ベンダーマネジメントとは?重要性や5つの役割・フレームワークを解説
- ベンダーマネジメントの役割とは?
- ベンダーマネジメントの活用方法は?
- ベンダーマネジメントのリスクは?
事業会社がITシステムを構築する場合、外部のベンダー(開発・販売会社)に業務を委託することが一般的です。ベンダーマネジメントは、ITベンダーとの協働を成功に導くためのマネジメント手法です。
この記事では、自社のビジネスやプロジェクトでITベンダーに関わる方に向けて、ベンダーマネジメントの役割や手順を解説します。記事を読み終わった頃には、ベンダーマネジメントの基本や成功のコツを理解できるでしょう。
「プロジェクトを効率的に進めたい」「ITベンダーに業務を委託したい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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ベンダーマネジメントとは
ベンダーマネジメントは、システム開発におけるITベンダーとの協働を成功に導くためのマネジメント手法です。外部のベンダーに対する発注や役割分担、管理などを行います。
ITベンダーとの共通の目標を共有することで、密なコミュニケーションを通じてプロジェクトを円滑に進めます。ベンダーマネジメントが機能していない場合、納期遅延や品質低下、仕様相違などの問題を起こしかねません。
モチベーションの維持やリスクの管理もベンダーマネジメントの一部です。開発工程を正確に把握し、適切に管理することで、システム開発プロジェクトを円滑に進められます。
ベンダーマネジメントが求められる理由
ベンダーマネジメントが求められる理由は、下記の2つが挙げられます。
- エンジニア不足による外注の増加
- ITプロジェクトの複雑化
エンジニア不足による外注の増加
ベンダーマネジメントが求められる理由の1つは、エンジニア不足による外注の増加です。社会のIT化やDXの加速により、ITエンジニアの需要が急速に高まりました。
人材不足の状況下において、外部のITベンダーに開発を委託するケースが増加しています。単に発注するだけではプロジェクトの成功は保証されません。ベンダーマネジメントが求められる背景には、ベンダーとの協働を実現するベンダーマネジメントの重要性が挙げられます。
ITプロジェクトの複雑化
ベンダーマネジメントが求められる背景には、システム開発プロジェクトの複雑化が挙げられます。クラウドやAIなどの登場により社会のIT化やDXが進展し、システム開発の規模が拡大しました。
複雑なプロジェクトを成功させるためには、専門知識を持つITベンダーとの連携が必要です。ベンダーマネジメントを通じて、外部のベンダーとの関係を円滑にし、プロジェクトを成功に導くことが求められています。
ベンダーマネジメントが果たす5つの役割
ベンダーマネジメントが果たす役割は、次の5つです。
- 契約の管理
- リスクの管理
- モチベーションの管理
- パフォーマンスの管理
- 関係性の管理
1. 契約の管理
ベンダーマネジメントは、ITベンダーとの契約内容を管理します。明確な契約締結は、円滑なプロジェクト推進の基盤となるでしょう。
契約内容は下記を詳細に取り決めます。
- システム開発内容
- 料金
- 納期
- 責任範囲
- 知的財産権
- 納品後のシステム保守サポート内容
システム保守サポート内容を事前に取り決めておくことで、トラブル発生時の迅速な対応を可能にします。
2. リスクの管理
リスクの管理は、ベンダーマネジメントにおける役割の1つです。ベンダーマネジメントでは、ITベンダーの信用調査やプロジェクトメンバーのスキル調査、報告フローなどを取り決めます。潜在的なリスクを早期に洗い出すことで、事前に対策を講じます。
トラブル発生時の対応方法や報告フローを事前に定め、関係者全員に共有することで、迅速な対応が実現可能です。
3. モチベーションの管理
ベンダーのモチベーション管理は、ベンダーマネジメントの役割の1つです。コミュニケーションを通じてベンダーとパートナーシップを築き、目的に向かって協働することで品質の低下やサポート体制の不足を防ぎます。
ベンダー側のモチベーションを維持するためには、定期的な進捗報告や意見交換会を開催し、情報共有を促進しましょう。問題が発生した場合は、迅速かつていねいにコミュニケーションを取り、ベンダーの貢献に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。
