農業経営者が利用できる助成金・補助金9選|新規農業で必要な資金や助成金を受け取るメリット3つを紹介

マネーライフワークス
監修者
最終更新日:2025年02月27日
農業経営者が利用できる助成金・補助金9選|新規農業で必要な資金や助成金を受け取るメリット3つを紹介
この記事で解決できるお悩み
  • 新規で農業を始める際に必要な資金の目安は?
  • 農業経営者が利用できる助成金・補助金は?
  • 新規で農業を始める際に助成金・補助金を受け取るメリットは?

「新規で農業を始めたいが、何の助成金がおすすめかわからない…」という方必見!

この記事では、新規就農を考えている個人や法人に向けて、農業経営者が利用できる助成金・補助金を紹介。助成金・補助金を受け取るメリットも解説します。

農業助成金の専門家に相談することで、最適な助成金を見つけ、スムーズに申請し、資金を有効活用できます。新規で農業を始める際に必要な資金の目安も紹介しているので、農業関連の設備投資や事業拡大を検討している農業経営者もぜひ参考にしてください。

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新規で農業を始める際に必要な資金の目安は?

新規で農業を始める際に必要な資金は、農業の種類、規模、経営スタイルにより大きく異なります。一般的には、最低でも数百万円から、規模によっては数千万円以上の資金が必要になることがあります。

  • 農地の取得や借用費用
  • 農業機械や設備費用
  • 種苗や肥料、資材費
  • 施設や建物の建設費
  • 販売や物流コスト
  • 従業員の雇用

新規就農者向けの補助金や融資制度も活用しながら、リスクを抑えてスタートするのが賢明です。まずは小規模から始め、徐々に規模を拡大するのもいい戦略です。

農業経営者が利用できる助成金・補助金9選

農家

ここからは、農業経営者が利用できる助成金・補助金を9つ紹介します。

制度名 助成・補助額 対象者
1. 農業次世代人材投資資金 就農準備資金 月間12.5万円(年間150万円)を最長2年間 就農予定時に49歳以下の者
経営開始資金 月間12.5万円(年間150万円)を最長3年間 独立や自営就農時に49歳以下の者
2. 経営発展支援事業 上限1,000万円 49歳以下の認定新規就農者
3. 農地耕作条件改善事業 ・総事業費200万円以上
・補助率 2分の1
農業継続に必要な環境整備を行った就農者
4. 農産物等輸出拡大施設整備事業 ・5兆円規模
・補助率は事業費の2分の1
GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)会員
5. ものづくり補助金 750万〜1,250万円 中小企業・小規模企業者・小規模事業者
6. 雇用就農資金 ・年間60万〜120万円
・最長4年間
50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人
7. キャリアアップ助成金 最大100万円程度 正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主
8. トライアル雇用助成金 月額4万円×最長3カ月 トライアル雇用をした事業主
9. 業務改善助成金 50万円〜600万円 最低賃金引き上げと生産性向上につながる設備投資を行った事業主

上記の助成金・補助金は、要件や申請手続きがそれぞれ異なります。最新情報や詳細に関しては、各制度の公式HPや最寄りの農業関連機関に問い合わせましょう。

【新規就農者向け】農業の助成金・補助金2つ

ここでは、新規就農者向けの農業の助成金・補助金を2つ紹介します。

  • 農業次世代人材投資資金
  • 経営発展支援事業

1. 農業次世代人材投資資金

農業次世代人材投資資金は、次世代の新規就農者に対して補助する制度です。農業次世代人材投資資金は、新規就農者を支援するための制度で「就農準備資金」と「経営開始資金」の2種類があります。

就農準備資金 経営開始資金
概要 就農研修者への交付 新規就農者へ早期の経営確立
交付対象者 就農予定時に49歳以下の者 独立や自営就農時に49歳以下の者
交付金額 月間12.5万円(年間150万円)を最長2年間 月間12.5万円(年間150万円)を最長3年間

就農準備資金

就農準備資金は、将来的に独立・自営での就農を目指す人が研修を受ける際に支給される資金です。農業大学校や先進農家、農業法人などで研修を受ける際に、生活費として年間最大150万円が最長2年間支給されます。

主な交付要件は、以下のとおりです。

  • 独立や自営就農、雇用就農もしくは親元就農を目指すこと
  • 都道府県が認めた研修機関で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上研修を受けること
  • 常勤の雇用契約を締結していないこと
  • 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること
  • 研修中の怪我に備えて傷害保険に加入すること

