労務トラブルの事例23選!問題を未然に防ぐポイントとは?
- 労務トラブルの事例にはどんなものがある?
- 労務トラブルが発生した際の対応方法は?
- 労務トラブルを発生させないためのポイントは?
「労務トラブルが多様化し対応方法がわからない」「労務トラブルを防ぎたい」とお悩みの企業担当者や会社員の方、必見です。
この記事では、採用や有給休暇、就業規則など会社で起こりうる労災やトラブルの事例や解決方法を紹介します。トラブル対応の流れやトラブルを未然に防ぐポイントも紹介します。
記事を読み終わる頃には、さまざまな労務トラブルにスムーズに対応できるでしょう。
もしも今現在、
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労務トラブル事例23選と解決法
実際に起こった労務トラブルの事例を以下の項目別に23選紹介します。さまざまなジャンルの労務トラブルがあるため、自社内で起こり得るトラブルを把握することが重要です。
- 採用・入社における労務トラブル
- 就業規則・服務規程における労務トラブル
- 労働時間・残業における労務トラブル
- 有給休暇における労務トラブル
- 人間関係・ハラスメントにおける労務トラブル
- 賃金・退職金における労務トラブル
- 休職・健康問題における労務トラブル
- 退職・解雇における労務トラブル
トラブルの原因を追究することで、会社と従業員の双方にとって最善の解決方法が見つかります。
採用・入社における労務トラブル
採用・入社における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 1. 採用内定通知後に内定を取り消すケース
- 2. 試用期間中に従業員を解雇するケース
- 3. 新人研修の交通費や残業代を支給しないケース
採用したばかりで労務トラブルが起こった場合、早期離職につながりかねません。企業はトラブルを避けるよう細心の注意を払うべきです。
1. 採用内定通知後に内定を取り消すケース
内定者が入社するまでの間に、社内で業績不振や予期せぬトラブルにより内定者を迎え入れることができない状況となった。内定者は内定をもらったことで他の企業からの内定を断り、今からの就職活動も厳しい状態である。この場合、内定を取り消すことはできるのか?
この場合、企業が内定者に対して和解金を支払うのが一般的です。和解金の相場は、入社していれば得られた賃金半年〜1年分と、賞与の合計+慰謝料の300万円〜400万円です。さらに企業は内定取り消しの旨を所轄のハローワークや内定者の学校へ通知しなければなりません。
内定者は、内定が取り消され何の対応もされない場合、慰謝料を貰える可能性が高いため専門家に相談してください。
企業側に求められる対応 | ・和解金を支払う ・ハローワークや内定者の学校へ通知する |
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内定者に求められる対応 | 企業からの対応がない場合、専門家に相談する |
2. 試用期間中に従業員を解雇するケース
先々月入社した従業員の勤務態度がとても悪い。同僚とのケンカ、お客様とのトラブルも何度も起こしている。何度も注意したが改善する傾向が見られず、他の従業員から不満も出ているため、試用期間中を理由に解雇することにした。ところが、その従業員からは「試用期間を理由にした解雇は権利の濫用だ。そもそも就業規則にも書いていない」と言われた。試用期間中は会社の判断で自由に解雇できると思っていたが、認識が間違えていたのか。
従業員が言うとおり、試用期間中を理由に会社が自由に従業員を辞めさせられるわけではありません。ただし、試用期間を設定すると、入社日から14日は解雇予告の手続きなく解雇が可能です。
裁判所の判例によると、実際に認められるケースは社会通念上、本採用しないことが適切である場合に限られます。上記の事例では、14日以上経過していることに加え就業規則に記載されていないため、従業員の言うとおり試用期間を理由に解雇はできません。
企業側に求められる対応 | 「合理的な理由や社会通念」が根拠に基づいて判断できるよう、本採用を拒否できる根拠を就業規則に記載する |
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留保解約権とは、本採用の前に一定の試用期間を設け、従業員が不適格と判断した場合に本採用を拒否できる権利です。勤務成績や勤務態度などの不適格であることの具体的な証拠が必要となります。
3. 新人研修の交通費や残業代を支給しないケース
