医療費や入院代金は経費計上できる?医療費関連の仕訳方法や勘定科目を解説
- 医療費は経費にできる?
- 法人と個人事業主で医療費の経費計上に違いはある?
- 医療費控除の対象になるものは?
「業務上発生した医療費は経費計上できる?」とお悩みの経理担当者や個人事業主の方、必見です。法人も個人事業主も原則として医療費を経費計上できません。会社の事業との関係性がないと考えられるためです。
この記事では、例外的に医療費を経費計上できる条件や医療費控除について解説します。読み終わる頃には、医療費・病院代を経費計上する方法や医療費の仕組みの知識が身につくでしょう。
具体的な勘定科目も解説するため、ぜひ参考にしてください。
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業務に関連する医療費は経費にできる
法人・個人事業主ともに、従業員が受ける医療費や予防接種費用は、経費計上できます。個人事業主自身の医療費は、経費計上できません。
従業員個人が業務と関係ない医療費の控除を受けるためには、自身で確定申告をする必要があります。
医療費を経費として計上できる3つのケース
例外的に医療費を経費として計上できるケースは次のとおりです。
- 従業員が業務上にケガをした場合の診療費
- 予防接種の費用
- マスクや消毒液の購入費
1. 従業員が業務上にケガをした場合の診療費
従業員が業務中や通勤中にケガをした場合、診療費は会社の経費として計上できます。通常、業務上のケガに対する医療費の支払いは「労働者災害補償保険」が適用されます。
会社が支出した医療費は後で還付を受けられますが、経費として認められるためには、業務や通勤中に起きたケガである証明が必要です。会社が「労働者災害補償保険」に加入していない場合は適用されません。
2. 予防接種の費用
インフルエンザや風しんなどの予防接種の費用は、以下の条件をすべてクリアすれば経費計上できます。
- 業務遂行するうえで必要である
- すべての従業員が予防接種を平等に受けられる
- 予防目的である
本来、予防接種は本人の意思にもとづくため、会社が従業員に対して強制することはできません。例外として、業務上のリスクを軽減するため、特定の業種や環境下では、予防接種の必要性が認められます。
たとえば、医療機器販売業者は感染リスクの高い病院を頻繁に訪れる必要があります。予防接種を受けてリスクを軽減する必要性が高いため、経費計上が可能です。
3. マスクや消毒液の購入費
マスクや消毒液の購入費は経費として認められます。会社が感染症予防のためにマスクや消毒液など消耗品を購入し、従業員に支給することは業務遂行に関連した費用です。
たとえば、感染症拡大の際に、マスクや石けん、消毒液などの必需品を会社が購入し、従業員に提供した場合必要経費として認識されるでしょう。企業が従業員の健康状態を保つため、健康診断や予防接種、ストレス管理プログラムなどの医療支援を提供する場合も経費計上が可能です。
医療費を経費計上する際の勘定科目
医療費を経費計上する際の勘定科目は次のとおりです。
- 会社が提供し従業員が受けた健康診断の費用は「福利厚生費」
- 従業員の医療費を立て替えた場合は「立替費」
- 医療費を給与として支払った場合「給与手当」
- 事業用資金から一時的に医療費を支払う場合は「役員貸付金」
1. 会社が提供し従業員が受けた健康診断の費用は「福利厚生費」
会社が提供し従業員が受けた健康診断の費用は「福利厚生費」として経費計上が可能です。従業員の健康診断や人間ドックにかかる費用は、労働安全衛生法の要件を満たすためです。
厚生労働省の労働安全衛生法第66条により、会社は従業員の健康診断を義務付けられています。健康診断や予防接種などは、従業員の一般的な福利厚生費として会社の負担とされます。
健康診断や人間ドックの費用が経費として認められるためには、従業員全員に提供されることが条件です。受診対象者は全員平等でなければなりません。
参照:厚生労働省
2. 従業員の医療費を立て替えた場合は「立替費」
従業員の医療費を立て替えた場合は「立替費」として経費計上が可能です。従業員の業務中や通勤中に災害が起こり医療費がかかった場合、事業所が従業員の医療費を先払いすることがあります。「労働者災害補償保険」の返金が即座に行われるわけではないため、会社が医療費を立て替える必要があります。
会社が支出した医療費は「労働者災害補償保険」適用となり、後に還付を受けることが可能です。一時的に「立替金」勘定で処理し、後に返金があった際に振り替えて仕訳を実施しましょう。
3. 医療費を給与として支払った場合「給与手当」
