赤字でも確定申告は必要です。青色申告を適用している場合は、翌年以降に赤字を繰越すことが可能になります。
白色申告の場合は、基本的に翌年に赤字を繰越すことができません。ただし、赤字の理由が災害の場合は繰越せます。赤字繰越しをする場合、忘れずに申告を行いましょう。
家賃収入は、所得税法によって不動産所得に定められています。家賃収入から必要経費を差し引いた金額が課税対象となります。家賃収入がある場合、年間の収入が20万円以上であれば確定申告が必要になり申告が必要です。
この記事では、不動産投資家やアパート経営者などに向けて、家賃収入で経費となる項目や確定申告の流れを解説しています。記事を読み終わる頃には、家賃収入における経費計上の基準や方法について把握できているでしょう。
「家賃収入で節税をしたい」「家賃収入の申告方法を知りたい」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。
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家賃収入を得るための費用は経費になります。家賃収入にかかる費用を経費として計上する際には、下記が挙げられます。
業務に関連性がある費用 | 火災保険や地震保険など家賃収入を得るために必要な費用 |
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業務を進めるために必要な費用 | 交通費や電話代など家賃収入を得るための業務を円滑に進めるための費用 |
業務用と家事費を区別できる費用 | プライベートと業務の利用時間や面積で按分できる費用 |
按分とは、プライベートと業務を兼ねた支出に対し、業務用の比率分を経費として計上することです。家賃収入にかかる費用を経費として計上するためには、領収書や請求書で必要性を証明することが必要です。
家賃収入により不動産所得が年間20万円以上の場合は確定申告が必要です。賃貸経営が赤字の場合でも必ず確定申告をしなければいけません。所得とは、収入から経費を差し引いた金額を指します。
不動産所得=総収入金額−必要経費
入居時の礼金や、契約更新時の更新料がある場合も家賃収入に含まれます。
家賃収入で経費になる項目は、次の8つがあります。
家賃収入にかかる費用のうち、維持管理費は経費となります。維持管理費とは施設の修繕費や定期点検にかかる費用を指します。
維持管理費の費用は、次のとおりです。
たとえば、エントランスや階段、エレベーターなど共用部分の修繕費が維持管理費に該当します。入居者の退去後、壁クロスや床の張り替えを行う原状回復費も維持管理費として経費計上が可能です。
建物の耐久性を適切に保つためには、定期的な修繕や点検が不可欠であり、繰り返しかかる費用です。管理会社への業務委託費や賃貸管理代行手数料も維持管理費として経費計上できます。
家賃収入を得るうえで支払う保険料は経費として計上可能です。1年ごとに支払っている場合は、保険料全額を経費計上できます。まとめて数年分を支払う場合は、1年分の保険料として経費計上します。
たとえば、5年分の保険料が100万円の場合、1年あたりの保険料である20万円を毎年経費として計上してください。
家賃収入にかかる租税公課は経費として計上が可能です。国に納める税金と、公共団体へ納める会費や罰金などが該当します。家賃収入を得る過程ではさまざまな租税公課が発生します。
家賃収入にかかる租税公課は、次のとおりです。
固定資産税 | 不動産を所有している場合に課せられる税金(毎年) |
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都市計画税 | 不動産を所有している場合に課せられる税金(毎年) |
不動産取得税 | 不動産を取得した場合に課せられる税金 |
登録免許税 | 法務局での登記代 |
印紙税 | 申請用紙に貼付する収入印紙代 |
事業税 | 事業的規模である場合に各都道府県へ納める地方税 |
東京都では10室以上の物件から家賃収入を得ている場合、事業的規模であると認定され、事業税を課税される可能性が高いです。
建物の減価償却費は経費に計上できます。減価償却とは、建物の取得費用を耐用年数で割った金額を毎年経費に計上することです。実際の出費がない場合でも経費計上が可能です。減価償却費の求め方には定額法と定率法の2種類があります。
定率法 | ・毎年一定の割合で減価償却費が少なくなる計算方法 ・税制改正前の古い建物に使用されている |
---|---|
定額法 | ・毎年同額の減価償却費を計上する計算方法 ・税制改正後の建物はすべて定額法で処理する必要がある |
建物の耐用年数は構造によって異なります。構造別物件の法定耐用年数は次のとおりです。
構造 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
木造アパート | 22年 | 4.6% |
鉄筋コンクリート | 47年 | 2.2% |
鉄骨造 (鉄骨の厚みが3mm以下) |
19年 | 5.3% |
鉄骨造 (鉄骨の厚みが3mm〜4mm) |
27年 | 3.8% |
鉄骨造 (鉄骨の厚みが4mm以上) |
34年 | 3.0% |
たとえば、鉄筋コンクリート造の新築アパートを2,000万円で購入した場合の計算は以下のとおりです。
減価償却費=取得価額×償却率
計算式は、2,000万円×2.2%=44万円です。
中古のアパートを購入した場合には、残りの耐用年数を計算して減価償却します。
法定耐用年数−築年数+(経過年数×0.2)
一般的に残りの耐用年数は「法定耐用年数−築年数+(経過年数×0.2)」で計算されます。たとえば、築20年の鉄筋コンクリート造のアパートを購入した場合、残りの耐用年数は、下記のとおりです。
