経営指標とは何か?重要性や4つの観点・計算方法をわかりやすく解説

株式会社経営支援センター
監修者
株式会社経営支援センター 代表取締役 高濱有志
最終更新日:2023年09月25日
経営指標とは何か?重要性や4つの観点・計算方法をわかりやすく解説
この記事で解決できるお悩み
  • 経営指標とはどういうもの?
  • なぜ経営指標が重要?
  • 経営指標でわかる4つの観点とは?

「経営指標の意味や使い方に不安を感じる」「経営指標を使いビジネスを多角的に分析したい」とお悩みの方、必見です。経営指標は収益性、安全性、生産性、成長性の4つの観点で分析します。

本記事では経営指標への理解を深めたい経営者向けに、経営指標の概要や重要性を解説します。記事を読み終わった後には、自社の経営状況を客観的に把握するイメージができているでしょう。

自社の経営方針にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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経営指標とは会社の経営状況を表すもの

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経営指標は、会社の経営状況を客観的に把握するための指標です。売上、利益、資本金などの決算書に記載される数値を組みあわせて算出します。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表だけでは、経営状況を正確に把握することは難しい場合があります。

自社の経営状況が良好かを判断するためには、売上だけではなく費用投資や人的資源などさまざまな面から分析することが重要です。経営指標を活用することで、企業は事業の方向性を決定し、問題がある部分を把握できます。

経営指標が重要である3つの理由

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経営指標を活用すると、自社の強みと弱みが明確になります。強みと弱みを理解することで、有効な経営判断が可能です。自社の強みを活かし、弱みを克服する戦略を立てて改善することで、さらなる成長を遂げることが期待できるでしょう。

経営指標が重要である3つの理由をくわしく解説します。

  • 会社の現状把握と目標設定に役立つ
  • 経営判断の根拠となる
  • 経営課題の発見と解決策の模索に有効

会社の現状把握と目標設定に役立つ

経営指標は自社の実情を把握するために役立ちます。利益を上げることが会社経営の要ですが「今期の収益がプラスだから安心」と考えるのは早計です。プラス収益でも、要因を分析し成長につなげることが重要です。

売上や利益がマイナスの場合は自社の弱点を知り克服する必要があります。企業の持続的成長において現状把握は欠かせません。

経営判断の根拠となる

経営計画は、中長期的な企業の目標や数値、施策を明確にしたものです。実現可能な目標の設定と自社の経営状況の分析を行い、強みや弱みを把握する必要があります。

社内の共有や意思決定、課題解決の効率化にも役立ちます。

経営課題の発見と解決策の模索に有効

経営指標を活用することで、経営状況を客観的に把握することができます。経営者の判断は自社の将来を左右するもので、タイミングを誤ると危機的状況に陥る可能性があります。常に自社の事業状況を目で確認し、現状把握をしなければなりません。

大規模事業の場合、経営者1人では事業状況を完全に把握するのは困難です。そのため具体的で数値化された経営指標が求められます。

経営指標で分析できる4つの観点

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経営指標では以下の4つの観点を分析することができます。

  • 収益性
  • 安全性
  • 生産性
  • 成長性

収益性

収益性は企業の利益を示す重要な要素です。利益の確認だけではなく、資本の活用や収益を生み出す環境の構築も分析の要点になります。持続的な収益増には経営戦略と市場環境を考慮し、資源を最適化する必要があります。

収益性向上のためには、効果的な意思決定とリスク管理も欠かせません。顧客満足度向上やコスト管理、新たな収益源の探求が重要な手段となります。収益性の分析から把握できる内容は下記のとおりです。

  • 会社全体の収益状況
  • 資本の効率的な活用
  • 経営効率の評価
  • 収益を生む商品・サービスの特定

安定性

安定性とは、企業の財政状況や経営が継続可能なことを指します。決算書を基に経営の安定性や財務状況におけるリスクを把握しましょう。

収益や利益があっても財務内容が悪化すると資金調達力が低下し、資金繰りにも影響が出るでしょう。

生産性

生産性とは1人(もしくは1台)の成果を数値化したものです。生産性を数値化することで企業の付加価値を詳細に把握できます。経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に着目し、財務指標を利用して定量的に算出し、投資と利益の関係を明らかにします。

生産性を高めるためには、労力を最小限にして大きな成果を上げることが重要です。利益を最大化するためにも、生産性の分析は欠かせません。

成長性

成長性の分析は、企業の成長度合いや業績の伸び率を判断します。バランスの取れた経営をおこなうためには、売上や利益だけではなく多角的で総合的な判断が重要です。成長性分析の結果からは、事業の将来見通しを立てることができ、非常に有益な手法といえます。

