【まとめ】青色申告の現金主義とは?特例の利用条件や届出の提出書類を解説
- 青色申告における現金主義の特例とは?
- 現金主義による帳簿付けをするメリットとデメリットは?
- 現金主義の特例を利用する条件は何?
青色申告では、現金主義で帳簿をつけることができます。現金の流れを把握しながら、複式帳簿よりも単純な方法で帳簿を付けられるメリットがあります。
この記事では現金主義による帳簿付けの特性やメリット・デメリットを解説します。注意点や特例利用の注意点も紹介するためぜひ参考にしてください。
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青色申告の現金主義:現金の動きで売上や費用を計上すること
実際に支払いが発生したとき、あるいは受け取ったときに取引を計上する方法です。青色申告の現金主義とは「売上や経費を現金の動きで計上」することになり2つの基準にわかれます。
- 【原則】売上は「実現主義」費用は「発生主義」で記帳する
- 【特例】青色申告者は売上・費用を「現金主義」で記帳できる
【原則】売上は「実現主義」費用は「発生主義」で記帳する
売上代金を実際に受け取った時点で収益を確定する方法です。企業会計原則では、収益計上のタイミングは実現主義で行います。
業種により「販売が実現した時点」は採用する基準で異なるため、自社にあった方法を決めておく必要があります。
出荷基準や納品基準、検収基準といわれているものが該当します。
【特例】青色申告者は売上・費用を「現金主義」で記帳できる
売上代金を現金で受け取った時点や、預金口座に入金があった時点で取引があったものとして認識される基準です。
販売したものの代金を受け取ったとき、購入したものの代金を支払ったときで現金の動きをとらえます。そのため、現金の動きと現金残高にズレが生じることはありません。
【青色申告】現金主義で記帳するメリット2つ
青色申告の際に帳簿を現金主義で記帳するメリットは下記の2つです。
- 帳簿作成が簡単にできる
- 現金の流れがよくわかる
1. 帳簿作成が簡単にできる
売上と経費の突合せに頭を悩ませることなく、取引が発生した時点で計上するシンプルさから、経理に詳しくない人でも理解しやすいメリットがあります。
青色申告には帳簿作成が必要になるため、経理処理の方法や会計帳簿のつけ方に慣れていない人でも簡単に管理できます。
2. 現金の流れがよくわかる
現金主義を採用した場合、すべての取引が支払済みまたは受取済みと連動するため、キャッシュフローの把握が簡単にできます。売上のお金を回収した時点と、支払いをした時点でお金の出入りが把握できるため、常に手許現金がいくらあるのか把握できます。
【青色申告】現金主義で記帳するデメリット4つ
青色申告の際に帳簿を現金主義で記帳するデメリットは下記の4つです。
- 未払金・未収入金(売掛金)がわからない
- 取引状況を正確に把握できない
- 消費税額を正確に把握できない
- 青色申告特別控除が最大10万円に引き下げられる
1. 未払金・未収入金(売掛金)がわからない
売上は収益ですでに計上されているものの、現金の動きがないため実質的に現金が少ないイメージになります。現金主義で記帳する場合、未払金・未収入金(売掛金)がわからなくなり、正確に把握できなくなる場合があります。
2. 取引状況を正確に把握できない
売上計上よりも遅れて現金が回収されるため、一定期間ごとの正確な損益把握ができなくなります。現金主義は現金の動きのみで取引を把握するのが原因です。
3. 消費税額を正確に把握できない
消費税は「物が動いた時点」で把握するため、期ズレが発生します。クレジットカードで買い物をした場合、現金主義で記帳をすると実際に預金口座から代金の引き落としがあったときに経費計上できます。
消費税の課税事業者が現金主義を採用する場合は、所得税の認識と消費税の認識で異なることを理解しておくことが大切です。
4. 青色申告特別控除が最大10万円に引き下げられる
「正規の簿記」とは複式簿記を意味しているため、青色申告65万円控除を適用するためには、複式簿記で記帳しなければなりません。そのため、現金主義は簡易帳簿にあてはまり10万円控除のみです。
【青色申告】現金主義の特例を利用する3つの条件
青色申告で現金主義の特例を利用する条件は下記の3つです。
- 青色申告者である
- 小規模事業者である
- 「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出する
1. 青色申告者である
税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。青色申告のなかでも「特別控除」は青色申告の承認を受けたあと、要件を満たすことで該当します。特別控除を受けるための申請書はありません。
