棚卸資産の評価方法の届出とは?書き方・提出方法や注意点4つを徹底解説
- 棚卸資産の評価方法の届出の書き方は?
- 届出に関する注意点とは?
- 棚卸資産の一般的な評価方法は?
「棚卸資産の評価方法とは?」「棚卸資産の評価方法はどのように提出するの?」と悩んでいる新しく会社を設立した方や経理の方は必見です。この記事では棚卸資産の評価方法の届出を解説します。最後まで読めば、届出の書き方や提出方法がわかるでしょう。
棚卸資産の評価方法の届出は、第1期確定申告書と同じ期限までに提出する必要があります。評価方法には大きく分けて原価法と低価法の2種類があり、適切な方法の見極めが大切です。
棚卸資産の評価方法の届出の書き方を8つのステップにわけて解説しているため、棚卸資産の評価方法でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
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棚卸資産の評価方法の届出とは
棚卸資産の評価方法の届出は、所有している棚卸資産をどのような方法で評価するか申告する書類です。届出には複数項目があるため、漏れなく記入する必要があります。書類が必要な場合は国税庁のホームページからダウンロードしましょう。
適切な棚卸資産の評価方法を適用することで、実務の簡便化や実態の正確な反映が実現します。事業をより円滑に進めるためには、自社に適した評価方法の選択や届出の正しい記入が大切です。
棚卸資産の評価方法の届出の書き方8ステップ
棚卸資産の評価方法の届出の書き方には、大きくわけて次の8ステップがあります。申請書様式は、棚卸資産の評価方法の届出書からダウンロード可能です。
- 日付・税務署名を記入
- 提出法人にチェックを入れる
- 納税地・法人名義・法人番号を記入
- 代表者氏名・代表者住所・事業種目を記入
- 事業種類を記入
- 評価方法を記入
- 参考事項を記入
- 税理士の署名押印
ステップ1. 日付・税務署名を記入
棚卸資産の評価方法の届出の最初に、提出年月日と納税地の所轄税務署を書く必要があります。納税地は原則的に事業所や本店がある場所です。
納税地の所轄税務署がわからない場合は、国税庁ホームページ内の「国税局・税務署を調べる」で検索しましょう。
ステップ2. 提出法人にチェックを記入
提出法人にチェックを入れましょう。提出法人は「単体法人」と「連結親法人」の選択肢があるため、該当する方を選択しましょう。
グループ企業の親企業でない限り「単体法人」です。「連結親法人」は、内国法人が完全支配関係のある連結子会社を持つ場合に該当します。
ステップ3. 納税地・法人名義・法人番号を記入
納税地・法人名義・法人番号を記入します。法人名義は前株や後株にも注意し、正確に記載することが重要です。前株は「株式会社〇〇」後株は「△△株式会社」と正しく表記します。
法人に付与されている13桁の番号「法人番号」を記入しましょう。法人番号がわからない場合は、国税庁のホームページ内の「法人番号公表サイト」から検索できます。
ステップ4. 代表者氏名・代表者住所・事業種目を記入
以下3つの項目を記入します。
- 代表者氏名
- 代表者住所
- 事業種目
事業種目は定款に記載されているものを記入しましょう。
ステップ5. 事業種類を記入
事業の種類の欄は、現在展開している事業の内容を種類別に書きます。 複数の事業所がある場合、事業所ごとに記入しても問題ありません。
事業種類の例は、次のとおりです。
- 食料品製造業
- 木材、木製品製造業
- 輸送用機械器具製造業
詳しい事業種類は、事業種目・業種番号一覧表から確認できます。
ステップ6. 評価方法を記入
棚卸資産の評価方法を記入します。選択できる評価方法は「原価法」と「低価法」の2種類です。原価法で用いる取得価額の求め方は以下の6つに分かれています。
- 個別法
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
ステップ7. 参考事項の記入
