農業の助成金・補助金9選を紹介!受け取るメリット・デメリットを解説

マネーライフワークス
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最終更新日:2024年06月17日
農業の助成金・補助金9選を紹介!受け取るメリット・デメリットを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 農業経営者が利用できる助成金はある?
  • 農業経営者が受けられる助成金の金額はどれくらい?
  • 助成金を受け取るデメリットは?

「農業を始めたいけど、農業経営者が受け取れる補助金はある?」とお悩みの農業経営者必見です。

農業経営者向けの助成金・補助金は、新規就農者向けのものや設備投資・規模拡大・人材獲得など、対象者や用途にあわせて複数存在します。年間150万円を最大2年間受け取れるものや、上限が1,000万円のものなど、農業経営にしっかりと役立てられる金額設定が多いです。

本記事では農業の助成金・補助金9選を紹介し、受け取るメリット・デメリットを解説します。記事を読み終わった頃には、農業経営者が利用できる助成金・補助金の概要を理解して、潤沢な資金を農業経営に活かせるでしょう。

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農業経営者が利用できる助成金・補助金9選

農家

農業経営者が利用できる助成金・補助金は、以下のとおりです。

制度名 助成・補助額 対象者
農業次世代人材投資資金 就農準備資金 月間12.5万円(年間150万円)を最長2年間 就農予定時に49歳以下の者
経営開始資金 月間12.5万円(年間150万円)を最長3年間 独立・自営就農時に49歳以下の者
経営発展支援事業 上限1,000万円 49歳以下の認定新規就農者
農地耕作条件改善事業 総事業費200万円以上・補助率 2分の1 農業継続に必要な環境整備を行った就農者
農産物等輸出拡大施設準備事業 5兆円規模・補助率は事業費の2分の1 GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)会員
ものづくり補助金 750万〜1,250万円 中小企業・小規模企業者・小規模事業者
雇用就農資金 年間60万〜120万円・最長4年間 50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人
キャリアアップ助成金 最大100万円程度 正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主
トライアル雇用助成金 月額4万円×最長3カ月 トライアル雇用をした事業主
業務改善助成金 50万円〜600万円 最低賃金引き上げと生産性向上につながる設備投資を行った事業主

農業経営者が利用できる助成金・補助金は、助成金・補助金事業によって支給額や対象者・要件などが異なります。どの助成金・補助金に該当するかを確認したのちに、申請しなければ支給されないため、該当するものはすべて申請しましょう。

【新規就農者向け】農業の助成金・補助金

新規就農者向けの助成金・補助金は、以下の2つです。

  • 農業次世代人材投資資金
  • 経営発展支援事業

日本の農業は、就農者の人口減少と高齢化が問題となっている点が特徴です。一方で、都市部から農業への転職を考える若者が増えています。

今後の日本の農業を支えるために、新規就農者向けの助成金・補助金が整備されており、問題解決が期待できるでしょう。経営発展支援事業は「就農準備金」「経営開始資金」の2種類にわかれています。

1. 農業次世代人材投資資金

農業次世代人材投資資金は、次世代の新規就農者に対して補助する制度です。就農前の研修を補助する「就農準備資金」と就農直後の経営確立を支援する「経営開始資金」の2つにわかれます。

  就農準備資金 経営開始資金
概要 就農研修者への助成 新規就農者の経営確立の助成
対象者 就農予定時に49歳以下の者 独立・自営就農時に49歳以下の者
助成・補助金額 月間12.5万円(年間150万円)を最長2年間 月間12.5万円(年間150万円)を最長3年間

就農準備資金

就農準備資金とは、就農に向けて必要な技術を習得する新規就農者の研修費用を補助する制度です。月間12.5万円(年間150万円)を最長2年間受給できます。主な交付要件は以下のとおりです。

  1. 独立・自営就農、雇用就農もしくは親元就農を目指すこと
  2. 都道府県が認めた研修機関で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上研修を受けること
  3. 常勤の雇用契約を締結していないこと
  4. 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること
  5. 研修中の怪我に備えて傷害保険に加入すること

