個人事業主はスーツ代を経費計上できる?ポイントや計上できないケースも紹介

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2024年09月19日
個人事業主はスーツ代を経費計上できる?ポイントや計上できないケースも紹介
この記事で解決できるお悩み
  • 個人事業主がスーツ代を経費計上できるケースとは?
  • 個人事業主がスーツ代を経費計上できないケースとは?
  • 経費計上のために把握しておくべきポイントとは?

スーツはプライベートでも着用する可能性があるため、経費としての計上が非常に難しい費用です。経費として計上するには、どのような点に注意すべきでしょうか。

本記事では、個人事業主がスーツ代を経費計上できるケースとできないケースを紹介します。最後まで読めば、経費計上のために把握すべきポイントも理解できます。

個人事業主になったばかりの方、節税対策にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

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スーツ代を経費として計上できるケース【個人事業主編】

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他の費用と比べ、スーツ代は経費計上に向けたハードルが高いです。過去の判例ではスーツ代を家事関連費とみなし、経費計上が認められない判例もありました。以下に該当する場合のみ、経費計上が認められる可能性が高まります。

  • 営業や税理士など仕事柄スーツの着用が義務付けられている
  • システムやアプリ開発などで取引先に常駐し、スーツ着用が義務付けられている
  • 重要顧客や大事な商談のためにスーツを事前に用意している
  • セミナーや講演会用にスーツを事前に用意している
  • 職場でスーツ着用を義務化している

経費計上可否の判断基準は、スーツ代が事業運営に必要な支出と説明できるかどうかです。家事関連費を経費計上する場合、事業用とプライベートの支出を明確にしなければなりません。

確定申告で税務署の担当者から質問された際「業務上スーツの着用が欠かせない」「仕事以外でスーツは着用しない」など、論理的な回答を用意しておきましょう。

スーツ代を経費として計上できないケース【個人事業主編】

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以下のケースに該当する場合、スーツ代の経費計上は認められません。

  • 業務中にジャケットとチノパンで働いている
  • プライベートでも頻繁にスーツを着用している
  • 業務上必ずしもスーツの着用が必要と論理的な説明ができない

経費として認められるには「スーツ代が事業運営に必要な支出」との根拠を明確に示す必要があります。

個人事業主のなかには「洋服よりスーツの方が仕事に集中できる」という方もいるでしょう。しかし、上記は個人的趣向にもとづく主張であり、論理的な主張とは認められません。

「スーツ代が事業に必要な経費」と客観的な視点に基づいた主張ができない場合、経費に含めるのを避けましょう。場合によっては脱税を疑われ、過少申告加算税や重加算税が課せられます。

過少申告加算税と重加算税について

過少申告加算税は申告および納付金額が、本来の税額より少なかった場合に課せられる追徴課税です。税率は10%ですが、納税額が50万円を超える場合は15%に該当する額を加算しなければなりません。

一方、重加算税は本来納めるべき税金の隠蔽が発覚した際に課せられる追徴課税です。納付金額の35〜40%の額が加算されます。

会社員は基本的にスーツ代を経費として計上できない

会社員がスーツ代の経費計上を認められない理由は2つあります。1つめは年末調整の際、スーツ代を含めた必要経費が給与所得控除に含まれている点です。

給与所得控除とは正社員やアルバイトなど、給与所得者が受けられる制度で、年間所得から一定の必要経費が控除されます。所得額によって控除額が変動するため、以下の表を参考にして給与所得控除額を算出してみましょう。

  給与所得控除額
162万5,000円まで 55万円
162万5,000円超〜180万円まで 収入金額×40%-10万円
180万超〜360万円まで 収入金額×30%+80,000円
360万円超〜660万円まで 収入金額×20%+44万円
660万超〜850万円まで 収入金額×10%+1,100,000円
850万超 195万円

参照:国税庁

2つめは会計処理での問題です。個人事業主と異なり、従業員のスーツ代が事業運営に必要不可欠と認められる可能性はほとんどありません。営業職や保険外交員として働く従業員がスーツ代を企業側に請求しても、認められる可能性は低いでしょう。

スーツ代を経費として計上するために把握すべき6つのポイント

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スーツ代が経費として認められるよう、以下6つのポイントを把握しましょう。

  1. すべての費用を経費として計上できない
  2. 高額なスーツの購入を控える
  3. 客観的な証拠をそろえておく
  4. 革靴やクリーニング代も経費として計上できる
  5. クラウド型会計ソフトを導入する
  6. 税理士への相談を検討する

ポイントの内容を1つひとつみていきます。

ポイント1. すべての費用を経費として計上できない

スーツはプライベートで使用する可能性があるため、仮に経費計上が認められても購入価格すべてを経費として処理できません。

仕事でしか着用しないスーツを購入した場合でも、仕訳の際に取得価格を経費と自己負担費用に割り振る必要があります。スーツを経費計上する際の仕訳例を以下の表にまとめました。