入社前の新人研修に参加した際、現場に向かうまでの交通費が一切支払われなかった。入社前の研修とはいえ、本社とは違う場所だったためかなり交通費がかかった。すべて自己負担なのは労働基準法に違反するのではないでしょうか。
交通費の支給に関する法的な規定はないため、交通費が全額支給されなくても法的に問題はありません。研修で交通費が支給されない場合は、入社後の交通費も上限がある場合や一律に金額を設定していることがあります。内定者は、入社前に交通費規定をきちんと確認しましょう。
企業側に求められる対応 | 交通費を定める場合は就業規則に記載する |
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内定者に求められる対応 | ・入社前に交通費を確認する ・交通費の法的な規定はないため、社内の交通費規定に従う |
就業規則・服務規程における労務トラブル
就業規則・服務規程における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 4. 身なりを理由に従業員を解雇するケース
- 5. 禁止している副業が発覚し従業員を解雇するケース
- 6. 従業員が社内の備品を私物化しているケース
就業規則や服務規程は、すでに決められているルールであり、従業員が従わなければならないものです。就業規則に書かれていないことがトラブルの原因になることが多いため注意しましょう。
4. 身なりを理由に従業員を解雇するケース
金髪にしピアス付けていたら、会社から「直さないと解雇する」と言われた。身なりに関しては個人の自由が認められていて、解雇処分の理由にならないと思う。
このケースでは、就業規則に服装や身だしなみに関する記載があれば、注意を繰り返し改善が見られない場合に限り解雇することが可能です。ただし、解雇後に訴えられると処分は無効になることがあります。 訴えのとおり、服装や髪型などは人格や自由に関する事柄で、会社がすべてをコントロールすることが許されているわけではありません。
企業は、問題のある社員に早い段階で注意しましょう。書面による注意を何度か行ったうえでの処分検討であれば、企業側が従業員個人の行動によって損害を被った事実が認められやすくなります。
企業側に求められる対応 | ・従業員の身なりに関してのルールを就業規定に定める ・いきなり解雇を言い渡すのではなく、まずは注意して改善を促す |
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従業員に求められる対応 | 身なりは会社の就業規則の範囲内にとどめる |
5. 禁止している副業が発覚し従業員を解雇するケース
社員の1人が勤務時間外に別の会社で働いていることが発覚した。ここ最近、勤務中に居眠りをしていたためおかしいと思っていた。社内規定では「会社へ報告なしの副業は禁止」と決まっており、彼は副業していることを会社へ報告していなかった。これは十分な解雇理由になるか。
争点となり得るのは「就業規則に記載があったか」「本業に支障をきたしているか」という点です。就業規則に記載があれば、規則に反する行為にあたり処罰対象となります。 たとえば、会社の許可なしに副業をすることは認めない、副業をする場合は本業に支障が出ない範囲でと明記されている場合、規定を守れば副業は可能です。
今回の場合は会社への報告もなく本業に支障が出ていたため、処分できる十分な理由があると考えられます。 近年は働き方改革により副業を認めている企業も増えていますが、規定がないとトラブルになりやすいため注意してください。
企業側に求められる対応 | 副業に関する事項は許容、禁止に関わらず就業規定に定める |
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従業員に求められる対応 | 副業は就業規則の範囲内でおこなう |
6. 従業員が社内の備品を私物化しているケース
社用スマホと社用パソコンを従業員に支給したところ、私物と同様の使い方をしているようであったため、履歴チェックを実施した。当該社員はプライベートでの使用が多く、業務中に社用スマホで動画を見ていることもあった。社員に注意すると、逆にプライバシーの侵害と言われた。
社用の備品を支給する会社も多いですが、細かいルールや規定を就業規則に記載している企業は多くないでしょう。口頭説明のみになってしまうこともあり、トラブルの原因になりかねません。 備品を貸与した企業側に監視する権利がありますが、使用者にもプライバシーが保護される権利があります。