独立・自営就農とは、就農後5年以内に認定新規就農者もしくは認定農業者になることを指します。雇用就農もしくは親元就農は、就農後5年以内に経営の継承が求められます。5年以内の経営継承が難しい場合は、独立・自営就農が必要です。

経営開始資金

経営開始資金とは、新たに農業経営を開始する者に資金援助する制度です。農業開始直後の運転資金を補助し、次世代を担う農業者を手助けします。月間12.5万円(年間150万円)を最長3年間受給できます。主な交付要件は以下のとおりです。

  1. 独立・自営就農する認定新規就農者であること
  2. 経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること
  3. 経営を継承する場合、新規参入者と同等の経営リスク(新規作目の導入)を負っていると市町村長に認められること
  4. 目標地図または人・農地プランに位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けていること
  5. 原則、前年の世帯所得が600万円以下であること

経営開始資金は、以下の場合に交付停止になります。

  • 原則、前年の世帯所得が600万円を超えた場合
  • 適切に経営を行っていない場合 など

経営開始資金の交付期間終了後に、交付期間と同じ期間以上、同程度の継続をしなかった場合も返還する必要があります。

2. 経営発展支援事業

経営発展支援事業とは、新規就農者を対象に経営発展のための機械・施設などの導入を支援する制度です。国と都道府県が連携して、40代以下の農業従事者拡大を目的としています。制度の概要は、以下のとおりです。

概要 新規就農者への機械・施設などの導入を支援
対象者 49歳以下の認定新規就農者
補助率 国2分の1・都道府県4分の1・本人4分の1
助成・補助金額 上限1,000万円

経営発展支援事業は、経営発展のために導入した機械・施設などにかかった資金を「国2分の1・都道府県4分の1・本人4分の1」で負担します。たとえば、1,000万円の費用がかかる場合は「国500万円・都道府県250万円・本人250万円」の内訳となり、750万円の受給が可能です。

主な交付要件

交付に対しての主な要件は、以下のとおりです。

  1. 独立・自営就農する認定新規就農者であること(令和5年以降が対象)
  2. 経営開始5年目までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること
  3. 目標地図または人・農地プランに位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けていること
  4. 本人負担分は金融機関から融資を受けていること

親元就農者の場合は、農業経営に従事してから5年以内に継承し「売上◯割増し」のように経営を発展させる計画が必要です。本人負担分は自己資金ではなく、金融機関からの融資が必要になるため注意しましょう。

【設備投資・規模拡大】農業の助成金・補助金

剪定

農業の設備投資・規模拡大で利用できる助成金・補助金は、以下のとおりです。

  • 農地耕作条件改善事業
  • 農産物等輸出拡大施設準備事業
  • ものづくり補助金

経営持続・規模拡大のために設備投資したくても資金が足りなくて思うように進められない農業経営者も少なくありません。設備投資・規模拡大に適した助成金・補助金をうまく活用して、理想の農業経営を実現させましょう。

3. 農地耕作条件改善事業

農地耕作条件改善事業とは、農業継続に必要な環境を整えるための取り組みを支援する制度です。対象者・補助率・実施要件は、以下のとおりです。

概要 農業継続に必要な環境整備を支援
対象者 6つのコースに該当する取り組みを行った農業者
補助率 2分の1・定額など
実施要件 総事業費200万円以上・農業者数2名以上など

農地耕作条件改善事業の6つのコースは、以下のとおりです。

  • 地域内農地集積型:区画拡大や排水整備などの基盤整備を支援
  • 高収益作物転換型:区画整備と一体的に行う高収益作物への転換を支援
  • スマート農業導入推進型:GNSS基地局の設置とトラクタの自動操舵システムの導入の支援
  • 病害虫対策型:病害虫の発生予防・蔓延防止のための土葬改良や排水対策を支援
  • 水田貯留機能向上型:水田の雨水貯留機能を向上する「田んぼダム」の実施を支援
  • 土地利用調整型:持続的かつ計画的な農地利用を行うための用地・作業道の整備を支援

