筆界特定制度とは?必要な費用やメリット・デメリットを解説
- 筆界特定制度とは何をするもの?
- 筆界特定制度を利用する費用は?
- 筆界特定制度によって境界問題が解決しない場合はどうなる?
「筆界特定制度とは何をする制度?」とお悩みの方必見です。
筆界特定制度とは、土地の筆界が曖昧な場合に改めて筆界を特定する制度です。裁判を活用せず、筆界調査員が調査を行い、筆界特定登記官が筆界を特定します。筆界が特定されたとしても、所有境界の解決ができない場合は境界問題ADRの利用がおすすめです。
本記事では、筆界特定制度の概要や必要となる費用・メリット・デメリットを解説します。記事を読み終わった頃には、筆界特定制度を理解して土地の境界問題を解決できるでしょう。
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筆界特定制度とは土地の境界線を特定する制度
筆界特定制度とは、筆界特定登記官が筆界調査委員の意見をもとに、土地の筆界の位置を特定する制度です。新しく筆界を決めるものではなく、もともと登記されていた筆界を明確にするために、筆界特定登記官が調査を行うことを指します。
平均6カ月〜1年で結論が出るように努力することが決まっているため、境界確定訴訟よりも早く結論が出る点が特徴です。費用は、境界確定訴訟よりも抑えられます。
筆界調査委員が調査を行い筆界特定登記官が特定する
筆界の特定は、筆界調査委員が調査を行い、筆界特定登記官が特定します。筆界調査委員は土地家屋調査士・弁護士・司法書士などの民間の専門家によって構成される点が特徴です。
法務局職員の補助のもと、現地調査や測量などさまざまな調査を行い、調査結果を筆界特定登記官に提出します。筆界調査委員がまとめた意見をもとに、筆界特定登記官が筆界を特定する流れです。
土地の所有者や相続人が申請できる
筆界特定は、土地の所有者や相続人が対象となる土地を管轄する法務局の筆界特定登記官に対して申請できます。申請を代理できるものは、土地家屋調査士・弁護士・司法書士です。
司法書士の場合は、簡易訴訟代理等関係業務の認定司法書士に限られています。対象土地価格の合計額の2分の1に100分の5を乗じた額が140万円を超えない場合のみ対応可能です。
筆界特定の申請は、筆界特定申請書に必要事項を記入して提出します。共有名義の場合は共有者の1人が単独での申請が可能です。申請人以外の共有者は関係人となり、意見および資料を提出できる、現地調査・測量に立会えるなどの一定の手続保障が与えられます。
筆界とは「公法」所有権界とは「私法」の境界
筆界とは、明治後期に施行された不動産登記法によって、人為的に区画された「公法」上の土地の境界です。一方で、所有権界とは所有権の範囲を決める「私法」上の境界を指します。
筆界は、合筆もしくは分筆しない限り変更されることはなく、土地を所有する当事者同士の話し合いでの変更はできません。合筆とは隣接する複数の土地を1筆にまとめることで、分筆とは1筆の土地を複数に分割することです。
所有権界は筆界とは異なり、当事者同士の合意があれば変更でき、必ずしも訴訟による和解や調停が必要なわけではありません。
筆界と所有権界にズレが生じる場合がある
筆界と所有権界は本来一致するものですが、何らかの事情によってズレが生じる場合があります。登記手続きを経ない土地の売買・贈与が原因でズレが生じると考えられています。
不明瞭な筆界は境界紛争につながる
筆界と所有権界にズレが生じ、筆界が不明瞭になると境界紛争につながる可能性があります。土地の範囲を特定できず、合筆・分筆をスムーズに行えないためです。境界紛争を回避するためには公法上の境界である筆界を特定しなければなりません。
実測して筆界を特定するには「周囲の土地所有者」の立会いが必要であり、場合によっては協力が得られない可能性があります。筆界の特定が困難になるため、以前は境界確定訴訟によって解決の道を探りました。現在は筆界特定制度により、裁判を行わずに筆界の特定を行っています。
筆界特定制度にかかる費用
筆界特定制度にかかる費用は、以下の3つです。
- 筆界特定申請手数料
- 予納手続費用