重要なのは、社内の備品はあくまで業務を円滑に進めるためのツールであることです。使用者は私的な利用をしていても、見られて問題ない使い方をしなければなりません。企業側は、使用範囲の規定と注意事項、どのような場合にチェックが許可されるかなどを明記した書面の作成と同意が鉄則でしょう。
企業側に求められる対応 | 備品の使用範囲に関する規定と注意事項を記した書面を作成する |
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従業員に求められる対応 | ・規定の範囲内で備品を使用する ・私的に利用する場合でも、見られて問題ない使い方をする |
労働時間・残業における労務トラブル
労働時間・残業における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 7. 休日出勤を強要するケース
- 8. 違法な範囲の残業量を従業員に課しているケース
- 9. 準備体操・朝礼・移動などの時間を給与に含めていないケース
労働時間や残業に関するトラブルは、企業の評判に直結する問題になり得るため注意が必要です。
7. 休日出勤を強要するケース
上司から今度の日曜日に休日出勤を命じられた。その日は身内の結婚式があり、どうしても出勤することができない。休日出勤を拒否することはできるか。
会社から休日出勤を求められた場合、労働基準法に照らして問題ないか確認しましょう。法律で決められた労働時間は、1週間で40時間(1日8時間)、休日は週1日以上と定められています。加えて企業は36協定(労働基準法36条)に基づき、残業時間や休日出勤が必要な業務と時間などを決めることが可能です。
業務命令であれば休日出勤を命じることが可能で、社員も正当な理由がない限り拒否できません。冠婚葬祭への参加のように本人でなければならない、その日しか都合がつかないなど、業務命令を拒否する正当な理由があれば、休日出勤を命じられたとしても拒否が可能です。
企業側に求められる対応 | ・休日出勤は法律の範囲内で従業員へ要請する ・従業が出勤できない理由が正当と判断した場合は休日出勤を強要しない |
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従業員に求められる対応 | 休日出勤ができない場合は、正当な理由を会社へ報告する |
8. 違法な範囲の残業量を従業員に課しているケース
残業が多すぎてここ最近慢性的に頭痛や寝不足になっている。気分が沈むことも増えてきたため病院に行くと、軽いうつ気味と言われた。ただ、自社は特別条項付き36協定を締結しているため訴えることはできないのだろうか。
特別条項付き36協定であっても残業の上限45時間を超えてもいいのは年6回までです。上限はよほどのことがない限り変更不可であるため、年6回を超えていれば違法性が認められます。
このケースの場合、労働基準監督署に相談することで労働災害認定を受けられる可能性が高いといえるでしょう。最終的に転職で解決を図ることが最善策ですが、労災認定を受ければ療養給付や休業補償給付など数々の保証が受けられます。
企業側に求められる対応 | 違法にあたる量の残業にならないよう従業員を管理する |
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従業員に求められる対応 | 企業に上限を超えた残業を強要される場合、労働基準監督署に相談する |
9. 準備体操・朝礼・移動などの時間を給与に含めていないケース
毎朝始業時間30分前に会社へ行き準備体操と掃除、朝礼を行っている。実際の始業時間は9時なのに、準備体操や朝礼などに充てられた時間への給料は支給されていない。この時間は会社から命じられていて来ているため、給料を請求できるはずではないか。
労働時間とは、労働者が雇用側の指揮命令下に置かれている時間のことを指します。このケースでは、準備体操や掃除なども指示されて実施している以上、労働時間に含まれる可能性が高いです。 企業は、賃金請求があった際は応じなければならない可能性が高いため、注意しましょう。
企業側に求められる対応 | ・労働時間に含まれると判断される項目はすべて給与として支払う ・今まで支払っておらず従業員から請求が合った場合は応じる必要がある |
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従業員に求められる対応 | 労働時間にもかかわらず給与が支払われていない場合、会社へ請求する |
有給休暇における労務トラブル