独立や自営就農とは、就農後5年以内に認定新規就農者または認定農業者として認められることを指します。一方で、雇用就農や親元就農の場合、5年以内に経営の継承が必要です。

5年以内に経営を継承することが難しい場合は、独立や自営就農としての道を選ぶ必要があります。

就農準備資金は、以下の場合に返還になるため注意しましょう。

  • 研修終了後1年以内に49歳以下で就農しなかった場合
  • 就農後、交付期間の1.5倍(最低2年間)の期間、農業を継続しない場合 など

経営開始資金

経営開始資金は、独立・自営で就農する人を対象に、経営が軌道に乗るまでの間の生活費を支援する助成金です。年間最大150万円が最長3年間支給され、新規就農者が安定した経営を続けられるようサポートします。対象となるのは49歳以下で、独立・自営で農業を営む方です。

主な交付要件は、以下のとおりです。

  • 独立や自営就農する認定新規就農者であること
  • 経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること
  • 経営を継承する場合、経営発展に向けた取組を行い、新規参入者と同等の経営リスクを負っていると市町村長に認められること
  • 目標地図に位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けていること
  • 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること

経営開始資金は、以下の場合に交付停止になるため注意しましょう。

  • 原則、前年の世帯所得が600万円を超えた場合
  • 適切な経営を行っていない場合 など

交付期間終了後、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合は返還となるため注意しましょう。

2. 経営発展支援事業

経営発展支援事業は、新規就農者が経営を安定させ、発展させるための設備投資や経営資源の有効活用などを支援する補助金制度です。農業経営を始めたばかりの方が、生産性向上や経営基盤の強化を図るための機械・施設の導入を支援することを目的としています。

経営発展支援事業の概要は、以下のとおりです。

概要 1. 機械、施設等の修繕、移設、撤去などの経営資源の有効利用
法人化、専門家活用等の円滑な経営移譲に向けた取組
2. 機械や施設などの導入
対象者 49歳以下の認定新規就農者、認定農業者
補助率 1. 国:3分の1/都道府県または市町村:3分の1
2. 国:2分の1(上限)/都道府県支援分の2倍を国が支援
支援額 国費補助上限500万円(補助対象事業費上限1,000万円)

経営の発展を目的とした機械や施設の導入費用以外にも、条件を揃えることで経営移譲に向けた取り組みを支援します。

主な交付要件

経営発展支援事業の主な交付要件は、以下のとおりです。

  • 独立や自営就農する認定新規就農者であること
  • 経営開始5年目までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること
  • 親元就農者の場合は、継承する農業経営に従事してから5年以内に 継承し、継承する経営を発展させる計画(売上1割増)であること
  • 目標地図に位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けていること
  • 本人負担分について金融機関から融資を受けていること

本人負担分に関しては自己資金ではなく、金融機関からの融資を利用する必要があるため、事前に資金計画をしっかりと立てることが重要です。

【設備投資・規模拡大】農業の助成金・補助金3つ

剪定

ここでは、設備投資・規模拡大向けの農業の助成金・補助金を3つ紹介します。

  • 農地耕作条件改善事業
  • 農産物等輸出拡大施設整備事業
  • ものづくり補助金

3. 農地耕作条件改善事業

農地耕作条件改善事業は、農業の生産性向上を目的に、農地の利用効率を高めるための整備や改良を支援する助成金制度です。きめ細かな耕作条件改善への支援、高収益作物への転換に向けた支援などが対象となります。

農地耕作条件改善事業の概要は、以下のとおりです。

概要 ・きめ細かな耕作条件改善への支援
・高収益作物への転換に向けた支援
・スマート農業導入への支援
・「田んぼダム」の取組支援
・病害虫対策への支援
補助率 2分の1・定額など
実施区域 農振農用地のうち地域計画の策定区域

農地耕作条件改善事業の事業の内容は、以下のとおりです。各内容は、組みあわせられます。

  1. 農地集積促進:担い手への集積に向けたきめ細かな耕作条件の改善を支援
  2. 高収益作物転換:高収益作物への転換に必要な取組を支援
  3. スマート農業導入:基盤整備と一体的に行うGNSS基地局の設置を支援
  4. 病害虫対策:病害虫の発生予防・まん延防止に必要な基盤整備等を支援
  5. 水田貯留機能向上:「田んぼダム」の実施に必要な基盤整備等を支援
  6. 土地利用調整:ゾーニングに必要な交換分合や基盤整備を支援

