原状回復工事とは?主な工事内容や手順・タイミング・費用相場を解説
- 原状回復工事とはどのような工事?
- 原状回復工事の手順やタイミングは?
- 原状回復工事の費用相場は?
「原状回復工事はどのようなことをするの?」「どれくらいの費用が必要?」とお悩みの会社経営者は必見です。
原状回復工事とは、オフィス・テナントなどの物件を原点の状態に回復する工事です。どこまで工事を行うのかは賃貸借契約書に書かれていますが、契約書に従い入居前の状態に戻す工事を指します。
本記事では原状回復工事の内容や手順・タイミング・費用相場を解説します。記事を読み終わった頃には、原状回復工事の必要性や手順・費用相場を理解して、退去予定日までに契約書どおりの原状回復ができるでしょう。
もしも今現在、
- 適切な原状回復の範囲がわからない
- 工事費用がどの程度か想定できない
- 工事の進行管理が難しい
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原状回復工事とは物件を入居前の状態に回復する工事
原状回復工事とは、退去時に物件を入居前の状態に回復させる工事のことです。賃借人(借主)が、物件を契約時の状態に戻します。契約終了までに原状回復工事を終わらせる必要がありますが、物件の復元状態は契約書どおりに行うことが一般的です。
工場を建てるために借り受けた土地を更地(原っぱの状態)に戻して返却することから「原状」の言葉が使われています。「原状回復」は、賃借契約書のなかで使われることが多く、元の状態に戻すこと、あるいは元の状態を指すケースが多いです。
オフィスの原状回復工事の主な工事内容
オフィスの原状回復工事の主な工事内容は、以下のとおりです。
- パーティションや造作物などの解体
- 壁紙・床板・天井ボードの張り替え
- 建具や窓枠・床板などの再塗装
- 什器・備品・家具などの撤去
- 床・壁・天井などのクリーニング
原状回復工事は、入居前の状態に戻す工事のため「リフォーム」とイメージするとわかりやすいです。入居前にないものは解体する必要があり、壁や床・窓枠などは元の状態に戻さなくてはなりません。
入居時の汚れによって元の状態から変化がある場合は、適切なクリーニングを行います。解体やリフォーム工事に騒音が伴う場合は、工事日の制約を設けている場合もあるため、確認のうえ原状回復工事を行いましょう。
原状回復工事と工事区分の関係性
原状回復工事は、賃貸契約書に「工事区分」が決められており「工事業者の選定と工事費用の負担が誰なのか」が決められています。通常、建築工事には工事区分が決められており、工事区分によって工事業者の選定と工事費用の負担の担い手が異なります。
工事区分の種類と概要は、以下のとおりです。
工事区分 | 工事業者の選定 | 工事費用の負担 |
---|---|---|
A工事 | オーナー | オーナー |
B工事 | オーナー | 入居者 |
C工事 | 入居者 | 入居者 |
原状回復工事のほとんどはB工事に分類され、工事業者を選択できず、費用は入居者負担となるケースが多いです。
A工事:発注・工事費用ともにオーナー
A工事は、建物のオーナーが発注と工事費用の負担の両方を担います。工事対象範囲は、ビルの外壁・屋上・エレベーター・トイレ・エントランスなど、ビル共用部の修繕が多いです。テナント入居者とは関係のない建物のメンテナンスや修繕が該当します。
B工事:発注はオーナー・工事費用は入居者
B工事は、工事の発注はオーナー、工事費用の負担は入居者が担います。工事対象範囲は、空調・照明・防災設備・給排水管など、入居者の要望による建物全体の設備工事が多いです。原状回復工事は、B工事に含まれます。
C工事:発注・工事費用ともに入居者
C工事は、入居者が工事の発注と費用負担を担います。工事対象範囲は、LAN線や電話線の配線工事・内装工事・什器など、テナント入居者の管理範囲内の工事です。
原状回復工事の区分がC工事となる物件もあります。オーナーを経由せずに工事業者とやり取りできるため、費用や工期に柔軟性が生まれスムーズに進められるでしょう。
オフィスの原状回復工事の手順とタイミング
オフィスの原状回復工事の手順とタイミングは、以下のとおりです。
- 賃貸借契約書で原状回復義務の範囲を確認
- 施工行者による現地調査:契約満了日の6カ月前
- 原状回復工事の発注:契約満了日の2カ月前
- 原状回復工事の着工:契約満了日の1カ月前
オフィスやテナントなどの賃貸物件は、契約満了日までに原状回復工事を完了して明け渡すことが一般的です。契約満了日までに原状回復工事を完了させるには、契約満了日の1カ月前に着工する必要があります。
1. 賃貸借契約書で原状回復義務の範囲を確認
