青色申告決算書での貸借対照表の書き方・見方は?3つのポイントもわかりやすく解説
- 貸借対照表ってそもそもなぜ必要なの?
- 青色申告決算書における貸借対照表の書き方って?
- 貸借対照表で注意して見るべきポイントはある?
青色申告で確定申告するには青色申告決算書を提出する必要があります。同時に「貸借対照表」と呼ばれる書類も作成する必要があるため、「難しくて自分には理解できなさそう…」とお悩みではありませんか?
この記事を読めば貸借対照表についての基本的な内容から具体的な書き方まで、初心者の方でも理解できるようになります。貸借対照表の基礎をマスターしたい方はぜひ参考にしてみてください。
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そもそも貸借対照表とは?
基礎知識に自信がないという方に向けて、貸借対照表について簡単に紹介します。
貸借対照表とは特定の時点における資産・負債の内訳書
貸借対照表とは、期末や歳末など特定時点での資産・負債の内訳を見られる内訳書です。現金・不動産・銀行などから借りているローンはいくらか、といった内容を記載します。
貸借対照表の構成
青色申告決算書における貸借対照表は、1年間の営業活動の結果、財産の状態を表します。日々の取引を複式簿記による方法で記帳しておかなければなりません。
資産を左側に書き、負債と純資産を右側に書きます。正しく書けば資産の合計値と負債&純資産の合計値が一致する仕組みです。
損益計算書との違い
貸借対照表と似たものとして「損益計算書」があります。損益計算書は「一定期間の収支の額」を示すものなので、ある特定の時点で収支を見られる損益計算書とは対をなします。
なぜ青色申告で貸借対照表が必要なのか?
白色申告の場合は簡易的な帳簿のつけ方でも問題がなく、貸借対照表を提出する必要はありません。
なぜ青色申告で貸借対照表が必要なのか、2つのポイントに分けて説明します。
- 最大65万円の青色申告特別控除を受けるため
- 青色申告すると受けられる優遇措置があるため
最大65万円の青色申告特別控除を受けるため
最も効果が分かりやすく利用しやすいのが青色申告特別控除です。青色申告特別控除とは、事業所得や不動産所得などの収支を計算した上で、総所得額から最後に差し引ける控除のこと。一定の要件を満たせば最大65万円分もの控除を受けられます。
青色申告で65万円の特別控除を受けるための条件
青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、以下6つの条件を満たさなければなりません。
必要事項 | 詳細 |
---|---|
青色申告承認申請書を提出する | 事業を開始して2ヶ月以内の提出が必要 |
事業所得か大きな不動産所得がある | 継続した事業での収入がある・10部屋以上の部屋があるアパートやマンションなどを持っていれば事業規模の不動産所得として認められる |
複式簿記で取引を記帳している | 借方・貸方・摘要を記入する |
発生主義の方法を取っている | 取引が発生した時点で金額を計上している |
貸借対照表と損益計算書を添付する | 客観的な目線で営業実績を見られるようにしている |
申告期限を守る | 2月16日〜3月15日までの期限を守る |
e-Taxによる申告か電子帳簿保存をする | 電子申告、もしくはデジタルで帳簿を保存する |
青色申告の対象は「事業所等」「不動産所得」「山林所得」がある人のみです。所得の分類が山林所得のみの場合、上限控除額は10万円分になることを覚えておきましょう。
発生主義は「現金主義」と対を成す考え方です。現金を受け取った時点で帳簿に書くのではありません。そもそも支払いが確定した時点で帳簿をつけるのが、65万円の特別控除を受ける要件の1つです。
条件を満たさない場合でも、十分な所得があれば税務署に事業的規模と認められるケースも存在するようです。
青色申告すると受けられる優遇措置があるため
青色申告すると、特別控除を利用できる以外に以下のような優遇措置を受けられます。
- 家族への給与を青色事業専従者給与として経費計上できる
- 回収不能となった賃料を経費計上できる
- 損失の3年間繰越が可能になる
それぞれについて見ていきましょう。
家族への給与を青色事業専従者給与として経費計上できる
事業的規模と認められる場合、家族を雇うと給与分を「青色事業専従者給与」として経費計上できます。
白色申告の場合でも事業専従者控除を利用することで家族への給料を経費計上できますが、白色申告では配偶者86万円、配偶者以外の家族50万円と上限が定められています。
青色申告、白色申告どちらにおいても、優遇措置を受けるには年齢15歳以上かつ生計を同じくし、6カ月以上専従者として働いていることが条件となります。
回収不能となった賃料を経費計上できる
