事業承継に必要な費用相場は?税制・補助金の知識も紹介

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2024年09月18日
事業承継に必要な費用相場は?税制・補助金の知識も紹介
この記事で解決できるお悩み
  • 事業承継にはどのくらいの費用がかかる?
  • 事業承継に活用できる税制・補助金は?
  • 事業承継はどこに相談すればいい?

事業承継とは、経営者が後継者に事業を引き継ぐことを指します。事業承継には多額の相続税・贈与税が関わるため、税負担軽減のためには専門家とともに計画を進めることが大切です。

本記事では、事業承継の依頼先別・税金別の費用相場を解説します。事業承継に活用できる税制・補助金についての情報もまとめました。記事を読み終わる頃には、必要に応じて依頼先と費用を選別し、事業承継に関して適切な相談ができるでしょう。

「具体的な費用が見えず、事業承継に踏み出せない」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。

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【依頼先別】事業承継を専門業者に依頼したときの費用相場

事業承継を専門業者に依頼したときの費用相場を、依頼先ごとにまとめました。

  • 税理士
  • M&A仲介会社
  • 弁護士

税理士

事業承継を税理士に依頼する場合の費用相場は、150万円〜500万円です。手続き内容ごとの内訳は以下のとおりです。

相続税評価額の算出・シミュレーション 10万円〜60万円
経営計画・組織再編計画の策定 30万円〜
事業承継税制の手続き 50万円〜250万円

事業承継には、経営計画や組織再編計画の作成と事業承継税制の手続きが必要になります。会社経営に詳しく、経営のアドバイスしてくれる税理士に申請書の作成を依頼してみましょう。

ただし、事業規模が大きくなるほど費用も高額になるため、正確な金額は見積もりを依頼して確認しましょう。

M&A仲介会社

事業承継をM&A仲介会社に依頼した場合の、費用相場の具体例は下記です。

  費用相場
取引金額が1億円の場合 300万円〜500万円

昨今、M&A仲介会社では完全報酬制を採用しているため、契約途中に手数料がかからないことが多いです。初期費用を抑えられるメリットがあります。

社外の人物に事業承継を視野に入れている方は、一度M&A仲介会社に相談してみるといいでしょう。

弁護士

弁護士に事業承継のサポートを依頼した場合、主に相談料や着手金、成果報酬が発生します。各費用の相場は下記のとおりです。

相談料 1時間あたり5,000円〜1万円
着手金 50万円〜
成果報酬 取引金額の10%

報酬金は取引金額の10%が成果報酬になります。たとえば、事業承継の取引金額が1億円の場合、成果報酬は1,000万円程度になるでしょう。

成果報酬以外にも、相談料や着手金がかかります。取引金額が1億円であれば、成果報酬と合わせて1,200万円〜1,500万円程度かかるでしょう。

財産相続に関するサポートも依頼するとさらに費用がかかるため、依頼先のなかでも最も高額になりやすいです。

【税金別】事業承継でかかる税金の費用相場

事業承継をする際、かかる税金は主に下記のとおりです。

  • 相続税
  • 贈与税
  • 消費税
  • 法人税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

相続税

取引金額に対する相続税の税率を、速算表にまとめました。

法定相続分に応ずる取引金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参照:国税庁「相続税の税率」

亡くなった親族の事業を引き継ぐ場合、事業承継される会社の資産が相続税の対象となります。金額が大きくなるほど控除金額が大きくなるため、費用が抑えられるでしょう。

相続税を支払う際の注意点は、現金以外での納付ができないことです。支払えない場合は、融資を受ける必要がでてくるでしょう。

相続時精算課税制度に関して

相続時精算課税制度とは、取引金額が2,500万円まで贈与税が控除される制度です。資産を持つものが生前のうちに子や孫などに相続する予定がある場合、生前贈与のように適用されます。

制度が適用される要件は具体的に以下のとおりです。

  • 贈与する年の1月1日時点で贈与者が60歳以上である
  • 贈与される者が20歳以上である

ただし取引金額が2,500万円を超える場合、超えた額に関して一律20%の贈与税が課されます。資産を持つものが亡くなった際は、相続税から控除されます。

事業承継税制の要件に満たすと納税猶予の割合が100%

現金で納税できない方の救済措置として、事業承継税制では非上場株式の承継で生じる相続税や贈与税の納税が100%猶予されます。2018年度の税制改正により、改正されました。

