退職金の確定申告は必要?申告すべき3つのケースについて解説
- 退職金を受け取ったら確定申告は必要?
- 退職金の確定申告が必要なケースは?
- 退職金における確定申告手続きって?
「退職金を受け取ったら、確定申告が必要なのか?」とお悩みの方必見。退職金の確定申告は基本的に不要ですが、なかには確定申告した方が良いケースもあります。
この記事では、退職を予定している人・直近で退職した人に向けて、退職金の確定申告が必要なケース・手続き方法についてまとめました。
記事を読み終わった頃には、自分が受け取った退職金の確定申告をするべきか分かり、スムーズに手続きが進められるようになるでしょう。
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退職金とは?
退職金とは、企業が退職者に支払う退職手当です。給与所得ではなく「退職所得」に分類されます。
退職金を受け取ったら確定申告は必要?
退職者はすでに所得税を支払っている状態であるため、確定申告は基本的に不要となります。退職金は受け取りの際に、所得税・復興特別所得税・住民税が源泉徴収されるためです。
また、退職金は勤労に対する報償的給与として支払われるため、税負担が軽くなるように設定されております。たとえば「退職所得控除が設けられている」「他所得と分離して課税される」などがあります。
なかには、確定申告をした方が良いケースもあります。
確定申告が必要な3つのケース
基本的に退職金の確定申告は不要ですが、退職金を受け取った後に確定申告をした方がよいケースもあります。退職金の確定申告をするべきケースは、以下の3つです。
- 1. 「退職所得の受給に関する申告書」が未提出のケース
- 2. 所得控除を受けるケース
- 3. 1年の途中で退職したケース
1. 「退職所得の受給に関する申告書」が未提出のケース
「退職所得の受給に関する申告書」を未提出のまま退職金を受け取ると、退職所得控除が適用されないデメリットがあります。
必ず退職金の支払いを受け取る前日までに勤務先に申告書を提出しましょう。申告書は勤務先から配布されることもありますが、基本的には国税庁のホームページから自身でダウンロードして使用します。
提出し忘れないよう前もってチェックしておきましょう。
「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受け取る側が会社に提出する書類で、源泉徴収をおこなうのに必要な書類を指します。
退職所得控除とは
退職所得控除は下記のとおりです。確定申告を行うことで、納めすぎた所得税が還付される可能性があります。
勤続年数が20年以下の場合 | 勤続年数×40万円 (退職所得控除が80万円未満の場合には80万円) |
---|---|
勤続年数が20年を超える場合 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
たとえば、25年間勤務した会社を退職する場合、800万円+70万円×(25年−20年)=1,150万円もの退職所得控除が適用されます。「退職所得の受給に関する申告書」が未提出の場合は控除が適用されないため、所得税を多く納めているケースがあります。
2. 所得控除を受けるケース
確定申告をすると、以下3つのケースで所得控除が受けられます。
- 年間10万円以上の医療費を支払ったケース
- ふるさと納税をしたケース
- 住宅ローンを組んで住宅を購入したケース
収入が非常に少なかった年の場合にも、確定申告して所得税を抑えられる可能性があります。
退職金の確定申告をおこなうことで、引ききれなかった所得控除を最大限利用でき、節税につながる可能性があります。
3. 1年の途中で退職したケース
年の途中で退職した方の場合、年末調整で正しい納税額が確定していないため、確定申告すると還付金が受け取れる可能性があります。(退職後に転職しなかった方限定)
退職後に転職した方は、転職先の会社がまとめて年末調整してくれるため、確定申告の必要はありません。
退職金の確定申告において還付の可能性がある3つのケース
退職金は源泉徴収されるため確定申告の必要はありませんが、場合によっては確定申告をすると還付金を受け取れる可能性があります。
還付の可能性がある3つのケースは下記のとおりです。
- 1. 社会保険を支払っているケース
- 2. 退職する前の給与が少ないケース
- 3. 医療費が10万円以上発生するケース
1. 社会保険を支払っているケース
退職後に支払った社会保険料は、社会保険料控除を適用できます。以下の場合は確定申告すると、還付金を受け取れます。
- 退職後、任意継続保険料を支払っている
- 国民健康保険に切り替えて、保険料を納めている
- 国民年金保険料を支払っている
2. 退職する前の給与が少ないケース
退職前の給与が前年度に比べて少ない場合は、所得税が多めに計算されている可能性があります。年途中(特に年前半)での退職となると、当初の見込みより給与が大幅に減少するためです。
当初の見立てよりも給与が減少した場合、源泉徴収で納めた税金は過剰となるため、確定申告すると還付を受けられます。
3. 医療費が10万円以上発生するケース
医療費の総額が10万円以上かかっている場合、医療費控除を使うことによって還付を受けられます。(所得金額の5%を超えた医療費が発生した際も同様です。)
セルフメディケーション税制が適用できる場合も同様に、還付を受けられます。
