山林所得の確定申告の注意点は?所得や必要経費・税額の計算方法や収支内訳表の書き方を解説
- 山林所得の確定申告で注意する点は?
- 山林所得の計算方法は?
- 山林所得の必要経費に含まれるものは?
「山林所得の確定申告は初めてだけど、注意点はある?」とお悩みの個人事業主必見です。
山林所得に対する税額は分離課税となっているため、個別の収支内訳書が必要です。5年以内に取得した山林の譲渡は山林所得ではなく、事業所得か雑所得になるため注意しましょう。
本記事では、山林所得の確定申告の注意点や所得・必要経費・税額の計算方法、収支内訳表の書き方を解説します。記事を読み終わった頃には、山林所得の確定申告で注意する点を理解してスムーズに確定申告を進められるでしょう。
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山林所得を確定申告する際の4つの注意点
山林所得を確定申告する際の注意点は、以下の4つです。
- 山林所得は分離課税のため個別の収支内訳書の作成が必要になる
- 5年以内に取得した山林の譲渡は事業所得か雑所得になる
- 山林を譲渡しても課税対象外になる場合がある
- 山林所得の課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税がかかる
山林所得とは、山林を譲渡した際に生じる所得のことです。山林は、取得してから所得を獲得するまでに長時間を有するため、事業所得とわけて計算されます。事業所得や不動産所得で確定申告に慣れている場合でも、山林所得の確定申告は特殊なため注意点を確認しておきましょう。
山林所得は分離課税のため個別の収支内訳書の作成が必要になる
山林所得は分離課税のため、個別の収支内訳書の作成が必要になります。分離課税とは、他の所得金額と合算せずに税額を計算する制度です。山林所得のほかに、配当所得・退職所得・譲渡所得・利子所得が該当します。
普段から確定申告を行い慣れている方でも、事業所得や不動産所得とは合算できないため注意が必要です。山林所得のみ個別の収支内訳書を作成し、単独で所得税を算出します。
5年以内に取得した山林の譲渡は事業所得か雑所得になる
5年以内に取得した山林の譲渡は、事業所得か雑所得になるため注意しましょう。山林所得はすぐに所得を獲得できるものではないため、保有期間と事業規模で所得の種類が変わります。
- 保有期間が5年を超える山林→山林所得
- 保有期間が5年以内で、事業的規模の山林→事業所得
- 保有期間が5年以内で、事業的規模でない山林→雑所得
事業的規模の定義は、社会通念上事業と称するに値する程度の規模で行われていることです。実務上は、50ヘクタール以上の山林であれば事業規模として扱われています。
山林を譲渡しても課税対象外になる場合がある
山林を譲渡した場合に必ずしも課税対象になるわけではありません。なかには、課税対象外になる場合があり、以下のケースが該当します。
- 山林を国や地方自治体に寄付した場合
- 公益法人に寄付して、国税庁長官の承認を受けた場合
- 山林を相続税の物納にあてた場合
- 資力を失って山林を競売により譲渡した場合
以上のケースでは、5年以上保有している山林でも所得税の課税は行われません。不安な場合は直轄の税務署に相談しましょう。
山林所得の課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税がかかる
山林所得の課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税の納税義務が発生します。事業所得や不動産所得と同様の扱いとなっているためです。個人事業の場合は、山林所得の課税売上高が1,000万円以下であれば消費税の申告は必要ありません。
山林所得金額の計算方法
山林所得の計算方法は、以下の2種類があります。
- 一般方式
- 概算経費控除方式
山林所得は取得してすぐに発生するものではないため、必要経費を正確に計算することが難しいです。15年以上かけて生じた山林所得には、詳細な経費の計算を求めない制度があります。
一般方式
一般的な山林所得の計算式は、以下のとおりです。
山林所得=総収入金額−必要経費−森林計画特別控除−特別控除額(最大50万円)−青色申告特別控除(最大10万円)
一般方式では、必要経費をきちんと算出する必要があります。青色申告特別控除は、事業所得・不動産所得がある場合は控除額が最大65万円ですが、山林所得のみの場合は最大10万円です。山林所得は森林計画特別控除を受けられますが、令和6年12月31日までの特例となります。
概算経費控除方式
概算経費控除方式とは、15年以上かけて生じた山林所得に対して、詳細な経費の計算を求めない制度を活用した計算方法です。計算式は、以下のとおりになります。
山林所得=総収入金額−譲渡経費−(総収入金額−譲渡経費)×50%−森林計画特別控除−特別控除額(最大50万円)
譲渡経費に含まれるものは、伐採費・運搬費・譲渡費用です。概算経費控除方式は15年以上の山林に対して適用されますが、一般方式と比較して有利選択ができます。概算経費控除方式を採用する場合は青色申告は関係ないため、青色申告特別控除は受けられません。
山林所得の税額の計算方法
山林所得の税額を計算する際は、分離5分5乗課税方式を使用します。山林所得は特殊な計算方法を用いるため注意しましょう。住民税は、一律10%で計算します。所得税と住民税では計算方法が異なるため間違えないようにしましょう。
