事業を進めていくなかで、業種の変更がある場合や複数の事業を手掛ける場合は、確定申告書の際に最新の職業を記入しましょう。開業届と確定申告に記入する職業が異なっていても構いません。
事業税率を確定させる機能は確定申告の職業欄にあるため、開業届の再提出は不要です。事業を全く異なる業種に切り替える場合は、変更内容を記入した開業届の再提出を求められるケースがあります。不安な場合は都道府県税事務所に問い合わせましょう。
確定申告書の職業欄は、個人事業税の税率を決定するうえで用いられる箇所です。事業の内容を具体的に記載することで、必要以上の税金を納める懸念がなくなります。
この記事では確定申告書の記入に悩んでいる方に向けて、職業欄の書き方や個人事業税との関わりを解説します。
「職業欄になにを書けばいいかわからない」「自分の仕事の業種がわからない」とお困りの方も、記事を読めば適切な確定申告書を作成できます。
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次の職業に該当する場合は、職業欄にその旨を記載します。
主婦/主夫がパートをしている場合、扶養から外れる場合に主たる職業を記入します。扶養に入っている間は原則的に「主婦/主夫」でかまいません。学生がアルバイトをしている場合は「学生」と記載します。
給与所得がある方でも副業収入が年間20万円以上ある場合や各種控除を受ける場合、確定申告が必要です。副業がある場合でも、副業より「給与所得がある職業」を優先して職業欄に記載します。
個人事業主やフリーランスの場合「個人事業主」「フリーランス」ではなく、職業名を明記する必要があります。個人事業主の職業欄の書き方は「日本標準職業分類」を参考にしましょう。
複数の事業を掛け持ちしている場合、すべての職業を記載します。たとえば、システムエンジニアとウェブデザイナーを兼任している場合、職業欄は「SE・ウェブデザイナー」と両方の記載が必要です。
「日本標準職業分類」には数百の職業分類が記載されています。主な職業の例を3つ紹介します。
大分類 | 中分類 | 小分類 |
---|---|---|
専門的・技術的職業従事者 | 製造技術者、情報処理・通信技術者、美術家など | 機械技術者、科学技術者、システム設計者、情報処理プロジェクトマネージャー、デザイナー、写真家など |
事務従事者 | 会計事務従事者、営業・販売事務従事者など | 経理事務員、営業・販売事務員など |
サービス職業従事者 | 保健医療サービス職従事者、飲食物調理従事者など | 看護助手、歯科助手、調理人、バーテンダーなど |
製造技術や通信技術など専門的なスキルを用いて収入を得ている方は「専門的・技術的職業従事者」に該当します。具体的な例は、システム設計者、情報処理エンジニアなどです。
「専門的・技術的職業」の概念のなかには、芸術関連職も含まれます。デザイナーや写真家など、自分の芸術のスキルを活用して収入を得ている方は、専門的・技術的職業従事者と記入しましょう。
事務職に従事しているケースでは「事務従事者」と記載します。会計事務や営業・販売事務など、事務的業務に携わる方が対象です。
フリーランスや個人事業主で事務業務を承っている場合、原則的に「事務従事者」に該当します。経理事務、会計事務のように専門的な知識を必要とするケースもあります。
「サービス業従事者」は飲食業や保健医療サービスの現場で活躍する職業を指します。保険医療サービスにおいては看護助手、歯科助手などが例です。
飲食業界では、料理担当や接客担当も「サービス職業従事者」に該当します。バーテンダーのようにドリンク作りと接客を兼任する場合でも同様です。
確定申告書の職業欄は、個人事業税率に影響します。職業欄と個人事業税率の関係性に関して、次の3つのポイントを理解しましょう。
個人事業税率は、職業に応じて変動します。個人事業税の対象となる法定業種は70種類が設定されており、設定されている事業税率は3〜5%です。東京都の例を紹介します。
税率5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業、医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業 |
---|---|
税率4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
税率3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
