一般口座とは証券会社で開設する口座の1つ
一般口座は、株式投資に利用するために証券会社で開設する口座です。一般口座を開設している場合、投資家本人が損益を計算して確定申告する必要があるでしょう。株式の売却や譲渡により利益が発生した場合には譲渡益課税が発生するためです。
譲渡益課税とは、株式や不動産などの資産を売却・譲渡したときの利益に課される税金です。譲渡益課税は申告分離課税の1つで、事業所得や給与所得などの総合課税とは別に、その所得のみに独自の計算式や税率を適用して所得税を計算します。
会社で働く給与所得者でも、一般口座で株式を売却・譲渡して一定以上の利益を得ると確定申告が必要になるということです。
一般口座の株取引で利益が出たら確定申告が必要
株式の売買により一般口座に譲渡益が生じると、所得税が課されます。納税のためには確定申告が必要です。損失が出た場合は、確定申告が不要になり、上場株式の譲渡損失を3年間に渡り繰越控除できる制度を利用したい場合は、毎年の確定申告をしなければなりません。
確定申告の必要性について以下の2つのポイントを押さえておきましょう
- 株式投資によって得られた利益を自身で確定申告しなければいけない
- 所得が2,000万円以下で株の利益が20万円未満の場合は確定申告が不要
株式投資によって得られた利益を自身で確定申告しなければいけない
一般口座で株式を取引する場合、利益や損失、税額の計算は自身でおこないましょう。株式譲渡で得た利益は申告分離課税の対象のため確定申告が必要です。分離課税には「源泉分離課税」と「申告分離課税」があり、確定申告が必要なのは申告分離課税です。
一般口座では「特定口座年間取引報告書」が発行されないため、各株取引の報告書を自分でまとめて計算する必要があるでしょう。特定口座とは証券会社が発行する書類で「1年間(1月〜12月)に特定口座内で行った取引の損益」を計算した書類です。
所得が2,000万円以下で株の利益が20万円未満の場合は確定申告が不要
会社に属しているサラリーマンの場合、所得が2,000万円以下で株による利益が20万円未満の場合は確定申告が不要です。サラリーマンは年末調整を会社で受けており、給与所得で納税を済ませているためです。
所得が株式譲渡益のみの方は、譲渡所得が基礎控除額の48万円以内であれば所得税が課税されません。そのため確定申告は不要です。株式譲渡益は課税対象だが、すべてに所得税が課税されるわけではありません。
一般口座で株式譲渡益が発生した際は、所得金額がいくらかを確認し、確定申告の必要性を判断しましょう。
一般口座での確定申告手続きの流れ
確定申告とは、1年間の収入から所得と所得税を計算し、翌年2月16日から3月15日までに申告・納付する手続きです。一般口座の株式譲渡益も同様で、1年間の株式取引の譲渡益が対象となります。
一般口座における確定申告の手続きは、以下の流れでおこないます。
- 年間の売買損益を計算する
- 確定申告書の作成に必要な情報をそろえる
- 確定申告書を作成する
1. 年間の売買損益を計算する
譲渡損益は、譲渡収入から取得費と譲渡費用を差し引くことで求められます。
譲渡損益 = 譲渡収入 - 取得費 - 譲渡費用
取得費は、株式を取得した際に支払った金額です。譲渡費用には、売却手数料や株式取得のための借入利息などが含まれます。取得費支出のタイミングや手数料の記帳箇所は通帳からの読み取りが難しいため、一般口座では譲渡損益計算が難しい点に注意しましょう。
一般口座を使用する場合、口座内の取引を集計するだけでは譲渡損益を計算できません。一般口座の確定申告には「取引報告書」や「取引残高報告書」が必要です。
2. 確定申告書の作成に必要な情報をそろえる
確定申告の準備には、提出書類の収集や作成が必要です。納税者の状況に応じて必要な書類は異なり、年末調整を受ける会社員でも確定申告をおこなう必要があります。
確定申告書をはじめとする提出書類
一般口座の株式譲渡益を申告する場合、最低限必要な提出書類は以下のとおりです。
- 申告書第一表
- 申告書第二表
- 株式等の譲渡所得の計算明細書
- 申告書第三表
収支のわかる書類・控除証明書
確定申告には収支の詳細や所得控除の証明が必要です。
- 源泉徴収票(給与・公的年金を受け取っている方)
- 社会保険をはじめとする支払明細
- 医療費・寄付金などがわかる書類(控除したい場合)
- 取引報告書・取引残高報告書
3. 確定申告書を作成する
一般口座での確定申告をする場合、申告書への記入をおこない確定申告書を作成します。
- 申告書第一表の記入
- 申告書第二表の記入
- 株式等の譲渡所得の計算明細書の作成
- 申告書第三表の記入
申告書第一表の記入
一般口座の確定申告には、確定申告が必要です。確定申告は、第一表と第二表の2ページで構成されています。給与・事業・雑所得などがある方は、申告書第一表の左半分に「収入」「所得」「所得控除」を記入してください。会社員の場合は源泉徴収票を写すのみで十分です。
参照:国税庁「申告書【令和4年分以降用】
申告書第二表の記入
第二表では、所得や控除の詳細に加え住民税や個人事業税の算出に関わる特殊な事項を明記します。転記もあるため、第二表から記入を始めるとスムーズでしょう。
参照:国税庁「申告書【令和4年分以降用】
株式等譲渡所得の計算明細書の作成
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の作成も必要です。2面に個別の株式取引の収支を詳しく記入してください。1面には収入、取得価額・手数料の総額、所得金額を計算して記載します。
参照:国税庁「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
申告書第三表の記入
申告書第三表には、譲渡所得の収入や所得だけではなく、確定申告書の第一表に記載したその他の収入や所得も記載します。最終的に納税すべき所得税の金額を計算して記入をします。確定申告書には「譲渡所得」の項目がないため、譲渡所得の計算明細は申告書第三表に記入してください。