有給休暇における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 10. 従業員の有給休暇取得を認めないケース
- 11. 退職前の有給休暇消化を認めないケース
- 12. アルバイト・パートタイムの有給休暇取得を認めないケース
有給休暇は従業員への福利厚生の一部であり、労働者の権利でもあります。従業員に対する会社の姿勢を表すものであるため、離職率を抑えるためにも重要なポイントです。
10. 従業員の有給休暇取得を認めないケース
勤続4年目で有給休暇が溜まっていたため、上長に取得希望を出した。しかし、その時期は忙しいと言われた。いつ頃であれば可能かと聞くと、有給を与える余裕はない、そんなに取りたいのであれば辞めてもいいと言われた。
労働トラブルに多いのが、年次有給休暇に関する問題です。人手不足のため、有給休暇を取得することに難しさを覚える従業員は少なくありません。 ただし、労働者の年次有給休暇取得の権利は労働基準法39条によって定められているもので、取得できないまたは取得を妨害される場合は違法にあたります。
労働者も有給休暇の取得時期はよく検討する必要があり、繁忙期は避けた方がいいでしょう。取得完全拒否または妨害するための嫌味を言われた場合は、証拠を持って労働局・労働基準監督署に報告することで、改善が見られる可能性があります。
企業側に求められる対応 | 従業員に有給休暇を取得させる |
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従業員に求められる対応 | ・有給取得の権利はあるが、繁忙期を避ける配慮は必要 ・有給が認められない場合は証拠を持って労働局や労働基準監督署に報告する |
11. 退職前の有給休暇消化を認めないケース
先日退職を申し出た社員から「退職日まで有給休暇を使い切りたい」との申し出があった。引き継ぎもまったく終わっていないのに、退職日まで1回も出社しない社員に給与を支払わなければならないのか。
労働基準法39条によると、労働者の年次有給休暇は特別な権利の扱いであり、退職時の有給消化を企業が拒否することは原則として不可能です。引き継ぎの関係で該当社員に出社してもらいたい場合は、十二分に協議して合意をもらいましょう。
企業側に求められる対応 | ・従業員の有給消化を認める ・引き継ぎでどうしても出社してもらう必要がある場合は、強要せずによく協議する |
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12. アルバイト・パートタイムの有給休暇取得を認めないケース
長年パートとして勤務している。最近、会社側に有給休暇の申請をおこなったところ、パートには有給休暇はないと言われた。長年働いていても、パートやアルバイトには有給休暇を取得する権利はないのか。
勤務形態にかかわらず、一定の基準を満たしていれば有給休暇を取得する権利があります。以下の2つの基準を満たしていれば、10日間の有給休暇を取得可能です。
- 雇い入れの日から6カ月以上経過していること
- その期間の全労働日のうち8割以上に出勤したこと
雇い入れの期間の長さによって、付与される有給休暇の日数が増えていく点にも注意しましょう。
6カ月 | 10日間 |
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1年6カ月 | 11日間 |
2年6カ月 | 12日間 |
3年6カ月 | 14日間 |
4年6カ月 | 16日間 |
5年6カ月 | 18日間 |
6年6カ月以上 | 20日間 |
企業側に求められる対応 | ・パートやアルバイトでも有給消化を取得させる必要がある ・従業員が有給取得の基準を満たしているか確認する |
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人間関係・ハラスメントにおける労務トラブル
人間関係・ハラスメントにおける次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 13. 従業員間のいじめにより精神疾患・退職に追い込むケース
- 14. セクハラした従業員を解雇するケース
- 15. 入社後すぐの産休・育休の取得を認めないケース
ハラスメントは、あとで訴訟問題になり得る大きなトラブルです。早急に解決できるよう原因を追究しましょう。
13. 従業員間のいじめにより精神疾患・退職に追い込むケース
