病院コストの削減テクを解説!参考にすべきアイデアと成功事例を紹介
- 病院コスト削減のための鉄則とは?
- 固定費・変動費を抑える方法とは?
- 病院コスト削減の成功事例とは?
「病院のコストを削減するアイデアがあったら知りたい」と考えている病院の経営者の方、必見です。
病院のコストを削減するためには、残業時間、医療品・医療材料費、広告宣伝費を見直す必要があります。
この記事では、病院のコストを削減したい経営者向けに、固定費、変動費、人件費、広告費の削減、病院コスト削減の成功事例解説しています。この記事を読み終わった頃には、病院のコスト削減方法がわかります。
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病院コスト削減のための鉄則
病院コスト削減といっても、人の命を預かるところですから、削減にも十分な注意が必要です。注意というよりも鉄則といったほうが正しいかもしれません。
ここでは病院コスト削減のための4つの鉄則をご紹介します。
- 鉄則1:コスト削減の方針の提示
- 鉄則2:リーダーの育成
- 鉄則3:当事者意識の徹底
- 鉄則4:お金をかけない方法を考える
鉄則1:コスト削減の方針の提示
通常、コスト削減は上の指示で行われます。病院であれば音頭をとるのは院長ということになります。
院長の号令一下によって、コスト削減が行われます。とはいっても、コスト削減の指示は明確なものでなければ、現場は迷ってしまうでしょう。
また、コスト削減を行うのは現場で医療に従事する医師や看護師、事務方、作業療法士などです。現場レベルで行うのは、備品の無駄遣いをしない、用紙の無駄遣いをしないということに代表されます。
上のレベルでは、賃金制度の見直し、さらには取引先の変更などもあるでしょう。特に取引先の変更となると、現在の取引先と値段交渉をしながら、他の取引先の陰をチラつかせるといったテクニックも必要になります。
強引な手法をすると、適正な取引ができなくなるので注意が必要です。いずれにしても、コスト削減を行うにも上のレベルよりも、現場レベルで徹底させるには、コスト削減の方針をしっかりと指示する必要があります。
鉄則2:リーダーの育成
上から現場へのトップダウンは指示系統の流れとしてはとても大切です。それでも、上からの指示を適切かつ正確に行うには、現場や中間管理職の強いリーダーシップが必要です。
急がば回れではありませんが、病院コストの削減を実行したいのであれば、その前にリーダーを育成することが大切です。話の流れから、上からの指示を忠実に実行する「イエスマン」の育成が望まれると思いがちです。
しかし、自分の考えで臨機応変に対応することができるリーダー像が理想です。また、イエスマンであれば部下からの指示を得る事は難しいでしょう。
病院コストの削減には、病院全職員の全面的な協力が必要なのは言うまでもありません。優れたリーダーであれば、病院経営に何が必要で、どのようにコスト削減をするべきか、また上層部の考えを的確に理解するでしょう。
また、現場思いであることも大切です。上からの指示と下からの突き上げで損な役回りですが、難しい役目をそつなく的確にこなすリーダーの育成は、病院のコスト削減に欠かすことはできません。
鉄則3:当事者意識の徹底
上層部からの指示、リーダーの指示があっても、それを実行する職員の意識がコスト削減と乖離していれば意味がありません。コスト削減の対象が自分のお金ではなく病院のお金ということで、どこか当事者意識に欠けてしまうのです。
病院はつぶれないといった、楽観的な気持ちが支配しているのかもしれません。過度な危機意識を持つ必要はありませんが、それでも、コスト削減が結果的に自分たちの利益になるということも、コスト削減の指示の中に織り込むようにしてもいいでしょう。
当事者意識の徹底は、病院のコスト削減に欠かすことはできません。実行するのが職員なので当然のことですが、そこが一番の鉄則といえます。
ときには、荒療治として決してウソではないのですが、「経費がかさめば給料カットもあり得る」といったことも宣言したほうがいいかもしれません。まずは、職員に当事者意識を持たせることが大切になります。
鉄則4:お金をかけない方法を考える
病院コストの削減テクの最たるものは、お金をかけないことです。これは何よりもシンプルなことですが、言ってしまえば簡単です。
しかし、これを実行することが難しいので、誰もが頭を悩ませてしまうのです。それでも、「これはお金をかけなくても他に良い方法があるのではないか…」と、常に問題意識を持つことはとても大切です。