4. パフォーマンスの管理
ベンダーマネジメントはベンダーのパフォーマンスを管理します。ベンダーマネジメントの実施により、スケジュールの進捗確認や遅延対策の立案を行い、プロジェクト全体のパフォーマンスを維持します。
課題が発生した場合は、迅速な対応と原因分析による再発防止策の策定により、全体のパフォーマンス向上を目指します。定期的なミーティング開催によるプロジェクト全体の進捗状況の共有や、ベンダーへのフィードバックがパフォーマンスの維持につながるでしょう。
5. 関係性の管理
ベンダーマネジメントは、ベンダーとの関係性の管理を行います。コミュニケーションを通じてお互いの認識をあわせ、目的達成に向けて協力し合う関係性を構築します。相互信頼に基づいた関係構築は、長期的なパートナーシップを実現するための重要な要素です。
オープンなコミュニケーションを促進し、ともに課題解決に取り組む姿勢によって、信頼関係を構築できるでしょう。
ベンダーマネジメントの手順
ベンダーマネジメントの手順は次のとおりです。
- VMOを編成する
- ベンダーを選定する
- 契約を締結する
- コミュニケーション方法を定める
- 評価と改善を繰り返す
1. VMOを編成する
ベンダーマネジメントでは、最初にVMOを編成します。VMOは、Vender Management Officeの略でベンダーマネジメントを専任で行う組織です。ベンダーのパフォーマンスを管理して価値の最大化を目指します。
VMOの役割には下記が挙げられます。
- ベンダー選定
- 契約締結
- コミュニケーション方法の定め
- 評価/改善
VMOの目的は、ベンダーマネジメントの全工程を統括することです。社内にVMOを設置し、ベンダーマネジメントの専門チームを編成することで、プロジェクトの成功率が向上するでしょう。
2. ベンダーを選定する
VMOを編成しゴールを定めた後は、パートナーとなるベンダーを選定します。ベンダーの選定は、ベンダーマネジメントの成功を左右する重要な要素です。
スキルや技術力だけではなく、自社の課題やニーズを理解し、ともに解決策を考えられるベンダーを選定しましょう。長期的なパートナーシップを築けるベンダーを選ぶことが重要です。
3. 契約を締結する
選定したベンダーと契約を締結します。明確な契約書は、トラブルを防ぎ、円滑なプロジェクト推進を支える基盤となります。契約内容は料金や納期、責任範囲などを明確にすることが大切です。
契約書に詳細な条項を盛り込むことで、プロジェクト中に仕様変更が発生した際も、迅速かつ円滑に解決できます。
4. コミュニケーション方法を定める
契約を締結した後は、コミュニケーション方法を定めます。明確なコミュニケーションは、プロジェクトにおける誤解や情報伝達の遅延を防ぎます。
定義すべきコミュニケーション方法は、次のとおりです。
- 定期的な進捗報告
- 課題共有
- 会議の頻度や方法
- 問題解決時のフロー
プロジェクト開始前にコミュニケーション計画を作成し、実施することで円滑なプロジェクトの進行につながります。
5. 評価と改善を繰り返す
プロジェクト終了後は、成果と課題を評価し、ベンダーマネジメントの改善に活かすことが重要です。
ベンダーの評価方法には、アンケートやインタビューが挙げられます。評価項目や評価方法、改善策などを明確化し、継続的な改善を図ることで、ベンダーマネジメントの成熟度を高められます。
評価結果に基づき、次回のプロジェクトではコミュニケーション方法を改善することで、効果的なベンダーマネジメントを実施できるでしょう。
ベンダーマネジメントのフレームワーク
ベンダーマネジメントのフレームワークを4つ紹介します。
- VMプログラムの立案・準備
- ベンダーの取捨選択
- ベンダー価値の最大化
- ベンダーリスクの最小化
VMプログラムの立案・準備
ベンダーマネジメントを成功させるためには、VMプログラムの立案・準備が重要です。VMプログラムは、ベンダーマネジメント全体を統括する計画です。VMOの編成やゴールの設定などプログラムの基盤を整え、ガバナンスやコミュニケーションを定義します。
VMOプログラムでは、下記の要素を明確に定義する必要があります。
- ゴールの設定
- VMO組織の編成
- コンピテンシーと役割の定義
- VMOを評価する指標の策定
- ガバナンスとコミュニケーション