以上6つのコースに該当し、総事業費200万円以上・農業者数2名以上の場合は実施要件を満たしています。毎年200億円規模の予算が設定されており、農業の環境整備を行いたい就農者を支援しています。

4. 農産物等輸出拡大施設準備事業

農産物等輸出拡大施設準備事業とは、国産農産物の輸出拡大に必要な集出荷貯蔵施設・処理加工施設などの産地基幹施設の整備を支援する制度です。制度の概要や対象者・補助率などは、以下のとおりです。

概要 国産農産物の輸出拡大に必要な集出荷貯蔵施設・処理加工施設などの産地基幹施設の整備を支援
対象者 GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)会員
補助率 事業費の2分の1以内

政府は、2030年までに5兆円の農林水産物・食品の輸出額目標を設定しています。「強い農林水産業」の構築を推進し、さらなる輸出拡大を目指しており、必要な環境整備を支援する制度を設けました。

長期間の品質維持を可能とする施設や輸出先国まで、一貫したコールドチェーンシステムの確保を可能とする施設が該当します。

5. ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、設備投資や新サービスの導入などを通じて生産性の向上に取り組む事業者を支援する制度です。さまざまな事業で利用できる制度で、農業の設備投資にも活用できます。制度の概要や補助率・補助上限額などは、以下のとおりです。

概要 設備投資や新サービスの導入などを通じて生産性の向上に取り組む事業者を支援
対象者 中小企業・小規模企業者・小規模事業者
補助率 中小企業 2分の1・小規模企業・小規模事業者 3分の2
補助上限額 750万〜1,250万円

ものづくり補助金は、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠の複数の利用枠が設けられています。農業の場合は製品・サービス高付加価値化枠の「通常類型」に該当します。

利用枠は、他にも該当する可能性があるため、補助金利用の際は組合や外部の申請代行機関に相談するといいでしょう。

以下の記事では、くわしく申請枠や必要書類を解説しているため参考にしてください。

【人材獲得・人材育成】農業の助成金・補助金

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農業の人材獲得・人材育成で利用できる助成金・補助金は、以下のとおりです。

  • 雇用就農資金
  • キャリアアップ助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 業務改善助成金

農業は「人手不足」が不安視されており、人材獲得・育成が課題です。農業の人手不足を解消させる助成金・補助金は複数用意されているため、適切な事業を選んで申請しましょう。

6. 雇用就農資金

雇用就農資金とは、雇用就農者の確保・育成を推進するため、就農希望者を新たに雇用する農業法人に対して資金を助成する制度です。雇用就農資金の事業タイプは3つあります。それぞれの概要や助成金額などは、以下のとおりです。

  雇用就農者育成・独立支援タイプ 新法人設立支援タイプ 次世代経営者育成タイプ
概要 農業法人が就農希望者を雇用して経営ノウハウの研修を実施する場合の資金を助成 新たに農業法人を設立して就農希望者を一定期間雇用したのちに経営ノウハウの研修を実施する場合の資金を助成 農業法人が次世代の経営者として育成するため、国内外の先進的な農業法人や異業種の法人に該当職員を派遣・実施する研修を助成
対象者 50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人 新たに農業法人を設立して50歳未満の就農希望者を雇用する農業法人 派遣職員は55歳未満の農業法人ですでに就農し経営に参画している者
助成・補助金額 年間最大60万円・最長4年間 年間最大120万円・最長4年間(3年目以降は年間最大60万円) 月額最大10万円(最短3カ月、最大2年間)

雇用就農資金は新規就農者の増加分が支援対象となります。新規就農者が障がい者・生活困窮者・刑務所出所者などの場合は、年間最大15万円が加算されます。

雇用就農者育成・独立支援タイプ

雇用就農者育成・独立支援タイプとは、農業法人が50歳未満の新規就農者を雇用する場合に資金を助成する制度です。農業就業もしくは独立支援に必要な技術や経営ノウハウに関する研修を実施する必要があります。年間最大60万円を最長で4年間支給されます。