オフィスやテナントなどの賃貸物件の退去が決まったら、賃貸契約書で原状回復義務の範囲を確認しましょう。契約の内容によっては、元の状態に戻さなくていい場合もあるためです。どこからどこまで工事をする必要があるのか、事前に確認しましょう。
賃貸契約書の内容は契約前に確認するものですが、何年も前に契約した場合や当時の担当者がいない場合は解釈にズレが生じるケースもあります。契約書を事前に確認することで、原状回復工事をスムーズに行えるでしょう。
2. 施工行者による現地調査:契約満了日の6カ月前
原状回復工事の範囲を確認したら、工事業者とともに現地調査を行います。原状回復させるためにどのような工事が必要か、いくらかかるのかを確認するためです。
工事内容を確認し、どのように進めるかを検討します。工事業者と依頼者で具体的なデザインや手法を話しあう必要があるため、契約満了日の6カ月前を目安に行いましょう。
3. 原状回復工事の発注:契約満了日の2カ月前
原状回復工事の見積もりを確認したら、工事の発注を行います。工事業者は受注後すぐに工事開始となるわけではありません。工事業者は工事を受注してから、必要な材料を調達するため、契約満了日の2カ月前までに発注しましょう。
4. 原状回復工事の着工:契約満了日の1カ月前
原状回復工事の発注をしたら、工事の着工に移ります。工事の内容によるものの、契約満了日の1カ月前には着工しましょう。工事業者と話し合い、着工から完了までに1カ月以上かかる場合は、早めに着工できるように段取りしてください。
オフィスの原状回復工事の費用相場は1坪あたり2万〜10万円
オフィスの原状回復工事の費用相場は、以下のとおりです。
広さ | 費用相場(1坪あたり) |
---|---|
20坪未満 | 2万〜4万円 |
20〜100坪 | 3万〜6万円 |
100坪以上 | 5万〜10万円 |
表の金額は、1坪あたりの費用相場です。たとえば、19坪の物件は38万〜76万円、50坪の物件は150万〜300万円かかる計算となります。100坪以上になると、500万〜1,000万円規模の工事となるため、入居の際に退去時の費用を考慮して物件を選択するといいでしょう。
賃借人の原状回復義務とは
賃借人の原状回復義務は、以下のとおりです。
- 賃借人は賃借契約終了後の損傷に関して原状回復義務を負うこと
- 経年変化を含む通常摩耗・損傷に関しては原状回復義務を負わないこと
- 賃借人に故意・過失・善管注義務違反がない損傷に関しては原状回復義務を負わないこと
以上のルールは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に書かれています。原状回復に関するトラブルは多発しており、2017年に民法621条(賃借人の原状回復義務)が定められました。
原状回復義務の責任範囲
原状回復義務の責任範囲のうち、以下の内容は責任外とされるため賃借人に請求できません。
- 経年変化による通常摩耗・損傷
- 故意・過失などのない損傷
責任外となる損傷と責任を問われる損傷の事例は、以下のとおりです。
責任外となる損傷の事例 | 責任を問われる損傷の事例 |
---|---|
家具・設備の設置による床・カーペットなどのへこみ、設置跡など | 家具・設備などの設置・撤去の際に生じたキズ |
テレビや冷蔵庫などの設置で生じた壁面の黒ずみ | タバコ・線香などによって生じた壁紙の変色・匂いなど |
地震で破損したガラス・鏡 | ペットの飼育で生じた壁・床の傷み・匂いなど |
退去時の鍵交換 | 不適切な使用で破損した設備 |
オフィスの原状回復工事の注意点
オフィスの原状回復工事の注意点は、以下のとおりです。
- 工事業者が指定されている
- 原状復帰工事の範囲が曖昧になっている
- 多重下請構造になりがちで費用が高くなる
オフィスやテナントの原状回復工事は、物件規模が大きくなるため、どうしても工事内容・費用ともに大がかりになります。現状を把握することで、原状回復工事をスムーズに進められるでしょう。
1. 工事業者が指定されている
オフィスやテナントの原状回復工事は、工事業者が指定されていることが多いです。原状回復工事は「B工事」に該当するため費用は入居者負担ですが、工事業者は事前に決められています。
オーナーから手渡された原状復帰工事の見積書があまりにも高額で、退去を諦めてしまう法人も少なくありません。工事業者が指定されていると「工事範囲が曖昧なまま見積もりが作成されている」「多重下請構造になっている」などの理由で費用が高くなりがちです。
2. 原状復帰工事の範囲が曖昧になっている
原状復帰工事の範囲が曖昧になり、見積もり金額が高額になることは少なくありません。民法やガイドラインで定められているとはいえ、一般的な賃借人が見積書だけで「原状復帰工事の全体像」の把握は困難なためです。
見積もり金額が高額になる具体例は、以下のとおりです。
- 賃借契約の範囲外となる「共用スペース」の工事費用も含まれてしまっている