明確な計画を策定することで、ベンダーマネジメントを成功に導くことができるでしょう。
ベンダーの取捨選択
VMOのプログラムを立案・企画した後は、ベンダーの取捨選択を行います。適切なベンダーを選定・管理することは、ベンダーマネジメントの重要な要素です。
ベンダーとの関係構築から解消までは、下記6つのフェーズで行われます。
- ベンダーの選定・評価
- 契約交渉と締結
- 取引関係の開始
- 移行と定着
- ベンダーポートフォリオの最適化
- 関係の清算・切り替え
ベンダーの選定と評価を行い、契約を締結して取引を開始した後に、必要に応じてベンダーの移行を行いましょう。
ベンダー価値の最大化
ベンダーマネジメントにおけるフレームワークの1つが、ベンダー価値の最大化です。ベンダーのパフォーマンスを最大限に引き出すことが、ベンダーマネジメントの重要な目的です。
ベンダーマネジメントでは、下記4つの管理を通じて、ベンダーとの協働による価値創造を目指します。
契約管理 | 契約内容を定期的に確認し問題が発生した場合に迅速に対応する |
---|---|
パフォーマンス管理 | ベンダーのパフォーマンスを定期的に評価しフィードバックを行う |
リレーションシップ管理 | ベンダーとの信頼関係を構築し長期的なパートナーシップを目指す |
デマンド管理 | ベンダーへの要求事項を明確に伝え適切なタイミングで必要なリソースを提供する |
契約管理、パフォーマンス管理、リレーションシップ管理、デマンド管理を通じてベンダーの価値を最大化しましょう。
ベンダーリスクの最小化
ベンダーとの関係構築において、ベンダーリスクの最小化は重要です。ベンダーリスクを最小化することで、プロジェクトの成功確率を高め、ビジネスの安定性を確保できます。
懸念されるベンダーリスクには、主に以下の5種類があります。
ファイナンシャルリスク | ベンダーの財務状況が悪化することにより企業が損害を被るリスク |
---|---|
オペレーショナルリスク | ベンダーのミスや不正行為などの影響により企業が損失を被るリスク |
コンプライアンスリスク | ベンダーが法令や規則を遵守しなかったことにより企業が損失を被るリスク |
戦略リスク | ベンダーの経営戦略がミスにより企業が損失を被るリスク |
地政的リスク | ベンダーの政治的な意思決定や状況により企業が損失を被るリスク |
ベンダーリスクは、事前に対策を講じることで、最小化できます。適切なリスク管理策を講じながら、プロジェクトの安定性を確保しましょう。
ベンダーマネジメントを導入しないことで発生するリスク3選
ベンダーマネジメントを導入しないことで発生するリスクには、下記3つが挙げられます。
- プロジェクトが遅れる
- 業務負荷が高くなる
- 責任範囲が複雑になる
1. プロジェクトが遅れる
ベンダーマネジメントを導入しないことにより、プロジェクトが遅れる可能性があります。ベンダーマネジメントはスケジュール管理をサポートしますが、高度な技術力やマネジメント経験が必要です。
ベンダーとのコミュニケーション不足や連携体制の不備がある場合、スケジュール遅延の原因となります。たとえば、プロジェクトを進めていたが、コミュニケーション不足から仕様変更が発生し、プロジェクトが大幅に遅延するケースもあります。
2. 業務負荷が高くなる
担当者の業務負荷が高くなることは、ベンダーマネジメントを導入しないリスクの1つです。複数のベンダーを同時に管理することで、担当者の負担が増大し、コミュニケーションコストやトラブル対応などの業務が加わります。
ベンダーとの契約交渉や進捗管理を自社内で担当する場合、業務量増加により担当者の負担が大きくなり、モチベーション低下につながるでしょう。
3. 責任範囲が複雑になる
ベンダーマネジメントが導入されない場合、責任範囲が複雑になるリスクがあります。複数のベンダーとの契約内容や責任範囲が異なるため、責任範囲が不明瞭になりがちです。責任範囲の不明確化によるトラブルが発生する可能性があります。
責任範囲の不明確化により、システム障害が発生した際に、原因究明と対応に時間がかかることが考えられます。
ベンダーマネジメントの成功のコツ
ベンダーマネジメントを成功させるコツは次の5つが挙げられます。
- VMOには技術力・マネジメント経験がある人材を配置する
- ベンダーの選定にこだわる
- 相互的に協力できる関係性を築く
- 現場の実態を把握・尊重する
- プロジェクトごとの総括を実施する