新法人設立支援タイプ

新法人設立支援タイプとは、農業法人が新たに農業法人を設立して、独立就農を目指す50歳未満の新規就農者を雇用する場合に資金を助成する制度です。

一定期間雇用して、独立支援に必要な技術や経営ノウハウに関する研修を実施する必要があります。年間最大120万円を最長で4年間支給されますが、3年目以降は年間最大60万円の支給です。

次世代経営者育成タイプ

次世代経営者育成タイプとは、農業法人が該当する職員を次世代の経営者として育成するため、国内外の先進的な農業法人や異業種法人に派遣して研修を行う制度です。

職員を派遣する農業法人は、研修終了後1年以内に派遣した職員を役員や部門責任者など、中核を担う役職に登用することを確約する必要があります。

派遣職員は農業法人の役員や正社員だけではなく、家族経営の後継者ですでに就農し経営に参画している人も該当します。

7. キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主を助成する制度です。キャリアップ助成金は、以下の6つのコースにわかれています。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

キャリアップ助成金は、各コースごとに要件や助成金額が異なります。対象となる事業主の要件は、以下の5つです。

  1. 雇用保険適用事業所であること
  2. キャリアアップ管理者を置いていること
  3. 対象労働者のキャリアアップ計画を作成して管轄労働局長の認定を受けること
  4. 実施するコースの労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況を明確にできること
  5. キャリアアップ計画期間内に取り組むこと

以上の要件は各コース共通で、要件を満たす事業主はキャリアアップ助成金の申請が可能です。適用できるコースは複数申請できるため、該当するものはすべて申請しましょう。

正社員化コース

キャリアアップ助成金の正社員化コースの支給額は、以下のとおりです。

  有期雇用労働者 無期雇用労働者
中小企業 80万円(40万円×2期) 40万円(20万円×2期)
大企業 60万円(30万円×2期) 30万円(15万円×2期)

支給額に加えて、条件にあわせた加算額があります。条件別の加算額は、以下のとおりです。

  有期雇用労働者 無期雇用労働者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合 28万5,000円
対象者が母子家庭の母もしくは父子家庭の父の場合 9万5,000円 4万7,500円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合 9万5,000円 4万7,500円
(自発的職業能力開発訓練もしくは定額制訓練終了後) 11万円 5万5,000円
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換した場合 20万円(大企業15万円)
多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換した場合 40万円(大企業30万円)

正社員化コースは、中小企業の場合は最大80万円支給され、条件別の加算額を加えると最大100万円以上の助成を受けられます。キャリアアップ制度を確立するには十分な費用が用意されているため、積極的に正社員制度を活用しましょう。

障害者正社員化コース

障害者正社員化コースの支給額は、以下のとおりです。支給額は中小企業のものが書かれており()内は中小企業以外の支給額を表しています。

支給対象者 措置内容 支給総額 支給対象期間 各支給対象期における支給額
重度身体障害者 重度知的障害者 精神障害者 有期雇用から正規雇用 120万円(90万円) 1年(1年) 60万円×2期(45万円×2期)
有期雇用から無期雇用 60万円(45万円) 30万円×2期(22.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 60万円(45万円) 30万円×2期(22.5万円×2期)
重度以外の身体障害者 重度以外の知的障害者 発達障害者 難病患者 高次脳機能障害と診断された者 有期雇用から正規雇用 90万円(67.5万円) 45万円×2期(33.5万円※×2期) ※第2期の支給額は34万円
有期雇用から無期雇用 45万円(33万円) 22.5万円×2期(16.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 45万円(33万円) 22.5万円×2期(16.5万円×2期)

