人事制度とは?制度の目的やトレンド事例・作り方5ステップを解説

HR-U☆Compass
監修者
HR-U☆Compass 梅原和也
最終更新日:2024年08月26日
人事制度とは?制度の目的やトレンド事例・作り方5ステップを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 人事制度とは?
  • 人事制度の目的は?
  • 人事制度の成功事例と作り方は?

人事制度とは、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」を管理するための制度を指します。「ヒト」を最大限に生かすことで「モノ」「カネ」の活性化に役立つため、企業のミッションを実現するうえで欠かせない制度です。

本記事では人事制度の仕組みや目的、制度の見直し方法などを解説します。「業績アップにつながる人事制度をつくりたい」という方はぜひ参考にしてください。

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人事制度とは?基本となる3本の柱

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人事制度とは、企業が人材を管理するための制度全般のことを指し、以下の3つの柱で成り立っています。

  1. 等級制度
  2. 評価制度
  3. 報酬制度

「処遇」を決める根拠となるため、以下で詳細を解説します。

1. 等級制度

等級制度とは、従業員を「能力」や「職務内容」などにより序列化する制度のことです。等級制度のイメージは、以下を参考にしてください。

6等級 取締役
5等級 部長
4等級 課長
3等級 社員(管理職補佐)
2等級 社員
1等級 社員

等級制度の役割は、主に以下の2点です。

  • キャリアアップの指標になる
  • 人事制度の根幹になる

等級制度は人事制度の土台となるため、詳細をしっかり理解しておくことが大切です。

キャリアアップの指標になる

「部長とは」「取締役とは」などの定義を明確化することで、社員がキャリアアップを図る際の指標になります。

等級制度を定義する際は、以下の具体例のように「能力」「役割」をそれぞれ明確化することがポイントです。

部長に必要とされる能力 ・業務マネジメント力
・人材マネジメント力
・リスクマネジメント力
部長に期待される役割 ・部署の方向性や戦略を考え意思決定する
・経営者側の視点をもつ

上記の能力や役割と、現状を比較することで社員を評価します。

人事制度の根幹になる

等級制度を定めることで、その他の人事制度である「評価制度」「報酬制度」の設計が容易になります。

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上図のように、報酬制度・評価制度はそれぞれ「等級制度ありき」で成り立ちます。等級制度は、人事制度の根幹になる最も重要な制度です。

2. 評価制度

評価制度とは、社員の成果や行動を評価する仕組みのことです。なにを(評価項目)どのように(評価基準)評価するのかを明確化することで、社員の行動指針を定める役割があります。

評価制度には、特徴の異なる多数の種類があります。近年注目されている評価制度の具体例は以下のとおりです。

MBO(目標管理制度) 個人や部署で設定した目標の達成状況を評価する
コンピテンシー評価 「仕事ができる人」の行動特性を基準に評価する
リアルタイムフィードバック 1週間〜1カ月のスパンで都度評価を実施する
バリュー評価 会社の理念や価値観にもとづいて達成度を評価する

評価制度は社員の自発的な行動や成長を促すため、人材育成の観点でも活用できます。

3. 報酬制度

報酬制度とは、給与や賞与を定めるための仕組みのことです。報酬は、等級や評価結果にもとづいて決定されるため「等級制度」や「評価制度」と連動させて制度を定める必要があります。

報酬制度は、主に以下の要素で構成されています。

  • 基本給
  • 手当
  • 賞与
  • インセンティブ

報酬は社員の生活に直結する要素のため、公正かつ明確な制度設計が求められます。

「なにを最も重視するのか」にもとづいて報酬のバランスを決定する

たとえば業績(成果)を重視する場合は、社員の成果に応じた報酬を支払うために「インセンティブ」や「賞与」の水準をあげることも1つの方法です。

人事制度の目的は業績をアップさせること

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人事制度の最終目的は、社員1人ひとりの生産性を向上させ企業の業績アップを図ることです。企業が成長を続けるためには、人的資源である社員を人事制度により管理することが求められます。

人事制度は主に以下2つの側面から、業績の向上に役立ちます。

人材を育成し業績アップを図る

人事制度は社員の成長を促すため、生産性向上・業績アップに直接的な効果があります。人事制度の3本柱である「等級・評価・報酬」は、人材育成の観点からそれぞれ以下のように機能します。

