人事評価改善等助成金とは?受給条件や受給金額・申請方法の3ステップを解説
- 人事評価改善等助成金とは?
- 人事評価改善等助成金の受給条件・受給金額は?
- 人事評価改善等助成金を活用するメリット・デメリットは?
「人事評価改善等助成金を利用したいけど、具体的な人事評価制度の改善方法がわからない...」とお悩みの会社経営者必見。
人事評価改善等助成金とは、社内の人事評価制度を整備するための助成金です。人事評価制度を整備して、企業の人手不足の解消と生産性上昇の実現を目的としています。
本記事では、人事評価改善等助成金の概要や受給条件・受給金額・申請方法の3ステップを解説します。最後まで読めば、人事評価改善等助成金の概要や活用方法を理解して人事評価制度の改善を行い、働きやすい環境を提供できるでしょう。
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人事評価改善等助成金とは
人事評価改善等助成金とは、人事評価制度を整備し「生産性の上昇」「報酬上昇」「退職率の減少」を図る助成制度です。平成30年より人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)に統合されています。
人事評価制度の体系を見直すことで、就業者への報酬上昇・退職率の減少などが期待できます。人事評価を見直すことで、成果をだしている就業者の報酬を高め、働きやすい環境の構築ができるでしょう。
人手不足解消と生産性向上の実現が目的
人事評価改善等助成金の目的は「企業の人手不足の解消」「生産性の上昇」です。限られた人材で企業が成長するためには、就業者の生産性上昇や長期雇用は欠かせません。
人材確保等支援助成金は、定期昇給だけではない報酬制度を設けることで「就業者の待遇改善」「離職率の減少」を図る事業主に対しての助成です。人事評価改善等助成金の活用で、生産性上昇の実現と人手不足の解消に期待できます。
平成30年に人材確保支援助成金と統合
人事評価改善等助成金は、平成29年度の3月で終了しました。平成30年度からは「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)となります。主な変更点は以下のとおりです。
変更点 | 人事評価改善等助成金 (平成30年3月まで) | 人材確保等支援助成金 (平成30年4月〜) |
---|---|---|
目標達成助成の支給申請が可能となる時期 | 人事評価制度の実施日の翌日から起算して1年を経過する日の翌日から起算して2カ月 | 人事評価制度等整備計画の認定申請の3年後の日の翌日から起算して2カ月 |
生産性の比較時期 | 目標達成助成の支給申請を行う直近の会計年度と3年度前を比較 | 計画認定申請日の属する会計年度の前年度と3年後の会計年度の比較 |
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の受給条件
人事評価制度を採用して助成金を受け取るためには、以下の5つの条件を満たす必要があります。
- 人事評価制度を実施できる体系があり労働局から正式に認められている
- 人事評価制度を行っている
- 規定の期間内で会社の生産性に6%以上の伸び率がみられる
- 人事評価制度に該当する就業者の報酬合計金額に2%以上の伸び率がみられる
- 退職率が30%以下であり人事評価制度を採用した日から1%改善している(就業者数300人未満の事業所は維持できている)
会社の生産性における判断規定の期間は、人事評価制度等整備設計認定申請日の属する会計年度の前年度と3年後の会計年度を比較します。6%以上の伸び率が条件です。
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の受給金額
人事評価改善等助成金の受給額は、制度整備助成の50万円と目標達成助成の80万円です。制度整備助成は、事業主が生産性上昇のための人事評価制度と2%以上の報酬上昇を含む報酬制度を整備し、実施した場合に受給できます。
目標達成助成は、人事制度整備後から1年経過後に人事評価制度の適切な運用を経て、以下の内容を達成した場合に支給されます。
- 生産性の上昇 ※人事評価制度の実施日の翌日から起算して1年を経過する日において「生産性要件」を満たしていること
- 就業者の報酬の2%以上のアップ
- 退職率の減少 ※人事評価制度実施日の翌日から1年経過後までの離職率が人事評価制度等整備計画を提出する前1年間の離職率よりも目標値以上に低下させること
退職率の減少の目標値は以下のとおりです。
対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数規模区分 | 1〜300人 | 301人以上 |
---|---|---|
低下させる離職率ポイント | 維持 | 1%ポイント以上 |
助成金の受け取りは、条件を満たし、手続きに必要な書面を出さなければなりません。
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の申請方法
人事評価改善等助成金の申請方法は、以下のとおりです。
- 人事評価制度等整備計画の作成・提出
- 整備計画に基づく人事評価制度の整備
- 人事評価改善等助成金の申請書類を提出
参照:人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース) を活用してみませんか?|厚生労働省
1. 人事評価制度等整備計画の作成・提出
人事評価制度の採用は、定められた書類を作成して提出します。作成した書類は、人事評価制度を整備する月の初日の6カ月前〜1カ月前の前日までに各都道府県労働局に提出しなければなりません。手続きに必須な書類は、制度整備助成・目標達成助成ともに以下のとおりです。