障害者正社員化コースは、支給対象者の身体状況や措置内容・企業規模によって金額が異なります。それぞれ確認のうえ、申請を行いましょう。

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースとは、有期労働者の基本給の賃金規定を3%以上増額改定して、規定を適用した場合に支給されます。支給額は、以下のとおりです。

  賃金引き上げ率(3%以上5%未満) 賃金引き上げ率(5%以上) 職務評価の手法を活用し賃金規定を増額改定した場合
中小企業 5万円 6万5,000円 20万円
大企業 3万3,000円 4万3,000円 15万円

賃金規定を増額改定する際に「職務評価の手法」を活用した場合は、支給額が加算されます。職務評価の手法とは、職務の大きさ(業務内容・責任の程度)を比較して、労働者の待遇が適切なものになっているか把握することです。

単純比較法・分類法・要素比較法・要素別点数法のいずれかの手法が使えます。単純比較法・分類法を使用する場合は、職務分析の実施による個別の職務評価書の作成が必要です。

賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースとは、雇用するすべての有期雇用労働者に正規雇用労働者と共通の職務に応じた賃金規定を適用した場合に助成する制度です。就業規則もしくは労働協約を定め、新たに賃金規定を作成する必要があります。支給額は、以下のとおりです。

企業規模 支給額
中小企業 60万円
大企業 45万円

賞与・退職金制度導入コース

賞与・退職金制度導入コースとは、雇用するすべての有期雇用労働者に対して、賞与・退職金の支給を実施した場合に助成される制度です。就業規則もしくは労働協約を定めて新たに設置する必要があり、すぐに支給せず積み立てを実施する場合にも適用されます。支給額は、以下のとおりです。

  賞与もしくは退職金制度のいずれかを導入 賞与・退職金を同時に導入
中小企業 40万円 56万8,000円
大企業 30万円 42万6,000円

社会保険適用時処遇改善コース

社会保険適用時処遇改善コースとは、雇用する短時間労働者に社会保険の被保険者となる取り組みをした場合に助成する制度です。以下の2要件が該当します。

  1. 新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となる際に賃金総額を増加させる取り組みを行った場合
  2. 週の所定労働時間を4時間以上延長の処置を実施し、当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たして被保険者となる場合

1の要件を満たした場合の支給額は、以下のとおりです。

企業規模 1年目の取り組み 2年目の取り組み 3年目の取り組み
中小企業 40万円(10万円×4期) 10万円
大企業 30万円(7.5万円×4期) 7.5万円

1年目・2年目の取り組みでは、労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額の15%以上)の手当支給もしくは賃上げが必要です。3年目の取り組みでは、基本給の18%以上の増額(賃上げ、もしくは労働時間延長による増額)が必要になります。

2の要件を満たした場合の支給額は、以下のとおりです。

延長時間 4時間以上 3時間以上4時間未満 2時間以上3時間未満 1時間以上2時間未満
賃金引上げ率 - 5%以上 10%以上 15%以上
中小企業 30万円
大企業 22.5万円

週の所定の労働時間を4時間以上延長した場合は無条件で適用できますが、4時間未満の場合は所定の賃金引上げ率を満たす必要があります。短時間労働者が、1年目に要件1、2年目に要件2を満たした場合も助成可能で、最大50万円の支給になります。

8. トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、ハローワークから紹介される労働者をトライアル雇用した場合に助成される制度です。トライアル雇用とは、職業経験不足や障がいなどにより就職が困難な労働者を、3カ月間試行雇用(トライアル雇用)できる制度を指します。

トライアル雇用助成金は、一般トライアルコースと障がい者トライアルコースにわけられます。

一般トライアルコース

一般トライアルコースは「月額4万円×最長3カ月」が支給されます。1カ月あたりの就労日数の割合で支給額が異なります。具体的な計算式は、以下のとおりです。

計算式

対象者が1カ月に就労した日数÷対象者が当該1カ月間に就労を予定していた日数=A

計算した割合をAとした場合の支給額は、以下のとおりです。

  一般トライアルコース 一般トライアルコース(母子家庭の母・父子家庭の父)
A:75%以上 4万円 5万円
A:50%以上75%未満 3万円 3万7,500円
A:25%以上50%未満 2万円 2万5,000円
A:0%超25%未満 1万円 1万2,500円
A:0% 0円 0円