経営指標の具体例と計算方法

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「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の4つの観点から、自社の運営状況を把握することが重要です。会社の財政状況を包括的に知ることで、自社の課題点や解決方法の発見につながります。

それぞれの経営指標における計算方法4つを解説します。

  • 収益性を示す指標の計算方法
  • 安全性を示す指標の計算方法
  • 生産性を示す指標の計算方法
  • 成長性を示す指標の計算方法

収益性を示す指標の計算方法

収益性を示す主な経営指標には以下の5つがあります。強みと弱みを正確に理解し、改善に向けた戦略を立てましょう。

  • 売上高営業利益率
  • 売上高経常利益率
  • 総資本回転率
  • 自己資本利益率
  • 総資本経常利益率

売上高営業利益率

売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

売上高営業利益率は、企業の収益性を示す指標です。営業利益が売上高の何%を占めるかを表し、本業で効率的に稼いでいるかを評価する基本的な指標とされます。企業の収益性を測るために役立ちます。

売上高経常利益率

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を示した企業の収益性を示す指標です。経常利益は営業活動から得た利益に財務活動の損益を加えたもので、比率が高い場合、通常の経営活動による収益力が高いといえます。

下記の表は、中小企業における業種別の平均的な売上高経常利益率です。

建設業 4.92%
製造業 4.45%
情報通信業 5.91%
運輸業、郵便業 3.05%
卸売業 2.10%
小売業 1.47%
不動産業、物品賃貸業 8.95%
学術研究,専門・技術サービス業 7.81%
宿泊業、飲食サービス業 2.60%
生活関連サービス業、娯楽業 2.25%
その他サービス業 5.02%

参照:中小企業庁:令和元年中小企業実態基本調査

総資産回転率

総資産回転率(回転)=売上高÷総資産

総資産回転率は、資産運用効率を示す指標です。1年間に総資産が売上の何回転を果たしたかを表します。総資産回転率は、総資本回転率とも呼ばれていますが、内容は同じです。

自己資本当期利益率

自己資本当期利益率=当期純利益÷(純資産−新株予約権−少数株主持分)×100

自己資本当期純利益率は、企業の経営効率を表す指標です。ROE(Return on Equity)とも呼ばれ、当期純利益を前期と当期の株主資本の平均値で割って求めます。純資産から、新株予約権と非支配株主持分を除いた自己資本を「元手」として、1年間の利益を示します。

自己資本当期利益率は、株主が投資判断をする際に自己資本に対する経営効率を示すもので、株主にとって重要な指標です。

総資本経常利益率

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100

総資本経常利益率とは、総資産を効果的に活用して利益を出す指標です。ROA(Return On Assets)とも呼ばれています。総資本は集めた資金の方法を示し、総資産は得た資産を示します。

総資産の額は総資本と同じであり、総資産経常利益率とも呼ばれることがありますが数値に変わりはありません。

安全性を示す指標の計算方法

会社の安全性は財政状態で判断します。債務超過した場合、財務改善が必要です。安全性が良好であると、借金返済の不安を解消して倒産や財政悪化のリスクを減らせるでしょう。

安全性の経営指標を理解することで、現金による債務返済の可否や倒産リスク、適切な範囲で事業投資できているかを判断できます。安全性を示す経営指標は以下の3つです。安全な経営に向けて、経営指標の活用を検討しましょう。

  • 流動比率
  • 固定比率
  • 自己資本比率

流動比率

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動比率は、流動資産と流動負債の比率から会社の安全性を判断する指標です。数値が高ければ高いほど安定とされ、自社の短期的な支払能力を示しています。100%未満の場合、資金に注意が必要で、100%以上でも流動資産に価値があるか確認が必要です。

長期的な安全性判断では、当座比率も確認しましょう。

固定比率

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

固定比率は、自己資本と固定資産の割合を示し固定資産の性質を把握するための指標です。固定資産とは、現金、受取手形、預かり金、売掛金など1年以内に現金化されないものを指します。

営業活動で流通せずに保有されるため、将来の資金計画や投資判断に影響を及ぼします。

自己資本比率

自己資本比率(%)=自己資本÷(自己資本+他人資本)×100

自己資本比率とは、自己資本が全体の何%を占めるかを示す数値です。自己資本比率が小さいと、他人資本の影響を受けやすく、独立性が損なわれた不安定な経営になります。自己資本比率が高いほど、経営は安定して倒産のリスクが低くなるといえます。

