーからフィードバックをもらう

プロトタイプMVPは、実際の製品やサービスに近い形を提供することで、ユーザーの需要や要望を把握する手法です。

プロトタイプMVPの特徴には下記が挙げられます。

  • プロジェクト全体の認識のズレを軽減できる
  • 種類の異なる仮説検証がしやすい
  • 他のMVPに比べてコストがかかる

プロトタイプMVPでは製品やサービスの方向性や機能性を検証するため、最終的な製品やサービスの開発に反映させることができます。

7. 競合ツール応用|既存ツールをカスタマイズして代用する

競合ツール応用とは、既存ツールをカスタマイズして代用するMVP開発の手法です。競合ツールの機能を活用することで、開発コストを抑えつつ、製品やサービスの提供価値を検証します。

競合ツール応用の特徴は下記のとおりです。

  • 既存の機能を活用できる
  • 開発コストを抑えられる
  • カスタマイズが難しい
  • 競合ツールに依存しやすい

動画サービスの場合、YouTubeにおける一部機能の活用や、Shopifyにおけるマーケットプレイス型の利用が該当します。プロトタイプの開発が難しい場合は、競合ツールを応用して価値検証を行いましょう。

MVP開発導入の4つのメリット

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MVP開発導入による4つのメリットは下記のとおりです。

  • メリット1. 開発費用を抑えられる
  • メリット2. ユーザーの反応を分析できる
  • メリット3. 先行者利益を獲得できる
  • メリット4. 仮説検証を素早くできる

メリット1. 開発費用を抑えられる

MVP開発を取り入れることで、新規事業の開発費用を抑えられます。従来の開発手法では、仮説に基づいて大規模な開発期間と開発コストをかけてプロダクトを完成させる必要がありました。MVP開発では方向性を探りながら進行するため、不要なコストを削減できます。

具体的なフィードバックを早い段階で得ることで効率的な修正が可能です。フィードバックを参考にして不要な機能開発を避けることで開発コストが削減できます。

メリット2. ユーザーの反応を分析できる

MVP開発では、ユーザーの反応を分析できます。短期間でアイデアを実現し、顧客に提供することで、ユーザーからのフィードバックを得られるためです。製品やサービスが市場で受け入れられるかどうかを判断できます。

不足している要素や改善すべき点がある場合は、迅速に対応することで製品やサービスの成功率を高めることができるでしょう。ユーザーニーズに基づいて機能追加を行い、ユーザー満足度を向上させたり、早期改善により開発リスクを低減したりできます。

メリット3. 先行者利益を獲得できる

先行者利益を獲得することはMVP開発によるメリットです。新しい市場に早期に参入し、競合他社よりも早くサービスを提供することで顧客を獲得しやすくなります。

早期の市場参入はポジションの確立につながります。先行者利益を享受することで、価格競争を回避し自由な価格設定を行うことができるでしょう。早期参入によるブランド認知度向上で、顧客獲得コストを削減するメリットも期待できます。

メリット4. 仮説検証が素早くできる

MVP開発のメリットは、仮説の検証が素早くできることです。最小限の機能を持ったプロトタイプを迅速に開発し、顧客によるフィードバックを通じて仮説を検証します。検証の結果、製品やサービスの方向性を調整できます。

たとえば、新規ECサイトを立ち上げる場合、最低限の機能でサイトを構築します。ユーザーの反応を見ながら徐々に機能を追加していくことで、 顧客ニーズに合致したサイトへと成長させることが可能です。

MVP開発の3つのデメリット

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MVP開発のデメリットには、下記の3つが挙げられます。

  • デメリット1. 大規模なプロダクトには向かない
  • デメリット2. エンジニアにスキルが求められる
  • デメリット3. 関係組織や経営陣の理解を得ることが難しい

デメリット1. 大規模なプロダクトには向かない

MVP開発は、大規模なプロダクトには向いていません。複雑な機能や高度な要件を持つプロダクトの場合、MVP開発のアプローチでは全体像をカバーしきれないためです。十分な機能や性能を提供できない可能性があります。