たとえば、巨大な看板を設置しても、人の目に触れなければ意味がありません。何カ所も設置するよりも設置箇所を少なくしても、宣伝効果に違いがないかもしれません。
実行して検証するには時間がかかりますが、そういった問題意識を持ち、ときには果敢に実行することも大切です。お金をかけないことを考えることはとても大切なことです。もちろん、お金をかけなくてはいけないところはたくさんあるので、まずは、小さなことから始めてみるのもよいでしょう。
病院コストの削減(固定費の場合)
損益で考える場合、固定費の削減を真っ先に考えるべきです。固定費とは、毎月決まった額が出ていくお金です。一般の家でしたら、住宅ローンなどが筆頭で、光熱費なども固定費にあたります。
もちろん給料なども固定費に含まれます。ここでは、病院コストの削減を固定費の場合について考えてみます。
- 固定費削減(1)固定費を変動費に
- 固定費削減(2)積み上げることの重要性
固定費削減(1)固定費を変動費に
支出については、固定費ともう一つ変動費があります。固定費と対比する形となる変動費は、その名前の通り、売上や患者数に連動して変動する支出です。
それでは、固定費を変動費に変えるというのはどういったことでしょうか。実は、「利益を上げるためには固定費を変動費に変えたほうがいいですよ」というのは、経営コンサルタントの常套句です。
こういってしまえば聞こえが悪いのですが、これは、経営手法の鉄則と言えます。固定費が経営を圧迫している…経営者がよく思うことです。
そうなると、経営コンサルタントの言っていることは正しいと言えるのですが、ここでいう固定費を変動費に変えるというのは、人件費の事を指しています。
変動費の方法
察しの良い人は、人員整理と考えがちですが、これも一つの方法です。また、正規雇用を止めて非正規(パート職員)を増やすのも同様です。
病院経営の中では、アウトソーシングできる部分は少ないと思いがちですが、それに果敢に挑戦している病院もあるようです。
荒療治としては、毎月の給料などベースアップを廃止して、賞与を増やした病院もあります。定期昇給の抑制も固定費を変動費化する一つの手法です。
労使の合意も必要ですし、同一労働同一賃金などの問題もあるので、一筋縄ではいきませんが、固定費の変動費化を経営者としては考えてみるのも必要なことです。
固定費削減(2)積み上げることの重要性
こちらは単純な方法です。昼休みや外来がいないときなどは照明を暗くするなどの対処を行うのです。
病室などは難しいとは思いますが、廊下などでは可能でしょう。光熱費の節約となると微々たるものと思いがちですが、大きな総合病院クラスとなると、かなり大きな節約となります。
仮に、一日の節約費が100円であっても、結果は大きく違ってきます。「微差が大差を生む」という言葉もあります。
一日100円の節約でも年間では36,500円です。これは大きな削減といってもいいでしょう。
コスト管理の意識改革
常にコスト削減を…そうなると息が詰まってしまうと考えがちです。しかし、そこが意識改革です。
常に病院コスト削減を考える。コストを削るにはどうしたらいいのか…そんなことを常に考えることが普通になることで、コスト削減が成功すると考えていいでしょう。
ここでは、コスト管理について2つご紹介します。
- コスト管理(1)元に戻さない
- コスト管理(2)改善効果に対して柔軟に対応
コスト管理(1)元に戻さない
コスト削減に取り組むと、最初のうちは全員が意識して取り組むのである程度の効果が出ます。しかし、そこで安心してしまう…監視の目を緩めてしまう…結果として一過性のもので終わってしまう。
コスト削減を謳っても、年に数度の「コスト削減週間」だけ、効果が出るというのでは意味がありません。常に低コスト…というのが常態化したらいいのですが、数値としてわかるのが上層部だけではなく、かかる固定費をオープンにすることで、コスト管理を徹底させることが大切です。
また、一度減少した固定費を元に戻さないようにしなくてはいけません。
コスト管理(2)改善効果に対して柔軟に対応
病院コスト削減に着手しても、すぐに目に見えて効果が出るというものではありません。「この方法で効果が出るのだろうか…」短絡的に考えがちです。
効果が出ないのにずっと続けていくのは苦痛なものです。しかし、成功するか失敗するかはやってみないとわかりません。
コスト削減の改善効果については結果にコミットしたくなりますが、柔軟に対応する必要があります。また、方針が常に正しいというものでもありません。
ある程度の期間で効果が出ないと考えたら、方針を変えるといった柔軟な思考も必要です。
病院コストの削減(変動費の場合)