- 人事評価制度等整備計画書
- 整備する人事評価制度等の概要票
- 賃金アップ計算書・賃金台帳等
- 労働組合もしくは就業者の代表と合意していることが確認できる書類
- 事業所確認票
- 現行の労働協約もしくは就業規則・整備後の労働協約案もしくは就業規則案
- 設計時退職率の算出にかかる期間の雇用保険一般被保険者離職状況がわかる書類
- 人事評価制度等対象労働者の要件を満たすことがわかる書類
- 人事評価制度の 「改定」として人事評価制度等整備計画を提出することが可能であることがわかる書類
- 社会保険の適用事業所であることがわかる文書・対象事業所に雇用される労働者が社会保険の被保険者であることが確認できる書類
- ほかの管制労働局長が必須と認める書類
2. 整備計画に基づく人事評価制度の整備
手続きに必須な書類を提出後、人事評価制度設計に基づき体系を整備します。人事評価制度を行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 新しく設計された人事評価制度の実行
- 就業者に対する評価は年に1回以上行う
- 評価基準・報酬の変動額は就業者に明示する
以上の注意点以外にも、人事評価の対象と基準・方法が明確であり「労働者に開示している」「賃金表を定める」などがあります。人事評価制度は、会社の方向性・ビジョンを共有し、就業者個人を正当に評価することが重要です。
3. 人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の申請書類を提出
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の申請に必要な書類は、内容や提出期間が制度整備助成と目標達成助成で異なります。提出先は、本社の所在地を管轄する都道府県労働局です。
制度整備助成
制度整備助成の提出期間は、人事評価制度に基づく2%以上アップした賃金が最初に支払われた日の翌日から起算して2カ月以内です。制度整備助成の支給申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 人材確保等支援助成金支給申請書
- 事業所確認票
- 整備した人事評価制度の内容が確認できる書類
- 整備した人事評価制度の概要票
- 賃金アップ計算書
- 対象就業者の労働条件通知書もしくは雇用契約書
- 新たに整備した人事評価制度を実施したことや内容・制度の実施日が確認できる書類
- 支給要件確認申立書
- ほかの管制労働局長が必須と認める書類
目標達成助成
目標達成助成の提出期間は、評価時退職率算定期間の末日の翌日から2カ月以内です。評価時退職率算定期間とは、人事評価制度に基づく報酬がはじめて支払われた日の翌日から12カ月間で、目標達成助成の支給申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 人事評価改善等助成金(制度整備助成)支給申請書
- 事業所確認票
- 対象事業所における評価時退職率算定期間の雇用保険一般被保険者の離職状況が確かめることのできる書類
- 対象就業者の賃金の支払い状況が確かめることのできる書類
- 対象就業者の出勤状況が確かめることのできる書類
- 生産性要件を満たしているか確かめるための書面・算定の根拠となる証拠書類
- 賃金アップ計算書
- 支給要件確認申立書
- ほかの管制労働局長が必須と認める書類
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)のメリット
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)のメリットは、以下の2つです。
- 適切な評価制度により生産性が向上する
- 報酬に不満を抱える就業者の退職防止につながる
制度のメリットを確認して、自社の人事評価制度改善に役立てましょう。
適切な評価制度により生産性が向上する
適切な人事評価制度を設けることにより、生産性が向上します。企業は、労働者の成果に対して、明確な評価ができるためです。会社から自身の頑張りが認められていると感じることで、労働者の意欲が湧き、生産性が向上するでしょう。
報酬に不満を抱える就業者の退職防止につながる
適切な人事評価・報酬制度を確立することで、報酬に不満がある就業者の離職防止につながります。働いた分の成果と報酬に乖離を感じている労働者は多く、より高額な報酬を貰える企業へ転職する労働者が多いためです。適切な報酬が支払われる制度があることで退職防止につながるでしょう。
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)のデメリット
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)のデメリットは、以下の2つです。
- 助成金取得後も人件費の増加が継続する
- 助成金申請の手間がかかる
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)はメリットだけではなくデメリットもあります。デメリットを理解することで、よりいい人事評価制度を確立でき、助成金をうまく活用できるでしょう。
助成金取得後も人件費の増加が継続する
助成金取得後も人件費が増加するため、労働コストが上昇します。一時的に助成金の補助があるものの、賃金上昇後の人件費負担は継続するためです。
人事評価制度を見直す前よりも、人件費が増える可能性があります。助成金の受給が申請の目的となる場合は、コスト増加で頭を悩ませる可能性があるため注意が必要です。
助成金申請の手間がかかる
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の申請には9種類もの書類が必要なため、助成金の申請に手間がかかります。書類をそろえるだけでも時間がかかりますが、提出後に不備がある場合は、再提出の手間が増えるでしょう。