従業員の医療費を支払う際、会社が立て替えた場合は「給与手当」として処理が可能です。従業員が支払った医療費が少額な場合「労働者災害補償保険」を申請せずに、事業所が負担する場合があります。
たとえば、従業員の医療費を1万円で会社が負担した場合、会社にとっては経費となりますが、従業員には所得に加算され、税金が増加することになります。医療費が経費として認められるためには、会社が直接医療機関に支払うことが必要です。
4. 事業用資金から一時的に医療費を支払う場合は「役員貸付金」
役員が事業用資金から一時的に医療費を支払う場合は「役員貸付金」として経理処理します。「役員貸付金」とは、会社から役員に貸し付けるお金のことです。
たとえば、業務中の事故による医療費の支払いが必要な場合、役員や事業主は「労働者災害補償保険」の適用を受けられず、費用を自己負担する必要があります。
自己負担が困難な場合は、事業資金から一時的に支払う「役員貸付金」を勘定科目として使用します。
医療費を経費として計上できないケース
医療費を経費として計上できないケースは以下のとおりです。
- 個人事業主本人の医療費
- 業務中のケガの治療費
1. 個人事業主本人の医療費
個人事業主本人の医療費は、業務中のケガや予防接種、健康診断を含め、経費にできません。一般的な事業運営において、医療費は個人的な支出と見なされるためです。
2. 業務中のケガの治療費
業務中に発生したケガ治療費が経費計上できないケースは下記のとおりです。
- 個人事業主の治療費(個人)
- 青色事業専従者の治療費(個人)
- 労働者災害補償保険適用外のケガの治療費
医療費は条件次第で医療費控除を受けられる
医療費は原則、経費に含まれないものの、条件を満たす場合は医療費控除を受けることが可能です。医療費控除は、1年間に支払った自身や家族の医療費の一部を所得から差し引き、所得税および住民税を軽減するための仕組みです。
医療費控除を受けるためには、1年間にかかった医療費の合計が10万円以上、総所得金額の5%のいずれか低い金額が条件になります。健康診断や予防接種などの費用は控除の対象外になるため、注意が必要です。
医療費控除の対象となるもの
医療費控除の対象となる費用は次のとおりです。
- 医師や歯科医師など病院へ支払った治療費、処方薬代
- 治療のために購入した市販薬の代金
- 食費を含む入院費(医師や看護師に対するお礼は対象外)
- 妊娠中の定期検診・検査費
- 不妊治療費
- 治療に必要な器具(松葉杖やコルセットなど)の購入費
- 通院のための公共交通機関の交通費(自家用車のガソリン代、タクシー代は対象外)
- 歯科矯正費(審美を目的として行う場合は対象外)
- 鍼灸・柔道整復師などによる治療のための施術費
- 介護保険を利用した居宅介護サービス事業者から提供を受ける居宅サービス
- 薬局・ドラッグストアで購入した治療薬
医療費控除の対象になる費用は、診療や治療、療養にかかった費用が含まれます。医療機関に支払った費用は一般的に医療費控除の対象です。
参照:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
医療費控除の対象にならないもの
医療費控除の対象にならない費用は、治療行為にあたらない費用です。医療費控除の対象とならない費用は次のとおりです。
- ビタミン剤をはじめとするサプリメント代
- リラクゼーション目的のマッサージ代
- 医師や看護師に対するお礼購入費用
- 異常が見つからなかった場合の人間ドックや健康診断の費用
- 美容整形の費用
- 入院時の自己都合による差額ベッド代
- メガネやコンタクトレンズの購入費用と診察費用
健康診断や人間ドック、予防接種の場合、異常が見つかって治療を行う場合は医療費控除の対象です。病気の治療や療養が目的の費用であった場合、一般的な支出水準を超えている場合は、控除対象にならない可能性があります。
医療費控除において目的により取り扱いが異なるもの
医療費控除は目的により取り扱いが異なる項目は次のとおりです。
- 妊娠・出産費用
- 入院費用
- 歯の治療
- 交通費
- 新型コロナウイルスの検査費用
1. 妊娠・出産費用
妊娠や出産に関連した費用は、目的によって医療費控除の取り扱いが異なります。
医療費控除になる | ・妊娠検査費用 ・不妊治療や人工授精の費用 ・定期的な健診費用 ・入院時の食費 ・公共交通機関を利用した通院費 |
---|---|
医療費控除にならない | ・実家で出産するための交通費 ・入院時に身の回りの品を購入した費用 ・病室への出前や外食の費用 |
2. 入院費用