転職先の会社にて激務で仕事のレクチャーを受けることができなかった。入社後半年が経過しても要領が悪く、足を引っ張っていたためひどいいじめを受けた。パワハラまがいの暴言や徹底した無視、ミスをすると叩くなどの暴力も受けたため、心身ともに限界を迎えた。退職を決意しているものの、このままでは負けたようで悔しい。会社に何かしらの責任を取らせることはできるか。
退職理由で1番多いのが人間関係と言われるほど、社員間でのトラブルはつきものです。最近はセクハラの他にパワハラ、マタハラ、スメハラなどさまざまなハラスメントが問題になっており、大人の社会でのいじめが深刻化しています。
このケースで慰謝料を勝ち取りたい場合は、会社がいじめを把握していた事実といじめの証拠(音声や診断書など)が必要です。心身ともに傷を負った状態での損害賠償請求はかなりの負担がかかりますが、泣き寝入りしないためにも戦う必要があります。
従業員に求められる対応 | ・いじめやパワハラの証拠を集める ・損害賠償請求を行う |
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14. セクハラした従業員を解雇するケース
1年ほど前から同じ部署の男性社員に毎日のように性的な言葉を投げかけられ、とても苦痛に感じている。そのうえ、就業時間外に電話連絡をしてくる、自宅近くで待ち伏せするなど恐怖を感じる行動も見られる。犯罪に近い行為として会社に解雇してもらうことはできるか。
セクハラ問題は年々相談件数が増加しており、内容も深刻化しています。セクハラは、犯罪と思われるもの、職場での性的な発言や何度も食事に誘う行為、冗談のように性差別発言をするものまで程度がさまざまです。
強制わいせつは、法律上の罰則が存在しているため、必要に応じて警察に対処を依頼する必要があります。被害者が苦痛を感じている場合は、会社からの厳重注意・解雇も可能です。
法的に訴えて慰謝料を取る場合は、セクハラの証拠が必要となります。企業がセクハラの相談を受けた場合は、本人への注意や異動による対処、さらに厳しい処分など、何かしらの対応をしましょう。
企業側に求められる対応 | ・警察に依頼または解雇も検討に含めて対応する ・該当従業員同士の隔離や加害者への処分などで対応する |
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従業員に求められる対応 | ・まずは会社に相談する ・法的に訴える場合は証拠を揃える |
15. 入社後すぐの産休・育休の取得を認めないケース
入社して2カ月になる女性社員から妊娠報告があった。おめでたいことだが、育休は勤続1年未満の場合は適用されないと認識していたため退職するように言うと、不当と言われ退職を受け入れてもらえなかった。人出不足のためどうにかできないか。
原則として、労働者から産休・育休の申請があった場合に企業側は拒否することができません。とくに産休は、勤続年数にかかわらずいつでも取得できます。
育休は、労使協定が結ばれているケースにおいて、雇用期間が1年に満たない労働者を育休の適用除外にすることが可能です。中小企業で人出不足が深刻な場合は、事業場ごとに労使協定を締結することをおすすめします。
企業側に求められる対応 | 産休・育休は労働者の権利であるため、労使協定が締結されていない場合は勤続年数にかかわらず取得させる |
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賃金・退職金における労務トラブル
賃金・退職金における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 16. 年俸に含まれた残業代が明らかに少ないケース
- 17. 規定にない退職金の要求に応じないケース
- 18. 従業員の賃金をカットするケース
賃金や退職金の労務トラブルは会社と従業員の認識の差が出ることが多いケースです。従業員の認識を確認しながら解決策を模索することが重要といえるでしょう。
16. 年俸に含まれた残業代が明らかに少ないケース
年俸に残業代が含まれており、そのときは特に疑問もなかったため書類に捺印をした。しかし、実際に就労してみると残業がとても多く、残業代が含まれている年俸は明らかに少ないと感じるようになった。かなり体が辛いため、時間外労働手当がほしいと申し出たが、納得して捺印しただろうと取り合ってもらえない。
年俸額の内訳が明示されていない場合は、契約を交わしても従業員から時間外勤務手当の未払い請求をされることがあります。
大事なポイントは、基本給と時間外勤務手当の内訳を明確にしたうえで提示することです。 内訳が明確になっていれば残業代を含む年俸制の導入は可能で、提示した残業代を越えない限りは別途で時間外労働手当を支払う必要はありません。
