消費税が還付される条件とは?手続き方法を徹底解説!

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2024年08月30日
消費税が還付される条件とは?手続き方法を徹底解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 消費税が還付される条件は?
  • 消費税が還付されるケースは?
  • 消費税還付を受けるための手続き方法は?

消費税を納めている事業主は「納めすぎた消費税は還付してもらえる?」「どうやって申告すればいいの?」などの疑問を持つでしょう。消費税の還付が受けられると、キャッシュフローの改善に役立つこともあります。

この記事では、消費税の還付が受けられるケースや手続き方法について詳しく解説します。最後まで読めば、消費税還付をおこなう際に押さえておきたい課税対象の種類や還付額の計算方法、還付されるケースがわかるでしょう。

還付申告を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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消費税が還付される2つの条件

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消費税が還付されるためには、以下の2つの条件を満たしていなければなりません。

  • 課税事業者であること
  • 原則課税方式を採用していること

支払った消費税が受け取った消費税よりも大きい場合、消費税が還付される可能性があります。消費税の還付はキャッシュフローにいい影響をおよぼすこともあるため、還付の可能性があるかチェックしてみましょう。

課税事業者であること

消費税が還付されるためには、まず課税事業者でなければなりません。課税事業者は消費税の納税義務を負うため、消費税を納付しすぎた場合には還付の可能性があるでしょう。

課税事業者となる条件

以下のいずれかの条件を満たした場合には、課税事業者となります。

  • 前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える個人事業者
  • 前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える法人
  • 課税事業者となることを選択した個人事業者・法人
  • 適格請求書発行事業者の登録を受けている個人事業者・法人
  • 基準期間がない法人のうち、その事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上の法人

基準期間とは、前々年の1月1日から12月31日のことです。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても前年の1月1日から6月30日までの期間(特定期間)における課税売上高が1,000万円を超えた場合、課税事業者となります。

2023年に導入されたインボイス制度に対応し、適格請求書発行事業者となる場合は、課税事業者である必要があります。基準期間内の課税売上高が1,000万円を超えない場合、自動的に課税事業者とは見なされませんが、任意で課税事業者の登録を行いましょう。

原則課税方式を採用していること

消費税が還付されるためには、原則課税方式を採用している必要があります。原則課税方式とは、顧客から預かった消費税から支払った消費税を引いて納税額を計算する方法です。

原則課税方式ではなく、みなし仕入れ率をかけて納税額を計算する簡易課税方式や、20%をかけて納税額を計算するインボイスの2割特例を利用している事業主は還付の対象になりません。

納付した消費税額を正確に計算している事業者のみ還付の可能性があることを覚えておきましょう。

消費税が還付される3つのケース

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消費税が還付されるのは主に以下の3つのケースです。

  • 収益が大幅な赤字であるケース
  • 多額の設備投資や不動産購入をしたケース
  • 輸出業で売上のほとんどが免税取引のケース

とくに、納めた消費税額が大きくなった年には還付される可能性が高くなります。

収益が大幅な赤字であるケース

事業の収益が大幅な赤字である場合、収入よりも経費が多いため消費税が還付される可能性があります。経費にかかった消費税が収益に関する消費税よりも多くなった場合、消費税が還付されるでしょう。

給与や租税公課、社会保険料などの経費には消費税がかかっておらず、経費が多かったとしても還付の対象とならないこともあります。あくまで顧客から預かった消費税、支払った消費税の金額を比較し、還付の有無を判断することが重要です。

多額の設備投資や不動産購入をしたケース

消費税が還付される可能性があるのは、多額の設備投資や不動産購入をした場合です。事業拡大のため、設備投資や不動産購入で資金を使うと、支払った消費税額が非常に大きくなります。

例年と同程度の売上があっても、支払った消費税額が大きくなれば還付されるケースがあるでしょう。

土地を購入する場合と不動産賃貸業のみを営んでいる場合は、消費税還付の対象外です。家賃収入は非課税であるため、不動産賃貸業のみを営んでいる場合は消費税の還付を受けられません。

輸出業で売上のほとんどが免税取引のケース

輸出業を営んでおり、売上のほとんどが免税取引の場合は、消費税が還付される可能性が高くなります。日本の消費税は、日本国内で消費される製品やサービスにしか課税されません。海外で消費される取引は消費税が免税される免税取引と見なされます。

国内で材料を仕入れる、必要経費を支払う場合には、消費税も支払っていることでしょう。顧客から預かっている消費税がほとんどないため、支払った消費税の多くが還付される可能性があります。

消費税還付を受けるための手続き方法3ステップ

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消費税の還付を受けるためには、以下の3ステップで手続きを行います。