ただし事業承継税制の特例で「2018年から2028年までの時限措置」となっています。適用を受ける際は「2024年3月31日」までに、各都道府県庁へ特例承継計画を提出しなければなりません。

後継者が決まり次第、早急に準備することをおすすめします。

贈与税

贈与税は、資産が2,500万円まで特別控除枠として差し引くことができます。資産が2,500万円以下の場合は非課税です。

資産が2,500万円を超えた場合は、一律で税率が20%かかります。たとえば5,000万円が贈与された場合、課税額は「5,000万円−2,500万円=2,500万円」。税率20%を課税額にかけると、贈与税が500万円になります。

資産を持つものが亡くなる前に資産を譲渡すると、承継人が贈与税の課税対象になることを覚えておきましょう。親族に限らず、外部の後継者も対象になります。

相続時精算課税制度が適用できない場合

相続時精算課税制度の要件に満たさず、適用できない場合は「暦年課税制度」となり、年ごとに贈与された財産に対して課税されます。

暦年課税制度には、一般贈与財産用(一般税率)と特例贈与財産用(特例税率)があります。

一般贈与財産用(一般税率)の速算表は、下記のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参照:国税庁「贈与税の速算表」

一般贈与財産用(一般税率)は兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

対して、特例贈与財産用(特例税率)の速算表は、以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

参照:国税庁「贈与税の速算表」

特例贈与財産用(特例税率)は直系尊属(祖父母や父母など)から子や孫などへの贈与で、贈与を受けた者がその年の1月1日時点で成人の場合などに使用します。(※ただし、夫の父からの贈与等には使用できません。)

一般贈与財産用(一般税率)よりも課税価格に対する税率の伸びが緩やかで、価格が大きくなるほど控除額も大きくなります。

事業承継税制の改正により贈与者・受贈者の対象が拡充

相続税と同様に事業承継税制の改正によって、贈与税にも利点が増えています。改正前は資産を持つものと承継人が1人に限定されていましたが、改正後は複数人の承継が可能になりました。

たとえば、父と母から1人の子供への承継や、父から子供複数人(※最大3名までが限度)の承継が納税猶予の対象となります。したがって配偶者や親族が所有する株式も納税猶予の対象です。

ただし相続税と同じく、事業承継税制の特例で「2018年から2028年までの時限措置」となっています。適用を受ける際は「2024年3月31日」までに、各都道府県庁へ特例承継計画を提出しましょう。

