給与体系の変更手続きを徹底解説!注意すべき同意書の書き方とは?

OGI社会保険労務士事務所
監修者
OGI社会保険労務士事務所 社会保険労務士 荻島 稔
最終更新日:2024年01月09日
給与体系の変更手続きを徹底解説!注意すべき同意書の書き方とは?
この記事で解決できるお悩み
  • 給与体系の見直しで就業規則を変更する必要がある?
  • 就業規則変更の手続きの流れは?
  • 給与体系変更に関する注意点は?

「給与体系の変更を考えているが、どのように進めるべきか?」疑問を持つ経営者や人事担当者の方必見。適切な給与体系は従業員のモチベーション向上に直結し、企業の競争力強化にも繋がりますが、変更には慎重な計画と実行が必要です。

この記事では、給与体系の変更を成功させるためのステップや考慮すべき要点について詳しく解説します。記事を最後まで読むと給与体系変更の流れや法的な規制、変更する際の注意点について理解できるでしょう。

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給与体系の見直しで就業規則を変更する必要がある?

常時10人以上の従業員を雇い入れている会社は、就業規則を作成して労働基準監督署に届出する必要があります。

この就業規則について、給与体系を見直すと変更しないといけなくなることをご存知でしょうか。

具体的には、以下のようなケースで給与体系見直しと同時に就業規則を変更する必要があります。

  • 固定残業代制度を新設する
  • 手当や従業員の給与について変更を加える
  • 給与体系に変更を加える

それぞれについて見ていきましょう。

固定残業代制度を新設する

「みなし残業代」と呼ばれる固定残業代制度を新設する場合、就業規則も変更する必要があります。

固定残業代とは毎月の実際の残業時間に関わらず毎月固定の残業代を支払う制度のことを指します。

最近では未払い残業代の問題などもあり、固定残業代制度を導入する会社が増えてきていますが、固定残業代制度を新設する場合は就業規則の変更が必要になるためご注意ください。

手当や従業員の給与について変更を加える

新しい手当の新設や従来の手当の廃止の他、従業員の給与の項目を変更する場合は就業規則を変更する必要があります。

給与体系に変更を加える

給与自体ではなく、給与体系の変更の際にも就業規則を変更する必要があります。

例えば、これまで年功序列型の給与体系であった会社が、給与体系の見直しで成果報酬型になるといった場合には、就業規則にもその詳細を記載する必要があります。

就業規則変更の手続きの流れ

給与体系に変更を加える場合、就業規則も変更する必要がありますが、その具体的な手続きの流れは以下のようになります。

  • 損益通算

    事業所得で赤字を出した場合、その分を給料所得で相殺でき、課税所得を減らすことが可能です。

  • 青色申告

    課税所得から最大65万円を差し引いた金額で申告できるため、納める税金を少なくすることが可能です

  • 就業規則の変更案を作成する

    まずは就業規則をどのように変更するかを決めて、その変更案を作成します。

  • 従業員代表者から意見を聴取する

    就業規則の変更案を作成したら、その変更案について従業員代表者から意見聴取することが義務付けられています。

  • 労働基準監督署に就業規則変更届を提出する

    従業員代表者から意見聴取が済み、問題がなければ、その変更案に「就業規則変更届」を添付して、労働基準監督署に提出します。

  • 就業規則変更について従業員に周知する

    就業規則が変更された後は、変更後に就業規則について従業員に周知しなければなりません。

給与体系の変更と同意書

まずは就業規則をどのように変更するかを決めて、その変更案を作成します。

具体的には、給与体系を変更することが「労働条件の不利益変更」にあたる場合に同意書が必要とされます。

まずは、この労働条件の不利益変更についてどのようなものなのか解説します。

労働条件の不利益変更とは

労働条件の不利益変更とは、その名の通り給与体系などにより労働条件が不利益になる方向に変更されることを指します。

労働条件の不利益変更が簡単に認められると労働者がどんどん働きづらくなってしまうため、労働条件の不利益変更には一定の要件が設けられています。

なお、労働条件とは給与の額の他、休日や勤務時間、福利厚生など一切のことを含みますが、給与体系の変更が必ずしも労働条件の不利益変更にあたるわけではありません。

ちなみに、給与体系を年功序列型から成果報酬型に変えるようなケースでは、利益を得る人もいれば不利益を被る人もいますが、不利益を被る人がいる以上、労働条件の不利益変更に該当するという考え方がなされます。