入院にかかった費用の場合、医療費控除から一部除外される費用があります。
医療費控除になる | 基本的な入院費 |
---|---|
医療費控除にならない | ・入院の際のパジャマや衛生用具など身の回りの費用 ・入院中のテレビや冷蔵庫の使用料 ・入院の際に病院の食事以外で購入した食品代 ・付添人のベッド代や食事代 ・お見舞いに来た人の交通費および駐車場代 ・入退院時に自家用車を使用した際の交通費やガソリン代 ・個室を希望した際の差額ベッド代 |
入院中の費用がすべて控除できるわけではなく、目的や状況によって医療費控除の対象が変わります。
3. 歯の治療
歯の治療に関連する費用も医療費控除になるものとならないものがあります。
医療費控除になる | ・インプラント治療 ・セラミック治療費 ・通院費やローンで支払った料金 |
---|---|
医療費控除にならない | ・審美目的の歯列矯正 ・自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代 ・歯科ローンを組んだときに発生する手数料 ・一般的に支出される水準を超えた費用 |
歯科治療に関する費用は、治療の目的によって医療費控除になるかが決まります。歯科ローンの返済は、返済した年ではなく立替払いがあった年が対象です。
4. 交通費
通院に伴う交通費で医療費控除になるものとならないものは以下のとおりです。
医療費控除になる | ・公共交通機関の運賃 ・特定の状況下でのタクシー代 ・付添人の交通費 |
---|---|
医療費控除にならない | 自家用車でのガソリン代や駐車場代 |
交通費が医療費控除されるためには、公共の交通機関を使用する必要がありますが、特定の状況下では医療費控除が適用されます。
たとえば、夜間や出産時など公共交通機関が利用できない場合に利用したタクシー代は控除可能です。患者が1人で通院することが危険な場合、付添人の交通費は医療費控除の対象です。
5. 新型コロナウイルスの検査費用
新型コロナウイルス関連の検査費用は、医療費控除が可能な場合と除外される場合があります。
医療費控除になる | ・医師の指示によるPCR検査 ・新型コロナウイルスの治療費 |
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医療費控除にならない | ・自己判断によるPCR検査 ・マスクの購入費用 |
感染していないことを明らかにする目的で受けるPCR検査や、自己判断によるPCR検査などは医療費控除の対象となりません。PCR検査の結果「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合の検査費用は、医療費控除の対象です。
参照:国税庁
まとめ
原則的に、医療費を経費として計上することはできません。従業員を雇用する法人・個人事業主の場合、例外的に経費計上できる医療費があり「福利厚生費」として経費計上できます。従業員全員が対象となっていることが条件です。
経費に認められない医療費は、条件を満たすことで医療費控除を受けることが可能です。医療費を経費計上する際や、医療費控除の対象に不安がある場合は専門家へ依頼することをおすすめします。
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特に問題となりやすいのは役員しか健康診断を受ける機会が無いケースです。このケースですと公平性を欠くため経費とすることができません。健康診断の費用は役員への経済的利益となり給与として取り扱います。役員報酬は毎月同額を支給したものを損金として取り扱うことを原則としています。そのため健康診断の費用は法人において経費にならず、役員においては給与課税されることとなり、二重に税負担が生じることとなります。
医療費については、医療費控除とセルフメディケーション税制のいずれかの選択適用となります。対象となる支出は医療費控除の方が広範囲です。病院での治療費はもちろんですが市販の風邪薬なども含まれます。それに対しセルフメディケーション税制はスイッチOTC医薬品等の購入費用を対象としています。
適用を受けることができる金額は医療費については自己負担額から10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を控除した金額、セルフメディケーション税制については支払い合計額から1万2千円を控除した金額となります。それぞれの控除額をシミュレーションして有利な方を選択しましょう。
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