業務委託契約に確定申告は必要?源泉徴収・所得税の計算方法を解説

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2024年09月18日
業務委託契約に確定申告は必要?源泉徴収・所得税の計算方法を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 業務委託とは?
  • 業務委託で得た所得は確定申告が必要?

「業務委託の所得に確定申告は必要?」とお悩みの方、必見です。業務委託による所得は原則として確定申告が必要です。所得が一定金額以下の場合や源泉徴収が行われている場合、確定申告は不要であることが多いです。

この記事では、業務委託の所得に確定申告が必要かわからず困っている方向けに、申告が必要なパターンを解説します。記事を読み終わった頃には、業務委託の所得に確定申告が必要な理由・不要なパターンがわかるでしょう。

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業務委託契約とは?|企業が業務を個人・法人に任せる契約

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業務委託契約とは、委託側の企業が業務の一部もしくはすべてを、受託側である外部の個人・法人に任せる業務契約の総称です。委託側・受託側が雇用契約を結ばず、契約内容や報酬、納期などに合意のうえ、業務の効率化や専門性向上を図る手段です。

契約書の表題に使われる場合もありますが、民法上「業務委託契約」という言葉は存在しません。「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の総称として使われるのが一般的です。

  • 請負契約
  • 委任契約
  • 準委任契約

請負契約

請負契約とは、仕事の完了に対して報酬が支払われる業務委託の契約形態です。委託先は、業務の全体的な責任を負い、納期や品質を確保します。

報酬は、契約内容に基づき成果物の提供後に支払われることが一般的です。請負契約は、外部の専門知識やリソースを活用して特定のプロジェクトや業務を効率的に遂行するために利用されます。

委任契約

委任契約は、委託元が特定の業務を委託先に任せ、委託先は自身の責任で業務を進める契約です。報酬の仕組みや業務の進め方は契約次第です。

準委任契約

準委任契約とは、業務にあたった時間分や日数に応じた報酬が支払われる契約形態です。委託先は特定業務の一部を担当し、報酬は契約内容に基づき支払われます。

一時的な業務負荷の増加や専門性を必要とする業務を外部に委託しつつ、企業内で統括的な管理を保持する場合に用いられます。

業務委託の所得は原則として確定申告が必要

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業務委託によって得た所得は原則として確定申告が必要です。委託料や収入は個人の給与と同様に課税対象となり、源泉徴収されない場合があります。適切な情報提供と所得の正確な報告を行うために、確定申告の手続きは重要です。

以下は確定申告が必要なケースです。

  1. 年間所得が所得控除額より多い(売上ー経費が48万円以上)
  2. 副業・アルバイトなど給与以外で年間所得が20万円以上

1. 年間所得が所得控除額より多い(売上ー経費が48万円以上)

年間所得が48万円を超える個人事業主・フリーランスの方は、確定申告が必要です。年間所得に必要経費は含みません。

2. 副業・アルバイトなど給与以外で年間所得が20万円以上

副業収入による所得の合計額が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要です。収入から経費を差し引いた利益が20万円以下の場合、所得税は非課税となります。

業務委託の所得に確定申告が必要な2つの理由

業務委託の所得に関して、確定申告が必要となる理由は主に2つあります。正しい知識をつけ、確定申告漏れがないようにしましょう。

  1. 「業務委託報酬=所得」ではない
  2. 源泉徴収税が還付される可能性がある

1. 「業務委託報酬=所得」ではない

業務委託契約において得た報酬は、支払われた金額がそのまま収入にはなりません。業務に必要な経費や支払いなどが関与します。支払われた報酬額を収入として申告するのではなく、収入と支出を考慮して所得を計算する必要があります。

2. 源泉徴収税が還付される可能性がある

委託先が源泉徴収税を差し引いた場合、実際の税金額よりも多く徴収されるケースがあります。多く徴収された場合、過払いとなり還付される可能性があります。確定申告を行うことで、実際の税額との差額が調整されるでしょう。

業務委託の所得に確定申告が不要な4つのパターン

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業務委託の所得において、以下のケースで確定申告が不要な場合があります。

  1. 所得が業務委託のみの方:48万円以下の場合
  2. 副業で業務委託報酬を得ている方:20万円以下の場合
  3. 扶養控除対象の方:48万円以下の場合
  4. 配偶者控除対象の方:103万円以下の場合

所得や控除の状況にあわせて、税務署の案内や専門家のアドバイスを参考にしましょう。

1. 所得が業務委託のみの方:48万円以下の場合

所得が業務委託報酬からのみの場合、所得額が48万円を超えなければ確定申告の必要はありません。他の所得がある場合や所得税の控除を受ける予定がある場合、確定申告が必要です。