  1. 必要書類を揃える
  2. 必要書類を提出する
  3. 還付金を受け取る

消費税の還付申請はそれほど難しくないため、面倒くさがらずに申請しましょう。

1. 必要書類を揃える

消費税の還付を受けるために、以下の3つの書類をそろえましょう。

  • 消費税・地方消費税の確定申告書
  • 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
  • 消費税の還付申告に関する明細書

確定申告書には、事業者の屋号や所在地などの基本情報に加え、預かった消費税額と支払った消費税額が記載されています。付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表から、課税売上高や免税売上額などに基づいた課税売上割合がわかるでしょう。

消費税の還付申告に関する明細書により、消費税の還付を申告した理由や仕入れの明細を把握できます。

2. 必要書類を提出する

必要書類をそろえたあと、書類を税務署の窓口に提出、もしくはe-Taxで電子申告します。法人の場合、提出期限は事業年度終了の翌日から2カ月以内です。個人事業主は法人と提出期限が異なり、対象となる年の翌年3月31日までです。

消費税は申告せずに期限を過ぎると税務調査の対象になるおそれがあります。申告期限内に書類を提出することを忘れないようにしましょう。

3. 還付金を受け取る

消費税の還付申告では、書類提出から1〜2カ月後に還付金を受け取れます。e-Taxを利用した場合、3週間程度で還付金が支払われることもあるでしょう。

消費税還付を受ける方法

消費税還付を受け取る方法は主に以下の2つです。

  • 本人名義の預貯金口座への振込
  • ゆうちょ銀行または郵便局での受取

預貯金口座への振込を選んだ場合、必ず口座をチェックして振込金額が正しいか確認しましょう。加えて銀行振込は、還付申告した人と同じ名義の口座のみ使用可能です。

消費税還付を受けた際の仕訳方法

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事業主は消費税の還付金を受け取った際、帳簿に記録しておかなければなりません。消費税の還付の仕訳方法は以下の2種類です。

  • 税抜経理方式
  • 税込経理方式

自社がどの仕訳方法を使っているか理解しておくことが、消費税の還付を受けたときに非常に重要となります。

税抜経理方式

税抜経理方式は、消費税を費用や収益として計上しない仕訳の方法です。課税売上・仕入れに対する消費税を、それぞれ仮受消費税・仮払消費税で仕訳します。

たとえば、還付税額(未収消費税等)7万円、仮受消費税等9万円、仮払消費税額15万円、消費税精算差額として雑収入1万円を計上したとしましょう。この場合、決算時の仕訳方法は以下のとおりです。

借方 貸方
仮受消費税等:90,000円
未収消費税等:70,000円
仮払消費税額:150,000円
雑収入:10,000円

消費税の還付金を受け取った後は、借方に普通預金として還付金額を、貸方には未収消費税として同額を記載します。

借方 貸方
普通預金:70,000円 未収消費税等:70,000円

税込経理方式

税抜経理方式に対し、消費税を収益や費用として考える税込経理方式では、仮受消費税や仮払消費税などの項目がありません。税抜経理方式と比べて、仕訳処理がやや容易になります。

税抜経理方式と同じ金額を用いた場合、税込経理方式では仮受消費税や仮払消費税を省いて仕訳しなければなりません。

借方 貸方
未収消費税等:70,000円 雑収入:70,000円

還付金を受け取ったあと、借方に普通預金と金額、貸方に未収消費税等と金額を記載して仕訳します。

借方 貸方
普通預金:70,000円 未収消費税等:70,000円

まとめ

課税事業者で、原則課税方式を採用している事業者の場合、納めた消費税が多ければ還付される可能性があります。設備投資が多かった、業績が大幅な赤字だったなどのケースでは、還付が受けられないか確認することが重要です。

少しでも消費税が還付されれば、会社のキャッシュフローにいい影響がおよぶでしょう。

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監修者のコメント
税理士
佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

多額の設備投資などを行い消費税の還付を受けようとする場合は、消費税の課税事業者となる必要があり、その際には「課税事業者選択届出書」を適用を受けようとする課税期間の初日の前日(事業年度の最終日)までに提出しなければなりません。

なお、令和5年10月からインボイス制度が開始することにより、免税事業者から課税事業者になろうとする場合は、経過措置の適用を受け、令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することにより、「課税事業者選択届出書」を提出しなくても、令和5年10月1日から課税事業者になることが可能となっています。

また、簡易課税の適用を受けようとする場合については「簡易課税選択届出書」の提出が必要となり、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日(事業年度の最終日)までに提出しなければなりません。

ただし、インボイス制度の経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に「簡易課税制度選択届出書」を提出したものとみなされます。

消費税については、届出書を提出期限までに提出しないと、納税額や還付額が大きく変わってしまいます。そのため、届出書等の提出期限を過ぎてしまわないよう気をつけましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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