貯蔵品と棚卸資産の違いとは?保有のメリットや処理時の注意点を解説

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2024年02月26日
貯蔵品と棚卸資産の違いとは?保有のメリットや処理時の注意点を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 貯蔵品と棚卸資産との違いとは?
  • 貯蔵品・棚卸資産を保有するメリット・デメリットは?
  • 会計処理時の注意点とは?

「貯蔵品と棚卸資産は何が違う?」とお悩みの方、必見です。貯蔵品と棚卸資産は、資産計上するときに使う勘定科目です。貯蔵品は売上に関わらないもの、棚卸資産は直接売上に関わるものを計上する際の勘定科目です。

この記事では「貯蔵品と棚卸資産について知りたい」と思っている方に貯蔵品と棚卸資産の違いを紹介します。最後まで読むことで、貯蔵品と棚卸資産の違いが理解でき、会計処理がスムーズにできるでしょう。

貯蔵品と棚卸資産のメリット、デメリットや貯蔵品の会計処理、貯蔵品に関する注意点についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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貯蔵品と棚卸資産の違い

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貯蔵品と棚卸資産は、いずれも物品を計上するための勘定科目であり、売上に直接関係しているか否かの違いがあります。貯蔵品は企業の売上には関係せず、棚卸資産は売上になる物品です。

貯蔵品は未使用の消耗品を指し、文房具や切手など販売を補助する物品が該当します。棚卸資産は、販売を目的として生産された商品が在庫として残っている場合に使用する言葉です。

貯蔵品 ・切手や商品券など会社が保管している物品
・未使用の消耗品は資産に計上
棚卸資産 ・販売目的で仕入れた商品や生産された製品
・生産工程の途中にある材料も該当

棚卸資産と固定資産の違い

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棚卸資産に似た言葉で「固定資産」があります。棚卸資産が販売のために仕入れられたり、生産されたりするものであるのに対し、固定資産は販売しない資産を指します。

棚卸資産 ・販売目的で仕入れた商品や生産された製品
・生産工程の途中にある材料も該当
固定資産 ・会社が長期にわたり保有する資産
・販売を目的としない資産
・土地や建物などが該当

貯蔵品とは

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貯蔵品は、未使用の物品を資産計上する際の勘定科目です。事業者が保有する物品のうち、直接は売上に関わらず、未使用のものを資産計上できます。

大きく「消耗品」と「金銭的価値のあるもの」の2種類に分けられます。具体例は以下のとおりです。

消耗品 事務用品、梱包材、販促材など
金銭的価値のあるもの 切手、回数券、商品券、収入印紙など

貯蔵品は、税務調査で追究されやすい項目です。製品の原価が高く利益率が低くなるため、税務局が利益隠しの疑いをかける可能性があるためです。実務処理にあたっては、国税庁のHPを確認しながら進めると安心でしょう。

貯蔵品を保有するメリット

貯蔵品は、適切に確定申告をすることで節税効果を見込めます。物品は使用した際に費用を計上しますが、継続的に消費する貯蔵品(文房具や資材など)は購入時の処理が認められます。

消耗品を計画的に購入している場合、購入金額を該当年の経費に計上可能です。

貯蔵品を保有するデメリット

貯蔵品を保有するデメリットは、正しい勘定科目に計上しなければ脱税行為に該当する可能性がある点です。郵便切手や収入印紙など金銭的価値のあるものは、使用時と使用前で計上する勘定科目が変化します。

たとえば収入印紙を使用した費用を経費計上する際は「租税公課」に該当します。買い置きしている収入印紙(未使用)は貯蔵品です。税務署の審査でトラブルにならないよう、違いを明確に理解しましょう。