制度の趣旨を理解したうえで活用することが重要です。一時金目的の申請の場合は、手間と継続的なコスト増加がかかります。自社で、人事評価制度の見直しが必要か検討してから申請するといいでしょう。
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の注意点
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の注意点は、以下のとおりです。
- 離職率は過去1年間のデータで判断する
- 労働者賃金の総額で2%以上の増加が必要になる
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)は、助成金制度の申請をするまでに一定の成果が必要です。助成金の受け取り目的での申請は、反対に企業の不利益となるため注意しましょう。
離職率は過去1年間のデータで判断する
人材確保支援助成金(人事評価改善等助成コース)の離職率は、過去1年間のデータで判断します。過去1年間で「雇用保険一般被保険者」の該当者を1人も雇用していない場合は、対象外になるため注意が必要です。
「雇用保険一般被保険者」とは「雇用形態を問わず」「31日以上」「週20時間以上」の条件で働いている者を指します。以下の雇用者は対象外になるため注意しましょう。
- 65歳以上の雇用保険に加入している者
- 短期的(4カ月以内、1週間で30時間以内)に雇用されている者
- 1日ごともしくは30日以内の規定で雇用されている者
労働者賃金の総額で2%以上の増加が必要になる
労働者に支払う給与の総額が、人事評価制度の実施前から2%以上の増加が必要となります。「給与の総額」が2%以上増えていることが条件で、労働者全員の給与を増やす必要はありません。
増やした給与は「助成金を申請してから支給されるまでの約3年間引き下げてはいけない」点も忘れないようにしましょう。
人事評価制度改善は継続的な取り組みが重要
人事評価制度の改善は、継続的な取り組みが重要です。助成金の受け取りには「生産性の上昇」「人事評価制度の整備」「報酬制度の構築」をしなければなりません。
人事評価制度実施から3年後の目標達成の支給要件は「生産性が6%以上伸びている」「報酬アップ」「退職率減少」などがあります。人手不足の解消や就業者のモチベーション上昇には、公正な人事評価制度の整備が効果的でしょう。
助成金を活用することで人事評価制度のスムーズな導入につながり、持続的な取り組みが生産性の上昇に寄与するでしょう。
人事評価制度の整備における4つのポイント
助成金を受給するための人事評価制度整備におけるポイントは、以下のとおりです。
- 人事評価制度の新設もしくは改定を行う
- 人事評価制度の整備日を把握する
- 人事評価制度を整備したあとの実施日を知る
- 助成金の支給対象外になる場合があるため注意する
人事評価制度を見直しする作業は簡単ではないですが、助成金を受給するための見直しの場合はポイントがあります。ポイントを押さえることで、助成金の受給や受給後のリスク回避をスムーズに行えるでしょう。
人事評価制度の新設もしくは改定を行う
助成金の受給には、生産性上昇に資する人事評価制度の新設もしくは改定が必要です。生産性上昇に資する人事評価制度は、以下のとおりです。
- すべての人事評価制度の対象労働者を対象とする制度であること
- 報酬規定・報酬表を定めていること
- 人事評価制度に基づく評定と報酬(諸手当・賞与を含む)との関係が明確であること
- 評定対象と基準(資格・成果・業績など)が明確で就業者へ開示していること
- 毎月決まって支払われる報酬の額が1年後に2%以上増加する見込みがあること
- 人事評価制度において労働組合もしくは就業者の過半数を代表するものと合意していること
- 新設もしくは改定された制度であること
人事評価制度の整備日を把握する
人事評価制度の整備日は「人事評価制度を整備した労働協約もしくは就業規則の施行年月日」です。施行年月日が定められていない場合、労働協約は締結日、就業規則は労働基準監督署への届出日となります。
常時10人未満の就業者を使用する事業者は、就業規則の労働基準監督署への届出は不要ですが、就業者全員に書面での周知を行う必要があります。
人事評価制度を整備したあとの実施日を知る
人事評価制度の実施日とは、整備後の人事評価制度に適用される賃金表での最初の賃金支払日を指します。助成金を受けるためには、人事評価制度の整備を行っても実施日を把握していないと受給できない場合があるため注意しましょう。
助成金の支給対象外になる場合があるため注意する
人事評価制度を整備しても、以下の場合は助成金の支給対象外になるため注意しましょう。
- 設計にある人事評価制度の一部もしくはすべてが整備・実施されなかった場合
- 設計で対象となっている正規就業者の一部もしくは全員に実施されなかった場合 ※対象就業者が退職した場合・正規就業者ではなくなる場合は除く
- 設計にて対象となっている事業所の一部もしくは全部に整備・実施されなかった場合 ※対象就業者が存在しなくなる場合・事業所が廃止された場合は除く
まとめ
人事評価改善等助成金を利用することで「就業者の生産性向上」「退職率の減少」が期待できます。支給には「人事評価制度の整備」「報酬総額の上昇」の要件があるため、しっかりとした準備が必要です。
約3年間は報酬総額をアップし続けなければならないため、助成金目当ての申請には注意しましょう。適切に人事評価改善等助成金を活用することで、企業の成長が望めるためぜひ検討してください。
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