企業側に求められる対応 | 年俸に残業代を含める場合、内訳を明確にする |
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従業員に求められる対応 | ・まずは規定に内訳が記載されているか確認する ・内訳がない場合は未払い分として会社へ請求する |
17. 規定にない退職金の要求に応じないケース
長年務めていた社員が退職することになったが、退職金を要求された。会社に退職金制度はなく規定にもなかったため、退職金の支払いを拒否したが、不当で訴えると言われた。
就業規則に記載がある場合を除き、企業側に退職金を支払う義務はありません。退職金は働いていた社員に対しての労いの意味があり、支払わなくても違法ではなありません。訴えると脅されている場合は、警察や弁護士に相談しましょう。
企業側に求められる対応 | 規定に定めている場合は従業員に退職金を支払う必要がある |
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従業員に求められる対応 | ・規定を確認する ・規定に退職金を支払うことが定められている場合、会社へ請求する |
18. 従業員の賃金をカットするケース
経営難を理由に入社時に提示された給与を下回る金額に減給された。これは法律違反であると思うが訴えることは可能か。
賃金のカットは原則違法とはいえません。企業が減給できる限度額は以下のように定められています。
- 減給1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えない
- 減給の総額が賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えない
減給の金額がこの範囲に収まっており、会社から説明もあった場合、訴えることは難しいでしょう。賃金カットの理由が懲戒処分であれば、減給を甘受するしかないケースがほとんどです。
企業側に求められる対応 | 従業員の給与を減給する場合は正当な理由を伝える |
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従業員に求められる対応 | ・減給された要因を把握する ・正当な理由であれば訴えることは難しい |
休職・健康問題における労務トラブル
休職・健康問題における次の2つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 19. 休職から復職後にすぐ再休職を求められるケース
- 20. 従業員がうつ病で休職するケース
休職や健康問題は、会社にとっても大きな負担となり得るため、早期に解決できるよう準備することが重要です。
19. 休職から復職後にすぐ再休職を求められるケース
軽いうつ病で休職していた従業員が「もう大丈夫」と復職を希望したためすぐに認めた。数日後にふたたび欠勤し始め、休職の条件となる1カ月が過ぎた段階で「再度休職させてください」と申し出を受けた。前と同じ理由による欠勤だったため、会社からは「前回の休職の続きになるため、その残りが今回の休職の期間」と伝えた。すると従業員は「1度復職したのだから、今回は新しい休職になるはずで、前回の続きになることは就業規則に書いていない」と言われてしまった。
この事例のポイントは、従業員が休職制度の特徴を理解しているかどうかです。休職制度とは、従業員が病気や私的な事情を理由に職務を遂行できない場合に、すぐ解雇するのではなく職務が遂行できる状態に回復するまで待つためのものです。
休暇制度は法律による定めがないため、取得できるケースや期間は企業が任意に決める必要があります。休職制度を作らないと定めることも可能です。 上記のトラブルを防ぐためには、就業規則において休職制度の内容を厳密に定義する必要があります。休職に関する就業規定は次の点に配慮して決定しましょう。
- どのような場合に休職できるのかを明確にする
- 休職期間を明確に定める
- 断続的な欠勤が多いうつ病、精神疾患にも対応できるよう配慮する
- 休職期間は通算でカウントすることを定める
- 復職できる状態であるかを判断するための提出資料を定める
- 判断材料に医師の診断書を用いる場合、診断書の費用負担はどちらが持つかを定める
20. 従業員がうつ病で休職するケース
精神疾患のなかでも、近年特に増加しているのがうつ病です。うつ病や、うつ状態と躁状態を繰り返す躁うつ病により休職する社員も少なくありません。一般的に、就業規則では「休職期間と休職終了時の扱い」が定められています。