貯蔵品の仕訳の注意点

収入印紙や商品券を購入するときは、消費税の扱いに注意が必要です。収入印紙や商品券を購入する際は、消費税を支払いません。

収入印紙や商品券は、紙幣や硬貨と同じように法定通貨ではなく代替通貨です。代替通貨は消費税上では課税対象外とされるため、購入時には消費税が課されません。

棚卸資産とは

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棚卸資産とは事業者が保有する物品のうち、直接売上に関わるものを資産計上する勘定科目です。具体的には業種や実情により内容は異なりますが、以下の項目が例に挙げられます。

項目 概要
商品 販売する目的で仕入れた物品で、そのままの状態のもの。(一般的に卸売業や小売業など)
原材料 加工して販売する目的で仕入れた物品で、そのままの状態のもの。(一般的に製造業や建設業など)
仕掛品/未成工事支出金 加工して販売する目的で仕入れた物品で、加工途中の状態で残ったもの。(一般的に製造業や建設業などが該当)
製品/完成品 加工して販売する目的で仕入れた物品で、加工が完了した状態のもの。(一般的に製造業が該当)

棚卸資産も貯蔵品と同じように利益隠しの可能性があるため、税務調査で追究を受けやすい項目です。未着品やトラック在庫などの計上漏れがないか注意しましょう。

棚卸資産を保有するメリット

棚卸資産のメリットは、販売の機会損失を減らせる点です。突然大量の受注があった場合でも、在庫を潤沢に持つことで確実に販売できます。

不良品が見つかった場合でもすぐに代替品を用意でき、消費者ニーズが急速に高まったときも迅速な対応が可能です。適正な在庫量を持つことで、顧客満足度向上につながります。

棚卸資産を保有するデメリット

棚卸資産のデメリットは、おもに以下の4つです。

  • 品質の低下
  • 管理工数の増加
  • 資金繰りの悪化
  • 税金の支払い増加

品質の低下

棚卸資産のデメリットの1つは、品質の低下です。長期間保管することが多い場合、保管状態により品質が劣化することがあります。保管する商品や物品・保管期間によっては廃棄が必要なケースも想定されます。

棚卸資産を保管する際、品質管理徹底と在庫回転率の確認が大切です。温度管理が必要な場合は、保管する場所を慎重に選びましょう。

管理工数の増加

管理工数の増加は、棚卸資産を保有するデメリットの1つです。棚卸資産を管理するためには、在庫数や品質などを正確に把握しなければなりません。在庫管理には、システムの導入や定期的な棚卸し作業など多くの工数が必要です。

たとえば、高価な商品や消費期限が近い商品は、定期的な棚卸し管理が必要です。管理にはコストがかかるため、費用対効果を考えたうえで最適な管理方法を選びましょう。

資金繰りの悪化

棚卸資産を管理することによって、企業の資産繰りが悪化する可能性を想定しましょう。棚卸資産が増えると過剰在庫が発生し、売れ残りや廃棄処分などコスト増のリスクが生まれるためです。

棚卸資産は企業の資産として重要な存在ですが、適切な管理が必要です。在庫管理を適正化することで不必要な棚卸資産を減らし、企業の資金繰りを改善できます。

税金の支払い増加

棚卸資産を抱えている場合、課税額の増加が見込まれます。棚卸資産は「いずれ利益となる資産」とみなされるため、課税の対象です。

棚卸資産で発生する税金は以下の計算になります。

  • 売上原価=期首在庫+当期仕入高−期末在庫
  • 利益=売上−(売上原価+経費)

期末の在庫が多いと、売上原価が少なくなります。実際の売上が少ないとしても利益が発生したと判断され、結果的に課税額が増えます。

棚卸資産の仕訳の注意点

棚卸資産の仕訳では、継続的な在庫管理が重要です。在庫管理を日常的に行わず、決算前にまとめて行うと、作業量の負担が増え、品切れや過剰在庫を招く可能性があります。適正在庫を保つためにも、日頃から継続的な仕訳作業を行いましょう。