- 一部のみ補修が必要な床・壁などを「全面的に交換する」工事費用が含まれてしまっている
- 本来は賃借人の責任外であるはずの「経年劣化による通常摩耗・損傷」も工事費用に含まれてしまっている
以上の理由により、原状回復工事の範囲が曖昧になり費用が高額になる傾向があります。
3. 多重下請構造になりがちで費用が高くなる
原状回復工事は、多重下請構造になりがちのため費用が高い傾向にあります。
賃貸オフィスのオーナーは物件を建設する際のつながりを重視して、建築時のハウスメーカーやゼネコンを指定工事業者にするパターンがあります。一次請けのハウスメーカー・ゼネコンは、原状復帰工事を二次請け・三次請け業者に任せることが多いです。
多重下請構造のそれぞれの段階でマージンが上乗せされ、原状復帰工事の見積もり総額が膨らんでしまう傾向にあります。工事範囲が適正に収まっていても、二次請けで20〜30%、一次請けで20〜30%のマージンが乗れば、適正ではない見積もり金額となるでしょう。
オフィスの原状回復工事を失敗しない4つのポイント
オフィスの原状回復工事を失敗しないポイントは、以下のとおりです。
- 原状回復工事は自社で手配する
- 実績豊富な工事会社をピックアップする
- 3〜4社の候補先から相見積もりを取る
- 見積書の内容をチェックする
原状回復工事は、どうしても費用が高額になる点が懸念材料です。失敗しないポイントを把握して、費用が高くなりすぎないように気をつけましょう。
1. 原状回復工事は自社で手配する
原状回復工事は、自社で手配できると費用を抑えられます。原状回復工事は、工事区分がB工事のケースが多いです。すでに決められた工事業者のため見積もりが高くなります。オフィスの契約時に原状回復工事の工事区分を確認するといいでしょう。
賃貸契約書に「B工事」と書かれている場合でも、オーナーに交渉できます。入居後でも、時間をかけてオーナーとじっくり交渉を進めることで「C工事」に切り替えられる可能性があります。
2. 実績豊富な工事会社をピックアップする
原状回復工事を依頼する工事業者は、実績豊富な業者をピックアップしてください。原状回復工事に特化した工事業者を選択することで、手間もコストも抑えられるでしょう。
オフィス移転に伴う原状回復工事の場合、移転後に新オフィスの工事が発生する可能性があります。実績のある工事業者の場合は、原状回復工事に加えて新オフィスの工事も任せられるでしょう。
原状回復と移転先の施工を1社にまとめることで、退去から移転までのスケジュールもスムーズになり、費用も抑えられる可能性があります。
3. 3〜4社の候補先から相見積もりを取る
原状回復工事の工事業者を選択する際は、3〜4社の候補先から相見積もりを取りましょう。複数の候補先から同じ条件で見積もりを取ることで、各工事業者の提案力・対応力・費用を比較できるためです。
工事業者の候補先は、多過ぎても少な過ぎてもよくありません。依頼先を比較検討するための材料として、少なくとも3社程度の見積もりは必要でしょう。現地調査もせずに見積もりを提出するような工事業者は、候補先から除外したほうが無難です。
4. 見積書の内容をチェックする
工事業者から提出された見積書は、金額だけではなく内容もしっかりとチェックしましょう。どうしても総額にばかり目が行きがちですが、重要なことは「原状復帰工事の内容がわかる見積書なのか」です。
工事内容ごとに項目がわけられているか、工事費・材料費などが明細に記されているかなど、基本的なポイントをチェックします。「工事一式」と書かれた見積書は、信用してはいけません。
見積書の内容に不明点がある場合は、積極的に担当者に聞いてみましょう。工事業者の対応力・担当者のコミュニケーション能力をチェックできます。
まとめ
原状回復工事とは、退去時に入居前の状態に戻す工事のことです。入居者は「経年変化を含む通常摩耗・損傷」「故意・過失・善管注意義務違反がない損傷」以外の損傷に対して、原状回復義務があります。賃貸契約書を確認し、適切な工事を行いましょう。
原状回復工事は事前に工事業者が決められており、相見積もりが取れず、費用が高額になる傾向があります。オーナーと交渉して、工事業者の選定を任せてもらい、適切な工事業者に依頼しましょう。
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もしも今現在、
- 適切な原状回復の範囲がわからない
- 工事費用がどの程度か想定できない
- 工事の進行管理が難しい
上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の店舗デザイン・オフィス内装会社に一括で見積もりができ、相場感や各社の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。