以下は具体例です。

年間の業務委託報酬総額必要経費所得額
確定申告が
不要なパターン
58万円10万円48万円
確定申告が
必要なパターン
60万円10万円50万円

2. 副業で業務委託報酬を得ている方:20万円以下の場合

会社員として給与所得を得ている方が、副業で業務委託報酬を得ている場合、業務委託による所得が20万円以内であれば確定申告の必要はありません。

業務委託以外からも所得を得ていて合算で20万円を超える場合、もしくは給与所得が2,000万円を超える方は確定申告が必要です。

以下は具体例です。

年間の業務委託報酬総額必要経費所得額
確定申告が
不要なパターン
25万円5万円20万円
確定申告が
必要なパターン
30万円5万円25万円

3. 扶養控除対象の方:48万円以下の場合

扶養控除の対象となっている方の場合、年間所得が48万円以下もしくは給与収入が年間103万円以下であれば「所得控除」が得られます。

扶養控除対象の方は、業務委託所得が48万円以内であれば確定申告は不要です。2,400万円までの方に適用される基礎控除と同じです。

参照:国税庁「No.1180 扶養控除」

4. 配偶者控除対象の方:38万円以下の場合

年間所得が38万円(配偶者本人が70歳以上の場合は48万円)以下、もしくは給与収入が年間103万円以下であれば「所得控除」が得られます。

配偶者控除対象の方は、業務委託所得が38万円(70歳以上の場合は48万円)以内であれば確定申告は不要です。

扶養控除と異なり「納税者本人の合計所得額」に応じて、配偶者控除の所得控除額が変化します。納税者本人の合計所得が900万円を超える場合は注意が必要です。

参照:国税庁「No.1191 配偶者控除」

確定申告が不要でも住民税の申請は必要

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確定申告が不要な方であっても、業務委託による報酬(収入)があれば住民税を支払う必要があります。確定申告を済ませていれば、管轄の自治体が住民税を計算・請求してくれるでしょう。

源泉徴収税の還付が期待できる確定申告を確実に済ませることが重要です。

源泉徴収と所得税の計算方法

源泉徴収と所得税の具体的な計算は、所得税の税率表や各種控除額を利用します。

  1. 源泉徴収額計算方法
  2. 所得税の計算方法

源泉徴収税額と実際の所得税額に差異がある場合、確定申告によって調整が行われます。

1. 源泉徴収額計算方法

源泉徴収は給与や報酬などから直接差し引かれる税金です。源泉徴収額は、所得金額と給与所得税率に基づいて以下のとおり計算されます。

源泉徴収額の計算方法
年間の業務委託報酬が100万円以下の場合報酬額×0.102
年間の業務委託報酬が100万円を超える場合(報酬額−100万円)×0.2042+102,100円

税務署が提供する源泉徴収税額表や計算式を使用し、給与支払い時に差し引かれます。

2. 所得税の計算方法

所得税は年間の総所得から各種控除を差し引いた金額に対して課税されます。所得税額は、所得税率に従い計算され、税金の基本控除が適用されるでしょう。

課税所得額 税率控除額
1,000円〜1,949,000円0.050円
1,950,000円〜3,299,000円0.197,500円
3,300,000円〜6,949,000円0.2427,500円
6,950,000円〜8,999,000円0.23636,000円
9,000,000円〜17,999,000円0.331,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円0.42,796,000円
4,000万円超0.454,796,000円

参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」

業務委託を本業にしている方の年間報酬が268万円、必要経費が20万円、基礎控除が48万円と仮定すると、課税所得は200万円です。所得税は「200万円×10%−97,500円=102,500円」という計算で算出されます。

業務委託報酬268万円から源泉徴収税「(268万円−100万円)×0.2042+102,100円」が差し引かれていたとすると、すでに支払っている所得税は445,156円となり、34万円以上の還付金を受けられることになります。

業務委託で得た所得の2つの節税方法

業務委託による所得を節税する方法は、以下の2点です。

  1. 青色申告にて確定申告する
  2. 必要経費を算出する

節税方法の選択や計算には専門知識が必要な場合があるため、税理士や税務相談機関のアドバイスを受けることがおすすめです。

1. 青色申告にて確定申告する

青色申告は、個人事業主が行う確定申告の1つで、所得を特定の基準額以下(65万円以下)に抑えることで、所得税や住民税の税率が軽減される制度です。本業として業務委託案件を請け負っている方は、青色申告での確定申告がおすすめです。

業務委託で働く方が青色申告を行うためには、開業届と同時に青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。最大65万円の所得控除が得られる、専業で働く家族の給与を経費に計上できるなど、数々のメリットが得られます。

2. 必要経費を算出する

業務委託にかかる経費(交通費・通信費・材料費など)は、必要経費として申告できます。報酬から経費を差し引いた金額が所得として計算され、税金の対象額が減少します。

正当な経費と認められるよう、正確な記録や領収書を保管しましょう。

まとめ

この記事では、業務委託で確定申告が必要なケースと不要なケースを解説しました。業務委託で働く方は節税対策が必須です。節税対策や確定申告など税金関係に不安がある方は、税理士への相談を検討しましょう。

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監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

確定申告すべき人がしなかった(忘れていた)場合だけでなく、確定申告で申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合には「延滞税」「過少申告加算税」などのペナルティがあります。

確定申告の季節を迎える前に、確定申告をする必要があるのかどうか、必要な場合にはどのような書類を準備すべきかなど、事前に国税庁のホームページや税務署の窓口、税理士等に確認しておかれるとよいでしょう。

また、個人事業主として事業を行う場合には、青色申告を選択するほうが税法上とても有利となっています。 これから事業を行う方は、青色申告とはどういう制度なのかについても、ご自身の税務の知識を備え付けるためにも、税務署に問い合わせておくといいでしょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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