たとえば、医療機関のカルテシステムのように多くの機能やモジュールが絡み合い、顧客ニーズが複雑なプロジェクトのすべてを網羅するのは困難です。

デメリット2. エンジニアにスキルが求められる

MVP開発では、エンジニアにスキルが求められます。MVP開発は、最新の技術を活用して効率的な開発を行わなければならないため、スキルの低いエンジニアでは十分な開発が難しい場合があります。

プロジェクトにおけるタスクが多い場合、スキルが不足しているエンジニアではマネジメントが難しくなる可能性が高いでしょう。担当エンジニアにより進捗や成否が左右されやすい点には注意が必要です。

エンジニアが不在の場合、適切な人材の確保やスキルアップ、新たな人材の登用が必要です。スキルの不足は開発期間の延長や品質の低下につながるでしょう。

デメリット3. 関係組織や経営陣の理解を得ることが難しい

MVP開発のアプローチは、関係組織や経営陣の理解を得ることが難しい場合があります。必要最小限の機能を備えたプロトタイプを開発し、早期にリリースする方法は、従来の開発手法と異なるためです。

関係組織や経営陣は、従来のコストや時間をかけて開発することに慣れているため、MVP開発に違和感を感じる可能性があります。MVP開発は、顧客のニーズを検証するため、製品の仕様や機能が途中で変更になるリスクがあります。

不確実性に対する懸念やリスクから、開発の継続や方向性の変更が考えられるでしょう。

MVP開発で注意すべき3つのポイント

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MVP開発で注意すべきポイントには、次の3つが挙げられます。

  1. 完璧を目指さない
  2. ユーザーニーズを正しく理解する
  3. UI/UXを意識する

1. 完璧を目指さない

MVP開発で注意すべきポイントとして完璧を目指さないことが大切です。MVP開発は、仮説、検証、改善を繰り返してユーザーに価値を提供する手法です。完璧を目指した場合、時間やコストがかかり、生産性が下がるおそれがあります。

たとえば、開発期間を3カ月に設定するなどあらかじめ期限を設定しておき、必要最低限のかたちでリリースしましょう。

2. ユーザーニーズを正しく理解する

MVP開発では、ユーザーニーズの正しい理解が重要です。ニーズを把握せずに開発を進めた場合、無意味なプロダクトが生まれる可能性があります。ユーザーとの信頼関係を築きながら、具体的な質問やフィードバックを通じてユーザーのニーズを正確に把握しましょう。

ユーザーニーズを正しく理解するためには、ターゲットユーザーにインタビューを行い、課題やニーズを掘り下げる必要があります。

競合製品を分析し、差別化ポイントを明確にすることもユーザーニーズの把握につながります。たとえば、競合製品の機能やデザイン、価格などを分析することで、独自の価値を打ち出せます。

3. UI/UXを意識する

MVP開発の実施ではUI/UXを意識しましょう。UIとはユーザーインターフェースの略です。 UIとは商品やサービスと利用者を繋ぐ接点を指します。Webサイト上でのレイアウトやフォント、スマホ本体のボタン配置などのデザインはUIに該当します。

UXとはユーザーエクスペリエンスの略です。ユーザーが商品やサービスを利用した際に得られる体験や経験を指します。商品やサービスを利用した際に生じる「使いやすい」や「使いにくい」「心地よい」などの感覚がUXに該当します。

プロダクトの使いやすさは重要

プロダクトの使いやすさは重要です。使いやすく、魅力的なUI/UXは、ユーザーの満足度を向上させるためです。ユーザーは、使いやすいプロダクトを繰り返し使用し、他の人に推薦する可能性が高くなります。

モバイル端末のUI/UXへの意識は重要

モバイル端末のUI/UXへの意識は重要です。近年、多くのユーザーがモバイル端末を利用して、情報収集やコミュニケーション、ショッピングなどを楽しんでいます。モバイル端末のUI/UXは、ユーザーの満足度や利用率に大きく影響するためです。

スマートフォンやタブレット端末での操作性を検証し、最適化しましょう。

ユーザーの視点に立ち、使いやすさや直感性を重視したデザインを採用することで、ユーザーの満足度を高めることができます。使いやすいUI/UXでは、シンプルでわかりやすいデザインの採用が効果的です。

MVP開発の進め方5ステップ

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MVP開発は次の5ステップで進められます。

  • ステップ1. 仮説を立案
  • ステップ2. 必要最低限の機能を策定
  • ステップ3. MVPの作成
  • ステップ4. 検証
  • ステップ5. 修正・改善

