PCT国際出願とは?費用・手数料を徹底解説
国際的に特許を出願する際に便利なのがPCT国際出願です。しかし、その存在は知っていても、具体的にどういうものなのかがわからず、どんなメリットやデメリットがあるのかを知らない人は多いです。これからPCT国際出願をする予定があったり、将来的に必要だと感じていたりするなら、その特徴や全体の流れについてチェックしておきましょう。
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海外で特許を申請する際の2大ルート
海外で特許を申請する際の2大ルートである、「PCTルート」と「パリルート」。1883年に締結された、約170ヵ国が加盟する知的財産権に関する国際条約「パリ条約」に基づき外国出願をすることを意味しています。
それぞれの国の言語、それぞれの国の法律で定められた形式により出願書類を作成を行う必要があります。日本から外国への多くの特許申請手続きに、国際出願制度が適用されています。
しかしそれぞれの国の法律で定められた形式がある為に、多くの国に出願する場合は手続きが煩雑になり、また短期間に集中してコストがかかるデメリットがあります。
PCT国際出願とは
新しい技術を発明した際に、その技術を保護してくれるのが特許権です。しかし、日本で取得した特許権は日本国内だけで有効です。世界を対象にした場合、各国へ特許の出願が必要になります。
世界には196の国があります。仮にそれぞれの国に対して特許の出願をすることになったら、その手間は大変な量になります。そこで重要な役割を持つのが、PCT国際出願なのです。
PCT国際出願は国際特許出願とも呼ばれており、世界共通での特許出願になります。しかも、世界知的所有機関(WIPO)に対して行う単一の出願手続きによって、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して同時に出願したことと同じ効果が得られます。
具体的には、PCT加盟国155か国(※2022年1月31日にイラクが155番目の加盟国となり、2022年4月30日に発効します。)における「国内出願」と同等の効果が得られます。
PCT国際出願は特許協力条約によって手続きの一本化規定が定められています。この特許協力条約のことを「PCT=Patent Cooperation Treaty」と呼ぶことから、PCT国際出願と呼ばれているのです。
ここで注意したいのは、PCT国際出願によって世界各国でいっせいに特許を取得できるわけではありません。あくまでも「国内出願」と同等の効果が得られるにすぎませんので、そこから各国での手続きが必要になります。
特許の取得までできないとは言え、「国内出願」と同等の効果には大きな意味があります。PCT国際出願は、翻訳文を提出する各国移行手続には原則30か月の猶予があるのに対して、優先権を主張したパリルートであっても、「国内出願」と同等の効果を得るには、言語ごとに翻訳文を作成し、優先期間内(1年以内)に各国へ出願手続きを行わなければなりません。
加盟国における「国内出願」と同等の効果は、それだけでも重要な意味があります。例えば、出願人甲が発明AについてPCT国際出願を行った場合、その出願の事実を知った乙がPCT加盟国において同じ発明Aについて特許出願を行ったとしても、特許を取得することはできません。
先願優位の原則の下、できる限り多くの国へ同時に出願できることは重要な意味を持ちます。もちろん実際に出願するためにはクリアしなければならない条件もありますし、メリットばかりとは言えないところもあるので注意してください。
PCT国際出願のメリット
PCT国際出願には、様々なメリットがあります。まず、最大の特徴が特許出願のための手続きをわかりやすくできることです。
国が変われば同じタイプの手続きも様式が変わってきます。それらを調べて準備を整えるのはとても大変です。しかし、PCT国際出願では自国の特許庁に文書を提出するだけで済みます。特許出願はスピード勝負なところもあるので、シンプルにして迅速にできることは大きなメリットになるのです。
次のメリットは、その発明を評価するための調査結果を知ることができる点になります。