経営の安定性を表す数値であり高いほど有益です。自己資本比率は、30〜40%以上あれば、安定した企業の目安とされています。

生産性を示す指標の計算方法

生産性を分析することで、事業運営における人件費や資金の効率を把握できます。経営状況が黒字でも、経営資源の活用効率が低ければ改善が必要です。生産性を示す経営指標を利用することで、人件費や資金の無駄を見極めます。

利益を上げる効率的な方法を明確にすることで迅速に経営改善をおこなえるでしょう。生産性を示す経営指標には、以下の2つがあります。

  • 労働生産性
  • 労働分配率

労働生産性

労働生産性(円)=付加価値額÷従業者数

労働生産性とは、1人もしくは1時間あたりの成果を数値化したものです。付加価値を生み出すために、どの程度人件費を効率的に使っているかを把握できます。

1人の労働者が生み出した利益を示し、向上することで同じ労働でより多くの価値を創出できるようになります。

労働分配率

労働分配率(%)=人件費÷売上総利益(粗利益)×100

労働分配率は、企業の付加価値に占める人件費の割合を示しています。数値が低い場合は従業員への給料が少なく労働環境が悪いことが予想されます。高すぎる場合は、非効率な経営の可能性が予想されるでしょう。

成長性を示す指標の計算方法

成長性分析は、売上高や利益だけではなく、複数の要素を考慮して企業の成長度を判断する手法です。売上高や経常利益、営業利益、総資本、従業員などが対象となります。毎年のデータ比較を通じて、企業の成長性と今後の施策を把握します。

成長性の分析を通じて、企業の現状と将来の展望が理解できるでしょう。成長性を示す経営指標には、以下の2つがあります。

  • 売上増加率
  • 売上高成長率

売上増加率

売上高増加率=(当期売上高−前期売上高)÷前期売上高×100

売上高増加率は、前年比売上高の伸びを示す経営指標です。当期の売上高の伸びを前期と比較してプラスの場合は「成長」マイナスの場合は「衰退」と判断されます。成長推移を示し、今後の成長と拡大率をチェックできるでしょう。

成長性を評価する際は、1年だけではなく複数年を見ることが重要です。

売上高成長率

売上高成長率=売上高増加額÷売上高×100

売上増加率は、特定期間の売上上昇の割合を示す経営指標です。大企業では通常5〜10%、中小企業では10%以上が目標とされています。売上増加率の向上を目指すためには、内部要因の改善が必要です。

まとめ:経営指標を将来の問題解決と経営戦略に活かす

企業が安定的な運営を継続するためには、自社の客観的な状況把握が必要不可欠です。経営指標の作成は、利益や売上、資産にまつわる状況を数値として認識できるため、経営を改善するための重要なキーとなります。

経営指標をもとにした経営分析を自社だけで行うのは簡単ではありません。数値の意味を正確に理解して的確に今後の方針を決めるためには、経営分析のプロに相談するのがおすすめです。

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監修者のコメント
株式会社経営支援センター
代表取締役 高濱有志

東京都生まれ。大学卒業後、金融機関勤務を経て、税理士業界へ転職。長崎の税理士業界で16年の実務経験。その中で、のべ1,000社以上の決算業務に従事し、相続税申告も経験。顧客から事業承継やM&Aに関する相談及び業務が増加してきたことに合わせて、2015年に税理士法人から独立し、株式会社経営支援センターを設立、代表取締役に就任。事業承継支援・M&A支援を中心に経営コンサルタント業務を行っている。

財務分析とは、企業が作成する貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を分析することによって、企業の実態をつかむことです。その一つの方法が、経営指標を用いた財務分析です。

経営指標を用いた財務分析は、過去の企業活動の量的側面を分析するものですが、それは単に過去の動向や実態を探るだけが目的ではなく、現時点で企業が抱えている問題や、さらに将来の企業活動に影響を及ぼすような諸要因や問題点を見つけ出し、その企業の将来を予測することを指向するものです。

収益性・安全性・生産性・成長性・活動性の5つの指標により、多角的に自社の財務諸表を分析することで、改善が必要なことがはっきりと見えてきます。

一方、数字にこだわりすぎて財務分析の本来の目的や意図を見失わないようにする必要があります。数字ほど無味乾燥で抽象的なものはありません。数字を重んじながらも、それだけに執着せず、企業活動の実態を見失わない柔軟な姿勢が、財務分析を行う上では重要です。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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