4. 農産物等輸出拡大施設整備事業

農産物等輸出拡大施設準備事業は、日本の農産物の海外輸出を促進するために、輸出向けの施設整備を支援する補助金制度です。輸出対応型施設の整備や、輸出促進につながる卸売市場の整備の支援が受けられます。

農産物等輸出拡大施設準備事業の概要は、以下のとおりです。

主な内容 ・輸出対応型施設の整備
・輸出促進につながる卸売市場の整備
対象者 都道府県、市町村、農業協同組合、農事組合法人、農地所有適格法人など
補助率 事業費の2分の1以内

政府は2030年までに、農林水産物・食品の輸出額を5兆円に拡大することを目標に掲げています。「強い農林水産業」の構築を推進し、さらなる輸出拡大を図るため、必要な環境整備を支援する制度を設けています。

5. ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業が生産性向上や業務効率化のために新しい技術や設備を導入する際に活用できる補助金です。農業分野でも、スマート農業技術の導入や生産工程の自動化に利用できます。

ものづくり補助金の概要は、以下のとおりです。

対象者 中小企業・小規模企業者・小規模事業者
補助率 中小企業2分の1、小規模・再生3分の2
補助上限額 750万円~2,500万円
補助対象経費 ・機械装置やシステム構築費(必須)
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・原材料費
・外注費
・知的財産権等関連経費

ものづくり補助金には、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠など、複数の利用枠が用意されています。農業分野では、製品・サービス高付加価値化枠の「通常類型」に該当します。

【人材獲得・人材育成】農業の助成金・補助金4つ

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ここでは、人材獲得・人材育成向けの農業の助成金・補助金を4つ紹介します。

  • 雇用就農資金
  • キャリアアップ助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 業務改善助成金

6. 雇用就農資金

雇用就農資金は、農業法人などが新たに農業従事者を雇用する際に支給される助成金です。新規就農者の安定した雇用を促進し、農業分野での人材確保を支援する目的で設けられています。

雇用就農資金の事業タイプは3つあり、各概要や助成金額は以下のとおりです。

雇用就農者育成・独立支援タイプ 新法人設立支援タイプ 次世代経営者育成タイプ
概要 農業法人が就農希望者を新たに雇用し、農業就業、または独立就農に必要な研修を実施する場合に資金を交付 農業法人が、新たな農業法人を設立して独立就農することを目指す就農希望者を一定期間雇用し、独立就農に必要な研修を実施する場合に資金を交付 農業法人等が職員を次世代経営者として育成するために異業種の法人・先進的な農業法人へ派遣して実施する研修にかかる経費を助成
対象者 50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人 新たに農業法人を設立して50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人 派遣職員は55歳未満の農業法人ですでに就農し経営に参画している者
助成・補助金額 年間最大60万円(最長4年間) 年間最大120万円(最長4年間)、3年目以降は年間最大60万円 月額最大10万円(最短3カ月~最長2年間)

雇用就農資金は、新規就農者の増加分が支援対象となります。新規就農者が障がい者・生活困窮者・刑務所出所者などの場合は、年間最大15万円が加算されます。

雇用就農者育成・独立支援タイプ

農業法人が法人等雇用就農者を雇用する場合、資金を交付してくれます。農業就業や独立就農に必要な技術や、経営ノウハウを習得させるための研修を実施する際も支援を受けられます。

助成額・年間最大60万円 (月額5万円)
・最長4年間
対象者・支援終了後も就農を継続又は独立する強い意欲を有する50歳未満(採用時点)の者であること
・支援開始時点で、採用されてから4カ月以上12カ月未満であること
・過去の農業就業期間が5年以内であること など

新法人設立支援タイプ

農業法人が、新たな農業法人を設立して独立就農することを目指す者を雇用して実践研修を実施する場合に資金が交付されます。

助成額・年間最大120万円 (月額10万円)
・3年目〜4年目は最大60万円(月額5万円)
・最長4年間
対象者・支援終了後も就農を継続又は独立する強い意欲を有する50歳未満(採用時点)の者であること
・支援開始時点で、採用されてから4カ月以上12カ月未満であること
・過去の農業就業期間が5年以内であること など

次世代経営者育成支援タイプ

農業法人が職員を次世代の経営者として育成するため、国内外の先進的な農業法人や異業種の法人に派遣して研修を行う場合に助成を受けられます。派遣に伴う代替職員の人件費や、研修にかかる費用も支援の対象となります。