就業規則に休職期間内に復職できなかった場合の規定が不明確であると、不当解雇と判断される労務トラブルが発生することがあります。就業規則には休職期間の詳細や休職期間終了後の具体的な対応策を明記することが重要です。
企業側に求められる対応 | うつ病で休職した場合のケースを事前に想定し、就業規則に明記する |
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退職・解雇における労務トラブル
退職・解雇における次の3つのケースの労務トラブルを紹介します。
- 21. 正当な理由なく解雇を告げるケース
- 22. 無理な退職を迫るケース
- 23. 従業員からの退職希望を受け入れないケース
退職や解雇の労務トラブルは、損害賠償の金額が大きくなるおそれのある問題です。従業員の言い分を聞きつつ、ケースによっては専門家のアドバイスを求めましょう。
21. 正当な理由なく解雇を告げるケース
正当な理由なく突然解雇を通告された場合、労働者と会社の間で大きなトラブルが生じることがあります。解雇を告げられた理由が合理的ではなく、裁判所が「不当解雇」と判断した場合、会社は解雇時にさかのぼってすべての賃金を支払わなければなりません。
不当解雇と認められるためには、裁判所での判決が必要となります。理由なく解雇を告げられた場合は、手間はかかりますが弁護士に相談しましょう。 従業員を解雇する場合、経営者の独断で行うことはできません。社会通念上、どうしても解雇する理由がある場合に限り解雇が認められています。
企業側に求められる対応 | 解雇する場合は正当な理由が必要 |
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従業員に求められる対応 | 正当な理由なく解雇された場合は弁護士に相談する |
22. 無理な退職を迫るケース
退職トラブルでは、会社から無理な退職を強要されたケースもあります。従業員の合意のもと退職推奨を行うことは原則として認められていますが、定められた規則の範囲内でおこなうことが前提です。 会社は退職推奨をおこなっているつもりでも、従業員にとっては退職を強要されていると感じる場合も多いため慎重に行わなければなりません。
従業員と面談をおこなう際は、解雇せずに働いてもらう環境づくりに努めてきたこと、なぜ退職してもらいたいのかをていねいに伝えましょう。 従業員への不当な圧力や侮辱行為は退職を強制しているとみなされ、多額の請求をされるケースもあるため注意が必要です。
企業側に求められる対応 | ・従業員に退職を求める際は退職推奨を利用する ・退職を一方的に強要してはならない |
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23. 従業員からの退職希望を受け入れないケース
結婚を期に遠方へ移り住むことになり会社へ退職を申し出ましたが、認めてもらえなかった。さらには「これまで研修や育成にどれだけの費用がかかったと思っているんだ、損害賠償を支払ってもらう」と言われました。まだ若手で将来を期待されていただけに、会社の怒りが大きいのも理解できるが、やめることはできないのか。
会社は従業員から退職の申し出が合った場合に拒否することはできません。従業員の退職希望を阻害することは労働者の人身拘束とみなし厳しく制限されています。 退職を受け入れてもらえない場合、まずは上司や人事部門に相談することが大切ですが、事態が大きくなりそうな場合は弁護士に相談しましょう。
従業員に求められる対応 | ・まずは上司や人事部門へ相談する ・対応してもらえない場合は弁護士に相談する |
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労務トラブルに対応する流れ
労務トラブルが発生した場合、以下の2つのステップを踏んで解決に向かいましょう。
- 現状の把握
- 第三者機関・専門家への報告・相談
労務トラブルに限らず、スピーディーな対応が求められます。問題を放置せず、すぐに解決の手段を講じることが重要です。
1. 現状の把握
労務トラブルが発生した場合、現状を把握することが何よりも重要です。トラブルの当事者や内容だけではなく、労務トラブルが発生するまでの経緯を把握しなければなりません。
突如労務トラブルが発生することはあまりないため、原因を突き止めることが解決への第一歩です。原因を究明するとともに、従業員が普段どのように働いていたのか、別のトラブルは発生していないかなども調査します。
2. 第三者機関・専門家への報告・相談
