同一労働同一賃金における福利厚生を解説|対象となる5つの福利厚生一覧も紹介
- 同一労働同一賃金とは?
- 福利厚生で同一労働同一賃金にするメリットは?
- 同一労働同一賃金にすることで対象となる福利厚生は?
2020年4月に法改正が行われ、雇用形態に関わらず賃金や福利厚生の面で、同等の処遇を受けられるようになりました。
この記事では、同一労働同一賃金で福利厚生の待遇差を解消したい経営者・企業担当者向けに、対象となる福利厚生を解説します。記事を読み終わった頃には、同一労働同一賃金で福利厚生を改めるメリットがわかるようになるでしょう。
「正社員・非正規社員間で生じている格差を解消したい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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同一労働同一賃金とは:正規・非正規間の待遇差を解消する制度
同一労働同一賃金とは、同職場で職務内容が同様であれば、雇用形態に関わらず同額の賃金を労働者に支払う制度です。
同一労働同一賃金の実施のために、2020年4月に「短時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」が変わりました。それまでは、パートタイム労働者に対して不条理な処遇差を禁ずる規定をしていました。
この法律変更で、有期雇用労働者も対象になり、法律の呼称に「および有期雇用労働者」が追加され中身も変わっています。
同一労働同一賃金では福利厚生の待遇差を解消する必要がある
厚生労働省が公開する同一労働同一賃金のガイドラインにおいて、以下の内容の記載があります。
食堂・休憩室・更衣室や、福利厚生施設の利用・転勤の有無などの要件が同じ場合、同等の利用・付与を行わなければなりません。転勤者用社宅・慶弔休暇・健康診断にともなう勤務免除・有給保障においても同様です。
病気休職・法定外の有給休暇・その他の休暇に関しても、正社員と同等の処遇を用意しなければならないと記載されています。処遇差を解消する際は、福利厚生も検討しなおすことが重要です。
同一労働同一賃金で福利厚生を改善する4つのメリット
同一労働同一賃金における福利厚生を改善するメリットを4つ紹介します。
- 労働者不足を解消できる
- 人材を継続雇用できる
- 労働者の意欲を向上できる
- 雇用制度を簡略化できる
労働者不足を解消できる
福利厚生を改めると、労働不足の解消に期待できます。労働力不足が問題となっているため、短時間・有期雇用労働者・派遣労働者の労働力は貴重であるといえます。
あらゆる企業で、労働力の獲得へ積極的に動いているため、優秀な人材は処遇のいい企業に集まりがちです。同一労働同一賃金で福利厚生を改めると、自然と優秀な人材が集まってくる可能性が高まります。
従来は正社員しか使用できなかった福利厚生が、非正規雇用労働者も使用できると、企業として注目されることになるでしょう。
人材を継続雇用できる
福利厚生を改めると、優秀な人材を確保できるだけではなく継続雇用にも期待できます。現在、通年して5年の契約期間がある労働者は、無期雇用として契約期間を変更できる制度があります。
企業から労働者に説明する機会を設けるとよいでしょう。同一労働同一賃金は無期雇用には適用されないため、無期雇用労働者が不利益にならないよう注意する必要があります。
労働者の意欲を向上できる
福利厚生を改めると、労働者の意欲向上につながります。福利厚生の充実具合によって、職場環境改善・休暇取得率向上・雇用問題の解決などの利点があります。
モチベーションの向上によって、生産性の向上につながるメリットも期待できるでしょう。
雇用制度を簡略化できる
福利厚生を含めた各種処遇を改めると、雇用制度の簡略化につながります。従来の制度は、経験・能力などの規定以外に、短時間・有期雇用労働者・派遣労働者に対して別々で規定している企業もありました。
同一労働同一賃金で処遇差の改善が求められたため、賃金・各種規定など処遇に関する規定が単純化され、雇用制度がより簡略化されています。
同一労働同一賃金において対象となる5つの福利厚生一覧
同一労働同一賃金において対象となる福利厚生を、一覧で5つ紹介します。
- 福利厚生施設
- 転勤者用社宅
- 慶弔休暇と健康診断の勤務免除・有給保障
- 病気休職
- 法定外の休暇
福利厚生施設
同じ事業所に勤務している場合、給食施設・休憩室・更衣室などの福利厚生施設は、正社員も非正規社員も同等の利用を認めなければなりません。同一労働同一賃金のガイドラインで、福利厚生施設の「食堂・休憩室・更衣室」の定義が定められているからです。
派遣社員の場合、派遣会社には、派遣先または派遣会社が雇用する通常の労働者と均等・均衡した福利厚生施設の利用を認める義務があります。派遣先も、派遣社員に対して福利厚生施設の利用を認める場合も同様です。
福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)は、業務上必ず使用するものであるため差別処遇を禁止しています。
ガイドラインに記載されていない福利厚生施設