- 代理人の報酬
対象となる土地や関係する土地の状況に応じて変動するため、どのくらいの費用がかかるかは実施しないとわかりません。
筆界特定申請手数料
筆界特定制度の利用には筆界特定申請手数料が必要です。申請人が負担し、対象となる土地の固定資産課税台帳価額をもとに計算します。基礎となる金額を計算することで、早見表をもとにした算出が可能です。
- 基礎となる金額(A、単位は万円)=(対象土地の固定資産評価額+関係土地の固定資産評価額)÷2×0.05
筆界特定申請手数料の早見表は、以下のとおりです。
基礎となる金額 | 単価 | |
---|---|---|
100万円までの部分 | 10万円までごと | 800円 |
100万円超え500万円までの部分 | 20万円までごと | 800円 |
500万円超え1,000万円までの部分 | 50万円までごと | 1,600円 |
1,000万円超え10億円までの部分 | 100万円までごと | 2,400円 |
10億円超え50億円までの部分 | 500万円までごと | 8,000円 |
50億円超える部分 | 1,000万円までごと | 8,000円 |
引用:筆界特定制度に関する「よくある質問」のQ3|東京法務局
たとえば、対象土地・関係土地の固定資産評価額がともに2,000万円だった場合、基礎となる金額Aは以下の計算で求めます。
- (2,000万円+2,000万円)÷2×0.05=100万円(A)
基礎となる金額Aが100万円であるため、表をもとに筆界特定申請手数料を算出できます。
- 100万円÷10万円×800円=8,000円
基礎となる金額に端数が生じた場合、切り上げてAに当てはめましょう。たとえば基礎となる金額が105万円であれば、110をAに当てはめて手数料を計算します。
予納手続費用
予納手続費用とは、当該土地の測量にかかる費用です。予納手続き費用は、申請後の調査段階で、筆界調査委員が「測量が必要」と判断した場合に支払いが必要となります。測量を実施する前に予納を済ませない場合は、申請が却下されるため注意が必要です。
土地の広さや状況に応じて費用は変動しますが、通常の測量費用と同程度と考えておけば間違いありません。一般的な宅地であれば、費用は30万〜50万円になります。
代理人の報酬
筆界特定制度の手続きを代理人に依頼する場合の報酬費用は、10万〜20万円です。たとえば、土地家屋調査士に依頼すると、あらかじめ土地の測量を済ませたうえで筆界特定の申請が可能です。
事前に土地の図面を用意したうえで申請できるため、筆界の特定結果を予測しやすくなります。報酬にプラスして測量費用が必要ですが、予納手続費用の支払いは必要ありません。
筆界特定制度を利用する3つのメリット
筆界特定制度を利用するメリットは、以下の3つです。
- 境界確定訴訟よりも筆界の特定が早い
- 境界確定訴訟よりも費用負担が少ない
- 隣接土地所有者との人間関係が悪化しにくい
筆界特定制度が設けられたことで、従来の境界確定訴訟よりも利用しやすくなりました。メリットを理解して、筆界特定の際に役立てましょう。
1. 境界確定訴訟よりも筆界の特定が早い
筆界特定制度を利用することで、境界確定訴訟よりも筆界の特定が早くなります。筆界の専門家が当該土地の筆界を調査して、法務局の筆界特定登記官が判断するためです。裁判所と比べると、筆界に関する調査・資料の収集能力は法務局のほうが優れています。
境界確定訴訟では、最終判決までに2年以上の期間を要することが一般的です。筆界特定制度では最終判断までの期間は6カ月〜1年、東京法務局の標準期間は「9カ月」とされています。
2. 境界確定訴訟よりも費用負担が少ない
筆界特定制度は、境界確定訴訟よりも費用負担を安く済ませられます。境界特定訴訟は弁護士が必須となり、どうしても費用が高くなるためです。負担の大きい訴訟を諦めてしまう方でも、筆界特定制度は利用しやすいといえます。
3. 隣接土地所有者との人間関係が悪化しにくい
筆界特定制度を利用することで、隣接土地所有者との人間関係悪化を抑制できます。公的な機関が申請人・関係人の利害に関係なく、公正な判断を下すためです。
