【個人事業主必見】青色申告における減価償却の書き方3ステップ!特例も解説
- 減価償却とはそもそも何なの?
- 青色申告で、減価償却はどうやって計算すればいいの?
- 減価償却はどのように書けばいいの?
青色申告で減価償却をする個人事業主の方は、「減価償却の具体的な書き方が分からない。」と悩むこともあるでしょう。一度どういう仕組みになっているのかを覚えてしまえば敬遠するほど難しいものではありません。
この記事では、減価償却の対象となるものや書き方・計算方法を詳しく解説します。減価償却の基礎をマスターしたい方はぜひ参考にしてください。
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そもそも減価償却とは
減価償却は高額な商品を購入した時の確定申告に必要不可欠です。考え方が少々複雑なため、以下では分かりやすく説明します。
減価償却の対象になる商品に関しても具体例を把握するようにしましょう。
10万円以上の有形資産を購入した時に分割して経費にする制度のこと
個人事業主の場合、減価償却とは10万円以上の有形資産を購入したときに生じる制度のことです。減価償却をするときは購入した商品の耐用年数に応じて、購入費を分割して翌年、翌々年と何年もかけて経費にしていきます。
減価償却の制度は機械装置や建物などといった高額な商品を購入すると自然と発生するため、10万円以上のものを購入したら全てがその年の経費になる訳ではないのです。
知っておきたい減価償却の用語6つ
減価償却を学ぶにあたって知っておきたい用語は6つあります。
償却方法 | 減価償却の計算方法のこと。定額法・定率法のどちらかが一般的である |
---|---|
減価償却資産 | 減価償却の対象となる資産のこと。車、建物、機械装置など |
耐用年数 | 減価償却資産を劣化なく使用できる年数のこと |
残存価額(残存薄価) | 減価償却資産の法定耐用年数が過ぎた後に残っている価値のこと |
帳簿価額 | 帳簿に記載された資産・負債の評価額のこと |
償却資産税 | 固定資産税のうち、償却資産に課される税金のこと |
償却方法における「定額法」は毎年同じ額の減価償却費を計上する計算方法、一方で「定率法」は資産の購入初期に多くの減価償却費を上げる方法です。定額法は計算方法が非常に明快であり、毎年一定であるため、資産を手に入れた年の利益が少ない場合におすすめといえます。
残存価額(残存薄価)に関しては税制の改正により、平成19年以降に取得した資産であれば残存価額を残さなくてもいいことになりました。
減価償却の対象になるもの
減価償却の対象になる資産は、具体的には有形資産では以下のようなものがあります。
- 建物
- 構築物
- 機械装置(パソコン、プリンターなど)
- 車両 など
無形資産でよく使う具体例は以下の通りです。
- ソフトウェア
- 特許権
- 商標権
- 意匠権 など
いずれも条件は「事業で継続して使用していること」「年月が経つにつれて劣化していくものであること」の2つです。無形資産のように形がなくても減価償却の対象になることは覚えておきましょう。
減価償却の対象にならないもの
減価償却の対象にならないものも存在します。以下のようなものがあります。
- 土地・借地権
- 電話加入権
- 書画・骨董
- 稼働休止中の資産 など
上記に挙げた例はどれも「年月が経っても劣化しない」ものであり、事業に直接関係のないものであることが前提です。土地や借地権は品質が落ちないものであるうえ、書画と骨董なども、一般的には劣化が原因で価値が落ちるものではありません。
減価償却はなぜ必要なのか
減価償却が必要である理由は「年月が経つにつれて性能が劣る高額資産は、毎年利益を出すためにしっかり分割してリスクを分散させる」ことにあります。
事業を営んでいて大きな赤字が出た場合、その年に高額な機械装置を購入していたとしたら、税額が膨大になり大きな問題になってしまいます。予想外かつ不利益な事態を防ぐために減価償却の制度が作られているのです。
個人事業主こそ使える「少額減価償却資産特例」とは
企業のように多くの従業員を抱えることのない個人事業主の場合、非常に高額な資産を買うことはそう多くないでしょう。少額減価償却資産特例という制度は30万円未満の特定資産に使うことができ、活用することによるメリットもあります。
30万円未満の固定資産に使える
少額減価償却資産特例は、取得価格が30万円未満の固定資産が対象です。 通常通りに減価償却を計上するのではなく、購入し、事業のために使用したその年に特例として計上できます。
少額減価償却資産として計上するには規定があります。対象資産の総計取得価格が300万円以下の場合に適用されます。
少額減価償却資産はその年にまとめて計上しますが、取得価格が20万円未満であれば、3年間で均等償却することも可能です。
特例を使う際のメリット
少額減価償却資産のメリットは、まとめて減価償却することによって、その年の損金計上額が大きくなることです。利益が少なくなり、節税につながるのです。
特例を使うときのポイントは、1年間の利益を目安にすることです。 利益が少ないのであればまとめて減価償却することは負担になってしまいます。予想以上に利益が得られる場合は、少額減価償却資産で処理したほうが節税効果が期待できます。
特例を使う際の注意点
特例を多額の資産で使用した場合は注意が必要です。未償却残高が合計150万円以上で税率1.4%の償却資産税がかかってしまうため、自分で塩梅を決める必要があるといえます。
パソコンや周辺機器などを多数購入した場合は気を付けておくべきポイントです。