消費税

事業譲渡によって事業承継をした場合は、個々の資産が移動するため、消費税が発生します。軽減税率の対象となる飲食関連以外のものは、10%の消費税がかかるでしょう。

ただし、株式譲渡での事業承継の場合は、株式が非課税の対象になるため消費税は発生しません。代わりとして、住民税と所得税の課税対象になります。

法人税

法人税の税率は、以下のとおりです。

利益 税率
800万円以下 15%
800万円以上 23.2%

※資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団を想定しています。

法人税は、一定の利益ごとに税率が一律しています。事業譲渡による法人の事業承継の場合は、売却益は法人が得るため、法人税がかかることに注意しましょう。

登録免許税

登録免許税は、会社登記や資格登録や技能証明を自治体に登録する際に、課税される税金です。事業承継を行う際、登記変更が必要となるでしょう。

一般的な事業承継における、登録免許税の税率は以下のとおりです。

  税率
合併の登記 0.4%
会社分割の登記 2%
その他移転に伴う登記 2%

ただし「事業承継税制」の要件を満たすと、下記の税率に軽減されます。

  税率
合併の登記 0.2%
会社分割の登記 0.4%
その他移転に伴う登記 1.6%

不動産取得税

事業承継で土地や建物を取得した場合に、課税される税金が不動産取得税です。不動産取得税の税率を表にまとめました。

  税率
土地や建物の取得 固定資産税評価額の3%
住宅以外の家屋の取得 固定資産税評価額の4%

また登録免許税と同様に「事業承継税制」の要件を満たすと、税率が軽減します。

  税率
土地や建物の取得 固定資産税評価額の2.5%
住宅以外の家屋の取得 固定資産税評価額の3.3%

事業承継を専門業者に依頼したときの料金体系例

事業承継を税理士・M&A仲介会社・弁護士に依頼したときの料金体系例を、それぞれピックアップしました。

小川富也税理士事務所の料金体系例

小川富也税理士事務所の画像

参照:小川富也税理士事務所

項目・書類作成 報酬
「特例承継計画」の策定及び計画書の作成 30万円〜50万円+日当・交通費
自社株の贈与税の納税猶予手続き 報酬
自社株の生前贈与手続き「贈与契約書」・「取締役会議事録」の作成など 8万円〜20万円
贈与後に経済産業局への「認定申請」 (贈与年の10/1〜翌年1/15) 30万円〜50万円
贈与申告時の納税猶予申請及び担保提供 8万円〜20万円
申告後経済産業局への5年間毎年の「報告書」作成 8万円/回
申告後税務署への5年間毎年の「継続報告書」作成 1年目〜5年目:5万円/回 6年目〜:3万円/回
自社株の相続税の納税猶予手続き 報酬
相続手続き中に経済産業局への「認定申請」 (相続開始後5ヶ月〜8ヶ月の間に) 30万円〜50万円
申告時の納税猶予申請及び担保提供 10万円〜20万円
申告後経済産業局への5年間毎年の「報告書」作成 5万円/回(1年目〜5年目)
申告後税務署への5年間毎年の「継続届出書」作成 (6年目以降は3年に1回) 1年目〜5年目:5万円/回 6年目〜:3万円/回

株式会社フォーバルの料金体系例

株式会社フォーバルの画像

参照:株式会社フォーバル

対象会社の時価総資産額(営業権を含む※M&A実行支援) 成功報酬
5億円以下の部分 5%
5億円超〜10億円以下の部分 4%
10億円超〜50億円以下の部分 3%
50億円超〜100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%
親族承継・親族外承継支援 成功報酬
事業承継計画書作成 100万円〜※期間2ヵ月程度 (業務委託費は別途)
実行支援 20万円〜/月

千代田中央法律事務所の料金体系例

千代田中央法律事務所の画像

参照:千代田中央法律事務所

  成功報酬
5億円以下の部分 5.5%
5億円超〜10億円以下の部分 4.4%
10億円超〜50億円以下の部分 3.3%
50億円超〜100億円以下の部分 2.2%
100億円超の部分 1.1%

事業承継の方法と発生する料金

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事業承継において発生する料金は、事業承継の方法によって以下の3種類に分類できます。

  • 親族内事業承継
  • 親族外事業承継
  • M&Aによる事業承継

事業承継の方法と料金の詳細を解説します。

親族内事業承継

親族外事業承継の画像

親族内事業承継とは、言葉のとおり経営者の親族に事業を引き継ぐ方法を指します。親族にあたる関係性は、子どもや配偶者、兄弟・姉妹や甥・姪などです。

親族内事業承継に発生する費用は、主に相続税や贈与税などの算出における税理士への依頼料のみです。経営者の影響力を維持しつつ、最も費用を抑えて事業承継できる方法だといえます。

一方で、親族内に相続人が複数いる場合はトラブルが生じる可能性もあるでしょう。トラブルが生じた場合は別途弁護士や税理士に依頼が必要になるため、費用追加も発生します。

親族外事業承継

親族外事業承継の画像

親族外事業承継とは、社内の従業員や役員など、親族外から後継者を迎え入れることです。親族外事業承継の場合は後継者が会社の資産や株式を購入するため、多くのケースにおいて金融機関からの融資が必要になります。

さらに、株式を贈与する場合は贈与税の算出が必要になるため、税理士やM&A仲介会社への早期依頼が不可欠です。専門家に依頼すべき案件が多くなるため、費用は親族内事業承継よりも高額になります。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継の画像