境界確定訴訟の場合は原告と被告にわかれる性質上、どうしてもわだかまりが生じやすくなります。公法上の境界である筆界は所有権を争うものではないため、本来は対立構造が成り立つものではありません。
裁判となると、どうしても白黒はっきりするイメージがあるため人間関係の悪化を助長します。筆界特定制度を利用することで、申請人・関係人双方の納得を得られ、人間関係悪化の心配もなくなるでしょう。
筆界特定制度を利用する3つのデメリット
筆界特定制度を利用するデメリットは、以下の3つです。
- 特定された筆界が認識と異なる場合がある
- 境界確定訴訟に発展するリスクがある
- 測量を含む筆界特定制度の費用は申請人が負担する
筆界特定制度は境界確定訴訟を避けるために設けられた制度ですが、結果的に境界確定訴訟に発展する可能性は否めません。申請人・関係人ともに、受け入れがたい結果になる可能性を想定して制度を利用しましょう。
1. 特定された筆界が認識と異なる場合がある
筆界特定制度によって特定された筆界は、申請人・関係人それぞれの認識と異なる場合があります。公法上の境界を特定することが目的のためです。
境界「線」ではなく、範囲を表す「面」で筆界が特定される可能性があるため、思わぬ結果になることもあるでしょう。申請人・関係人それぞれの「受け入れがたい不満・不服」につながる可能性があります。
2. 境界確定訴訟に発展するリスクがある
特定された筆界に不満・不服がある場合は、境界確定訴訟に発展する可能性があります。筆界特定登記官が調査結果をもとに独自の判断で決めるためです。
申請人・関係人の双方が考えている筆界と異なる場合に、筆界特定登記官の決断に納得できない可能性も考えられます。納得できないケースで答えを出すには、境界確定訴訟以外にないでしょう。
筆界特定制度は筆界の専門家による調査結果が参考とされるため、裁判で判断が覆ることは多くないです。境界確定訴訟まで発展するケースは、稀といえます。
3. 測量を含む筆界特定制度の費用は申請人が負担する
筆界特定制度を利用した場合にかかる費用は、申請人が負担します。筆界を特定するための資料を収集するだけではなく、現地の測量が必要になるため、手数料のほかに測量費用の負担も必要です。測量費用は安価なものではないため、申請人への負担が大きくなります。
筆界特定制度の手順・流れ
筆界特定制度の手順・流れは、以下のとおりです。
- 筆界特定の申請
- 筆界特定登記官による審査
- 筆界調査委員による調査・測量
- 筆界特定登記官による意見聴取
- 筆界調査委員の意見の提出
- 筆界特定の通知・公告
筆界特定制度の流れを把握することで、申請から公告までスムーズに進められます。筆界特定制度を利用する際に役立つため、確認しましょう。
1. 筆界特定の申請
筆界特定制度を利用するためには、筆界特定申請書を法務局に提出します。申請の趣旨・筆界特定を必要とする理由の記載が必要です。提出の際に、手数料を支払います。
筆界特定制度の手数料は収入印紙で用意し、申請書に貼り付けて提出してください。筆界特定を必要とする主な理由には、以下の4つが挙げられます。
- 隣接する土地所有者と筆界の位置で意見の対立が生じた
- 隣接する土地所有者から筆界の立会い協力が得られない
- 隣接する土地所有者が不明で筆界の立会いができない
- 隣接する土地所有者の協力は得られているが筆界の位置が明確ではない
2. 筆界特定登記官による審査
筆界特定申請書は申請内容に不備がないことを確認したうえで、法務局内の筆界特定登記官によって受理されます。申請書をもとに、筆界の特定に必要な資料収集がはじまり審査開始です。
収集する資料は法務局にとどまらず、市役所・区画整理事務所などの関係機関すべてが含まれます。当該土地の調査を担当する筆界調査委員も任命されるでしょう。
3. 筆界調査委員による調査・測量
任命された筆界調査委員によって、当該土地の調査、必要に応じて実際の測量が実施されます。筆界特定登記官によって収集された資料の精査、申請人・関係人に対する聞き取り調査などを行い、筆界の特定を行うことが一般的です。