不動産賃貸業を営んでいる場合、回収できなくなった賃料を経費として計上できます。回遊不能分の額を計上できるのです。事業的規模でないのに計上してしまったときには所得の計算をやり直す必要があります。
損失の3年間繰越が可能になる
1年間の事業運営で赤字になった場合には、翌年以降3年間繰越が可能です。事業的規模でない場合には赤字を繰り越すことができないので注意。
事業的規模でない場合では、ある年に大きな赤字を出して翌年大きな黒字となったケースでも、通常通り税金を納める必要があります。
青色申告の貸借対照表で見るべきポイント3つ
青色申告の貸借対照表では、以下3つのポイントを見ることで自分の営業成績が分かりやすくなります。
- 自己資本比率
- 流動比率
- 流動比率
どれも事業の安定性を測るために必要なものであるため、覚えておきましょう。
自己資本比率
自己資本比率とは、総資産の中の返済不要のお金です。自己資本比率が高ければ「経営が安定している」と税務署にも世間的にも読み取られるため、重要な数値です。
自己資本比率は「自己資本÷総資産×100(%)」で求められます。自己資本比率の詳しい計算方法は以下の記事で解説しているため、より詳しく知りたい方はお読みください。
流動比率
流動比率は流動資産を流動負債で割ったものです。経営の短期的な安全性を表す指標といわれています。流動比率は「流動資産÷流動負債×100」で求められ、算出された数字が100%以上であれば安定性があると見なされます。
当座比率
当座比率とは当座資産の流動負債に対する割合を指しています。経営において短期的な債務返済能力がどの程度あるかを表す指標です。
当座比率と流動比率の違いは現金化のスピードにあります。流動比率では1年以内で現金に変化し得るものを表しますが、当座比率は流動比率よりも長いスパンで経営指標を見たいときに使われます。
貸借対照表がなくても青色申告特別控除は受けられる?
青色申告特別控除自体は、貸借対照表が無くても受けられます。貸借対照表は65万円の青色申告特別控除を受けるのに必要な書類です。
事業的規模でない場合や貸借対照表をつけないときには、10万円の青色申告特別控除を受けられることになります。
青色申告決算書における貸借対照表の書き方3ステップ
貸借対照表を書くには左側を借方、右側を貸方とする複式簿記のルールを守って書く必要があります。初心者の方は基本的なステップを覚えておかなければなりません。
貸借対照表の書き方を簡単に説明します。
- 日常の取引を複式帳簿で記録しておく
- 確定申告決算書に転記する
- 期首欄の金額も記入する
1. 日常の取引を複式帳簿で記録しておく
確定申告をするには、まず記入する材料を揃えておきます。取引があるたびに出納帳に記帳しておき、確定申告の時期に備えましょう。
確定申告の準備を本格的に始めたら、日々の取引を複式簿記で記帳したものを期末に貸借対照表にまとめます。
2. 確定申告決算書に転記する
貸借対照表を作成したら、確定申告時に提出する青色申告決算書の4ページ目にある貸借対照表の期末欄に転記します。
3. 期首欄の金額も記入する
前期末時点の貸借対照表を参照しながら期首欄の金額も記入すれば、青色申告決算書の貸借対照表の作成は完了です。
まとめ
青色申告決算書における貸借対照表に関して、そもそも貸借対照表とはという基礎知識から、貸借対照表のポイントと書き方について説明しました。
日々の複式簿記の記帳方法については、ある程度しっかり勉強する必要があります。ただし「勉強している暇がない」という方も多いでしょう。
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税理士。関西学院大学経済学部卒業。大学卒業後、証券会社に入社し営業職に従事。証券会社を退社後、税理士事務所に勤務しながら税理士資格を取得。税理士事務所を退社後、大阪梅田で税理士法人スフィーダを設立。中小企業・個人事業主を中心とした税務アドバイス、事業承継の支援などを行っている。経営革新支援機関認定。
会計システムを導入しご自身で入力をする方法、税理士に依頼し入力をしてもらう方法が考えられますが、自分で入力するのは手間がかかりますし、税理士に依頼しても報酬が高くなります。
自分で入力するならどれくらいの手間がかかりそうか、税理士に依頼する場合はどれくらい報酬がかかるのかを検討し、最終的に貸借対照表を作成するメリットがあるかどうかの検討をする必要があります。
なお、65万円控除は所得税だけではなく、住民税・国民健康保険料にも影響しますので、総合的に検討を行いましょう。
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- 自身の状況に合わせた税務アドバイスがほしい
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