棚卸資産の低価法とは?メリットやデメリット・必要な届出まで解説

三井公認会計士・税理士事務所
監修者
最終更新日:2024年09月17日
棚卸資産の低価法とは?メリットやデメリット・必要な届出まで解説
この記事で解決できるお悩み
  • 低価法を採用するために必要なことは?
  • 低価法を採用するメリットやデメリットは?
  • 低価法による仕訳や計算方法は?

「棚卸資産の低価法を使って、会社の財務を効果的に管理できるのか?」と疑問をお持ちの経営者や会計担当者の方必見。

棚卸資産の低価法は、在庫資産の評価を市場価値よりも低く見積もることで、財務上のリスクを軽減する方法です。

本記事では、棚卸資産の低価法のメリットと注意点、実際の適用方法について詳しく解説します。記事を最後まで読めば、低価法を使って企業の財務をより効率的かつ安全に管理するための知識が得られるでしょう。

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棚卸資産の低価法とは

棚卸資産の低価法とは、取得原価と期末の時価を比較し、低い方の価額を棚卸の評価で採用する方法です。原価とは、棚卸資産を生産または仕入れた際にかかる費用を指します。低価法を採用することで、市場環境の変化に応じて適正な資産評価できることが大きなメリットです。

市場環境の変化に対応することで、企業の財務諸表の信憑性を上げる効果が期待できるでしょう。信憑性の高い財務諸表は、株主や投資家などの評価や信頼が高く、会計監査や税務調査でも評価方法や根拠などを説明しやすくなります。

棚卸資産で低価法を採用する3つのメリット

メリット

棚卸資産の評価方法で低価法を採用するメリットは以下の3つです。

  • 利益の過大計上の防止
  • 市場環境に応じた資産評価
  • 節税効果

1. 利益の過大計上の防止

棚卸資産の評価損を計上することで、利益を適正に反映できます。売上高や営業利益などの業績指標が実態に近くなり、財務諸表の信憑性が高くなるでしょう。

信憑性が高い財務諸表は、株主や投資家などのステークホルダーからの信頼が高くなり、企業にとってはメリットです。利益の過大計上を防止でき、正しい事業の実態が把握できます。

2. 市場環境に応じた資産評価

市場価格が原価よりも低くなる場合は、棚卸資産の価値も下がります。市場環境の変化に対応できるため、適正な資産評価が可能です。常に市場の動向に合わせた評価ができるため、棚卸資産の売却時に生じる利益や損失の差額が通常よりも小さくなります。

差額が小さくなることで、財務諸表から経営状態の予測をする際の精密度が上がるでしょう。

3. 節税効果

低価法による大きなメリットは「節税効果」です。低価法では、在庫や材料を仕入れたときの価格と、棚卸時点での時価に差がある場合、安い方を資産の評価額とします。

価格が下がった分は「評価損」として費用計上できるため、利益が圧縮され、法人税額を減らすことにつながります。たとえば、原価法の棚卸資産評価額が300万円であるものの、期末時点の時価が100万円の場合、差額の200万円を当期の商品評価損に計上することが可能です。

棚卸資産で低価法を採用する2つのデメリット

デメリット

棚卸資産で低価法を採用する場合のデメリットは以下の2つです。

  • 評価作業が煩雑になる
  • 原則ほかの評価方法に変更できない

1. 評価作業が煩雑になる

低価法を採用することで、市場の動向を反映させる必要があり、毎期の市場価格の調査や評価作業が煩雑になります。評価の基準となる市場価格の決定方法や評価基準などを明確に定めておかなければならないため、単純作業ではありません。

低価法を採用する場合、会計監査や税務調査で、評価方法や根拠などを説明する必要があります。

2. 原則ほかの評価方法に変更できない

低価法は一貫して適用する必要があり、事業年度の途中でほかの評価方法に変更することは原則として認められていません。1度税務署に評価方法を申請した場合、最低でも3年以上は同じ方法で棚卸資産を評価しましょう。

ほかの評価方法に変更する場合は、国税庁への届出や会計処理などに厳しい制約があるため注意が必要です。低価法を採用した場合、将来的に市場価格が回復したとしても、棚卸資産の価値を上げられません。

棚卸資産の評価で低価法を採用した場合の仕訳

棚卸資産の期末残高に対して、市場価格または原価のいずれか低い方で再評価しましょう。再評価後の棚卸資産額が期首残高よりも低い場合、その差額を棚卸資産評価損として費用計上します。

たとえば、期末帳簿価額が200円、期末の正味売却額が150円の場合、期末整理仕訳は以下のとおりです。

借方 金額 貸方 金額
商品評価損 50 棚卸資産(商品低価評価勘定) 50

※200円 - 150円=50円

期首に戻入益を計上する必要があるため、以下の仕訳になります。

借方 金額 貸方 金額
棚卸資産(商品低価評価勘定) 200 棚卸資産戻入益(商品低価評価勘定戻入益) 200

棚卸資産で低価法を採用するには届出が必要

ポイント_虫眼鏡

低価法は特例的な評価方法であり、採用するには事前に国税庁へ届出が必要です。届出書は、事業年度開始日から3カ月以内に提出しましょう。届出書には、採用理由や適用範囲などの記載が必要です。

棚卸資産の評価で低価法を採用する場合の注意点

低価法は一貫して適用する必要があり、事業年度の途中でほかの評価方法に変更することは原則として認められていません。

採用した場合は、市場環境や需要動向などに応じて市場価格を適切に把握し、定期的に再評価が必要になります。再評価をしなければ、低価法の特徴である「市場の動向を反映した評価」ができません。

まとめ

棚卸資産の低価法とは、期末の市場価格または原価のいずれか低い方で評価する方法で、企業の財務諸表の信憑性が向上します。低価法を採用するメリットは、利益の過大計上防止、市場環境に応じた資産評価、節税効果などです。

デメリットは評価作業が煩雑、原則ほかの評価方法に変更できない点が挙げられます。棚卸資産の評価は、企業の財務状況に影響与えるため慎重に選択しましょう。

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監修者のコメント
三井公認会計士・税理士事務所
代表 三井 岳

東京都世田谷区にて会計事務所を運営している。大手監査法人での経験を生かして、税務顧問、決算支援、内部統制導入支援及び研修講師等の業務を行っている。顧客目線でのサービス提供を特長として、個人から上場会社までの幅広い規模・業種の対応を行っている。

低価法を採用することで、早期に「評価損」として費用計上することを通じた節税効果が認められますが、翌期以降に該当する棚卸資産を売却や廃棄した際には、費用計上額がその分減少することとなります。

費用の先行計上といった性質であるため、棚卸資産を長期間にわたって保有する業種や、棚卸資産の時価が多額に変動する業種でない限りは、節税効果は限定的であり、事務作業量に見合う効果が得られない可能性があります。

節税を目的として低価法を採用する場合には、対象年度のみならず、以後のことも踏まえて計算方法の選択・決定を行ってください。また、一度届出をおこなった評価方法は、3年間は変更ができないため、その点にも留意をしてください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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