等級制度 キャリア目標の明確化により成長意欲を引き出す
評価制度 長所・短所の発見により努力の方向性を決定づける
報酬制度 「努力そのもの」へのモチベーションを高める

「社員1人ひとりのやる気を引き出し、成長を促すことで企業全体の生産性向上を図る」ことが人事制度の目的です。

人材配置の最適化により業績アップを図る

社員1人ひとりの能力を最大限発揮させることが、企業の業績アップには欠かせません。人には得意・不得意があるため、社員のパフォーマンスを最大化させるためには適切なポジションを与えることが大切です。

人事制度により社員の得意不得意や強み、弱みが「見える化」されると、最適な人材配置を考える際の判断材料になります。

「人材配置」も「人材育成」と同様に、企業の生産性向上に対して重要な役割を担っています。

従来の人事制度が抱える問題点

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人事制度の3本柱は、多くの日本企業で採用されているスタンダードであると同時に、以下の問題を抱えています。

  • 働き方の多様化に対応しきれない
  • 社員のモチベーションを下げる原因になる

時代の変化を考慮しない人事制度はさまざまな弊害をもたらすため、人事制度にも社会の変遷を反映させる必要性が高まっています。

働き方の多様化に対応しきれない

現代は時短勤務やテレワークなど、働き方が多様化しています。コロナ禍を経て加速した「働き方改革」は、今後もますます進んでいくでしょう。

従来の人事制度は「社員それぞれが異なる働き方をしている」ことを想定していないため、勤務形態の異なる社員へ公正な評価を下すことに適しません。

勤務時間や場所にとらわれない、多様な働き方を前提として人事制度を見直す必要があります。

社員のモチベーションを下げる要因になる

従来の人事制度は、制度そのものが企業の成長を妨げる要因になり得ることが指摘されています。問題とされている制度と問題点は以下のとおりです。

年次の評価 ・「今更感」が否めない
・フィードバックを日々の成長に生かせない
⇒社員のモチベーションが低下する
ランク付け ・D評価を付けられる社員が必ず一定数存在する
・「失敗したくない」という心理が働く
⇒社員のチャレンジ精神を削ぐ

「社員の成長意欲を阻害すること」は人事制度の目的と逆行しているため、近年では年次評価やランク付けを廃止する企業が増加傾向にあります。

人事制度の問題を解決した事例【最新トレンド】

従来の人事評価における問題点を打破する手段として、新たに生まれた制度があります。トレンドを知ることで、社会の変化に対応した人事制度設計を実現しましょう。

以下では人事制度の最新トレンドを取り入れ、問題を解決した企業を2社紹介します。

360度評価で評価の多様化を実現|アイリスオーヤマ

生活用品を製造・販売するアイリスオーヤマ株式会社は、人材育成における課題を解決すべく360度評価を導入しました。役員クラスを含むすべての社員を対象とし、評価基準を定期的に更新して運用しています。

社員をさまざまな観点から多角的に評価することで、働き方の多様化に対応した事例です。

参照:アイリスオーヤマ「評価制度」

企業大変革の一環でノーレイティングを導入|マイクロソフト

世界を代表するIT企業であるマイクロソフトは、年次評価・ランク評価を廃止し、ノーレイティングにもとづいた新たな人事制度を導入しました。

旧来のランク制度は従業員同士の不健全な競争を生み、酷な評価をおそれた社員の退職を招いていました。この問題を解決すべく導入された新たな人事制度には、以下の特徴があります。

リアルタイムなフィードバック 成果だけではなく、チームへの貢献度やサポートなど努力の過程も評価する
ノーレイティング 画一的なランク付けを廃止し、コミュニケーションのバリアを取り払う

成果だけにとらわれない多面的な評価により、社員のモチベーションと企業の競争力を高めることに成功した事例です。

参照:DIAMOND online「株価史上最高値を記録する マイクロソフト流『驚異の評価制度』」

参照:VANITY FAIR「Microsoft’s Lost Decade」

人事制度の見直し方・作り方5ステップ

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自社の人事制度に課題がある場合、制度の見直しを図りましょう。以下のステップにもとづいて行います。

  1. 人事ポリシーを明確化する
  2. 現状を分析し大まかな制度設計をする
  3. 等級・評価・報酬制度を策定する
  4. 新制度への移行をシミュレーションする
  5. 法的チェックを行い社内に浸透させる