労働条件の不利益変更を行うのに必要な条件

労働条件の不利益変更を有効に行うには、以下のうちいずれかの方法を取る必要があります。

  • 従業員や労働組合から同意書を得ること
  • 就業規則を変更し、それを従業員へ周知すること

ただし、後者の場合は変更後の就業規則を周知させ、かつ就業規則の変更が合理的な場合に限られ、合理的かどうかは最終的に裁判で判断されることになるため、実質的には同意書を得ることが唯一の方法と考えたほうがよいでしょう。

なお、従業員代表から同意書を得ればよいというわけではなく、個々の従業員から同意書を得る必要があります。

給与体系変更に関する注意点

給与体系変更で労働条件の不利益変更にあたる場合は個々の同意書を得る必要があることをお伝えしましたが、ここではそれら手続きを含めて、給与体系変更に関する注意点をお伝えしていきたいと思います。

同意書を得ても裁判で無効とされるケースがある

労働条件の不利益変更を有効にするために個々の労働者から同意書を得る必要がありますが、例え同意書を得ていたとしても裁判で無効とされるケースがあります。

この点について、完全な解決策はありませんが、少なくとも以下のような点に注意しておくようにしましょう。

  • 個々の従業員から同意書を得る
  • 不利益になる内容についても明確に説明する
  • 説明内容について記録する

それぞれ解説します。

個々の従業員から同意書を得る

まず、先述の通り同意書は従業員代表からではなく、個々の従業員から受け取る必要があります。

また、個々の従業員に周知する方法として、朝礼などで全員に話せばよいというわけではなく、1人1人個別に面談して内容を説明し、同意を得ることが大切です。

不利益になる内容についても明確に説明する

変更の内容について、従業員にとって不利益になる部分も含めて明確に説明する必要があります。

過去、個別に同意書を得ていたのにも関わらず、具体的に不利益になる部分の説明がなされていなかったとして同意書を無効とした判例があります。

また、労働条件の不利益変更について説明する際には、不利益変更することの必要性についても説明する必要があるとされています。

例えば「現行の給与体系だと人件費が高くなりすぎ、経営に支障が生じる」といったものです。

説明内容について記録する

個々の従業員と面談を行った際には、会社側が説明を行った際、労働者側から質問を受けた内容とそれに対する回答を記録しておくとよいでしょう。

これは決まりがあるわけではありませんが、いざ裁判になったときに記録を取っておくと、裁判所に対して会社の対応を説明するのに役立ちます。

まとめ

給与体系の見直しを進める手続きにおいて、就業規則の変更をする必要があることや、労働条件の不利益変更にあたる場合には個々の従業員から同意書を得る必要があることをお伝えしました。

本記事でご説明したとおり、給与体系の見直しでは労働者側が一方的に不利な状況にならないよう、法律でさまざまな取り決めがなされています。

いざ労働者に裁判を起こされると大きな損害を負ってしまう可能性もあることから、できれば給与体系の見直しの最初から弁護士や社会保険労務士など専門家の意見を取り入れておくことが大切です。

とはいえ、こうした専門家を知らない場合や、知っていても専門外であるケースもあるでしょう。

そうした方におすすめなのが弊社の運営するビジネスマッチングプラットフォーム「比較ビズ」です。

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給与体系の見直しとその手続きについてお悩みの方は、まずは比較ビズの利用を考えてみてはいかがでしょうか。

監修者のコメント
OGI社会保険労務士事務所
社会保険労務士 荻島 稔

1971年生まれ。埼玉県川口市出身。法政大学理工学部建築学科卒業。大学卒業後は某ビールメーカーの飲食部門を始め、数社の飲食チェーンにて、店長、スーパーバイザー、営業推進、人事総務部門で勤務する。これらの経験を経て、企業における人材の重要性を再確認し社会保険労務士として独立開業する。得意な業界は出身である飲食業界をはじめ、建設業や小売業など。モットーは「満足度重視」「誠実対応」「迅速対応」。

原則として使用者が一方的に労働条件の不利益変更を行うことは許されません。つまり労働条件の不利益変更を有効に行うためには従業員の同意が必要です。 同意は口頭でも成立はしますが、後に「聞いた、聞いていない」を避けるためには、同意書に署名をしてもらうのが良いでしょう。

更に従業員の同意は「自由な意思」に基づいて行われる必要があります。強制や強要により、本人の選択する余地がなく同意書を得た場合に、それを無効とした判例もあります。当然、退職や解雇を盾として同意を迫ることも問題となるでしょう。

給与体系を含む労働条件は従業員にとって働くうえで最も重要なことになります。最終的には十分な情報提供と誠心誠意の説明が大切であると考えます。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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