確定申告に源泉徴収票は不要?おさえるべき項目・必要なパターンを解説

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2023年03月09日
確定申告に源泉徴収票は不要?おさえるべき項目・必要なパターンを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 確定申告に源泉徴収票は不要なの?
  • 源泉徴収票でおさえるべき項目はなに?
  • 源泉徴収票が必要なパターンは?

「確定申告に源泉徴収票が必要なのかよくわからない…」という方必見!

この記事では、確定申告に向けて源泉徴収票の準備を進めている方に、源泉徴収票の必要性や項目について解説します。 最後まで読めば、それぞれの取り扱い方の理解が深まり、源泉徴収票を正しく活用して確定申告できるようになります。

源泉徴収票がない場合の対応についても解説するため、確定申告の準備に不安がある方はぜひ参考にしてください。

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確定申告書の作成では源泉徴収票に記載された金額が必要

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確定申告書を作成する際は、源泉徴収票に記載された金額を転記する必要があります。源泉徴収票に記載された納付済みの所得税額と正確に計算した所得税額をあわせて申告し、過不足額を納付あるいは還付金として受け取るためです。

源泉徴収票は、会社と雇用関係を結んで給与を受け取っている従業員に対して発行されます。自分で確定申告をする必要のある給与所得者は、確定申告書作成のために源泉徴収票が必要です。

源泉徴収票は年末から年始にかけて発行され、従業員に配布されます。2月〜3月の確定申告の時期まで大切に保管しておきましょう。

源泉徴収票とは納税したことを証明する法定調書

源泉徴収票とは、所得税を納税したことを証明する法定調書です。従業員を雇用している企業や事業主など源泉徴収義務のある者は、税務署と従業員に対して発行・提出が義務付けられています。

源泉徴収票には、1年間で従業員に支払った給与総額と源泉徴収額が記載されています。

源泉徴収額とは会社が給与から差し引いて納税している所得税の金額のことです。会社は従業員に支払う給与の金額から所得税を計算し、給与から差し引いて国に納税しています。

源泉徴収したことを証明するものが源泉徴収票です。

2020年から確定申告で源泉徴収票が「添付不要」になった

2019年に施行された税制改正により、2020年以降の確定申告では確定申告書への源泉徴収票の添付が不要になりました。

2019年の税制改正以降、確定申告書や年末調整書類への印鑑押印も原則不要とされており、国税手続きの簡素化・ペーパーレス化が進められてます。

源泉徴収票には給与所得や退職所得だけではなく、公的年金の源泉徴収票も含まれているため、年金受給者の手続き簡素化も期待されています。

確定申告書の作成に必要な源泉徴収書の10項目

確定申告-源泉徴収票-項目

確定申告書の作成に必要な源泉徴収書の項目は、以下の10項目です。

支払金額 1月〜12月に会社から支払われた給与・賞与の合計額 ※手取り額ではなく額面
給与所得控除後の金額(調整控除後) 支払金額から給与所得控除額を差し引いた残額
所得控除の額の合計額 社会保険料控除・扶養控除・生命保険控除などの控除額の合計
源泉徴収額 年末調整で決定した源泉徴収税額
社会保険料等の金額 厚生年金・雇用保険・健康保険などの社会保険料の合計金額
生命保険料の控除額 生命保険料・個人年金保険料を支払っていた場合の控除額 ※上限12万円
地震保険料の控除額 地震等保険料または掛金を支払っていた場合の控除額 ※上限5万円
住宅借入金等特別控除の額 住宅ローンを利用している場合の特別控除額
控除対象配偶者・控除対象親族・16歳未満の扶養親族 特別控除対象配偶者・控除対象扶養親族の情報
支払者 給与を支払う勤め先の社名・住所などの情報

確定申告書の作成に必要な源泉徴収書の項目を事前に把握しておくことで、スムーズに進めるための準備をしましょう。

確定申告をするための源泉徴収票がない場合の対応2つ

確定申告-源泉徴収票-紛失

確定申告をするための源泉徴収票がない場合の対応は、以下の2パターンです。

  • 会社に再発行を依頼する
  • 税務署に源泉徴収票不交付の届出書を提出する

確定申告には源泉徴収票が必須です。源泉徴収票を紛失・交付されていない場合は交付手続きを進めましょう。

1. 会社に再発行を依頼する

源泉徴収票を紛失した場合は、会社の担当部署に再発行を依頼しましょう。源泉徴収票は会社が管理しているため、再発行依頼することで交付できます。

再発行を依頼する前に「給与明細に紛れていないか」あるいは「郵便物やメールに紛れていないか」必ず確認しておきましょう。

どうしても源泉徴収票が見つからない場合は会社に再発行依頼をしましょう。会社は源泉徴収票を交付する義務はありますが、再発行する義務はないため必ず交付してもらえるとは限りません。

2. 税務署に源泉徴収票不交付の届出書を提出する

依頼しても発行されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する必要があります。

「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する際は、給与明細書の写しを添付しましょう。「源泉徴収票不交付」が受理された場合、税務署から会社に税制に関する指導が入ります。

源泉徴収票の交付が必要な4つのタイミング

確定申告-源泉徴収票-交付タイミング

源泉徴収票の交付が必要なタイミングは、以下の4つです。

  • 従業員の退職時
  • 退職者または従業員の確定申告時
  • 年末調整の計算後
  • 従業員の収入証明が必要なとき

源泉徴収票は従業員に対して会社が必ず作成する書類であり、交付をおこたると税務署からの指導が入ります。正しく受け取るためにも、源泉徴収票の交付が必要なタイミングを把握しておきましょう。

