遺産相続に関することを弁護士に依頼した時の弁護士費用

弁護士
監修者
弁護士 杉本拓也
最終更新日:2022年12月19日
遺産相続に関することを弁護士に依頼した時の弁護士費用

弁護士を利用した経験がないと、具体的に報酬がどのぐらいかかるか、まったく見当がつかないのではないでしょうか。弁護士を必要とする時に躊躇なく依頼できるよう、遺産相続における弁護士費用について知っておきましょう。

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遺産相続の報酬は弁護士事務所によって異なる

弁護士の報酬には決まりがありません。具体的に、「何についての依頼ならいくら」というルールがあるとわかりやすいですが、そのような決まりはなく、弁護士が自由に報酬を設定することができるのです。

これは弁護士に限った話ではありません。法律の専門家であれば、報酬は自分で自由に決めてよいことになっているのです。したがって、たとえ依頼内容は同じであっても、依頼する弁護士事務所によって報酬の多い少ないが変わります。

同じことを依頼するのであれば、安い弁護士事務所の方がよいと思ってしまいそうですが、高額な報酬を要求するところはそれ相応に専門性が高く、高度なサービスが提供できることを自負しているところもあります。したがって、報酬が安い弁護士事務所の方が良心的で、常に優れているというわけではありません。

弁護士の報酬は各弁護士が自由で決めてよいといっても、以前は報酬規定というものが日弁連によって決まっていました。今でも多くの法律事務所で、旧報酬規程を基準として報酬を決めています。ですので、極端に高かったり安かったりという弁護士事務所はあまりないと言ってよいでしょう。

遺産相続の弁護士費用のポイント

遺産相続について依頼する場合も、どこの弁護士事務所に依頼するかによってその報酬は変わってきます。ただ、遺産相続の依頼ということはいくつかポイントがありますので、それぞれにどのような費用が発生するかを考えていけば、おおよその目安はわかるでしょう。

遺産相続の報酬額は、その対象である遺産の総額に相当する金額が基準になると言えます。巨額な遺産を巡って親族がもめている場合は、その解決のためにそれ相応の報酬が要求されるでしょう。

また、遺産相続をめぐる争いがあるとしても、相続する財産の中には、その争いの争点となっていない財産も含まれるものです。

すべての財産が同一の基準で考えられるわけではありません。遺産をめぐる争いの対象でない財産については、先に述べた時価相当額ではなく、一般的にその3分の1程度に減額して報酬が決まることになるでしょう。

遺産相続の弁護士費用

遺産相続について弁護士に依頼する場合、どのような報酬が発生するのでしょうか。プロセスごとに見ていきましょう。

相談料

弁護士事務所はどこでも相談するのに相談料が必要です。法律に関する高度な専門知識を提供するのが弁護士の一つのサービスですから、相談に乗ってもらうためにもそれ相応の報酬が必要なのです。

ただし、弁護士事務所によっては、初回相談は無料などとサービスしているところもありますので、探してみましょう。

着手金

弁護士に相談した結果、実際に争いの解決に乗り出してもらうと決まったら、着手金という費用が発生します。これは、弁護士が仕事に取り掛かる前に支払う、前払い金のようなものです。

弁護士事務所によって着手金を渡すタイミングは違います。実際に相談する弁護士事務所に確認してください。

報酬金

弁護士に事件を解決してもらった時に支払う、その労働の対価としての報酬です。

着手金と報酬金は別であることに注意しましょう。報酬金は事件の解決によって支払うことになりますが、着手金は事件が解決しなくても仕事に乗り出してもらう時点で発生します。

どちらの場合も、遺産相続であればその解決によって発生する依頼者の経済的な利益をベースに計算されます。

手数料

弁護士が事件を解決するにあたって、裁判所等に必要書類の申し立てや提出を行うことがあります。その他手数料は戸籍謄本等の取り寄せの費用などがかかります。これは依頼者が負担するべき費用です。