就労日数の割合が75%を満たすことで、助成金の満額が支給されます。トライアル雇用を積極的に行うことで、人材獲得に必要な経費を軽減できるでしょう。

障がい者トライアルコース

障がい者トライアルコースは、以下のいずれかに該当し、障がいを持つ求職者をトライアル雇用した場合に支給されます。支給額は「月額8万円×最長3カ月+月額4万円×最長3カ月」です。

  • 紹介日前日から過去2年以内に2回以上転職や離職をしている
  • 紹介日前日時点で離職期間が6カ月を超える
  • 就労経験のない職業に就くことを希望している

支給額の計算方法は、一般トライアルコースと同じ計算式を使用します。

計算式

対象者が1カ月に就労した日数÷対象者が当該1カ月間に就労を予定していた日数=A

  障がい者トライアルコース(短時間コース含む) 障がい者トライアルコース(精神障がい者の雇い入れから3カ月間の場合)
A:75%以上 4万円 8万円
A:50%以上75%未満 3万円 6万円
A:25%以上50%未満 2万円 4万円
A:0%超25%未満 1万円 2万円
A:0% 0円 0円

長時間労働が難しい精神障がい者や発達障がい者を雇用する場合は「障がい者短時間トライアル雇用」を利用できます。助成金は、1人あたり月額上限4万円、最長12カ月分が支給されます。

9. 業務改善助成金

業務改善助成金とは、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資を行った場合に助成する制度です。設備投資費の一部が支給されます。

制度の要件

業務改善助成金の要件は、以下のとおりです。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇・賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

以上の要件を満たした事業者は、事業場内最低賃金の引き上げ計画と設備投資の計画を立てて、事業場ごとに申請します。

対象となる設備投資

業務改善助成金の対象となる設備投資の事例は、以下のとおりです。

  • 機器・設備の導入:リフト付き特殊車両の導入による積込作業時間を短縮
  • 経営コンサルティング:作業効率の向上や新種の考案などプロのコンサルタントに相談
  • 他の事例:出荷量管理システムや労働時間管理システムの導入

生産性向上に資する設備投資が、助成の対象です。助成対象となるのかがわからない場合は、業務改善助成金コールセンターに問い合わせてください。

助成上限額と助成率

業務改善助成金の助成上限額は、以下のとおりです。

コース区分 事業場内最低賃金の引き上げ額 引き上げる労働者数 助成上限額(事業規模30人以上の事業場) 助成上限額(事業規模30人未満の事業場)
30円コース 30円以上 1人 30万円 60万円
2〜3人 50万円 90万円
4〜6人 70万円 100万円
7人以上 100万円 120万円
10人以上 120万円 130万円
45円コース 45円以上 1人 45万円 80万円
2〜3人 70万円 110万円
4〜6人 100万円 140万円
7人以上 150万円 160万円
10人以上 180万円 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円 110万円
2〜3人 90万円 160万円
4〜6人 150万円 190万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上 300万円 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円 170万円
2〜3人 150万円 240万円
4〜6人 270万円 290万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上 600万円 600万円

業務改善助成金の助成率は、以下のとおりです。()は、生産性要件を満たした事業場の場合を表しています。

最低賃金 助成率
900円未満 10分の9
900円以上950円未満 5分の4(10分の9)
950円以上 4分の3(5分の4)

業務改善助成金の助成上限額は、最低賃金引き上げ額・引き上げる労働者数・事業場規模によって異なります。最低賃金の額が少ないほど、助成率が高くなるため確認しておきましょう。

新規で農業を始める場合に助成金・補助金を受け取るメリット

電卓!