1. 従業員の退職時

従業員が退職した際は、企業から退職者に源泉徴収票を交付する義務が発生します。退職の手続きを進める中で源泉徴収票の交付が必要です。

退職者に源泉徴収票を交付する場合、退職する年の1月1日から退職日までの給与・賞与・所得税を記載します。

転職した場合は、源泉徴収票は転職先での年末調整に使われるため、交付された源泉徴収票は保管しておきましょう。

2. 退職者または従業員の確定申告時

退職したのち、転職ではなく起業し個人事業主となる場合は、確定申告に源泉徴収票が必要となります。

個人事業主は、1年間の所得にかかる税金を自身で計算する必要があります。支払う税金を計算して申告・納付する確定申告をおこないましょう。

「退職時に会社から交付された源泉徴収票」と「退職後の所得」をあわせて税金を計算する必要があります。交付された源泉徴収票は保管しておくことが大切です。

3. 年末調整の計算後

パート・アルバイト・正社員など雇用形態に関わらず、年末調整の計算後に「最終報告書」として従業員に源泉徴収票を交付する必要があります。

年末調整後は従業員だけではなく、税務署に1部・市区町村に2部、合計4部の源泉徴収票の提出が必要です。

市区町村に提出する場合は、源泉徴収票ではなく「給与支払報告書」として提出します。

4. 従業員の収入証明が必要なとき

従業員が住宅や車の購入時に高額ローンを組む際は、審査で収入証明として源泉徴収票が必要となるため発行が必要です。

高額ローンのほか、保育園・認定こども園に入園させる場合にも源泉徴収票の提出が求められます。

従業員から収入証明として交付依頼を受けた際は、交付手続きをします。

確定申告・源泉徴収票が必要な5つのパターン

確定申告・源泉徴収票が必要なパターンは、以下の5つです。

  • 複数の会社から給与を得ている会社員
  • 副業所得が20万円を超える会社員
  • 年の途中で退職して再就職していない方
  • 確定申告が必要な年金受給者の方
  • 住宅ローン控除・医療費控除を受けたい会社員

確定申告・源泉徴収票が必要なパターンを把握しておくことで、思わぬミスを起こさないようにしておきましょう。

1. 複数の会社から給与を得ている会社員

複数の会社から給与収入を得ている会社員の方は確定申告する必要があります。

年末調整を受けられるのは1社のみという決まりがあり、年末調整しない会社の給与収入は自分で所得税を申告・納付しなければならないためです。

会社のほかに他会社・アルバイト・パートをされている方は、源泉徴収票をもとに確定申告をおこないましょう。

2. 副業所得が20万円を超える会社員

給与所得以外の副業として、雑所得・事業所得・不動産所得の合計が20万円を超える会社員の方は確定申告する必要があります。

会社以外の所得が20万円以内であれば追加の所得税がかかりませんが、20万円を1円でも超えた所得がある場合確定申告しなければなりません。

仮想通貨や家賃収入などの給与所得にあたらない所得は、給与所得ではないため収入から経費を差し引いた所得が課税対象となります。

3. 年の途中で退職して再就職していない方

年の途中で会社を退職し、その後再就職していない方は年末調整を受けられないため、源泉徴収票をもとに自分で確定申告をしましょう。

源泉徴収税は、1年間を通じて働いたことを前提に税額が定められているため、年の途中で退職した場合は所得税を払い過ぎている可能性があります。

年の途中で転職した場合は、源泉徴収票を就職先の会社に渡して年末調整をおこなってもらいましょう。

4. 確定申告が必要な年金受給者の方

確定申告不要制度の要件以上の収入・所得のある年金受給者の方は確定申告が必要です。

公的年金の受給額が400万円以下、かつそのほかの所得が20万円以下であれば、確定申告する必要はありません。

上記に満たない場合、公的年金の源泉徴収票を確定申告書に書き写したうえで、年齢に応じた控除額・所得額・所得税額を算出する必要があります。

5. 住宅ローン控除・医療費控除を受けたい会社員

住宅ローン控除・医療費控除を受けたい会社員の方は、確定申告をすることで控除が適用されます。

住宅ローン控除の場合は、初年度のみ確定申告が必要であり、2年目以降は住宅ローン控除申告書を会社に提出するだけです。

年間で医療費が10万円を超えた場合、所得の5%を超えた場合も確定申告によって控除が得られます。自分に有用な控除を調べて活用しましょう。

まとめ

本記事では、添付が不要となった源泉徴収票と確定申告の関係性や手続き上の変更点を紹介するとともに、源泉徴収票が必要となる場合を解説しました。

確定申告は簡素化が進められていますが、税制は複雑なうえ頻繁に改正が繰り返されており、知らなければ損をしてしまいます。最新情報を得るためにも、確定申告時は税理士に頼るのも1つの方法です。

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監修者のコメント
税理士
佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

国税手続きの簡素化に伴い、確定申告における添付資料の省略が実現され、給与所得の源泉徴収票などの提出が不要となりました。ただ、源泉徴収票などに記載されている情報は申告書に記載する必要がありますので、確定申告書の第二表等に源泉徴収票の金額を記載することを忘れないようにしましょう。

また、申告書を提出する際に資料添付は不要となりましたが、確定申告シーズンになると税務署などに確定申告書会場が設置され、資料を持参すると税理士等が申告書作成を手伝ってくれる機会があります。

この機会を活用して税務署等で資料作成をする際は、源泉徴収票を基に金額の集計を行う必要があるため、源泉徴収票等を申告書に添付する必要がなくなったからと破棄するのではなく、しっかりと申告時まで保管しておいて、税務署等に持参することを忘れないようにしましょう
比較ビズ編集部
執筆者

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