日当

弁護士に1日あたりに支払う費用のことです。時間単位で費用が決められていることも少なくありません。

弁護士はさまざまの法的手続きを行うことになりますが、なかには出張を伴うケースもあるでしょう。そういう場合は1日あたりいくらというふうに、弁護士事務所によって日当の規定があるものです。依頼する事務所に確認してみてください。

実費

事件解決に必要な手続き等で、その都度発生する費用のことです。弁護士に依頼せずとも、誰がやっても発生する費用ですので、これについては弁護士事務所の報酬の高い・安いを判断する基準にはなりません。

遺産相続における各手続きの弁護士費用

遺産相続の解決を弁護士に依頼する場合、具体的にどのくらいの費用がかかるか、おおよそですが、見ておきましょう。

遺言書の作成

遺言書の作成は15万円程度が弁護士に支払う費用の目安です。ただし、遺言書の分量によっても変わります。

これとは別に、実費や日当などが発生することも多いため、支払う総額は15万円以上になることがほとんどでしょう。

遺言の執行

遺言の執行には30万円以上は必要と考えた方がよいでしょう。ただ、相続財産の時価がベースになるため、相続する財産が少ない時は安く済みます。

相続放棄

相続放棄にかかる費用の目安は10万円程度です。ただし、それ以前の事前調査などにも費用が発生することが多いため、最終的には10万円以上になると考えた方がよいでしょう。

遺産分割協議

遺産分割協議は交渉として受任するか、調停や審判等の裁判手続きを行うかによっても費用は大きく異なります。ただし、これも遺言の執行と同様、財産の多寡によって変わります。

遺留分減殺請求

相続人には最低限の相続分というものがあります。これを侵害された時は、訴えを起こして自分が相続するべき最低限の分を確保することが可能です。

この訴えを起こすために弁護士に依頼する際にも、もちろん報酬が発生します。その金額は、その訴えによっていくら経済的利益があるかによって変動するのですが、具体的には以下の報酬規定を確認しておいてください。

経済的利益が300万円以下の時、着手金はその8%(ただし、最低10万円)、報酬金は16%です。また、経済的利益が300万円〜3,000万円の時、着手金はその5%+9万円、報酬金は10%+18万円となります。

さらに、経済的利益が3,000万円〜3億円の時、着手金はその3%+69万円、報酬金は6%+138万円で、経済的利益が3億円以上の時、着手金はその2%+369万円、報酬金は4%+738万円です。

まとめ

遺産相続を弁護士に依頼すると、さまざまな費用項目があり、合計ではかなり弁護士費用がかかることが多いです。もちろん相続する財産によって具体的な金額は大きく違いますし、相談する弁護士事務所によっても報酬の決め方は違います。ですので、具体的には実際に相談して確認するしかないでしょう。

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監修者のコメント
弁護士
杉本拓也

東京都豊島区の企業法務専門の弁護士。株式会社国際協力銀行及びメットライフ生命保険株式会社の元企業内弁護士。英文契約を含む契約書作成を中心とする法律顧問業務、及びM&A・事業承継業務を中心に取り扱う。IT・金融分野を中心に多様な規模、業種の顧問業務経験を活かし、クライアントに対して企業内弁護士の経験を活かした実践的な助言を行う。

遺産分割の紛争の解決を弁護士に依頼する場合、遺産の金額や相続分にもよりますが、高額な弁護士費用がかかることも多いです。弁護士を選ぶ際は、実際に相談に伺った際に、どのような費用がかかるかという説明を受けるとともに、見積書を作成してもらうことも検討すると良いでしょう。

弁護士費用の説明や記載がアバウトな弁護士はお勧めできません。丁寧な弁護者は、受任の段階でどのような弁護士費用が発生するか、項目ごとに説明と費用の算出方法などが具体的に明示してくれるでしょう。そして、不明確な点については遠慮なく弁護士に事前に確認することが良いでしょう。費用が安ければ良いということではありません。

弁護士選びの際は、弁護士が遺産分割の分野に精通しているかという観点とともに、明朗会計で費用の説明が丁寧であるかという観点で選ぶと良いと思います。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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