現状を把握できたら、第三者機関や専門家への報告・相談が必要になります。会社側がどの程度責任を負うべきなのか明確にしなければなりません。
パワハラや不当解雇などの事例では、企業が多額の賠償金を支払わなければならないケースもあります。会社も労働者も納得できる解決策を見つけられるよう、労働基準監督署や弁護士、社労士などの助けを借りましょう。
労務トラブルを防ぐポイント4つ
労務トラブルを防ぐポイントは主に以下の4つです。
- 労務管理システムを導入する
- 雇用契約書や就業規則を作成し周知する
- 安全配慮を徹底する
- 正確な労務管理や情報提供を心がける
労務トラブルを発生させない対策、トラブルが発生したときに素早く解決するための対策を講じなければなりません。
1. 労務管理システムを導入する
労務トラブルを防ぐ1つの方法は、労務管理システムを導入することです。労務管理システムを導入することで、勤怠管理や社会保険への加入、年末調整の手続きなど幅広い業務を一括管理できます。
従業員がどの程度の業務をこなしているか、残業が多すぎないかを管理したい会社におすすめです。効率よく情報を管理できるため、社内のリソースを他の業務に回せる点もメリットです。
2. 雇用契約書や就業規則を作成し周知する
労務トラブルの多くは、就業規則や雇用契約書に記載がないことで生じます。労務トラブルを未然に防ぐため、雇用契約書や就業規則を作成し、従業員に周知することが重要です。
書面で就業規則について通知する、就業規則を学ぶ研修を行う、従業員がいつでも閲覧できるようにするなどの方法があります。従業員が閲覧できる状態にない場合、就業規則が無効になるおそれもあるため注意しましょう。
3. 安全配慮を徹底する
企業が安全配慮を徹底することで従業員の心身の健康が守られ、休業や退職に関するトラブルを防止できます。
作業のマニュアルを作成したり、残業時間をコントロールしたりすることで、従業員の働きやすさは向上するでしょう。安全配慮にもコストがかかりますが、企業の義務であるため専門の部門や担当者を任命しましょう。
4. 正確な労務管理や情報提供を心がける
労務トラブルが発生した場合、正確な労務管理や情報提供を行い、誠実に対応することで被害を最小限に抑えられます。
労務管理のデータを隠す、改ざんする、提出するべき情報を隠すなどの行為は、会社のイメージを傷つけるだけです。とくに会社に非があるケースでは、積極的な情報提供と誠意ある対応が求められます。
まとめ
労務トラブルにはさまざまな事例があるため、会社側には多くの対策が求められます。問題を未然に防ぐため、労務管理システムの導入や就業規則の周知徹底を心がけましょう。トラブルの防止には費用がかかりますが、労務トラブルによる企業のダメージと比べると低コストと考えられるでしょう。
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2000年に社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本店に入社し官庁対応や労務相談を主担当で約9年勤務。2007年には人材派遣会社の監査役に就任。独立後、2008年に大阪の玉造にドラフト労務管理事務所を設立。数々の企業向け官庁対応・労務相談に加え、派遣元責任者講習や職業紹介責任者講習講師や内部監査の代行業務など活動は多岐に渡る。外部セミナー講師を複数実施しており、かゆいところに手が届く現場に即した講義には定評がある。また、海事代理士として陸上のみならず海上労働者の労務相談も適時運営している。
そうすると判断する人により決定が異なることがでてくるので不公平感がうまれトラブルに発展するというご相談を頂くことが多いです。就業規則の整備運営をすることをおススメします。
特にこだわりがないなら厚生労働省のHPにあるモデル就業規則を基礎資料として作成をすることを推奨します。労働者よりだとの意見も見かけますが、最低の基準が記述されているのでそうとも言えないなという印象を私はもっています。
また、就業規則のダイジェスト版である労働条件通知書(雇用契約書)も齟齬がないように書面をもってしっかり説明をしましょう。初めに通知した条件と実際が異なると信頼関係が希薄となり、やがて退職とつながります。
この記事にあるたくさんの事例は労務トラブルの一例ですが、背景事情により回答が異なることもあるので参考程度にお読みいただき情報収集をしつつ、実例はご専門の方に相談をなされるのがよいでしょう。
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