新規で農業を始める際に、助成金・補助金を受け取るメリットは以下の2つです。

  1. 年間をとおして申請できる
  2. 要件を満たせば受給できる

農業は資金的にも時間的にも大きな投資が必要とされるため、新しい農業を始める際には多くの課題があります。助成金・補助金を活用することで、多くの課題を克服できるでしょう。

1. 年間をとおして申請できる

農業に関する助成金は、年間をとおして申請できます。農業は季節性の強い業種であるため、一定の申請期間内に申請できなかった場合でも、次の季節に向けた助成金を受け取れるようにしています。

年間をとおして申請できることで、新規就農者が必要とするタイミングにあわせて、助成金を活用できるでしょう。

2. 要件を満たせば受給できる

経営計画書や事業計画などの準備を十分に行い、申請要件を満たせれば誰でも助成金を受け取れます。農業を始める際は膨大な資金が必要ですが、助成金の受給で経営に役立てられるでしょう。助成金は厳しい審査基準の通過が必要ですが、クリアできれば受給可能です。

新規で農業を始める際に助成金・補助金を受け取るデメリット

新規で農業を始める場合に、助成金・補助金を受け取るデメリットは以下の2つです。

  1. 現地調査が必要な場合がある
  2. 必要経費よりも少ない可能性がある

新しく農業を始める際に、助成金・補助金の受給は大きなメリットですが、一方でデメリットもあります。デメリットを把握することで、助成金・補助金の申請や受給がスムーズに進むでしょう。

1. 現地調査が必要な場合がある

助成金・補助金を申請する際に、現地調査が必要な場合があります。助成金・補助金の申請手続きが追加されるため、手続きに時間がかかるでしょう。調査内容により、農業の開始が遅れる可能性があるため、計画を立てる際には余裕を持って対応する必要があります。

2. 必要経費よりも少ない可能性がある

助成金・補助金を受け取る際に、助成金の支給額が必要経費よりも少ない可能性があります。補助率が100%に満たないものは必要経費の一部を補填する制度のためです。

すべての制度が必要経費の全額を支給してくれるものではありません。足りない分は、自己負担が必要となるでしょう。各種助成金の対象となる費用は多岐にわたり、必要な経費を補填してくれるため経営の強化・拡大につながる可能性があります。

まとめ

農業経営者が利用できる主な助成金・補助金は、9種類あります。新規就農者向けのもの・設備投資や規模拡大に役立つもの・人材の獲得や育成に活用できるものなど、幅広い用途に利用可能です。

年間をとおしていつでも申請でき、支給要件を満たすものはすべて申請できるため、該当するものはまとめて申請するといいでしょう。経費を支払ってから申請するものもあるため、事業開始の際に自己資金が必要なケースもあります。

比較ビズでは、多数の助成金・補助金申請代行業者のなかから気になる業者を無料で比較できます。農業に関する助成金・補助金を活用したい方は、ぜひ比較ビズを利用してください。

監修者のコメント
マネーライフワークス
岡崎 壮史

1980年3月23日生まれ。社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者。令和3年度 中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業) 派遣専門家。大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。

農業経営を行う事業者については、主に設備投資に対するものや経営基盤を安定させるための「補助金」が多く、活用することで、経営を安定させることを目的とした補助金制度が多いことが特徴です。

助成金についても、こちらで紹介されているもの以外にも、設備投資の費用の一部が助成される「業務改善助成金」や、人材育成を行うために支出した費用に対して支給される「人材開発助成金」などの制度を活用することができます。

「業務改善助成金」は、賃金水準が最も低い従業員の賃金の水準を一定額以上引き上げることを目的として、設備投資を行った際にその費用の一部について助成金が支給される制度です。

急激な最低賃金に水準の引上げが行われている中で、賃金の水準の引上げと設備投資を同時に行うことができる制度としても活用することができる助成金の一つといえますが、要件や準備しなければならない資料などが非常に複雑であるため、専門家に依頼することが望ましいものとなります。
比較ビズ編集部
執筆者

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