助成額・年間最大120万円
・内訳:代替職員人件費や派遣研修経費をあわせて月額最大10万円)
対象者・派遣元農業法人の主な要件: 派遣研修生を研修終了後1年以内に役員等へ登用すること
・派遣研修生の主な要件: 原則55歳未満の者であること

7. キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化したり、スキルアップのための研修を実施したりする際に支給される助成金です。農業分野でも、パートやアルバイト従業員のキャリア形成を支援するために活用できます。

キャリアップ助成金のコース6つは、以下のとおりです。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

キャリアップ助成金は、各コースごとに要件や助成金額が異なります。対象となる事業主の要件5つは、以下のとおりです。

  1. 雇用保険適用事業所であること
  2. キャリアアップ管理者を置いていること
  3. 対象労働者のキャリアアップ計画を作成して管轄労働局長の認定を受けること
  4. 実施するコースの労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況を明確にできること
  5. キャリアアップ計画期間内に取り組むこと

以上の要件は各コース共通で、要件を満たす事業主はキャリアアップ助成金の申請が可能です。適用できるコースは複数申請できるため、該当するものはすべて申請しましょう。

正社員化コース

正社員化コースは、契約社員やパートタイム労働者を正社員へ転換した際に支給される助成金です。長く働いてもらうために、正社員登用を進める場合に活用できます。

支給額(1人あたり)は、以下のとおりです。

  • 有期から正規: 80万円(※60万円)
  • 無期から正規: 40万円(※30万円)

※は、以下重点対象者の場合の支給額(2期分の合計額)です。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • 雇入れから3年未満の有期雇用労働者であって、過去から不安定雇用が継続している者
  • 人開金の対象訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母 など

さらに、通常の正社員転換制度を新たに規定し転換した場合、1事業所あたり20万円(※15万円)の加算がされます。勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し転換した場合は、1事業所あたり40万円(※30万円)の加算です。

障害者正社員化コース

障害者正社員化コースは、障害を持つ非正規雇用労働者を正社員へ転換した際に支給される助成金です。農業法人や農場でも、障害者雇用の促進を目的として利用できます。

支給対象者 措置内容 支給総額 支給対象期間 各支給対象期における支給額
重度身体障害者 重度知的障害者 精神障害者 有期雇用から正規雇用 120万円
(90万円)
1年(1年) 60万円×2期
(45万円×2期)
有期雇用から無期雇用 60万円
(45万円)
30万円×2期
(22.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 60万円
(45万円)
30万円×2期
(22.5万円×2期)
重度以外の身体障害者 重度以外の知的障害者 発達障害者 難病患者 高次脳機能障害と診断された者 有期雇用から正規雇用 90万円
(67.5万円)
45万円×2期
(33.5万円※×2期)
※第2期の支給額は34万円
有期雇用から無期雇用 45万円
(33万円)
22.5万円×2期
(16.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 45万円
(33万円)
22.5万円×2期
(16.5万円×2期)

障害者正社員化コースは、支給対象者の身体状況や措置内容・企業規模により助成金額が異なるため注意しましょう。

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期労働者の基本給の賃金規定を3%以上増額改定して、規定を適用した場合に支給されます。給与体系を改善し、労働者の定着率向上が目的です。

賃金引き上げ率(3%以上4%未満) 賃金引き上げ率(4%以上5%未満) 賃金引き上げ率(5%以上6%未満) 賃金引き上げ率(6%以上)
中小企業 4万円 5万円 6万5,000円 7万円
大企業 2万6,000円 3万3,000円 4万3,000円 4万6,000円

職務評価の活用で、1事業所あたり中小企業は20万円、大企業は15万円が加算されます。昇給制度を新たに設けた場合は、1事業所あたり中小企業は20万円、大企業は15万円が加算されます。

賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースは、正社員と非正規雇用労働者の賃金制度を統一した場合に支給される助成金です。農業法人でも、正社員とパートタイム労働者の待遇を平等にすることを目的としています。助成額は、中小企業では60万円、大企業では45万円です。

賞与・退職金制度導入コース

賞与・退職金制度導入コースは、非正規雇用労働者にも賞与や退職金制度を導入した場合に支給される助成金です。農業法人でも、パートタイム労働者の待遇向上を目的として活用できます。

助成額は、以下のとおりです。

賞与もしくは退職金制度のいずれかを導入 賞与・退職金を同時に導入
中小企業 40万円 16万8,000円
大企業 30万円 12万6,000円

社会保険適用時処遇改善コース

社会保険適用時処遇改善コースは、短時間労働者を社会保険の被保険者として適用するための取り組みを行った事業者に対し、助成を行う制度です。以下2つの要件を満たす場合に対象となります。

