認定支援機関の概要と登録申請の流れ
「経営革新等支援機関」、通称「認定支援機関」は、中小企業の経営力強化が目的の国による認定機関のことで、士業関連の個人・法人、金融機関などが認定されます。「認定支援機関」は具体的にどんなものなのか、また認定されることの利点や気をつけるべき点、さらに認定の要件や申請方法から認定されるまでの流れを把握していきましょう。
「経営革新等支援機関(認定支援機関)」の概要
日本国内の企業の9割が中小企業とされ、経済の活性化のために中小企業に特化した支援策が必要という現状を踏まえて平成24年8月30日に施行された「中小企業経営力強化支援法」(現行の「中小企業経営強化法」)を受けて、国策として中小企業・小規模事業者の経営力強化のために設けられた制度が「経営革新等支援機関」、通称「認定支援機関」です。
「認定支援機関」には税理士や弁護士を始めとする、「士業」関連の個人、または企業法人・金融機関といった組織や団体が認定され、中小企業や小規模事業者の悩み・相談に乗って現状の解決すべき問題点や改善点のアドバイス・事業計画の作成サポートや資金調達をサポートすることを主な業務とします。
「認定支援機関」として認定されることのメリットとデメリット
「認定支援機関」への登録を検討する前に、認定されることによるメリットとデメリットを把握しておく必要があります。
メリット1:顧客との信頼関係が築きやすくなる
国の認定を受けることで、顧客に安心感を与えることができるので、信頼関係の構築がしやすくなり、業務の効率化を図ることもできます。認定を受けているという自負を持つことで、自信をもって顧客対応することもできるようになるでしょう。
メリット2:国が用意する研修・講習会が受講できる
国は認定支援機関の質を維持する必要があるため、認定支援機関向けの各種研修会や講習会を用意しています。積極的に利用する事で、自身のスキル向上を図ることができます。
メリット3:認定支援機関独自の支援策を行うことができる
認定支援機関のサポートを受けた中小企業や小規模事業者は、融資や税率面で独自の優遇を受けることが可能です。例として、中小企業が日本政策金融公庫から融資を受けようとした場合、認定支援機関を通して受けることで「中小企業経営力強化資金」を利用する事ができ、低金利での借り入れが可能となるケースや、事業の固定資産税を認定支援機関を通して地方自治体に申請して認められれば、3年間の軽減が受けられる「先端設備導入計画」などが挙げられます。
デメリット1:認定の更新を5年毎に行わなければいけない
認定支援機関は制度により、5年毎の更新を行わなければいけません。更新には新規での申請同様、電子システムでの申請が必要となり、入力作業等、更新手続きに手間がかかってしまいます。
デメリット2:認定支援機関の制度自体の認知度が低い
2020年10月現在、「認定支援機関」という制度の世間的認知度は決して高くはないというのが実情です。顧客が認定支援機関をどのようなものであるか理解していなければ、安心感による信頼の構築は困難です。国が公認する専門機関であり、経営者の経営や財務をより効果的に支援できることをアピールしていく必要があります。
デメリット3:認定支援機関として登録しても、金融機関の審査に常に有利に働くわけではない
認定支援機関を介して申請すれば、融資が必ず通るわけではなく、まして必ず融資額が希望した通りになるわけではありません。認定支援機関を通せば、事業計画書に関し中小企業支援の教育を受けた専門家の助言を得ることでクオリティの向上を図ることが可能となり、独力で作成した事業計画書よりは、結果として融資の申請が通りやすくなるだけにすぎません。認定支援機関として、資金調達支援業務を積極的に行っていきたいのであれば、資金融資を受ける金融機関との関係性を地道に構築していく必要があります。
認定支援機関に認定されるための条件
認定支援機関として認定を受けるために必要となる条件は「専門的知識の有無」「実務経験の有無」の2つの基準を満たすことにあります。
認定支援機関に必要な「専門的知識」の基準
「専門知識の有無」は、以下の条件のいずれかを満たしているかが確認されます。
- 【条件1】税理士法人・税理士・弁護士法人・弁護士・監査法人・公認会計士・中小企業診断士のいずれかの資格を有する、もしくは金融機関であること
- 【条件2】経営革新計画等の策定の支援を行い、それらの計画に対して3件以上の認定を受けていること
- 【条件3】中小機構の指定された研修を受講、合格していること
認定支援機関に必要な「実務経験」の基準
「実務経験の有無」は以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
- 【条件1】中小企業もしくは小規模事業者に対する支援で3年以上の実務経験があり、かつ1年以上の経営革新支援業務の実務経験があること
- 【条件2】指定された中小機構の実践研修を受講・合格していること
実務の具体例としては、税理士では中小企業への税務相談や申告、弁護士であれば法律相談といった業務が実務経験に該当します。詳細な要件は中小機構の公式サイトで確認してください。
その他の確認事項
なお、認定支援機関の認定に当たっては上述の「専門的知識」「実務経験」の有無意外にも、「支援業務を行うために必要となる組織体制と事業基盤を持っていること」「破産者・反社会的組織の一員・成年被後見人・禁固刑以上の刑執行から5年を経過した者、以上条件に該当しないこと」といったことが確認されるので注意が必要です。
認定支援機関としての認定を受けるまでの流れ(申請から認定がおりるまで)
認定支援機関としての認定を受けるまでの流れは以下の通りとなります。なお、申請の流れについては経済産業省の関東経済産業局公式サイトにある「経営革新等支援機関の新規申請について」というページを確認してください
認定スケジュールの確認
経済産業省関東経済産業局の公式サイトで、認定日と受付時間を確認してください。
GビズIDプライムの取得
2020年6月26日から、認定支援機関への認定申請は「認定経営革新等支援機関電子申請システム」を介するオンライン申請一本に移行されています。書面による申請はできなくなりましたので注意してください。
完全電子化により、申請システムのログインには「GビズID」を取得し利用する必要があります。さらにシステムの利用には「gBizIDプライム」の取得が必要です。アカウント登録するためには「法人代表者(個人事業主本人)のメールアドレス」、そして「印鑑証明書」が必要になります。審査には数日かかります。
添付書類の確認
経済産業省関東経済産業局のサイトで、認定を申請する際に必要となる書類を確認します。申請者の属性によって必要となる書類は異なっていますので、自身に該当する書類の準備をしてください。
申請内容の登録
「認定経営革新等支援機関電子申請システム」で申請内容の登録を行います。必要書類は添付書類アップロード画面から登録することができます。受付完了には申請内容登録と添付書類アップロードのどちらも完了していることが必要です。
電子申請システムの簡易マニュアルは、経済産業省関東経済産業局のサイトにあります。
まとめ
認定支援機関の制度はいまだ世間的認知度は高いといえませんが、認定を受けることで顧客へのサポート力向上を図ることができます。日本政策金融公庫からの融資で金利優遇が受けられる可能性があるなど、顧客にメリットがあることも業務の範囲を広げる有効な武器となるでしょう。所定の条件を満たす士業関連の個人・法人や金融機関なら申請可能ですので、ぜひ認定を受けることを検討してみてください。
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