兄弟姉妹の遺産放棄をまとめてする方法は?注意点や検討するべきケースも解説

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2023年08月21日
兄弟姉妹の遺産放棄をまとめてする方法は?注意点や検討するべきケースも解説
この記事で解決できるお悩み
  • 兄弟姉妹が相続人になるケースは?
  • 兄弟姉妹が遺産放棄をまとめてする手続き方法は?
  • 遺産放棄したときの注意点は?

兄弟姉妹の相続放棄を考える方必見。故人の法定相続人が兄弟しかいない場合、第3順位の兄弟に相続人がまわってきます。マイナスの財産を引き継ぐリスクがあったときに、遺産放棄を検討するべきでしょう。

本記事では、兄弟姉妹による相続放棄の具体的な手続きや注意点、遺産放棄を検討するべきケースを解説します。記事を読み終わる頃には、兄弟姉妹の遺産放棄に必要な書類と手続き方法を理解し、適切に対応できるでしょう。

「兄弟姉妹の相続放棄に関して不安や疑問を持っている」方は、ぜひ参考にしてください。

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兄弟姉妹が法定相続人になる相続順位は第3順位

下記の表から、兄弟姉妹が法定相続人になる相続順位は第3順位です。

第1順位 死亡した人の子ども
第2順位 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位 死亡した人の兄弟姉妹

法定相続人とは、民法で定められた相続財産を引き継げる親族です。被相続人(故人)が遺言を残していない場合に、法律で法定相続人に財産を引き継ぐ順番が決められています。

また、法定相続分は以下のとおりです。

  法定相続人 法定相続分
第1順位
(子供がいる場合)
配偶者 2分の1を相続
子供 2分の1を人数で分配
第2順位
(子供がおらず父母・祖父母がいる場合)
配偶者 3分の2を相続
父母
(父母がいない場合は祖父母)
3分の1を人数で分配
第3順位
(子供・父母・祖父母ともにいないが、兄弟姉妹がいる場合)
配偶者 4分の3を相続
兄弟姉妹 4分の1を人数で分配

第3順位の場合、被相続人の配偶者は常に第1順位となり3/4の相続財産を引継ぎます。亡くなった被相続人と配偶者の間に子供がいないと仮定すると、兄弟姉妹は配偶者の残り1/4を人数で分配します。

兄弟姉妹が法定相続人になるケース

兄弟姉妹が法定相続人になる、主なケースは2つあります。

  • 故人に子供・両親・祖父母がいない場合
  • 故人の子供・両親・祖父母が相続放棄した場合

故人に子供・両親・祖父母がいない場合

第1順位の子供、第2順位の両親と祖父母がいない場合、第3順位の兄弟に法定相続人が移ります。

故人に配偶者がいる場合でも、配偶者は恒常的に法定相続人であり相続順位に関係がないため、兄弟に相続権が発生します。

遺産放棄をしない限り、遺産分割に関わってくるでしょう。

故人の子供・両親・祖父母が相続放棄した場合

相続順位の優先度が高い、子供・両親・祖父母がすべて相続放棄をした場合、兄弟に相続権が移行します。

故人が独身の場合は、法定相続人が兄弟のみとなるため、遺産分割が複雑になるでしょう。

兄弟姉妹が遺産放棄をまとめてする手続き方法

以下の順序で、兄弟姉妹が遺産放棄をまとめて手続きをします。

  1. 必要書類を準備する
  2. 必要書類を家庭裁判所に提出する
  3. 照会書を回答し家庭裁判所に返送する
  4. 相続放棄申述受理通知書を受領する
  5. 相続放棄の費用を支払う

遺産放棄の手続きは、相続権が発生した3カ月以内に手続きを済ます必要があります。スムーズに手続きをするために必ずおさえましょう。

1. 必要書類を準備する

遺産放棄に必要な書類を準備しましょう。必要書類は下記のとおりです。

  • 相続放棄の申述書(全員分)
  • 申立添付書類

相続放棄の手続きは、裁判所に提出する書類が多数あり、重要なのが「相続の放棄の申述書(成人)」と標準的な申立添付書類です。手続きを円滑に進めるためにも事前に必要な書類を用意し、添付書類をそろえておきましょう。

相続放棄の申述書(全員分)