山林所得の税額を計算する際に使用する所得税率は、所得金額によって異なります。以下の所得税率を参考に計算してみましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円〜 | 45% | 4,796,000円 |
所得税は分離5分5乗課税方式を使用
山林所得の税額は、分離5分5乗課税方式を使用します。計算式は、以下のとおりです。
山林所得の税額=課税山林所得×5分の1×税率×5
「5分5乗」とあるように、課税所得額を5で割り、税率を下げたうえで、5をかける計算方法です。山林所得を1,000万円とした場合の税額を計算します。
山林所得の税額=1,000万円×5分の1×10%(200万円に対する税率)×5=100万円
1,000万円の5分の1は200万円のため、所得税率は10%になります。当てはめて計算すると、山林所得の税額は100万円になります。
通常の課税方式では税率が33%のため「山林所得の税額=1,000万円×33%-153万6,000円=176万4,000円」になり、分離5分5乗課税方式によって超過累進課税が緩やかになるといえるでしょう。
住民税は「一律10%」で計算
山林所得の住民税は、課税所得額に関係なく「一律10%」で計算します。山林所得が1,000万円の場合は、住民税が100万円です。平成19年の税源移譲により、住民税の税率が変更されています。
山林所得の必要経費に含まれるもの
山林所得の必要経費に含まれるものは、以下のとおりです。
概要 | 経費の事例 | |
---|---|---|
植林費 | 山林の取得費用 | 苗木の購入代金・運搬費・購入手数料・人件費など |
取得費 | 山林の取得費用 | 山林の購入代金・仲介手数料など |
育成費 | 山林の育成費用 | 肥料代・防虫費・下刈り・枝打ち・除草など |
管理費 | 山林の管理費用 | 固定資産税・組合費・火災保険料・機械の減価償却費など |
譲渡費用 | 伐採・譲渡費用 | 山林の伐採に要した人件費・伐採した山林の運搬費・測量費・仲介手数料など |
山林所得の必要経費に認められるものは、植林費・取得費・育成費・管理費・譲渡費用などです。山林の取得から、育てた山林の伐採まで多くの経費がかかります。上述の経費のなかで、概算経費控除方式で使用される譲渡経費は、伐採費・運搬費・譲渡費用です。
山林所得の特別控除
山林所得には、50万円の特別控除が認められています。総収入額から必要経費を引き、加えて50万円の控除が可能です。山林所得を計算する際は、特別控除額を忘れないようにしましょう。
山林所得の森林計画特別控除
山林所得の森林計画特別控除とは、森林経営計画をもとに山林を伐採・譲渡した際に適用される特別控除です。令和6年12月31日までの特例となります。控除額の計算方法は、以下のとおりです。
(ア)収入金額基準 | 特例が適用される山林の収入金額−譲渡費用=A ・Aの金額が2,000万円以下の場合:A×20% ・Aの金額が2,000万円を超える場合:A×10%+200万円 |
---|---|
(イ)所得基準額 | 特例が適用される山林の収入金額=B (B−譲渡費用)×50%−[Bに対する部分の必要経費−(譲渡費用+Bに対応する被災損失額)] |
上記のア・イの金額のいずれか低いほうを適用します。山林所得を概算経費控除方式で計算する場合は自動的にアの金額が控除されます。
山林所得の確定申告の方法
山林所得の確定申告の方法は、一般的な確定申告と同じです。山林所得は分離課税方式のため山林所得収支内訳書を作成する必要があります。他の所得と区別して作成する必要があるため注意しましょう。
山林所得収支内訳書の書き方
山林所得収支内訳書の書き方は、以下のとおりです。
- 適用を受ける特例適用条文を記載する
- 山林の所在番地・面積・樹種・樹齢・本数・材積を記載する
- 譲渡代金の総額を記載する
- 山林の伐採に要した人件費・運搬費・仲介手数料の総額を記載する
- 売却した山林の取得費・管理費の総額を記載する
- 森林計画特別控除の特例を受ける場合に記載する
- 特別控除額「500,000円」を記載する(青色申告特別控除を受ける場合は2段書き)
上記の順序で記載します。所在番地や面積・金額を間違えないようにしましょう。山林所得収支内訳書は国税庁のホームページからダウンロードできます。
山林所得は損益通算が可能
山林所得は損益通算が可能です。損益通算とは、計算上生じた損失の金額を一定の順序で他の所得から控除できる方法を指します。
損益通算が可能な所得は、山林所得・不動産所得・事業所得・譲渡所得・退職所得です。山林所得の他に該当の所得があり、損失が出ている場合は損失金額を控除しましょう。わからない場合は、直轄の税務署に相談してください。
まとめ
山林所得の確定申告の注意点は、以下の4つです。
- 分離課税のため個別の収支内訳書が必要になる
- 5年以内に取得した山林の譲渡は事業所得か雑所得になる
- 課税対象外の山林所得がある
- 課税売上高が1,000万円を超えると消費税がかかる
山林所得の税額は通常の計算方法ではなく、分離5分5乗課税方式を使用します。計算方法を間違えると税額が大きく異なるため注意しましょう。山林所得は長期間に渡って発生するため、必要経費の計算が難しいです。日頃から帳簿管理を行い、適切な記帳を心がけましょう。
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- 自身の状況に合わせた税務アドバイスがほしい
- 税理士の費用相場がわからない
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