ステップ1. 仮説を立案

最初は、検証すべき仮説を立案します。成功確率を高めるためには、 ターゲットユーザーのニーズや課題を分析し、具体的な仮説の立案が必要です。 MVP開発の目的とゴールを設定することで開発の方向性を定めます。

仮説の立案には、感覚にとらわれず可能なかぎり細分化した仮説を立案することが重要です。

ステップ2. 必要最低限の機能を策定

仮説の立案が終わったあとは、必要最低限の機能を策定します。MVPは、製品やサービスの仮説検証を行うために構築される、最小限の機能を備えたプロダクトです。MVPでは、最初から完璧な製品を目指そうとせず、必要な機能を最小限に絞り込みます。

MVPにおける必要最低限の機能を策定するために下記を行います。

  • ユーザーストーリーの作成
  • 機能の優先順位付け
  • 機能の詳細設計

ユーザーにとっての価値を最大限に提供する機能を厳選し、開発計画に落とし込みます。ユーザーストーリーに基づき、必要な機能を洗い出し、重要度に基づいて優先順位を付けましょう。

ステップ3. MVPの作成

必要最低限の機能を策定した後にMVPを作成します。機能を絞り込むことで、開発期間とコストを抑え、迅速にMVPを開発できます。 外部サービスやオープンソースを活用したり、開発チームを最小限に抑えたり、効率的な開発手法を採用しましょう。

MVPの作成の手順は下記のとおりです。

  • 開発環境の構築
  • 設計
  • 開発
  • テスト
  • リリース

ステップ4. 検証

MVPの作成後には検証を行います。実際にユーザーに使用してもらい、製品・サービスに対してのフィードバックを収集します。検証のフェーズでは、ユーザーからのフィードバックを取り入れることが重要です。

方向性が誤っていない場合は改善を続けます。検証方法は開発目的や対象ユーザーによって異なるため、複数の検証方法を実施しましょう。

MVPにおける検証方法には下記があります。

  1. ユーザーテスト
  2. インタビュー
  3. アンケート
  4. データ分析

定量的なデータ分析と定性的なユーザーインタビューを組み合わせることで、多角的な視点から検証を行います。

ステップ5. 修正・改善

最後はMVPを修正・改善します。収集したフィードバックに基づき、機能追加やデザイン変更、バグ修正など、必要に応じてさまざまな改善を行います。 仮説が検証結果と異なる場合は、方向転換も検討しましょう。

MVP開発の導入事例3選

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MVP開発の導入事例には下記の3社が挙げられます。

  1. 株式会社ユニクエスト
  2. 株式会社オプティマインド
  3. 株式会社山口フィナンシャルグループ

1. 株式会社ユニクエスト

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引用:株式会社ユニクエスト

株式会社ユニクエストは「小さなお葬式」や「てらくる」などの葬式に関わるサービスを提供する企業です。遺言書作成の難しさを解消するため、シニアの方々でも簡単に遺言書を書ける終活支援サービス「タイムカプセル」を提供しています。

「タイムカプセル」の開発にあたっては、MVPをゼロから作りテストを繰り返すことで、必要な機能を完璧にするまで改善しました。何度もテストを行い、必要な機能を追加することで、開始から2カ月で1万人を超えるユーザーに利用されるサービスへと成長しています。

課題 シニア層が遺言書作成に困っている
解決策 簡単操作で作成できる遺言書作成サービス
MVP 最小限の機能で作成したプロトタイプ
結果 2カ月で1万人を超えるユーザー利用

2. 株式会社オプティマインド

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引用:株式会社オプティマインド

株式会社オプティマインドは、物流業界のデジタル化を先導するスタートアップ企業です。物流業界のデジタル化を促進するため、ドライバー不足の問題に対処する新サービス「Loogia」の開発に取り組みました。

ドライバーの声を取り入れながら最適な機能を精査し、3カ月でβ版のAndroidアプリを開発しました。フィードバックを受けた後に操作性やレスポンスの改善を行い、6カ月でネイティブアプリを提供しています。