【具体例】貯蔵品の会計処理

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貯蔵品の会計処理の例を2つ紹介します。

  1. 購入後に資産計上し使用後に費用計上する
  2. 毎年一定量を使用する物品は購入時に費用計上する

例1. 購入後に資産計上し使用後に費用計上する

原則的に、購入した商品を費用計上するタイミングは実際に商品を使用した段階です。商品を購入しただけでは費用として計上できません。貯蔵品における消耗品や物品の場合、購入時点では一時的に資産として計上し使用時点で費用として計上できます。

たとえば期初にボールペンを100本購入し、当該年度中にうち50本を使用したとします。発生する会計処理は下記の3つです。

購入時 ボールペン100本を貯蔵品として資産計上
使用時 使用本数分を費用計上
期末 残った50本を次期繰越

費用計上では、使用していない分まで計上しないよう注意が必要です。不当に費用を多く見せていると捉えられ、過失でも罰則の対象になる可能性があります。

例2. 毎年一定量を使用する物品は購入時に費用計上する

毎年一定量を使用する物品に関しては、例外的に購入時に費用計上できることが通達で認められています。ボールペンや消しゴムなどの消耗品に関して、1本ずつ使用したか否かを確認する作業は現実的ではないためです。

(前略)法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(後略)

引用:法人税法基本通達2ー2ー15(消耗品費等)

以下は、通達の文章を簡潔にまとめた表です。

購入時の費用計上が認められる物品 事務用品、梱包材、販促材など
購入時の費用計上が認められる条件 毎年おおむね一定量を購入し、かつ定期的に消費する場合

【具体例】棚卸資産の会計処理

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棚卸資産の会計処理には、具体的に次の2つの方法があります。

継続記録法 仕入れ・販売時に数量を記録する
棚卸計算法 仕入れ時のみ数量を記録する

例1. 継続記録法:仕入れ・販売時に数量を記録する

「継続記録法」は、仕入れ・販売時に数量を記録する方法です。毎日継続的に棚卸資産の受け入れ・払い出しを記録します。仕入れ数と販売数を把握できるため、売上数や在庫数の継続的な把握が可能です。

継続記録法には、こまめに記録するため在庫数を管理しやすいメリットがあります。手元残高も把握できるため、月次損益計算も簡単にできます。

例2. 棚卸計算法:仕入れ時のみ数量を記録する

「棚卸計算法」とは、仕入れ時のみ数量を記録する方法です。継続記録法との違いは、受け入れのみを記録し払い出しの記録をしない点です。期末の実地棚卸で在庫量を把握し、仕入れ量から在庫数を引いて出荷量を求めます。

棚卸計算法には、記録する情報が継続記録法に比べて少ないため業務負担が軽いメリットがあります。在庫把握が難しいため、期中の在庫把握には役立ちません。

まとめ

貯蔵品は税務調査で追究を受けやすいため、慎重な処理が必要な項目です。

貯蔵品の会計実務にあたっては、専門家のサポートを受けながら処理をすると正確な仕訳ができます。効率的に税務の専門家を見つけたい方には「比較ビズ」の利用をおすすめします。

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監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

貯蔵品とは事業に関わる商品や原材料以外の物品の中で未使用のものを意味し、資産の勘定項目で処理されます。一般的に消耗品の中でも一定の価値以上を持ち、資産価値があるものが該当するでしょう。

具体例としては、郵便切手・収入印紙、商品券、回数券やタクシーチケットなどがあり法人の場合、このような物品はまとめて購入して、それらをすぐ使うことは珍しく、新品・未使用の状態で保管されます。発生主義の原理に基づいて、購入時ではなく使用時に費用計上します。

期末間際に切手、収入印紙、文房具などの大量購入は、全てを使用している可能性は少なくなります。そうなると税務調査感の目に止まりやすくなります。こういったものがあれば、貯蔵品として計上しているのかということを確認される可能性が高まります。

そのような事態におちいらないために、消耗品は計画的に購入しましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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