2. 小規模事業者である
青色申告者が現金主義の特例を利用するためには、小規模事業者であることが条件の1つです。中小企業庁では小規模事業者の定義を「所得税法施行令第195条に規定する青色申告を行う不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額が300万円以下の事業者等」としています。
3. 「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出する
「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」の提出が必要です。青色申告の適用届と一緒に提出しておけば、提出漏れを防げます。
【青色申告】現金主義の特例を利用する2つのポイント
現金主義の特例を利用するポイントは次の2つです。
- 「青色申告承認申請」と「現金主義による特例」の届出は兼ねられる
- 青色申告者は現金主義用の決算書を使用する
1. 「青色申告承認申請」と「現金主義による特例」の届出は兼ねられる
税務署では「所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続」という名称で紹介しています。青色申告をしようとする都市の3月15日までに届け出ることで、適用できます。
2. 青色申告者は現金主義用の決算書を使用する
現金主義で帳簿作成する場合、決算書には売上原価を計算する欄がないものを使用します。決算書を誤りなく作成できれば、所得税の申告書に転記するだけのため、確定申告にかかる手間も省けます。
【青色申告】現金主義で帳簿作成する場合の注意点4つ
青色申告の帳簿を現金主義で作成する場合の注意点は下記の4つです。
- 前受金(手付金・着手金・内金)は受取時点で収入となる
- 売上代金が回収できず貸し倒れても帳簿に記載できない
- 棚卸しをしても決算書には売上原価を計算する欄がない
- 現金主義でも減価償却をしなければならない
1. 前受金(手付金・着手金・内金)は受取時点で収入となる
前受金(手付金・着手金・内金)は、受け取った時点で収入とみなされます。売上にはなるものの、翌月に商品を引き渡す予定である場合は、売上として計上できません。受け取った現金は「前受金」として処理し貸借対照表上は、現金のみが増加します。
2. 売上代金が回収できず貸し倒れても帳簿に記載できない
顧客が代金を支払わず、貸し倒れが発生した場合、現金主義では帳簿に計上することができません。発生主義の場合、不良債権を引当金として帳簿に計上する必要がありますが、現金主義ではその金額を見積もることができないためです。
3. 棚卸しをしても決算書には売上原価を計算する欄がない
現金主義で帳簿を付けている場合、財務諸表に売上原価を計算する欄がありません。在庫の記録や関連する原価がないため、売上原価は、仕入れに製造原価の合計を加え、売上高から差し引いて計算します。
商品を売った日と支払いを受けた日が異なるため、タイムラグにより、正しい在庫管理ができないためです。
4. 現金主義でも減価償却をしなければならない
減価償却費は、設備を購入した場合に経年劣化によって下がる価値を費用として計上するものです。現金主義でも、減価償却はしなければなりません。減価償却費は現金の動きが伴わないため、減価償却は必要です。
まとめ
青色申告の現金主義は、複式簿記のように複雑ではなく、現金の動きだけで帳簿が作成できます。現金主義で帳簿を作成する際に注意すべき4つのポイントを中心に、複式簿記を利用した発生主義を適用するか、簡易簿記での現金主義を適用するか検討が必要です。
売上規模が小さければ、現金主義でも財務状況は把握できますが、売上が大きくなってくると発生主義の方が利益管理はしやすいという違いがあります。
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1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。
「発生主義」と比較すると、帳簿を作成する手間は簡単で、確定申告業務を省力化できますが、「現金主義」の青色申告特別控除の額が最大10万円と「発生主義」の青色申告特別控除の額 65万円よりも低いですので、納税の面でデメリットが大きいです。
「現金主義」の特例を受けることでのデメリットを踏まえた上で、「発生主義」と「現金主義」どちらがいいのかを十分に検討することをおすすめいたします。
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