  1. 新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となる際に賃金総額を増加させる取り組みを行った場合
  2. 週の所定労働時間を4時間以上延長の処置を実施し、当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たして被保険者となる場合

1の要件を満たした場合の支給額は、以下のとおりです。

企業規模 1年目の取り組み 2年目の取り組み 3年目の取り組み
中小企業 40万円(10万円×4期) 10万円
大企業 30万円(7.5万円×4期) 7.5万円

1年目・2年目は、労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額の15%以上)を手当として支給するか、賃金の引き上げを行う必要があります。3年目の取り組みでは、基本給を18%以上増額する必要があり、賃上げまたは労働時間の延長による増額が条件となります。

2の要件を満たした場合の支給額は、以下のとおりです。

延長時間 4時間以上 3時間以上4時間未満 2時間以上3時間未満 1時間以上2時間未満
賃金引上げ率 - 5%以上 10%以上 15%以上
中小企業 30万円
大企業 22.5万円

週の所定労働時間を4時間以上延長した場合は無条件で適用されますが、4時間未満の延長では、所定の賃金引上げ率を満たすことが条件となります。短時間労働者が1年目に要件1、2年目に要件2を満たした場合も助成対象となり、最大50万円が支給されます。

8. トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、ハローワークから紹介される労働者をトライアル雇用した場合に助成される制度です。職業経験不足や障がいなどにより就職が困難な労働者を、3カ月間試行雇用できます。

トライアル雇用助成金は、一般トライアルコースと障がい者トライアルコースの2つがあります。

一般トライアルコース

一般トライアルコースは、職業経験が不足している求職者や、長期間離職している人を試験的に雇用する際に支給される助成金です。

1カ月あたりの就労日数の割合で支給額が異なりますが、月額4万円×最長3カ月が支給されます。具体的な計算式は、以下のとおりです。

計算式

対象者が1カ月に就労した日数÷対象者が当該1カ月間に就労を予定していた日数=A

計算した割合をAとした場合の支給額は、以下のとおりです。

一般トライアルコース 一般トライアルコース(母子家庭の母・父子家庭の父)
A:75%以上 4万円 5万円
A:50%以上75%未満 3万円 3万7,500円
A:25%以上50%未満 2万円 2万5,000円
A:0%超25%未満 1万円 1万2,500円
A:0% 0円 0円

就労日数の割合が75%を満たすことで、助成金の満額が支給されます。トライアル雇用を積極的に行うことで、人材獲得に必要な経費を軽減できます。

障がい者トライアルコース

障がい者トライアルコースは、障がいを持つ求職者を試験的に雇用し、安定的な雇用につなげるための助成金制度です。支給額は「(月額8万円×最長3カ月)+(月額4万円×最長3カ月)」です。支給額の計算方法は、一般トライアルコースと同じ計算式を使用します。

計算した割合をAとした場合の支給額は、以下のとおりです。

障がい者トライアルコース(短時間コース含む) 障がい者トライアルコース(精神障がい者の雇い入れから3カ月間の場合)
A:75%以上 4万円 8万円
A:50%以上75%未満 3万円 6万円
A:25%以上50%未満 2万円 4万円
A:0%超25%未満 1万円 2万円
A:0% 0円 0円

長時間労働が難しい精神障がい者や発達障がい者を雇用する場合は「障がい者短時間トライアル雇用」を利用できます。助成金は、1人あたり月額上限4万円、最長12カ月分が支給されます。

障がい者トライアルコースの対象となる求職者は、以下のとおりです。

  • 身体障がいや知的障がい、精神障がいを持つ人
  • 紹介日前日から過去2年以内に2回以上転職や離職をしている
  • 紹介日前日時点で離職期間が6カ月を超える
  • 就労経験のない職業に就くことを希望している

9. 業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資を行った場合に助成する制度です。労働時間の短縮や作業環境の向上に資する設備投資に活用できます。

業務改善助成金の要件は、以下のとおりです。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇・賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

業務改善助成金の対象となる設備投資の事例は、以下のとおりです。

  • 機器や設備の導入:リフト付き特殊車両の導入による積込作業時間を短縮
  • 経営コンサルティング:作業効率の向上や新種の考案などプロのコンサルタントに相談
  • 他の事例:出荷量管理システムや労働時間管理システムの導入