青色申告における減価償却の書き方3ステップ
1. 取得金額を把握する
減価償却の対象となる資産の取得金額(いくらで購入したか)を把握します。パソコンの購入代が40万円とすると、帳簿には「備品 40万円」(借方)「現金 40万円」(貸方)と仕訳します。 この場合の取得価格は40万円ということになります。
2. 耐用年数を把握する
次に物の予測寿命の耐用年数を把握します。 通常、減価償却に使う耐用年数は、法人税法によって定められたものを使用します。
法律に関する耐用年数の詳細は国税庁などのサイトで確認できます。 該当する固定資産が法的耐用年数に記載されていないという場合は、所轄の税務署に問い合わせることが賢明です。
3. 特例を受けるための書類を準備して記入する
個人事業主が少額減価償却資産の特例を受ける場合に準備することは特にありません。 青色申告決算書に必要事項を記載し、必要な書類を添付するだけです。
ただし、記入前に次のことを明確にしておくといいでしょう。
- 少額減価償却資産の対象になる取得価格の合計
- 対象資産の取得価格の明細書を保管していること
- 「租税特別措置法第二十八条の二」を適用すること
青色申告で減価償却をする際の計算方法シミュレーション
青色申告で減価償却をする際のシミュレーションを紹介します。24万円で購入したパソコンを少額減価償却資産として処理することを例にしましょう。
パソコンの取得価額は24万円と「30万円未満」であるため、 少額減価償却資産の特例として計上できることが確認できます。
パソコンの耐用年数は法的に4年と決められています。 通常の減価償却で計上すると、単純計算をして年間6万円を経費として計上します。しかし、特例を利用する場合は、24万円がそのまま経費として計上されます。 収入が100万円の場合は、100万−24万円=76万円が利益、つまり課税対象となります。
1年間で24万円のパソコンを10回購入した場合は、24万円×10回=240万円となり、特例として計上するという選択肢があるのです。
少額減価償却資産特例で申告する際の注意点
- 特例を利用できる対象者が限られている
- 対象となる資産の定義は柔軟、「30万円未満」は消費税に気をつける
- 少額減価償却資産特例の対象になるのは年間300万円まで
特例を利用できる対象者が限られている
少額減価償却資産特例の対象者は「個人事業主」または「中小企業者」です。 「中小企業者」とは、資本金1億円以下、常時雇用の従業員が1,000人以下の法人と規定されています。 それ以外の法人は対象外となるため、事前によく確認しておきましょう。
対象となる資産の定義は柔軟、「30万円未満」は消費税に気をつける
少額減価償却資産特例の対象となるのは、「取得価格が10万円以上30万円未満」と規定されており、特定のものに限定していません。 帳簿上「備品」であっても「車両」であっても、条件を満たせば特例対象の資産となり、中古品も対象です。
ここでいう「30万円未満」とは、消費税を税抜きで処理しているのか、税込みで処理しているかによって金額が変わります。税抜で処理しているなら30万円未満は税抜になり、税込処理の場合は税込価格となります。
少額減価償却資産特例の対象になるのは年間300万円まで
少額減価償却資産特例は年間300万円までと制限されています。 24万円のパソコンを、一年間で20台購入したとします。合計の取得価格は480万円となり、限度を超えてしまいます。
パソコン代すべてを通常の減価償却として処理することも可能ですが、12台まで(288万円)を少額減価償却資産特例として計上することも可能です。 残りのパソコン代は法定耐用年数の4年間で減価償却していきます。
まとめ 状況を確認して上手に青色申告を進めましょう
青色申告する際の減価償却、特に少額減価償却資産特例を中心に説明しました。 少額減価償却資産特例を計上方法に入れると、選択肢が広がります。
1年にまとめて経費として計上するにはメリットとデメリットがあるため、状況と照らし合わせて利用することがポイントです。 制度を上手に利用して、青色申告を進めていきましょう。
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埼玉県出身 早稲田大学理工学部卒業。現三菱UFJ銀行入行後、(株)KPMG FAS、現ペンデル税理士法人を経て、平成18年 小林伸也税理士事務所開業。平成19年 東京税理士会 四谷支部役員(研修委員)就任、平成28年 経営革新支援機関認定、令和元年 東京税理士会 新宿支部地区委員就任。新宿で中小企業・個人事業主中心に資金調達・経営相談・税務相談をメインに支援し創業17年目。
ただし少額減価償却資産の特例も含めた適切な決算対策を行うには、月々の会計処理を迅速に行い、月次決算数値を早めに確定させていきませんと、どの程度利益が出るかが全くわからず、少額減価償却資産の特例を活用した減価償却資産の購入をすべきか否か判断できず活用できないということになってしまいますのでご注意下さい。
通常、個人事業の方であれば決算対策は10月〜11月に行いますので、9月分までの月次決算が10月下旬〜11月上旬までに確定頂ければ適切な決算対策を行えるのではないでしょうか。
なお30万円未満の少額減価償却資産購入による多額が節税をお考えの場合、1月1日時点において、課税標準額が150万円を超える償却資産を所有していると償却資産税が課税されることを考慮頂きご検討されることをお勧め致します。
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