M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略で、企業・事業の合併や買収を総合的に意味します。

社外のふさわしい人物へ事業承継し、譲受企業の資本力により事業を拡大できる手法がM&Aです。M&Aによる事業承継は、M&A仲介会社に依頼のうえ相手先企業を探す必要があるため、以下の費用が発生します。

  • 相談料
  • 着手金
  • 中間金
  • 成功報酬

3つのなかでは最も高額な手法であるものの、成功報酬はレーマン方式(取引金額が増えるほどに報酬額が減少する)を採用している専門家が多いです。

事業承継に活用できる税制や補助金・融資【5選】

事業承継に活用できる税制や補助金・融資【5選】の画像

事業承継の際に活用できる制度のうち、代表的なものは以下の5つです。

  • 事業承継税制
  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 事業承継・集約・活性化支援資金
  • 企業再建資金
  • 事業再生・企業再建支援資金

事業承継にかかる費用の負担を削減できるため、積極的に活用しましょう。

事業承継税制

事業承継税制とは、後継者が自社株式を取得した際に納税が猶予・免除される制度のことです。株式を承継する際に発生する多額の相続税や贈与税の問題を排除し、事業承継を促進させることを目的に創立されました。

事業継承を行うには金銭面に不安がある経営者の方は、早めに活用の検討をしましょう。事業承継税制の適用には「特例承継計画」の提出が義務付けられているため、計画の策定を税理士に依頼する必要があります。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業や小規模事業者の事業承継を支援する補助金制度です。補助対象や補助率、補助上限額は以下をご覧ください。

  補助対象 補助率 補助上限
経営革新 ・事業承継やM&Aを過去数年以内に行った者
・補助事業期間中に行う予定の者
2分の1、3分の2 800万円
専門家活用 補助事業期間に経営資源を譲り渡すまたは譲り受ける者 2分の1、3分の2 600万円
廃業・再チャレンジ 事業承継やM&Aの検討・実施にともない廃業を行う者 2分の1、3分の2 150万円

経営革新枠の申請には認定支援機関が作成する「確認書」が必要となるため、専門家への依頼が必要です。

事業承継・集約・活性化支援資金

事業承継は、金融機関からの融資を必要とする場面が多々あります。その際に利用できる融資が、日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金です。

「後継者とともに事業承継計画を策定している人」を対象に、事業承継に必要な設備資金・運転資金の融資を受けることができます。

事業承継・集約・活性化支援資金の融資限度額は以下のとおりです。

個人事業主や小規模事業者 7,200万円
中小企業 7億2,000万円

事業承継に強い専門家を選定することで、融資の手続き・アドバイスもあわせて依頼できます。

企業再建資金

企業再建資金は、売上の急激な低下や赤字になどで経営不振に陥っている企業の再建を融資する制度です。事業承継後に、経営が著しく悪化した場合は、融資を受けることができるでしょう。

企業再建資金の融資限度額は、下記です。

融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)

該当する融資条件よって利率が変化するため、当てはまる条件をくまなく確認しましょう。

事業再生・企業再建支援資金

事業再生・企業再建支援資金は、企業再建資金と同様に経営不振である企業の再建を支援する融資制度です。

事業再生・企業再建支援資金の融資限度額は、以下のとおりです。

融資限度額
7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)

ただし地域経済への産業活力に貢献している度合いや、今後も経営改善と再建に取り組む必要がある、事業と企業が対象になるため条件が厳しいでしょう。

事業承継を相談できる窓口【7選】

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事業承継にまつわる手続きは非常に複雑なため、専門家に相談をしながら進めることをおすすめします。

主な事業承継相談先は以下のとおりです。

  1. 税理士 
  2. 商工会議所
  3. 事業承継・引継ぎ支援センター
  4. コンサルティング会社
  5. M&A仲介会社
  6. 銀行をはじめとする金融機関
  7. 弁護士

それぞれの特徴やサポート内容を解説します。

1. 税理士

税理士は、多くの経営者が事業承継の相談先として選択する第1候補です。事業承継には相続税や贈与税にまつわる業務が必ず発生します。税務相談は税理士以外の専門家は行うことができないため、税金に関する相談先として最優先で検討しましょう。