相続放棄の手続きは、裁判所に申し立てる「相続の放棄の申述書(成人)」が必要です。

「相続の放棄の申述書(成人)」には「放棄する相続人の詳細情報、相続財産の内容や評価額、放棄する理由」など記載します。

書類の記載内容に誤りがある場合は、放棄が無効となることもあるため、慎重な手続きが必要でしょう。下記の参照リンクから、申述書のダウンロードができます。

参照:裁判所「相続の放棄の申述書(成人)」

申立添付書類

兄弟が相続放棄する場合の標準的な申し立て書類は、下記の6つになります。

  • 被相続人の住民評価額除票もしくは戸籍附票
  • 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 項被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続放棄者本人や故人の戸籍謄本などのさまざまな書類を準備します。書類が不足していると手続きが遅れるため、不備がある場合は、再提出が必要です。

兄弟姉妹がまとめて手続きする場合は、各1通で済みます。

2. 必要書類を家庭裁判所に提出する

必要書類の準備ができたら、家庭裁判所に提出しましょう。注意する点は、被相続人が最後の住宅地として管轄する家庭裁判所にすることです。

被相続人の住所を、あらかじめ把握しておきましょう。

3. 照会書に回答し家庭裁判所に返送する

家庭裁判所に必要書類を提出すると、家庭裁判所から遺産放棄の意思確認の照会書が届きます。

照会書に回答して、家庭裁判所に返送しましょう。

4. 相続放棄申述受理通知書を受領する

照会書に回答し遺産放棄が正式に決定すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。

遺産放棄をした証拠になるため、大切に保管しましょう。

5. 相続放棄の費用を支払う

最後に相続放棄の費用を支払います。費用は以下のとおりです。

  • 収入印紙(800円)×兄弟の人数分
  • 郵便切手

郵便切手の費用は管轄の家庭裁判所によって異なる可能性があるため、家庭裁判所に確認しましょう。申述先の家庭裁判所に送付したら、手続きは完了です。

兄弟姉妹が遺産放棄をまとめてする際の注意点

遺言書とお金

兄弟姉妹が遺産放棄をまとめてする際の注意点は、以下のとおりです。

  • 法定相続人がいない場合は財産が国に帰属する
  • 不動産は次の管理者が決まるまで管理義務が残る

法定相続人がいない場合は財産が国に帰属する

兄弟姉妹が遺産放棄をして法定相続人がいなくなった場合、引継がれるはずの財産は国に帰属します。法定相続人がいない際、財産は「無主財産」として扱われるためです。

また被相続人が独身で法定相続人がいない場合、被相続人の財産は誰も相続できないため、最終的には国に帰属します。

不動産は次の管理者が決まるまで管理義務が残る

相続放棄後、不動産は次の管理者が決まるまで、放置しておくことができません。兄弟姉妹が相続放棄をする場合でも、不動産の管理に責任を持つ義務があります。

所有する不動産が家屋である場合、経年劣化のおそれがあるため、定期的な点検や管理が必要です。

管理責任を明確にするために、相続放棄前に家屋の現状を把握し、適切な手続きを取ることが重要です。

兄弟姉妹が遺産放棄をまとめて検討するべきケース

兄弟姉妹が遺産放棄をまとめて検討するべきケースを、下記にまとめました。

  • 故人の負債を抱えたくない場合
  • 遺産分割でほかの兄弟ともめたくない場合
  • 相続手続きが手間で避けたい場合

法定相続人になると、相続に関してさまざまな問題に遭遇します。遺産放棄をするべきケースを把握して、いち早く手続きを済ませましょう。

故人の負債を抱えたくない場合

故人の財産がマイナスである場合、遺産放棄を検討するべきでしょう。故人が借金を背負って亡くなっている場合、法定相続人が引き継がなければなりません。

負債があると知らずに法定相続人になってしまうと、債権者から返済を求められてしまうでしょう。全体の財産がマイナスではないか、財産調査を徹底的におこないましょう。

遺産分割でほかの兄弟姉妹ともめたくない場合

遺産分割でほかの兄弟姉妹ともめたくない場合は、遺産放棄が有効です。兄弟姉妹まで相続権が移行してくると、法定相続人の候補が少ないため、遺産分割の配分が複雑になります。

たとえば、兄弟のある1人が「配分が自分だけ少ない」ともめだして、トラブルになる可能性があるでしょう。まとめて遺産放棄をすると、遺産分割の問題がすべて解消されます。