都道府県ごとに法定業種と税率が異なる可能性があるため、納税先の自治体のホームページを確認しましょう。
会社員が副業収入を得て雑所得として確定申告書に記入した場合、個人事業税の対象となる場合があります。個人事業税は、開業届を提出している個人事業主のみが対象の税金ではないためです。
確定申告をすると、情報は主税局の都道府県税事務所に共有され、事業の実態や所得金額が審査されます。審査の結果「副業が事業である」と認められた場合、開業届を出していなくても個人事業税が課税されることに留意しましょう。
たとえば、本業と同等以上の時間を費やし、生活が成り立つレベルの収入を継続的に得ている場合は、副業でも事業と認められる可能性が高くなります。
個人事業主でも、職業によって個人事業税が免除される可能性があります。ほとんどの業種が対象である個人事業税ですが、上記に当てはまらずに非課税扱いになる職業があるためです。
事業税が非課税の事業 | 具体的な業種 |
---|---|
クリエイター・芸術家 | ライター、作家、画家、音楽家、作詞家、作曲家、通訳、翻訳など |
スポーツ選手 | プロ野球選手、プロサッカー選手など |
エンジニア | システムエンジニア、プログラマーなど |
その他 | 自家農業、林業、保険営業などの外交員 |
個人事業税が免除されるか否かの判断は、あくまでも主税局に委ねられてます。ライターや画家、YouTuberなどは、広告業として個人事業税を課されるケースが多くあります。
開業届における職業欄の書き方は、確定申告書の職業欄の書き方とは少々異なります。開業届の職業欄の書き方では、次の2つのポイントに注意しましょう。
開業届の職業欄は、1つの職業のみを記入します。複数の事業を展開する予定でも、主たる所得となる職業のみ記入することが基本です。確定申告書と異なり、すべての職業を書き込む必要はありません。
たとえばウェブデザイン業務8割と翻訳業2割で収入を得ている場合、より大きい収入が想定される「ウェブデザイナー」を職業欄に記載します。メインの職業の分類が不明な場合「日本標準職業分類」を参考にしましょう。
開業届の職業欄の重要度は、確定申告書に比べると高くありません。過度に神経質にならず、事業内容がわかるように具体的な職業を記入しましょう。
開業届の職業欄は、事業主の職種が個人事業税の対象になるか否かを確認する役割を担っています。主税局がチェックするために職業欄が設けられていますが、開業届に記入した職業で事業税率が確定するわけではありません。
確定申告書の職業欄を記入する際のポイントは、次の3つです。
確定申告書の職業欄を記入する際、開業届を提出した際に記入した職業と異なっても問題ありません。確定申告書にはすべての職業を記載するのに対し、開業届には1つの職業のみを記載するため、正確に一致しないケースも多いでしょう。
開業届の職業欄は1つのメイン業務を記載するため、事業の状況に応じて収入の割合が変動することも想定されます。確定申告書を記入する際は、開業届の内容にかかわらず実情の職業を記入することが大切です。
確定申告書の職業欄には、すべての職業を記入しましょう。開業届の職業欄には1つの職業のみ記載するため、混合しないよう注意が必要です。
収入を得ている職業はすべて記入するため、スペースが足りなくなる可能性があります。職業分類に記載されている職業名は長いため、明確にわかる範囲で短縮して記入しても問題ありません。たとえばシステムエンジニアは「SE」と省略できます。
確定申告書の記入に関して不安なことがあれば、専門家に相談しましょう。確定申告書の記入に不備があると、脱税の疑いをかけられてしまうリスクがあるためです。
確定申告書における職業欄は個人事業税率を決定する要素の1つであり、納税に大きく関与します。内容が正しくないと判断されればトラブルに発展する可能性があり、正確な記入が大切です。
確定申告書の職業欄は、正確な内容の記入が必要です。開業届と異なりすべての職業を記入する必要があるため、複数事業を取り扱う個人事業主・フリーランスは注意しましょう。
確定申告書は不備があるとトラブルに発展する可能性があるため、不明点は専門家に相談しながら記入すると安心です。専門家を選ぶ際は、複数の見積もりを取得し条件を比較することで、最適な依頼先が見つかります。
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岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。
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