業務改善助成金の助成上限額は、以下のとおりです。

コース区分 事業場内最低賃金の引き上げ額 引き上げる労働者数 助成上限額(事業規模30人以上の事業場) 助成上限額(事業規模30人未満の事業場)
30円コース 30円以上 1人 30万円 60万円
2〜3人 50万円 90万円
4〜6人 70万円 100万円
7人以上 100万円 120万円
10人以上 120万円 130万円
45円コース 45円以上 1人 45万円 80万円
2〜3人 70万円 110万円
4〜6人 100万円 140万円
7人以上 150万円 160万円
10人以上 180万円 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円 110万円
2〜3人 90万円 160万円
4〜6人 150万円 190万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上 300万円 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円 170万円
2〜3人 150万円 240万円
4〜6人 270万円 290万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上 600万円 600万円

業務改善助成金の助成率は、以下のとおりです。()は、生産性要件を満たした事業場の場合を表しています。

最低賃金 助成率
900円未満 10分の9
900円以上950円未満 5分の4(10分の9)
950円以上 4分の3(5分の4)

業務改善助成金の上限額は、最低賃金の引き上げ額、対象となる労働者の人数、事業場の規模により変動します。特に、最低賃金が低い地域ほど助成率が高くなるため、事前に条件を確認しておくことが重要です。

新規で農業を始める際に助成金・補助金を受け取るメリット3つ

電卓!

ここからは、新規で農業を始める際に助成金・補助金を受け取るメリットを3つ紹介します。

  1. 初期投資の負担を軽減できる
  2. 設備投資がしやすくなる
  3. 人材確保や雇用創出につながる

1. 初期投資の負担を軽減できる

農業を始めるには、農地の取得・借用、農業機械の導入、施設の整備、種苗や肥料の購入など、まとまった資金が必要になります。助成金・補助金を活用することで、各初期費用の一部を補填でき、資金面の負担を大幅に軽減できます。

たとえば、農業次世代人材投資資金は、年間最大150万円(最長3年間) の支援を受けられ、経営が軌道に乗るまで生活費をカバーすることも可能です。

2. 設備投資がしやすくなる

農業の生産性を向上させるためには、トラクター、コンバイン、温室、スマート農業技術などの設備投資が欠かせません。しかし、高額な設備投資は、新規就農者にとって大きな負担となります。

経営発展支援事業やものづくり補助金を活用することで、機械や施設の導入費用の一部を補助してもらえ、効率的な農業経営を実現しやすくなります。

3. 人材確保や雇用創出につながる

農業経営を安定させ、事業を拡大していくためには、労働力の確保や人材の育成が欠かせません。しかし、新規就農者にとって、従業員の雇用や賃金の確保は大きな負担となる場合があります。

雇用就農資金を利用すれば、新たに農業従事者を雇用した農業法人や個人農家に対し、年間最大60万円(最長4年間) の助成金が支給されます。新規雇用の際の賃金負担を軽減し、より多くの人材を確保しやすくなるでしょう。

まとめ

農業を始める際に助成金を活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できます。助成金には複雑な申請条件や手続きがあるため、専門家に相談することで事業内容や規模にあった助成金を提案してくれます。

比較ビズには、農業の助成金に詳しい専門家が多数在籍しているため、数分の条件入力のみで最適なビジネスパートナーを探すことが可能です。比較ビズの利用は完全無料でできるため、ぜひ活用してください。

監修者のコメント
マネーライフワークス
岡崎 壮史

1980年3月23日生まれ。社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者。令和3年度 中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業) 派遣専門家。大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。

農業経営を行う事業者については、主に設備投資に対するものや経営基盤を安定させるための「補助金」が多く、活用することで、経営を安定させることを目的とした補助金制度が多いことが特徴です。

助成金についても、こちらで紹介されているもの以外にも、設備投資の費用の一部が助成される「業務改善助成金」や、人材育成を行うために支出した費用に対して支給される「人材開発助成金」などの制度を活用することができます。

「業務改善助成金」は、賃金水準が最も低い従業員の賃金の水準を一定額以上引き上げることを目的として、設備投資を行った際にその費用の一部について助成金が支給される制度です。

急激な最低賃金に水準の引上げが行われている中で、賃金の水準の引上げと設備投資を同時に行うことができる制度としても活用することができる助成金の一つといえますが、要件や準備しなければならない資料などが非常に複雑であるため、専門家に依頼することが望ましいものとなります。
比較ビズ編集部
執筆者

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