相続手続きが手間で避けたい場合

相続手続きが手間で避けたいときも、遺産放棄を検討してみましょう。

故人の遺産がほとんどない状況で、法定相続人として引き継いでも、相続手続きに手間をかけるほどメリットが少ないでしょう。相続した後の見返りがない理由で、遺産放棄が容易にできます。

兄弟姉妹が相続放棄をしても「生命保険金」は受け取れる

兄弟姉妹が相続放棄しても、被保険者が兄弟を受取人と指定している場合、生命保険金は受領できます。

相続放棄をすることで相続財産から手を引くことができますが、生命保険金は相続財産とは別物です。受取人に指定された兄弟が相続放棄をしても受領できます。

ただし、生命保険金がみなし相続財産に含まれるため、適切な相続対策が必要です。

参照:国税庁「〔生命保険契約に関する権利関係〕」

まとめ

裁判所に提出する相続放棄の申述書には、添付書類が必要になります。兄弟姉妹がまとめて遺産放棄する際は、共通する戸籍に関する書類が1通で済むため、スムーズに手続きができるでしょう。

兄弟姉妹がまとめて相続放棄した場合、法定相続人がいなくなる可能性があることに注意が必要です。相続放棄しても生命保険金は受け取れる一方、不動産は管理義務が残るため、手続きは慎重に取り組む必要があります。

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兄弟姉妹が遺産放棄する際によくある質問

  • 遺産放棄した際に法定相続人がいない場合はどうなるの?

    遺産放棄した際に、法定相続人がいない場合は、財産は「無主財産」として国に帰属します。

  • いつまでに遺産放棄の手続きをする必要がある?

    相続権が発覚してから3カ月以内に、遺産放棄の手続きを済ましておく必要があります。

  • 兄弟姉妹がまとめて遺産放棄するメリットは?

    兄弟姉妹がまとめて遺産放棄するメリットは、以下のとおりです。

    • マイナスの財産を引き継がなくていい
    • 相続手続きから解放される
    • 共通する戸籍に関する書類が1通で済む

    兄弟が相続人として相続財産を引き継ぐ場合、相続財産に含まれる借金や税金の未納分を引き継ぐ可能性があります。相続放棄を選択することで、マイナスの財産を背負わずに済みます。

    遺産放棄することで、相続の手続きから離れられます。まとめて遺産放棄する際に、共通する戸籍に関する書類が1通で済むため、スムーズに手続きができるでしょう。

  • 兄弟姉妹がまとめて遺産放棄するデメリットは?

    兄弟姉妹がまとめて遺産放棄するデメリットは、2つあります。

    • 引き継ぐはずの財産が引き継げない
    • 受け取った保険金の非課税枠が活用できない

    相続放棄をすることで法定相続人から外れ、本来受け取るはずだった財産を引き継ぐことができなくなります。

    相続人として保険金を受け取った場合でも、相続税非課税枠は受け取った人数分しか活用できません。兄弟姉妹が相続放棄をすると相続税非課税枠が減少し、結果的に相続税の納税額が上がる可能性があります。

    参照:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

  • 遺産放棄した兄弟姉妹に子供がいたら代襲相続はどうなるの?

    兄弟姉妹が遺産放棄をした場合は、その子供への代襲相続が無効になります。民法939条より「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されているためです。

監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

相続が発生した場合には、財産を誰がどのくらい相続するのかを決めていくことになります。「誰が」につきましては、遺言などがない場合には法定相続人となりますが、「どのくらい」につきましても民法で定められており、民法で定められた相続分を法定相続分といいます。

遺言書があれば、基本的にはその遺言書の内容にしたがって、それぞれの相続人に財産が分けられることになります。遺言書がない場合には、相続人の方が話し合って誰がどのくらいの財産を相続するかを決めることになります。

その話し合う基準として、民法で定められている法定相続分を基に話し合うことになります。法定相続分は相続人の方によって割合が変わってきます。相続が発生した場合には、ご家庭ごとの状況や事情も様々ありますので、相続人の間での話し合いがスムーズにいかないケースもあるかと考えられます。

トラブルやリスクを回避するためにも、専門家の意見を踏まえるに越したことはありません。まず税理士や弁護士などの専門家に相談してみましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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