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している場合は、確定申告の必要はありません。
スイッチOTC医薬品を平成29年1月1日以降に購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができる仕組み。
退職金の確定申告における特殊な2つのケース
退職金の確定申告は基本的に必要ありませんが、特定のケースに限って確定申告をしなければなりません。特殊なケースは下記のとおりです。
- 死亡退職金を受け取るケース:必要
- 1年に2回以上退職金を受け取ったケース:基本的に不要
退職金の確定申告をおこなうべきなのかどうか見ていきましょう。
死亡退職金を受け取るケース:必要
死亡退職金を受け取る際、相続が発生するため確定申告が必要です。死亡退職金とは、従業員が死亡した場合に支払うはずだった退職金を相続人に支払うことを指します。
死亡退職金は相続財産として相続税の対象となるため、所得税はかかりません。
退職金を支払う会社が「退職手当金等受給者別支払調書」を作成するため、添付して確定申告をおこないましょう。
1年に2回以上退職金を受け取ったケース:基本的に不要
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば会社側が源泉徴収して退職金を支払うため、確定申告の必要はありません。
「退職所得の受給に関する申告書」が未提出や所得控除を受けたい場合は、確定申告をおこなうことで所得税の還付が受けられる可能性があります。
自分がどの状況にいるのか把握し、確定申告が必要かしっかり判断しましょう。
退職金の確定申告に必要な3つの書類
確定申告に必要な書類が不足していると、税務署からの指摘・訂正に時間がかかってしまいます。退職金の確定申告に必要な3つの書類は下記のとおりです。
- 確定申告書Bと申告書第三表
- 源泉徴収票
- 各種控除証明書
退職金の確定申告の書き方を学ぶ前に、確定申告に必要な書類を揃えましょう。
確定申告書Bと申告書第三表
確定申告書にはAとBがありますが、退職金の確定申告をする際には確定申告書Bを使います。確定申告書BはAと比べて汎用性があり、すべての所得に対応しているためです。
さらに、退職金の確定申告では、申告書第三表(分離課税用)を使用します。
確定申告書Bと申告書第三表(分離課税用)はどちらも、国税庁ウェブサイトからダウンロードして使用可能です。オンラインでも申請できるため、希望の方はマイナンバーカードとカードリーダーを用意しましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票は、会社にお願いして発行してもらう必要があります。給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票などが必要となるため、前もって準備しておきましょう。
各種控除証明書
多くの場合、控除証明書は毎年10月から11月にかけて送付されます。国民年金を支払った際の社会保険料控除証明書、国民健康保険に加入して保険料を支払った場合の領収書なども控除の対象です。
退職金の確定申告書の書き方
確定申告期限のギリギリになってあわててしまうことがないよう、あらかじめ書き方を知って記入しておくようにしましょう。
退職金の確定申告書や申告書第三表(分離課税用)の書き方を下記に紹介します。
- 申告書第二表に記入する
- 申告書第一表に記入する
- 申告書第三表(分離課税用)に記入する
(1)申告書第二表に記入する
退職金の確定申告をおこなう場合、申告書第二表から記入を始めます。手元に源泉徴収票を準備しましょう。
【図1】住所・屋号・氏名
左上の【図1】に住所、氏名、フリガナを書きます。
【図2】所得の内訳
【図2】の「所得の内訳」では、所得の種類は給料の場合「給与」退職金の場合には「退職」と記載します。
給料の種目はそのまま「給料」、「給与などの支払者の名称・所在地等」には働いていた会社名を書きましょう。退職金の種目は必要ありません。
源泉徴収票を見ながら、給料と退職金の収入金額と源泉徴収税額を記載します。すべての源泉徴収額を合計したものを【図2】48番の「源泉徴収税額の合計額」に記載しましょう。
【図5】保険料控除等に関する事項
右上の【図5】に移り「保険料控除等に関する事項」の記載をはじめます。
保険料の種類は人によって異なりますが、源泉徴収票、国民建国保険、国民年金などが考えられるでしょう。
源泉徴収票の「社会保険料等の金額」に書かれている金額を「支払保険料等の計」「うち年末調整等以外」の部分に転記します。
【図5】15番の「生命保険料控除」や16番の「地震保険料控除」に支払保険料の金額を記載しなければなりません。
(2)申告書第一表に記入する
次のステップは、確定申告書第一表です。先ほど記載した第二表は参考資料として横に置きながら作業しましょう。
【図1】収入金額等
【図1】の「収入金額等」の給与の部分に、源泉徴収票の支払金額に書かれている金額を書きます。
【図2】所得金額等
給与所得控除額を計算し、先ほど書いた「収入金額等」の給与から控除額を差し引いた金額を【図2】「所得金額等」の6番に記載しましょう。給与所得がいくらかわかります。
【図3】所得から差し引かれる金額
第二表を参考にしながら【図3】「所得から差し引かれる金額」の部分を記入しましょう。社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などを、第二表から転記していきます。
(3)申告書第三表(分離課税用)に記入する