税理士が請け負う業務の具体例は以下のとおりです。

  • 事業承継方法の相談
  • 事業承継計画の立案
  • 事業承継税制にまつわる手続き
  • 税金シミュレーション

事業承継を専門とする税理士は決して多くありません。専門性を十分に見極めたうえで依頼を検討することが大切です。

2. 商工会議所

商工会議所は全国に相談窓口があり、税理士や公認会計士などの専門家が所属している機関です。商工会議所の利用には年会費が必要になるうえ、事業承継の具体的な手続きは依頼できません。

業務は依頼せず「ひとまず相談だけしたい」という方におすすめします。

3. 事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁が設置している公共の事業承継相談機関です。事業承継にまつわる相談を無料で受け付けており、譲渡先の紹介を行ってくれる場合もあります。

必要に応じて金融機関やM&A仲介会社も紹介してくれるため、初めの相談先としておすすめです。

4. コンサルティング会社

事業承継支援を専門とするコンサルティング会社に相談するのも1つの方法です。コンサルティング会社は、以下に代表される業務を担います。

  • 後継者の育成支援
  • 経営計画の策定
  • 法務・税制の専門家紹介
  • 事業承継の枠組み構築

自身で専門家を探す必要がないため、必要なサポートを一括で依頼したい場合におすすめです。ただし、会社ごとに料金体系が大きく異なるうえ費用が高額になることもあります。

複数のコンサルティング会社に費用を確認したうえで、比較検討することをおすすめします。

5. M&A仲介会社

事業承継の手法がM&Aの場合は、M&A仲介会社にも相談できます。仲介会社に相談する主なメリットは以下のとおりです。

  • M&Aの適切なアドバイスを受けられる
  • M&Aの相手先発掘や見極めを任せられる
  • 譲受企業と円滑にコミュニケーションを取れる
  • 契約まわりを抜け漏れなく行うことができる

M&A以外の事業承継方法について相談したい場合には適していないため、他の相談先を選定しましょう。

6. 銀行をはじめとする金融機関

普段から付き合いのある金融機関は、相談先の有力候補です。自社の経営状況をふまえたうえでアドバイスがもらえるでしょう。

金融機関を相談先として選定するメリットは以下のとおりです。

  • 資格を持った行員やセミナーなどから実用的なアドバイスがもらえる
  • 後継者候補や買い手企業を探してもらえる場合がある

相談と同時に融資の提案を受けるケースが多いため、自社にあったプランなのかを十分に見極めることが大切です。

7. 弁護士

相続問題が複雑で事業承継がスムーズに進まない場合は、サポートしてもらう手段として弁護士が有効です。

中立的な立場で相続のトラブルを未然に防いだり、最小限に抑えてくれる可能性があるためです。ただし、税理士やM&A仲介会社と比較して依頼料が高額なため、弁護士が本当に必要かを見極めて依頼してみましょう。

事業承継を税理士に依頼する3つのメリット

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事業承継の相談先は複数ありますが、まずは第1候補として税理士を検討することをおすすめします。事業承継を税理士に依頼するメリットは以下のとおりです。

  1. 税負担を軽減できる可能性がある
  2. 将来の相続を見越した対策を行える
  3. 他の専門家と横のつながりが強い

特に税務においては最善の相談先となるため、以下で詳しく解説します。

1. 税負担を軽減できる可能性がある

税理士に事業承継を依頼することで、税負担を軽減できる可能性があります。税理士は税務を独占業務としているため、相続税や贈与税の猶予・免除となる事業承継税制の手続きが可能です。

「そもそも事業承継税制を活用すべきなのか」から自社にあわせたアドバイスをくれるため、税金関連の落とし穴を避けることができます。

2. 将来の相続を見越した対策を行える

事業承継と相続税は密接に関わっており、自社株の相続にまつわる手続きも重要な業務の1つです。税理士には、事業承継税制だけではなく相続税全般の対策も依頼できます。

事業承継に実績のある税理士は、相続税の負担を軽減させるだけではなく、相続トラブルを最小限に抑える施策を検討してくれます。

3. 他の専門家と横のつながりが強い

事業承継には多方面の知識が必要となり、税理士以外の専門家の力が必要な場面もあります。事業承継に強い税理士は他の専門家と連携していることが多いため、いざというときにスムーズな引継ぎが可能です。