病院コストの削減の中で変動費について考えてみます。変動費は、患者数によって変わってくるので、予測がつかないと考えがちです。
それでも、毎年ある程度変動費というのは計算できるものなのです。ここでは、変動費の削減について考えてみます。
- 削減アイデア(1)医薬品の削減
- 削減アイデア(2)医療材料費の削減
- 削減アイデア(3)検査委託関連項目の削減
削減アイデア(1)医薬品の削減
医薬品の削減をして大丈夫?と考えがちですが、在庫を抱えているだけでも大きな変動費負担となります。変動費の出費を抑えるなら、医薬品の在庫削減(この場合は買いすぎ防止)を進めていかなくてはいけません。
もちろん、ある程度の在庫数は必要ですから、そのあたりは医師と看護師、薬剤師などが話し合って適正在庫数を決めなくてはいけません。
品目数を削るのも変動費削減に効果的です。
削減アイデア(2)医療材料費の削減
医療材料費は医薬品と基本的に考え方は一緒です。過剰な在庫にならないようにしなくてはいけません。
医療材料費となると、購入量を多くして一つひとつの単価を下げるのも一つの方法となりますが、ここでは、適正在庫と全体の価格を考えて判断するべきです。
削減アイデア(3)検査委託関連項目の削減
委託ですから、メスが入りにくい変動費と考えがちです。しかし、適正な委託なのか、委託先を変えることで、費用を抑えることができないかといったことは常に考えるべきです。
毎年決まり切ったことで馴れ合いになることは避けなくてはいけません。交渉によって委託先から価格の譲歩を引き出すこともできるかもしれません。
病院コストの削減(人件費の場合)
病院コストの中でももっとも大きなウエイトを占めるのが人件費です。とかく人件費の削減というと人員整理に目が向きがちですが、看護師に代表されるように、病院の人手不足は深刻です。
そのため人件費の削減は人員整理以外で行うのが一般的です。以下の2つのアイデアがありますのでご紹介します。
- 削減アイデア(1)残業時間の削減
- 削減アイデア(2)給与の見直し
削減アイデア(1)残業時間の削減
人を減らせない中で、人件費削減を行うとなると、残業時間を削ることが一番です。過酷で長いと評判の医療現場において、残業時間を削るのは並大抵ではありません。
医療現場には繁忙期もあります。恒常的で仕方がないとあきらめるでのはなく、残業を減らす努力をしないと、いたずらに離職を招いてしまう事態にもなりかねません。
業務負担の偏りも同じです。効率化を図り、足りないところには人的資源を導入し、空いたところは人を減らすといった業務改善をすることで、残業時間を減らして行かなければいけません。
削減アイデア(2)給与の見直し
給料の見直しというのは給料のカットだけではありません。これをすると、離職を招いてしまいます。
数字のマジックと思われがちですが、給料の見直しをするだけで、社会保険料を節約することができます。一人当たり6万円近い節約ができると、かなり大きいと言えるでしょう。
これは、標準報酬月額と各等級による「給与額の幅」を利用する方法です。上層部の判断が必要になりますが、人件費削減の奥の手として活用する価値はあります。
支出管理による経費削減
固定費の中でも3K費用と言われるのが、以下の3つです。これらを削減することは病院コスト削減においてとても大切です。
- 広告宣伝費
- 交通費
- 接待交際費
必要経費ともとられがちで、ここにメスを入れると病院の活力がなくなりかねないので、削減には注意が必要です。それぞれの費用で削減できるアイデアを解説します。
削減アイデア(1)広告宣伝費
現在行っている、広告宣伝費の内訳を全て洗い出します。病院は必要な人が来てくれるので、宣伝は必要ないというのは前近代的な考えです。
現在は、患者さんでも取り合いになっているといっていいでしょう。電車の中吊り広告にも病院が出ている時代です。
それでも、本当に広告が必要なのかもしっかりと把握する必要があります。また、看板を出しても維持管理費がかかります。
ある程度名前が売れているのであれば、思い切って広告宣伝費をカットすることも必要です。
削減アイデア(2)旅費交通費
出張を少なくするなどですが、医師や看護師の講習会などは削ることはできません。出張費として宿泊代を削るなどの措置を執るのが現実的です。
また、決まった額である出張手当の減額などを行うといいでしょう。車での移動の場合はETC割引の利用は必須です。
削減アイデア(3)接待交際費
現在は、接待交際費ゼロという会社もあるくらいです。医師などは、製薬会社からの接待もありますが、病院側が負担する接待交際費はゼロにしてもかまわないかもしれません。