PCT国際出願では、出願した発明の先行技術があるのかを国際機関が調査してくれます。そして、出願人はその結果を特許審査官から得られるのです。ほかにどんな技術があるのかを自分たちで調べるのは大変ですが、専門機関による調査結果を得て、その結果を基に手続きを進められるようになるのは大きなメリットと言えます。
最後は、PCT国際出願をすることで、実際の出願までに原則30か月の猶予期間が得られる点です。
海外で特許の出願をする際には、各国用の翻訳文を作成したり、どの国で権利を取得するのかを選定したりする作業が必要です。PCT国際出願をすれば、その作業をするために30か月の期間が得られます。それだけの期間があるなら、余裕を持って作業を進められるので、これも重要なメリットと言えるでしょう。
- 外国への出願手続きをわかりやすくできる
- 国際調査の結果から効率的に特許取得を進められるようになる
- 原則として30か月の猶予期間が得られるので余裕を持って手続きができる
この3点のメリットを得られるだけでも、PCT国際出願には大きなメリットがあるとわかります。ただし、メリットだけではなくデメリットと呼べる部分もあるので、それぞれの特徴を知っておきましょう。
PCT国際出願のデメリット
いくつものメリットがあるPCT国際出願ですが、大きなものではないにしてもデメリットはあります。
PCT国際出願では、手続上、国際出願日に拘束されるすべての締約国を指定したこととなります。そのため、費用が余分にかかってしまうこともあるのです。
特許の内容によっては、特定の国を対象にするだけで良い場合もあります。例えばそれが1国や2国だけの場合、PCT国際出願をした方がコストは高くなります。最初からある程度のコストを盛り込んで考えるにしても、できるだけ安く済ませたいと考えているなら、これはPCT国際出願のデメリットになるのです。
次に、PCT国際出願はPCT加盟国を対象にしたものなので、非加盟国は対象にならない点に注意してください。大抵の国が対象であるとはいえ、全てではありません。代表的な例で言えば、台湾はPCT非加盟国なので、特許出願に関しては個別の手続きが必要です。
- 費用が余分にかかるケースがある
- PCT非加盟国への個別対処
この2つが、PCT国際出願をする際のデメリットと言える要素です。
PCT国際出願と直接出願の違い
海外へ特許の出願をする際の方法として、PCT国際出願と直接出願の2種類があります。この2つにはどのような違いがあるのかをチェックしてみましょう。
PCT国際出願を利用しない場合、優先権主張を伴うパリ―ルートでの特許出願を利用することとなります。これは特許出願と製品発表の際に、重要な意味を持つものです。
優先権を主張して、海外へ特許出願をする際には、まず基礎出願をする必要があります。これはPCT国際出願でも直接出願でも共通のことです。そして、国内出願をしてから実際に製品を発表するまでの期間が1年以内だったら、日本へ出願した日に外国にも出願したと扱ってもらえる仕組みがあり、それがパリ優先権になります。このパリ優先権を利用することから、パリルート外国特許出願手続と呼ばれているのです。
まずPCT国際出願の場合です。
- 1.国内出願
- 2.PCT出願(1年以内)
- 3.国内移行(2.5年以内)
直接出願の場合はこのようになります。
- 1.国内出願
- 2.各国出願(1年以内・翻訳作業含む)
単純に行程の数だけ見ると直接出願の方が良いように見えますが、PCT国際出願は特許をそれぞれの国へ移行する国内移行作業に2.5年という猶予があります。それだけの期間があれば、翻訳作業などもやりやすく、ゆとりを持って作業ができるのです。
それに対して、直接出願の場合は各国出願の猶予が1年以内となっています。しかも、PCT国際出願に比べて半分以下の期間で、翻訳作業なども行う必要があるのです。
例えば、これが1か国や2か国くらいの話なら、翻訳作業なども含めてそれほど大きな違いにはなりません。しかし、より多くの国に対して特許出願する場合は、猶予の長さが大きな違いになります。
単純な行程の違いだけで考えるのではなく、全体を見てどちらが良いのかを判断しましょう。
PCT国際出願の費用・手数料
PCT国際出願のための費用は、の3つの手数料(印紙代)から構成されます。
- 送付手数料
- 調査手数料
- 国際出願手数料
条件によって前後しますが、以下のケースではこのような試算になります。