申告書第三表まで記入が済んだ後に、確定申告書の第一表に戻ります。下記の欄に記入することで申告手続きは完了です。
- すべての税額
- 税控除額
- 源泉徴収額
- 最終的な税金額
参照:国税庁「申告書第三表(分離課税用)」
一般口座だけで確定申告の処理ができない3つのケース
一般口座だけで確定申告の処理ができないケースは、以下の3つがあります。
- 同一の銘柄を複数回取引した場合
- 損失を翌年に繰り越した場合
- 一般口座と特定口座に取引がある場合
1. 同一の銘柄を複数回取引した場合
同じ銘柄の株式を複数回取り引きした場合は、総平均法に準じた方法で算出した1単位あたりの金額で取得費を計算することになります。総平均法とは、1年間の購入平均レートを基に計算した所得価額の合計と、売却合計金額を差し引いて所得額を算出する計算方法です。
計算式は以下のとおりです。
1単位あたりの金額=(A:株式を最初に購入した際の購入価格の総額 + B:株式を最初に購入した後から譲渡までの購入価格の総額)÷(Aにかかる株式の総数 + Bにかかる株式の総数)
2. 損失を翌年に繰り越した場合
株式を譲渡したことによる損失は、確定申告時にその年の配当や配当所得と通算できます。損益通算しても足りない場合は、翌3年間の繰越控除もできます。
参照:国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
3. 一般口座と特定口座に取引がある場合
一般口座と特定口座の両方を持っている場合、それぞれの取引を「株式等の譲渡所得計算明細書」で口座での取引額を合算して申告する必要があります。記入する箇所は、2面の「特定口座での譲渡所得合計」と「特定口座以外で譲渡した株式等の詳細」の欄です。
参照:国税庁「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
一般口座と特定口座の3つの違い
一般口座と特定口座には以下3つの違いがあります。
- 特定口座では証券会社が年間取引報告書を作成してくれる
- 特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしがある
- 特定口座では所得税の確定申告が必要ない
1. 特定口座では証券会社が年間取引報告書を作成してくれる
特定口座では、投資信託や株式取引の1年間の損益をまとめた「年間取引報告書」を証券会社が作成してくれます。一般口座の場合、自分で年間取引報告書を作成し自身で確定申告をおこなわなければなりません。特定口座と一般口座の大きな違いは「年間取引報告書」の作成の有無です。
2. 特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしがある
特定口座には源泉徴収ありとなしを選択できます。源泉徴収ありの特定口座を選択した場合、証券会社が税金を代納してくれるため、確定申告が不要です。一方で、一般口座は源泉徴収がなく必ず自分で確定申告をしなければなりません。
手続きを簡略化したい方は源泉徴収ありの特定口座がおすすめです。
3. 特定口座では所得税の確定申告が必要ない
特定口座の源泉徴収ありを選択した場合、確定申告は必要ありません。特定口座の源泉徴収なしを選択して譲渡益の発生がある場合は確定申告が必要です。株の譲渡所得は、所得税率15.315%がかかります。
確定申告を忘れた場合
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確定申告を忘れた場合、以下の事態になります。
- 税務署の調査対象になる
- 過去7年間にさかのぼって所得税の徴収が行われる可能性がある
税務署の調査対象になる
確定申告を忘れた場合、税務調査の対象になります。税務調査の対象となるのは法人や個人事業主、フリーランス、相続税を納めていない人などです。個人が税務調査の対象になる可能性は法人よりも低いでしょう。
売上が急増したり利益率が向上したり、現金取引や過去に修正申告をした経験がある場合は税務調査の対象となる可能性が高くなります。
過去7年間にさかのぼって所得税の徴収が行われる可能性がある
一般的な税務調査は過去3年が対象ですが、時効は過去5年、さらに重大な違反や不正があった場合は時効が過去7年まで延長されて調査・徴収されます。期限内の申告を忘れると無申告加算税や重加算税が発生するため注意が必要でしょう。
無申告加算税とは、確定申告の期限内に申告しなかったペナルティとして追加で加算される税金です。重加算税は、所得を意図的に隠蔽して低く申告した場合に課される税金のため税率も高く設定されています。
判断基準は不透明で、誤りの程度によって期間が異なるでしょう。
まとめ
一般口座の株式譲渡益であっても確定申告は必要です。手続きは簡略化されていますが、譲渡所得の申告には多くの書類や手続きが発生します。一般口座では書類作成に必要な年間報告書が発行されないことも作業が煩雑に感じてしまう一因でしょう。
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よくある質問とその回答
監修者のコメント
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。
株式の売買される方は、多くの場合、特定口座を利用されているような気がします。あるいは、NISA口座を利用しているケースが多いかと思います。
特定口座の場合、確定申告をしなくても問題はありません。NISA口座も非課税となるため、同様に確定申告は不要となります。
ただし、特定口座の場合でも、所得税は申告不要であっても、住民税は申告が必要になります。意外とここは盲点になりますが、住民税の申告のみを行う必要があります。
一般口座の場合、所得税も源泉徴収されませんので、確定申告は必要になります。確定申告することになりますので、住民税のみの申告は不要となります。
なお、特定口座で赤字が発生した場合は、ほかの株式譲渡との損益通算ができますので、確定申告を検討してください。