VMOには技術力・マネジメント経験がある人材を配置する
VMOには技術力・マネジメント経験がある人材を配置することで、成功の可能性が高まります。VMOは、ベンダーマネジメントの中核を担う組織です。
技術力とマネジメント経験を兼ね備えた人材を配置することで、ベンダーとの適切なコミュニケーションとプロジェクトの円滑な推進を実現できます。マネジメント経験のある人材が折衝や進捗管理を行うことで、プロジェクトの円滑な進行が期待できるでしょう。
VMOに技術力とマネジメント経験豊富な人材を配置することで、ベンダーとの技術的な議論や進捗管理を効率的に行えます。
ベンダーの選定にこだわる
ベンダーの選定にこだわることは、プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。過去の実績や契約内容を慎重に検討し、選定基準にブレのないようにしましょう。
最適なベンダーを選定するためには、複数のベンダーから見積もりを取ることが重要です。技術力や経験だけではなく、コミュニケーション能力や柔軟性などを評価した結果、最適なベンダーを選定しましょう。
相互的に協力できる関係性を築く
ベンダーマネジメントを成功させるためには、一方的ではなく協力できる関係性を築くことが大切です。ベンダーとの関係は、対等なパートナーシップに基づいたものであることが重要です。
一方的な指示や要求ではなく、相互理解と協力を重視することで成果を生み出せます。パートナーシップを築くためには、ベンダーとの定期的な意見交換会を開催し、情報共有や課題解決を共同で行うことが必要です。
現場の実態を把握・尊重する
ベンダーマネジメントの成功のコツには、現場の実態を把握・尊重することが重要です。VMOにおいて、現場の人間が関わることなく計画が立てられる場合、プロジェクトの成功に結び付かないことも考えられます。
VMOは実態を把握し、現場の声を尊重した意思決定を行いましょう。現場の実態をプロジェクトに反映させるためには、現場メンバーとのワークショップの開催が効果的です。
プロジェクトごとの総括を実施する
プロジェクトごとの総括を実施することでベンダーマネジメントの成功率を高められます。プロジェクト終了後は成果と課題を分析し、改善策を検討することが重要です。プロジェクトの総括を通じて、ベンダーマネジメントの継続的な改善を図りましょう。
プロジェクト終了後にアンケートやインタビューを行い、ベンダーとの連携状況や課題を評価します。評価結果に基づきコミュニケーション方法を改善することで、効果的なベンダーマネジメントが実施できます。
まとめ
近年、クラウドサービスの普及により、企業はシステム開発から運用・保守までベンダーに仕事を依頼する機会が増加しています。IT人材不足が深刻化する日本では、自社だけで対応することは困難な状況です。
ベンダーとの関係を効率的に管理し、パフォーマンスを最大化するためにはベンダーマネジメントが重要です。ベンダーマネジメントを成功させるためには、自社のニーズにあった適切なベンダー選びが大切といえるでしょう。
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2006年よりシステム開発を行う。ユーザビリティ重視のアジャイル開発を得意とする。大手監査法人に採用された翻訳支援アプリや教育用アプリ、EC サイト、顧客管理システム等の設計、開発を手掛ける。機械学習/AI を用いた開発も行っている。
システム開発における VMO ではシステムを実際に使う人とのコミュニケーションも大切です。プロトタイプ作成時や各イテレーション終了時に、実際のユーザにシステムを使ってもらい、使いやすさを確認しましょう。
開発スタイルに応じて請負契約にするのか準委任契約にするのか決定し、双方が納得のいく契約を作成します。一般的に、ウォーターフォール開発には請負契約、アジャイル開発には準委任契約が向いているとされています。
アジャイル開発の場合、プロダクトオーナーを VMO から選ぶなら素早い決定を行えます。プロダクトバックログの管理には Asana や Jira といったプロジェクト管理ツールを活用できます。
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もしも今現在、
- どの開発会社に依頼したらいいかわからない
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