退職金の確定申告で特別に必要となるのが、申告書第三表です。あまり使わない書式であるため、間違わないように注意しましょう。
収入金額
「収入金額」の退職の部分に退職金の収入金額を記載します。さらに第三表の右下の部分には「退職所得に関する事項」があるため、同じく収入金額と、退職所得控除額を記載しましょう。
退職所得控除額は以下の計算式で算出可能です。
- 勤続年数が20年未満の場合・・・勤続年数×40万円
- 勤続年数が20年を超える場合・・・800万円+70万円×(勤続年数−20年)
所得金額
「収入金額」の下にある「所得金額」には、退職金の金額から控除額を差し引いた金額を記載します。
税金の計算
12番の「総合課税の合計額」と19番の「所得から差し引かれる金額」に第一表の12番と19番に書かれているのと同じ金額を記載しましょう。
さらに、75番に12番から19番を引いた金額を記載します。加えて、82番に74番の退職所得の金額を転記しましょう。所得税の課税される金額がわかります。
税額の計算は、83番と90番にそれぞれ所得税額を計算して記入しなければなりません。最後に、83番と90番の合計額を91番の所得税額に転記して、第三表の記入は完了です。
退職金の確定申告を行う流れ
退職金を受け取った後の確定申告の流れはそれほど難しくありませんが、必要な場合には税理士などの助けを借りて申告を行いましょう。
退職金を受け取った後の確定申告の流れは下記のとおりです。
- 必要書類の準備
- 確定申告書の入手
- 必要事項を記入し税務署へ提出
1. 必要書類の準備
退職金の確定申告をおこなう前に、まずは必要書類を整えなければなりません。確定申告書Bと申告書第三表をダウンロードするのはもちろん、源泉徴収票やさまざまな控除証明書を準備しましょう。
控除証明書は確定申告に絶対に必要な書類ではありませんが、所得税額を抑えられます。保険に加入している方は、できるだけ控除証明書を保管して確定申告に利用しましょう。
「手術の受療」「長期にわたっての通院」というケースでは、医療費控除によって所得税を減額できる可能性があります。通院時に利用したタクシー代なども対象となります。
2. 確定申告書の入手
退職金の確定申告に使用する確定申告書は「税務署での直接受取」「国税庁のホームページにてダウンロード」ができます。
3. 必要事項を記入し税務署へ提出
記入した書類への修正が多くなると、期限どおりに申請がおこなえなくなるおそれもあるため注意が必要です。提出方法は、以下の3つです。
- 実際に税務署に持っていく方法
- 郵送する方法
- e-Taxを使って電子申請する方法
実際に税務署に持っていく方法
税務署に提出する場合、書類を提出しながら記入方法の不明点を税務署職員に尋ねられます。
郵送する方法
自分に都合の良い時間に提出できるのがメリットです。申告の受領の控えが欲しい場合は十分な額の切手を貼った返信用の封筒を同封しましょう。
e-Taxを使って電子申請する方法
マイナンバーカードとカードリーダーを持っており、事前に税務署に申請しておけばe-Taxが利用できます。退職金を受け取ったときだけ確定申告をおこなうのであれば、e-Taxの申請をせずに書類を郵送するのが効率的です。
確定申告により所得税を支払いすぎていることがわかれば、所得税の還付を受けられます。所得税の還付があるとわかっているのであれば、確定申告の書類に加えて振込依頼書を同封しておきましょう。
確定申告の書類が受理された後、そのまま還付金が指定の口座に振り込まれるためスムーズです。
まとめ:退職金の確定申告の書き方はよく調査しよう
退職金の確定申告の書き方は、複雑です。通常使用する確定申告書Bに加え、申告書第三表(分離課税)への記入が必要となります。
事前に書き方をよく調べ、理解してから書き込むようにすると、誤記を防げるでしょう。
必要であれば税務署の職員や税理士などに尋ね、添付書類なども間違いがないか確認しながら進められます。できるだけ短期間で退職金の確定申告を終えられるよう、事前調査をおこないましょう。
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なお、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものについては、相続財産とみなされて相続税の課税対象となりますが、死亡後3年を経過した後に相続人が受け取った退職金は、相続税ではなく受け取った方の所得として、所得税の課税対象(一時所得)となりますのでご注意ください。
また、相続人が受け取った退職手当金等は、その全額が相続税の課税対象とはならず、すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人を除く)が取得した退職金等の合計金額が、非課税限度額以下のときは課税されません。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
(相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はないことにご注意ください。)
このように、退職金等を受け取る人や受け取る時期によって所得税の対象となったり、相続税の対象となったりしますので、その受け取った退職金がどのようなものなのかを検討してから、必要に応じて申告するようにしましょう。
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