病院コスト削減の成功事例
病院コスト削減の成功事例について、湘南鎌倉総合病院の場合をご紹介します。
神奈川県にある湘南鎌倉総合病院では、院外処方によって経費削減を行いました。経緯は、「薬の待ち時間に対するクレーム」「薬剤師のマンパワー不足」「診療報酬の改定」「消費増税」など、院内処方についてさまざまな問題が噴出したのです。
そこで、考えたのが院外処方です。これについては湘南鎌倉総合病院が全く斬新な手法をとったわけではなく、院外処方は時代の流れてきなものもありました。
患者さんの利便性がネックとなっていたのですが、待ち時間の解消が大きな成果となり、患者さんからのクレームも無く(というよりも院外となったので声が聞こえなくなった…というのが大きいかもしれません)院外処方は、病院コストの削減に大きく寄与したのです。
ただし、薬価差益がなくなったので、大きな利益ということにはならず、人件費のカットには大きく貢献したということです。
それでも、病院内に薬剤師が一人もいなくなるということではなく、外来処方が院外になったということで、病棟薬剤師はそれまでどおり、院内勤務となっているのも付け加えておかなくてはいけません。
まとめ
病院コスト削減について見てきました。一般的な会社にはない病院特有の問題があります。
病院が抱える問題点というのは、慢性的な人手不足です。医師や看護師の待遇(給与面)を良くしないと、離職されかねない問題も抱えています。
そのため、病院コストの中でも人件費のカットは聖域とされてきた経緯があります。その中にあって人員整理はもってのほかといっていいでしょう。
その中で、即効性の高いコスト削減は、固定費を如何に削るかにかかっているといっていいでしょう。実際に病院は利益追求よりも、良い意味で「いかに患者をさばく」かに力点が置かれてきました。
そのため、病院コストの削減も「やればできる」というレベルではなく「かなり伸びしろがある」と考えていいでしょう。短期的な視野では、3Kといわれる、「広告費」「旅費交通費」「交際費」の削減はすぐにでもでき、即効性の高いものです。
長期的な視野については、病職員全員の意識改革によって、省エネ意識などを脳裡に焼き付けることで病院コストの削減が実行できるでしょう。
埼玉大学電気工学科卒業、同専攻科修了後、製造業に勤務し、広島で中小企業診断士の資格取得を機にコンサルティング会社を起業する。現在起業より24年目になるが、当初は経営の営業、製造等の個別の機能、ISO取得等をコンサルティング支援しており、約十年経過後ISO関連事業を協力者に譲り、当初独立の目標であった経営・事業支援を中心に事業活動をはじめ現在に至る。この間広島中小企業診断協会の理事、専務理事、現中小企業基盤整備機構のチーフアドバイザー、中国経済産業局の事業評価委員などを務めた。特に経済産業局の事業評価委員の6年の経験はのちのコンサルティングに大きな影響をのこす。経済産業省中国経済産業局、財務省中国財務局の認定になる「経営革新等支援機関」として昨年再認定をいただき、活動している。個人としては中小企業診断士、ITコーディネータの資格を持ちコンサルティングに勤めている。
一言でいえば、経費節減を目的化しないでいただきたいということです。どんなに優れた組織であってもいつか習慣化した時には行き過ぎになる可能性があります。
少し前に似た件としてありましたが銀行での預金数値目標達成が目的化し、社会的に非難を浴びる行為にまで至った件です。本質的に同じ原因と考えられます。その業務が目的化し行き過ぎたのです。
経営・事業はますます環境・社会に対して責任を持つガバメントが要求されるようになってきています。ESGの順守です。法令順守をしていれば良しだけではたりないと思われる社会・環境に変わってきています。ご留意をお願いいたします。
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。
もしも今現在、
- 自社の問題に対する解決策が見つからない
- 専門性・実績を持つコンサルタントを選びたい
- コンサルティング料金が適正か判断できない
上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の経営コンサルタントに一括で見積もりができ、相場感や各コンサルタントの特色を把握したうえでコンサルタントを選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。
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