必要に応じて弁護士や中小企業診断士、M&A仲介業者などの力を借りながら、トータルでサポートしてくれます。

事業承継に強い税理士を探すポイント【3選】

事業承継に強い税理士を探すポイント【3選】の画像

事業承継に強い税理士は、以下のポイントにもとづいて選定しましょう。

  1. 事業承継の解決実績を確認する
  2. 事務所のサポート体制を確認する
  3. 料金体系が明確な事務所を選ぶ

事業承継の手続きには時間がかかるため、早めの相談先選定をおすすめします。

1. 事業承継の解決実績を確認する

税理士にはそれぞれ専門があるため、事業承継の知識が豊富な相談先を選びましょう。

事業承継は、手法の選択から計画の策定まですべてがケースバイケースです。過去に似たような事業者のサポートを経験している税理士を見つけられると、解決までの道のりがスムーズに進みます。

顧問税理士がいる場合でも、顧問が事業承継に詳しくない場合は別の相談先を検討すべきです。

2. 事務所のサポート体制を確認する

事業承継に関する一連の業務は複雑で手間がかかるため、サポート体制が充実している事務所を選定しましょう。

サポートが手薄な事務所を選択すると、解決までに想定以上に時間がかかったり、手続きが滞ったりして自社の業務に支障をきたすおそれがあります。

事務所を選ぶ際は、下記のポイントを事前に確認することをおすすめします。

  • それぞれのフェーズにおいて十分なサポートを提供してくれるのか
  • 他の専門家との連携がスムーズに進むのか

3. 料金体系が明確な事務所を選ぶ

事業承継にかかる費用は個々のケースにより変動するため、提示された料金が「高いのか、安いのか」を判断しかねる場合があります。明確な相場の算出が困難だからこそ、事務所の「料金体系のわかりやすさ」は重要です。

たとえば以下のように、それぞれのサポートにかかる費用を明確化している事務所が安心です。

税額シミュレーション 20万円
経営計画の策定 30万円

ホームページでは詳細が確認できないことも多いため、気になる事務所には事前に費用を確認しましょう。

竹中啓倫税理士事務所
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

特に、他の専門家との連携が重要です。他の観点から見た場合にメリットを考慮したうえで、専門家の提案を受けることができます。総合的な観点も見越して、連携をとるか検討しましょう。

まとめ

本記事では、依頼先ごとに事業承継を依頼する場合の料金相場や事業承継にかかる税金の費用、税制・補助金の概要などを解説しました。

事業承継の際、相続税や贈与税の手続きは必須です。専門家の選定は税務を独占業務とする税理士を中心に、必要に応じてコンサルティング会社やM&A仲介業者などを検討しましょう。

事業承継の専門家探しには「比較ビズ」がおすすめです。たった2分ほどで、事業承継に強い税理士事務所やコンサルティング会社などに一括見積もりを請求できます。自社のビジネスパートナーとなる専門家をお探しの方は、ぜひ活用してください。

監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

税理士は大きく分けて、所得税や法人税の利益計算をし税金を計算するのが得意な税理士と、相続税や贈与税で資産の評価を行いその評価額で税額を計算するのが得意な税理士が見えます。断然、前者の税理士が多いと思います。

当然、税理士は両方やれますが、どうしても自分の育ってきた環境(修行時代に勤務していた税理士事務所の特色や、大手事務所の場合、この二つは別事業部に分割されており、どうしても税理士として色がついてしまいます)によって、得手不得手ができてしまいます。

他の税理士にセカンドオピニオンをとるのも難しいと思いますので、できることといえば、ご自身で税理士に対して質問を頻繁に行い、納得することが重要だと思います。税理士もクライアントから頻繁に質問を受けることによって、緊張感を持ち、注意して事に当たると思います。

クライアントが本気になれば、さすがの税理士もプロですから、最高のパフォーマンスを出せるのではないでしょうか。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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