筆界調査委員には、民間の土地家屋調査士が任命される場合が多く、調査委員自ら当該土地の測量を実施する場合もあります。測量の結果としての測量図面も作成されるでしょう。
4. 筆界特定登記官による意見聴取
筆界特定制度では、申請から筆界特定までの間に、申請人・関係人に対する意見の陳述や資料を提出する機会を設けます。陳述・資料の取りまとめの担当が筆界特定登記官の役割であり、手続きすることで申請人・関係人は、陳述・資料をまとめた記録を自由に閲覧可能です。
5. 筆界調査委員の意見の提出
測量を含めすべての調査が完了した時点で、筆界調査委員は調査結果をまとめて「意見書」を作成し、筆界特定登記官に提出します。意見書に記載される内容は、調査結果にもとづいた筆界調査委員の見解です。
6. 筆界特定の通知・公告
筆界特定登記官は、調査委員の意見書をもとに筆界を特定し、特定した筆界を公告します。申請人・関係人への通知も、同じタイミングで行います。筆界を特定する見地に含まれる要素は以下の4つです。
- 筆界調査委員の意見書
- 法務局を含む関係機関から収集した資料
- 対象となる土地・関係する土地の状況(地形・地目・面積)
- 塀をはじめとした工作物、境界標識の有無
所有権界の解決は境界問題ADRがおすすめ
所有権界の解決は、境界問題ADRがおすすめです。境界問題ADRとは、所有権界の問題を調停・話し合いによって解決するための制度です。ADR土地家屋調査士と弁護士が協力してサポートします。全国に相談窓口が設置されており、20万〜30万円の費用で利用可能です。
筆界と所有権界が乖離している場合、境界紛争に発展する可能性があります。筆界特定制度や境界確定訴訟は公法上の筆界を特定する手続きであり、所有権界の解決には利用できないためです。所有権界の問題解決には、裁判によらない解決法「境界問題ADR」を利用しましょう。
まとめ
筆界特定制度とは、曖昧な筆界を特定するための制度です。筆界特定調査員が調査・測量を行い、筆界特定登記官が該当する土地の筆界を明確にします。境界確定訴訟よりも費用を抑えられ、筆界の特定が早いです。
費用は対象の土地や関係する土地の状況によって異なるため、明確な金額はわかりません。筆界特定制度は公法である筆界の特定をするものであり、私法である所有権界の解決はできません。所有権界の解決は、境界問題ADRを利用しましょう。
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1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
一般的には専門家である「土地家屋調査士」が当事者とその隣接住人との立会の元、境界についての確認を行っていき、図面を作成したうえで境界についての「覚書」を作成します。
この覚書は境界確認に関係した全員分作成されます。各自がそれぞれ保管し、所有土地を売買等によって新たな所有者に引き継いだ場合はその覚書も次の所有者へと受け継いでいくことによって将来の紛争を回避することができます。
また、この時の測量図を基にして法務局への「表示変更登記」を行うことによって「筆界」と「所有権界」を一致させることができます。
この時に隣地者との合意が得られなかったり、所有者が不明であったりといった場合に「筆界特定制度」「境界確定訴訟」を利用していくという事になります。
土地の売買に直接の関係がない隣地住人がこの境界確定の立会を求められると、「自身にとってメリットがない事に協力したくない」と考える方もおられます。
しかし、覚書をもっておくことによって将来ご自身が不動産を売却するときに必要な調査を一部省略することができたり、相続によって下の代へ引き継いだ際に紛争をさけることができるといった種々のメリットを他人の費用で享受できるというふうに考えることもできます。
境界確定について「土地家屋調査士」から案内があった場合は、他人の用事に巻き込まれたと思うのではなく、自身にとってもメリットがあることだと認識し積極的に協力しスムーズに完了させてしまうほうがよいでしょう。
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