家賃収入を得るにあたり物件の購入に住宅ローンを利用した場合、ローン金利を経費として計上できます。経費に計上できる費用はローン返済額ではなく、金利のみであることに注意が必要です。
経費計上する際には、ローンの元本と金利を明確に分ける必要があります。ローンを初めて利用した年は融資手数料も経費として計上可能です。融資手数料とは、住宅ローンを借りる際に金融機関に支払う手数料です。
不動産所得者が青色申告者の場合、青色専従者給与は経費として計上可能です。青色専従者給与とは、青色申告をしている事業者が家族の労働に対して支払う給与を指します。
白色申告の場合、専従者への給与を経費にはできません。家賃収入の経費として計上できるのは青色専従者給与のみです。
家賃収入における司法書士費用は経費として計上できます。不動産投資で家賃収入を得る場合、司法書士や税理士などの専門家に業務を依頼するケースがあり、支払った報酬は経費になります。
報酬を経費として計上できる業務は、以下のとおりです。
登記や確定申告を自分で行った場合、報酬を支払う必要はありません。
その他にも家賃収入にかかる経費で計上できるものには下記が挙げられます。
プライベートと共通している場合、使用時間で割合を定めて按分しましょう。
家賃収入で経費にならない項目には、次の3つが挙げられます。
所得税と住民税は経費に計上できません。経費として計上できない理由は、事業に関係なく発生する税金であるためです。同様の理由で税務署からのペナルティーである延滞税や無申告加税も、経費にできません。
ローンの返済額のうち、元本は経費として認められません。物件購入やリフォームで利用したローンの返済額のうち、経費として計上できるのはローン金利のみです。返済額のすべてが経費になるわけではありません。
私生活に発生した費用は、経費にはなりません。私的な費用には次が挙げられます。
携帯電話やネット通信料など、私的に利用しながらも賃貸経営の業務でも使う分は、利用割合に応じて一部を経費として計上できます。
家賃収入の確定申告方法は、次の3ステップで行います。
確定申告の方法には次の2つがあります。
参照:国税庁
白色申告の場合、次の2つの書類を作成します。
収支内訳書は、1年間の収入と経費の総額を計算したものです。税務署所定の収支内訳書に必要な数字を転記します。青色申告では特別控除が適用されますが、白色申告には適用されません。
青色申告は最大65万円の特別控除が適用されます。青色申告を選択する場合、事前に税務署に申請書を届け出る必要があります。
控除額の種類と適用要件は下記のとおりです。
10万円 | 単式簿記による記帳、損益計算書の添付 |
---|---|
55万円 | 複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付 |
65万円 | 複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付、e-Taxによる電子申告 |
白色申告と比較した場合、帳簿類の記帳は煩雑になります。専従者給与の経費計上ができるのは青色申告のみのため、青色申告のほうが節税効果を期待できるでしょう。
次は確定申告に必要な書類を揃えます。確定申告の際に必要な書類は以下のとおりです。
個人の控除内訳を作成するために、下記の書類も準備する必要があります。
確定申告の申告書は税務署で受け取れます。国税庁の確定申告Webサイトでは「確定申告書等作成コーナー」が開設されており、手順どおりに進めることで申告書が作成できます。
次は確定申告で必要になる書類を作成します。必要な書類は下記のとおりです。
確定申告書の作成方法には下記があります。
確定申告書に記入する項目は次のとおりです。
収入金額 | 賃貸料・礼金・権利金・更新料 |
---|---|
必要経費 | 租税公課 損害保険料 修繕費 減価償却費 借入金利子 地代家賃 給与賃金 専従者給与 税理士や司法書士などへの報酬 その他経費 |
作成した確定申告書類を住民票のある地域の所轄税務署へ提出します。
提出方法は、次のとおりです。
家賃収入の税金対策には、下記3つの方法があります。
個人事業主の場合、5棟10室以上の所有で青色申告できます。5棟10室とは、貸付可能な部屋数が10室以上あること、家屋を1棟貸しする場合に所有している物件が5棟以上あることを意味します。5棟10室以上あることで事業的規模と認められ、青色申告の最大65万円控除が受けられます。
所有している物件が、5棟10室未満の場合、事業的規模と認められないため、適用される控除額は青色申告で10万円です。
不動産投資は損益通算により節税につながります。損益通算は、事業や不動産投資などで損失が出た場合に、損失を利益と合算し、課税対象となる利益を減らす方法です。たとえば、家賃収入では赤字になり、その他が黒字の場合は損益通算が適用されます。
損益通算することで所得が減少できた場合は、所得税だけではなく住民税の節税としても効果的です。
法人成りで経費の範囲が広がり節税ができます。法人成りとは、個人事業主が手続きを行い、株式会社や合同会社などの法人に成り代わることです。法人成りすることで、個人よりも認められる経費の種類が多くなります。
経営が赤字になる場合、損失の繰越しが10年間認められています。所得税よりも繰越せる期間が長いため、長期間にわたり節税効果が図れるでしょう。
家賃収入がある場合、年間の収入が20万円を超える場合は確定申告が必要です。家賃収入には経費として認められるものと認められないものがあり、住居をプライベートと事業用で共用している場合には、家事按分が必要です。
経費計上を間違えた場合や確定申告を行わない場合は、ペナルティの対象になります。経費の計上に関しては専門家である税理士に相談することがおすすめです。
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