自社の人事制度と照らしあわせたうえで、見直しを検討してください。

1. 人事ポリシーを明確化する

人事制度は、大前提として企業の経営理念にもとづいている必要があります。まずは自社の経営理念や価値観を再確認したうえで「社員になにを求めているのか」という人事ポリシーを明らかにしましょう。

人事ポリシーは人事制度の根幹となるルールにあたり、制度設計の大方針となります。

2. 現状を分析し大まかな制度設計をする

現行の人事制度における課題を分析し、大まかな制度設計をします。以下の情報を収集することで、効率的な現状分析が実現します。

  • マネージャーへのヒアリング
  • 従業員アンケート
  • 離職率・離職理由
  • 他社との給与比較

課題を明確にしたうえで、人事ポリシーにもとづいて制度改定の方向性を決めましょう。

3. 等級・評価・報酬制度を策定する

等級・評価・報酬制度を策定します。それぞれが互いに影響しあうため、一貫した考え方で設計することが大切です。

制度ごとに定めるべき主な内容は以下のとおりです。

等級制度 ・等級の段階数
・等級の資格要件
評価制度 ・評価の項目
・評価の基準
報酬制度 ・報酬の体系
・基本給の幅
・昇給テーブル
・賞与テーブル

3本柱のバランスを取りつつ、矛盾が生じないように設計しましょう。制度策定に不安がある場合は、人事コンサルタントに相談することも1つの方法です。

4. 新制度への移行をシミュレーションする

新制度は、実施前に移行シミュレーションを必ず行いましょう。人件費や労働生産性の変化を確認し、課題がある場合は制度の改善を行います。人事制度の見直しにより処遇が大幅に変動する社員がいる場合は、フォロー体制もあわせて検討しましょう。

実施期間や対象社員を絞り、試験的にシミュレーションを行うことも効果的です。

5. 法的チェックを行い社内に浸透させる

制度完成後は、明文化とあわせて法的チェックを欠かさずに行います。法的チェックは専門家への依頼が必要です。

法的チェックが完了したら、明文化した制度を社内に浸透させるための説明会を実施します。「個別相談会を設ける」「説明会を複数回実施する」など十分な説明の場を設け、社員へ理解と協力を求めましょう。

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まとめ

本記事では、人事制度の仕組みや見直し方法などを解説しました。人事制度の目的は「業績アップを実現し、企業のミッションを達成すること」です。

制度の見直しには膨大な手間がかかるため、実績豊富な専門家に策定を依頼することも検討しましょう。

人事コンサルタント探しには「比較ビズ」がおすすめです。たった2分ほどで、全国の優良なコンサルティング会社に一括見積を請求できます。「自社の人事制度を見直したい」「自社に適した制度をアドバイスしてほしい」と考えている方はぜひ活用してください。

監修者のコメント
HR-U☆Compass
梅原和也

大学卒業後、国内金融機関にて人事総務部門配属。以後、大手グローバルコングロマリット企業や老舗外資系企業の人事部門において、通算30年以上にわたり多様な経験を積む。企業の買収合併による統合インテグレーションも3度経験。小規模同士の合弁など、早期統合効果を狙う際の計画策定、実行の支援にも強みがある。

人事制度を新たに設計導入する、あるいは、既存の制度を見直す場合でも、具体的にどう進めたらよいのか、見当がつかない、という方も多いかと思います。進め方がわからない、ということもありますが、まず最初に、現在の立ち位置がどうなっているのか、つまり、自社の現在地点がどうなっているのか、を客観的に知ることは大変重要です。

そうでないと、多額の予算をつぎ込んで、制度を考えて、導入しようとしても、自社組織の現状とかみあわず、絵に描いた餅になってしまうことが多いからです。だからこそ、外部から自社組織を客観的に俯瞰するために、専門知識と経験をもった専門家の支援を得て、二人三脚で進めていくことが、成功への近道、と言えるでしょう。

その視点から、さらに重要な要件として、コンサルタント会社を選ぶときの、最重要要件をあらかじめ想定しておくことかと思います。コンサルタント会社は、世の中に多くありますが、それぞれ、独自の強みや、良い意味でのこだわりをもっている企業が多いと感じます。

その強みと自社の方向性が一致することが非常に重要ではないかと思います。コンサルタント会社は知見をもとに資料を作るだけ、検討・導入は自社でといった分業ではなく、相互に意見を酌み交わし、時には激論を交わすくらいの熱量をもって、タッグチームとなって取り組むことが、成功する秘訣ではないかと思います。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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