必要に応じて参考事項を記入します。新しく会社を設立したのちに届出を提出したいと考える場合、設立年月日が必要です。
新しく事業を始めた、または事業を変更した場合も、開始・変更の日付の記入が必要です。特に記入する事項がなければ記入の必要がありません。
ステップ8. 税理士の署名押印
棚卸資産の評価方法の届出を税理士が作成した場合、税理士の署名押印が必要です。評価方法の選択や届出の記載に不安がある場合、税理士に相談しながら書類を作成しましょう。棚卸資産の評価方法の届出作成は、専門的な知識が必要なケースがあるためです。
自社に最適な税理士を選ぶためには、1社だけではなく複数社への見積もり依頼の取得が大切です。条件を比較することで、価格やサービス内容が最適な税理士が選べます。
棚卸資産の評価方法の届出に関する注意点
棚卸資産の評価方法の届出に関する主な注意点は、次の4点です。
- 空欄のままでいい項目がある
- 届出には提出期限がある
- 届出を提出しないと評価方法が選べない
- 未提出の場合「最終仕入原価法」が適用される
注意点1. 空欄のままでいい項目がある
棚卸資産の評価方法の届出には、基本的に空欄のまま提出していい項目があります。たとえば次の3つが空欄でかまわない項目に該当します。
- 連結子法人
- 整理番号や連結グループ整理番号
- 税務署処理欄
連結子法人とは、100%国内子会社で連結親法人が発行済株式の全部を直接的もしくは間接的に保有する内国法人のことです。連結親法人で、連結子法人の届出を行うケースは稀であり、該当しなければ空欄のまま提出しましょう。
整理番号や税務署処理欄は必要に応じて税務署が使用する欄なため、提出者の記入は不要です。
注意点2. 届出には提出期限がある
棚卸資産の評価方法の届出の提出期限は、確定申告書と同じです。新しく会社を設立した場合には、設立第1期の確定申告書の期限までに届出を提出しなければなりません。
新たに事業を始めた、もしくは事業を変更した場合も同様です。開始・変更の日がある事業年度の確定申告書の提出期限までに、届出を出す必要があります。
注意点3. 届出を提出しないと評価方法が選べない
棚卸資産の評価方法の届出を提出しないと、評価方法は選べません。棚卸資産の評価方法はそれぞれにメリットとデメリットがあり、事業形態によって最適解が異なります。とくに都合のいい評価方法がある場合は、必ず提出しましょう。
棚卸資産の評価方法の届出は、事業を有利に進めるための有効な手続きです。届出の際は長期的なビジョンを持ち、事業スタイルに応じてメリットの大きい評価方法の選択が求められます。
注意点4. 未提出の場合「最終仕入原価法」が適用される
棚卸資産の評価方法の届出を提出しない場合「最終仕入原価法」が自動的に適用されます。最終仕入原価法が、税務上の法定評価方法に当たるためです。「最終仕入原価法」とは、期末棚卸資産の額を期中の最後の仕入れ単価から算出する方法を指します。
会社を設立して間もない場合、自動で最終仕入原価法が適用されていることがあります。別の評価方法の方が都合がいい場合、なるべく早く棚卸資産の評価方法の届出を提出しましょう。
棚卸資産の評価方法は大きく2つに分けられる
棚卸資産の評価方法は、大きく分けて「原価法」と「低価法」があります。それぞれの評価方法にメリットとデメリットがあるため、事業に適した方法を選ぶことが大切です。
原価法
原価法には、次の6つの種類があります。
- 個別法
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
1. 個別法
「個別法」は、在庫を仕入れたときの単価を使って棚卸資産を評価する方法です。実際の商品の流れと資産の価格を一致させられるメリットがあります。
棚卸資産の数や種類が多い場合には事務作業が多くなる点がデメリットです。宝石や不動産など、個々の価値が確立している資産の棚卸資産の評価方法に適しています。
2. 先入先出法
「先入先出法」は、先に仕入れた商品から売れていると考えて棚卸資産を評価する方法です。通常、先に仕入れたものから売れるため、実際の商品の流れと資産の価格が一致するメリットがあります。