正式リリース版ではナビアプリと統合し、ドライバーの利便性を考慮したUIデザインを取り入れました。モバイルアプリ化したことでGPSの取得や走行データの精度が向上し、配送時間の短縮に成功しています。

課題 高齢化によるドライバー不足
解決策 配送ドライバーをサポートする自動化サービス
MVP 3カ月で開発したベータ版Androidアプリ
結果 6カ月でアプリを公開
ドライバーの配送時間を1⽇2時間短縮

 

3. 株式会社山口フィナンシャルグループ

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引用:株式会社山口フィナンシャルグループ

株式会社山口フィナンシャルグループは、山口銀行・北九州銀行・もみじ銀行の3つの地方銀行を統括する金融持株会社です。地域で働く人と企業・地域との結びつきを高めることを目的に、地域循環型の福利厚生サービス「イネサス」を開発しました。

開発プロセスでは、リリース後に機能を拡張できるプロジェクト計画を策定しました。第一段階では、店舗の検索とクーポンの利用機能に絞ってアプリをリリースし、現在も追加機能を実装するための開発を進めています。

課題 地方ニーズに対応できていない福利厚生サービス
解決策 福利厚生充実を図るサービス
MVP 店舗検索とクーポン利用機能のみでリリース
結果 リリース時点で4,200以上の加盟申し込み

 

まとめ

MVP開発は、新しいアイデアをもとに起業や新規事業をスタートする際、成功率を高めるための有効なアプローチ手段です。短時間でユーザーからのヒアリングやフィードバックを行うため、ユーザーのニーズを取り入れられます。

必要最小限な機能を実装したMVP開発は、ビジネスにおける成功率を向上させるための強い手段になるでしょう。MVP開発を進める前の仮説や定義が不十分な場合、効果が得られないケースもあります。

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よくある質問とその回答

  • MVP開発とプロダクト開発は何が違うの?

    MVP開発と通常のプロダクト開発は、仕様やコスト、時間などが異なります。 MVPは最低限の機能で仮説検証を行うため、コストや時間を最小限に抑えます。コンセプトの受け入れやユーザーの反応を重視します。

    プロダクト開発では、ユーザーニーズに最適化した製品・サービスを提供するために、すべての機能と品質を向上させます。

  • MVP開発では不具合修正も必須なの?

    MVP開発で不具合があった場合、即修正は必ずしも必須ではありません。MVPの目的は、コンセプトの検証です。ユーザーに骨子が伝われば第一ハードルはクリアとなります。

    不具合が検証に影響を与えない場合は、修正は後回しにして開発効率を優先できます。修正に時間とコストがかかる場合は、機能追加よりも優先順位を低く設定しましょう。

監修者のコメント
株式会社GeNEE
代表取締役 日向野卓也

東京工業大学環境・社会理工学院卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。MBA(経営学修士)取得。国内最大手SIerの株式会社NTTデータで大手法人領域(大手流通企業、大手小売企業)の事業開発、事業企画等の業務に従事。米国スタンフォード大学への研修留学を経て、システム/モバイルアプリ開発会社の株式会社GeNEEを創業。

リーンスタートアップでの新事業開発において、ビジネスモデルの仮説検証にはリーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスといったフレームワークがよく用いられますが、このようなツールを使い、ビジネスモデルをいくら組み立てても机上の空論になってしまいます。

ビジネスはお金を支払ってでも「このサービス/プロダクトを使用したい!」というペイン(痛み)を持つユーザーがファン化(継続利用)することで成立するものです。

そのため、ユーザーが忖度なしに使用したいと思うかどうか、仮説を構築し、検証する必要があります。今回は触りだけになりますが、新事業のアイデアがまとまった後、以下の観点で方向性を整理していくと良いでしょう。

・具体的な仮説
・新事業の目的
・仮説の検証方法
・必要なデータ、KPI(撤退基準の設定など)
・MVPに持たせる機能(キラーコンテンツ)
・MVP開発に必要なコスト(お金)
・仮説検証に必要な期間(MVPの開発期間含む)
・潜在リスク/顕在リスク
・仮説検証結果
・得たもの/課題

仮説検証後はこれらの情報やデータを基に新事業開発メンバーと議論し、MVPをプロダクト化すべきなのか、それとも撤退すべきなのか、判断します。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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