  借方 貸方 摘要
日付 ・消耗品費:120,000円
・事業主貸:30,000円
現金:150,000円 スーツ購入費

上記の仕訳は15万円のスーツを購入した場合に12万円を経費として計上し、残り3万円を自己負担として記帳しています。

スーツを経費計上する際は、使用頻度にもとづいて費用を算出しましょう。週5日スーツを着用している場合、取得価格×4/5までを経費として計上できます。

ポイント2. 高額なスーツの購入を控える

前提として経費に計上可能なスーツの購入額が制限されているわけではありません。確定申告の際は「顧客に好印象を与えるため」「事業をスムーズに進めるため」など、事業で必要な理由を明確に伝える姿勢が重要です。

税務署の担当者からの質問に明確な答えを示せると、高額なスーツを購入しても経費計上が認められる確率は高まるでしょう。

しかし、税務署の担当者から理解を得るのは簡単ではありません。上記の理由を述べても「事業運営に高額なスーツの着用は必ずしも必要ない」と思われた場合、経費計上は認められません。

「事業で必要な経費」との印象を残すためにも、スーツの購入価格は20万円を1つの目安に設定しましょう。

ポイント3. 客観的な証拠をそろえておく

購入したスーツを業務の際に着用している事実を示すため、客観的な証拠を普段から準備しておくことも重要です。講師や営業など、業務内容だけではスーツの着用が勤務上必ずしも必要とは認められない可能性があります。

「事業用スーツを着ている様子を毎日撮影する」「毎日の服装をメモしておく」など、明確な証拠を残しておきましょう。事業用オフィスを借りている場合、オフィス内に事業用スーツを保管しておくのも1つの手段です。

ポイント4. 革靴やクリーニング代も経費として計上できる

事業用の革靴も経費として計上できます。帳簿に記帳する際は事業で必要な支出と印象付けるため、スーツ代と同様に取得価格を経費と自己負担費用に割り振りましょう。

事業でしか使用しない作業服や制服、着ぐるみなども経費の対象となります。スーツや作業服のクリーニング代も「雑費」として計上可能です。

事業用スーツとプライベートの洋服を同時にクリーニングへ出している場合、費用の割り振りが必要です。

散髪代に関しては顧客の結婚式やパーティーへの出席など、事業との関連性を見出せる場面以外、経費計上は認められません。

ポイント5. クラウド型会計ソフトを導入する

普段の帳簿付けの負担を減らすためにも、クラウド型会計ソフトを導入しましょう。日付や金額、勘定科目を選択するだけで、複式簿記での帳簿付けが完了します。簿記の知識や特別なスキルは必要ありません。

新たにスーツを購入した場合も、必要な作業はスマートフォンで撮影した領収書をアップロードするだけです。取引データの取り込みと仕訳はAIがおこないます。画面内容に沿って必要な情報を入力していくと、確定申告書や決算書の作成も可能です。

導入の際に生じる手間も少なく、ソフトを導入する際にサーバーやネットワーク機器の購入は必要ありません。月額料金も数千円台に設定されているケースが多く、十分導入を検討できるでしょう。

ポイント6. 税理士への相談を検討する

スーツ代の経費計上を含めて節税対策に悩んでいる場合、税理士に相談するのも有効な手段です。経営セーフティ共済の利用やiDeCoへの加入、法人化など、現状に合った節税方法を提案してもらえます。

記帳代行や書類作成代行サービスを利用すると、自身で作業をおこなう必要もありません。資金繰りに悩んでいる場合は補助金の活用や金融機関からの融資など、資金調達の方法に関しても相談できます。

スーツ代の経費計上はハードルが高く、税理士に相談して問題が解決する保証はありません。税理士によって得意分野も異なるため、依頼したい業務内容を明確化しておくことが重要です。

まとめ

今回の記事では以下の3点について述べてきました。

  • 個人事業主がスーツ代を経費計上できるケース
  • 個人事業主がスーツ代を経費計上できないケース
  • 経費計上のために把握しておくべきポイント

個人事業主が節税対策のためにスーツ代を経費として計上するには、客観的な証拠をそろえておくことが重要です。毎日の服装や事業用スーツを撮影しておくと、スーツ代が事業に必要な経費を証明する証拠として活用できます。

新たにスーツを購入した際、複式簿記での帳簿付けや領収書の保管も必要となります。業務負担軽減と正確な記帳を両立するには、税理士に相談するのがおすすめです。

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監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

スーツ代や美容院代といえば、メディアへの露出が多い芸能人やタレントのような方々を思い浮かべてしまいます。この方々は、煌びやかな衣装に身を包み、我々から見た場合、浮世離れしている印象さえあります。この点が経費化の基準になると考えています。

野暮ったい地味な服装ではオーラがないように見えてしまいます。逆に言えば、無難な普段でも着れるような衣装は経費化が難しいことになると思います。

このことは、ホステスさんの衣装も同様に考えていいと思います。また、ヘアスタイルもばっちりセットしなければなりませんので、経費化のハードルは低いように思います。

裏返せば、一般人の生活に近い衣装代は、日常にみんなが着ている衣類そのものに他なりませんので経費化のハードルは高くなってしまいます。

よって、ご自身で、ここまでが日用品でここからが衣装であるという基準を作って、その割合で経費否認を行うことで、積極的に主張していくのがよろしいかと思います。

更に、衣装が収益にこれだけ貢献しているということが言えれば、より好ましいでしょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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