- 条件
- オンライン手続 (紙手続:+36,000円)
- 枚数:30 (30枚を超える要旨1枚につき1,800円)
- 言語:日本語
- 料金の軽減なし
- 試算内訳
- 送付手数料17,000円
- 調査手数料143,000円
- 国際出願手数料123,500円
- 合計 283,500円
なお、明細書や図面といった出願書類の作成を、弁理士へ依頼した場合の費用は含みません。 さらに、任意で国際予備審査を請求する場合には、予備審査手数料34,000円、取扱手数料24,000円が生じます。
各項目を見てみると、PCT国際出願には様々なお金がかかると分かります。手数料も侮れないので、特許出願はとにかく色々なところで費用が発生すると考えてください。また、特許事務所へ依頼する場合は、その特許事務所に対する手数料も発生するところにも注意してください。
PCT国際出願の流れ
PCT国際出願の流れを大まかにまとめると、5つの行程になります。場合によっては4つでも良いのですが、万全を期すことも踏まえてて5つとしています。
- 1.出願書類を提出
- 2.国際調査の結果を受け取る
- 3.出願した内容が国際公開される
- 4.国際予備審査を請求(必要に応じて)
- 5.国内移行手続
出願をすると、国際調査機関から調査結果が送られてきます。これらは国際調査報告(ISR)と国際調査期間の見解書(WOSA)の2つで構成されたものです。
その後、WIPO国際事務局が優先日から18か月経過した時点で出願を公開します。国際公開はWIPO国際事務局サイト内にあるパテントスコープから入手・閲覧が可能です。
次は国内移行手続なのですが、必要ならこの段階で国際予備審査を受けられます。これは国際調査機関の見解書を元に明細書を補正することができ、さらに補正後の特許性についても判断してもらえます。もちろんお金はかかりますが、国内移行をスムーズかつ確実に進めたいなら活用したい仕組みです。どの段階にも言えますが、スムーズに進めたいなら万全の状態で手続をできるようにしましょう
最後に、どの国で特許を取得するのかを決めて、国内移行の手続を行えば完了です。手続の期限は優先日から30か月(一部例外あり)以内となっています。翻訳文を提出、手数料を納付、国内書面の提出を各国に対して行うわけです。
簡単にまとめたものでも、これだけの手続と注意点があるので大変に見えます。特許権は、それだけ重要なもので慎重に取り扱う必要があるのです。
まとめ
PCT国際出願は、海外で権利化する際に、効率的に手続きを進めることができる方法です。出願する国の数が少なければ直接出願の方が良い場合もありますが、目安としては3か国以上に出願するならPCT国際出願の方が良いと覚えておきましょう。もちろん実際にコストを計算した結果、例外が生じることもあるので参考程度に考えておいてください。
これだけの作業を全く知らない状態から進めようとしたら、とても苦労します。審査自体に通るかどうかという問題もあるので、不安な場合は専門家へ依頼することをおすすめします。
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通常の手続以上に手数料は発生しますが、確実にPCT国際出願を進められる方法があるメリットは手数料以上の安心感があります。海外を相手にする以上、専門家のサポートはとても助かるので、ぜひ検討してみてください。
関西学院大学商学部出身。2007年12月弁理士登録。1999年より大阪市内の特許事務所にて知財業務の経験を積み、2018年4月弁護士法人英明法律事務所へ合流し、所内に知的財産権を専門に扱う部門を設立した。特許・実用新案(機械等の分野など)・意匠・商標の権利化業務に従事する。クライアントとのコミュニケーションを通じて適切な権利取得を心掛ける。
一方、国際段階での手続きの煩雑さや、移行後、権利化に至るまでの現地特許庁との対応では技術面に加え、現地特許法を考慮した対応が求められます。現地代理人との協議・交渉は専門的にならざるをえず、コミュニケーションの問題もあることから、日本側において代理人を立てて手続きを進めることを選択肢の一つとしてご検討下さい。
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