期末時点の在庫数が最後に仕入れた際の商品の数を上回ると、どの時点で現在の在庫数に至ったのか調査しなければなりません。やや計算が複雑になるため、注意が必要です。
3. 総平均法
「総平均法」は、該当する年度の仕入代金の合計を仕入れた商品の数で割って単価を計算する方法です。計算が簡単であるため、事務作業の負担が軽減されます。
最後の仕入れが完了するまで平均単価が算出できないため、年度途中の単価計算ができない点がデメリットです。ただし、1カ月単位で区切って平均単価を算出することも認められており、月次単位で計算ができます。月次計算は、年度の途中における単価計算ができない総平均法のデメリットの解決策です。
4. 移動平均法
「移動平均法」は、仕入ごとに平均単価を計算する方法です。仕入ごとに商品の単価がわかるため、随時売上原価を把握できるメリットがあります。
在庫数を把握しやすいため、在庫管理に適した評価方法です。ただし、仕入ごとに平均単価を出さなければならないため、事務作業が増えるデメリットがあります。
5. 最終仕入原価法
「最終仕入原価法」は、最後に仕入れた商品の単価を使って棚卸資産を評価する方法です。最後に仕入れた単価を使えるため実務が簡単になるメリットがあります。
ただし、在庫数と最後の仕入れ数が異なる場合、棚卸資産の価格が正確にわからないデメリットがあります。棚卸資産の評価方法の届出を提出しないと自動的に「最終仕入原価法」が適用されるため、ほかの評価方法を望む場合は届出提出が必要です。
6. 売価還元法
「売価還元法」は、類似した商品をグループごとに分け、グループごとに原価率をかけて棚卸資産を評価する方法です。商品ごとに評価せずに済み、実務が楽になるメリットがあります。
作業負担が軽い一方、売価還元法に適したグループ分けは簡単ではありません。グルーピングにミスがあった場合、棚卸資産の評価額の正確性が著しく損なわれる点がデメリットです。
低価法
「低価法」は、時価と原価法による評価額を比較し、低い方の価格を使用できる方法です。低価法には以下の6つの考え方があります。
- 個別法による原価法に基づく低価法
- 先入先出法による原価法に基づく低価法
- 総平均法による原価法に基づく低価法
- 移動平均法による原価法に基づく低価法
- 最終仕入原価法による原価法に基づく低価法
- 売価還元法による原価法に基づく低価法
時価が原価法の評価額より低い場合、差額を評価損として経費に計上可能です。一方、原価法の評価額が時価より低ければ、原価法を使って確定申告できます。時価が原価法の評価額より低ければ将来発生する損失を予測できるため、棚卸資産の実態を把握しやすい点が大きなメリットです。
時価の把握が難しく、一度原価法で棚卸資産を評価した後に時価との比較が必要となるため、手間がかかる点がデメリットです。
まとめ:棚卸資産の評価方法を決めるためには届出が必要
棚卸資産の評価方法を決めるためには、届出の提出が必要です。評価方法の選択や記入方法に不安がある場合、税理士に届出の作成を代行依頼できます。棚卸資産の評価方法には、それぞれメリットとデメリットがあるため、仕組みを理解して都合のいい評価方法を採用しましょう。
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記事にもある通り、本来あるべき棚卸資産の価格が正確に反映されないデメリットがあるため、企業の財政状態及び経営成績を把握することを主眼とした場合、適切な評価方法ではない可能性があります。計算上での手間等を踏まえて、棚卸資産の評価方法を選択することが望まれます。
また、在庫管理に関するシステム等を利用している場合には、システム上でどのように評価されているのかを理解し、システムに合わせた棚卸資産の評価方法を選択することが考えられます。
一度届出をおこなった評価方法は、3年間は変更ができないため、その点にも留意が必要です。
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