食堂・休憩室・更衣室以外の施設においては、ガイドライン上に明記されていません。派遣労働者は、派遣先で「福利厚生施設は、当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているもの」において規定されています。
施設の具体例は、派遣先の労働者が通常利用している物品販売所・病院・診療所などです。
パート・有期労働者であっても、上記の施設を利用することは多いでしょう。合理的な理由がないのであれば、派遣労働者と同様、施設利用において便宜の供与の措置を講ずる必要があります。
転勤者用社宅
通常の労働者と同じ支給要件を満たす非正規社員には、正社員と同じ転勤者用社宅の利用を認める必要があります。転勤の有無・扶養家族の有無・住宅の賃貸または収入の額なども同様です。
慶弔休暇と健康診断の勤務免除・有給保障
非正規社員も正社員と同様に、慶弔休暇の付与・健康診断受診を勤務時間中の受診を認めての給与を保障する必要があります。
病気休職
正社員に病気休職を認めている場合、非正規の短時間労働者にも同じ病気休職を認めなければなりません。有期雇用労働者においては、労働契約終了期間まで病気休職取得を認める必要があります。
法定外の休暇
法定外の有給休暇・その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)は、非正規社員にも同様に付与されなければなりません。勤続期間に応じて正社員に取得を認めているものと同様です。
有期契約社員で労働契約を更新している場合、当初の労働契約の開始日から通算して勤続期間を含めます。
同一労働同一賃金の法改正3つのポイント
同一労働同一賃金の実施のために、2020年4月に法律が変わりました。同一労働同一賃金の法改正ポイントは3つあります。
- 均等待遇規定においての明確化・対象拡大とガイドライン策定
- 待遇差の内容・理由の説明義務と不利益取り扱い禁止の対象拡大
- 行政による助言・指導の対象拡大と行政ADRの整備
均等待遇規定においての明確化・対象拡大とガイドライン策定
均等待遇規定においての明確化・対象拡大とガイドライン策定は、3つ変更点があります。
パートタイム労働者 | 有期雇用労働者 | |
---|---|---|
均衡待遇規定 | 〇 (改正前) ⇒ ◎(改正後) | 〇(改正前)⇒◎(改正後) |
均等待遇規定 | 〇(変更なし) | ×(改正前)⇒ 〇 (改正後) |
ガイドライン | ×(改正前)⇒ 〇 (改正後) | ×(改正前)⇒ 〇 (改正後) |
〇:規定あり ×:規定なし ◎:明確化
均衡待遇規定において個々の処遇ごとに、当該処遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化します。個々の処遇とは、基本給・賞与・役職手当・食事手当・福利厚生・教育訓練などです。
待遇差の内容・理由の説明義務と不利益取り扱い禁止の対象拡大
待遇差の内容・理由の説明義務と不利益取り扱い禁止の対象拡大の変更点は、以下の3つです。
パートタイム労働者 | 有期雇用労働者 | |
---|---|---|
雇用管理上の措置の内容の説明義務(雇入れ時) | 〇(変更なし) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
待遇決定に際しての考慮事項の説明義務(求めがあった場合) | 〇(変更なし) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
待遇差の内容・理由の説明義務(求めがあった場合) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
不利益取り扱いの禁止 | × (改正前)⇒ 〇(改正後) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
※雇用管理上の措置の内容とは、賃金・教育訓練・福利厚生施設の利用などです
対象拡大においては、有期雇用労働者に対する雇用管理上の措置の内容および、待遇決定においての考慮事項にかかわる説明義務を設立します。パートタイム労働者・有期雇用労働者から待遇差の内容や理由などを求められた際、正社員との処遇差を説明する義務があります。
不利益取り扱い禁止は、説明を求めた労働者に対して、不利益取り扱いの禁止規定を設立します。
行政による助言・指導の対象拡大と行政ADRの整備
行政による助言・指導の対象拡大と行政ADRの整備の変更点は以下の2つです。
パートタイム労働者 | 有期雇用労働者 | |
---|---|---|
行政による助言・指導等 | 〇(変更なし) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
行政ADR | △ (改正前)⇒ 〇(改正後) | × (改正前)⇒ 〇(改正後) |
対象拡大においては、有期雇用労働者は行政による助言・指導などの根拠となる規定を整えます。「均衡待遇」「待遇差の内容・利用に関する説明」においても、行政ADRの対象となります。
行政ADR(裁判外紛争解決手続き)とは、労働者と事業主(会社)との間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続きのことです。
まとめ
同一労働同一賃金の遵守は、生産性向上・企業のイメージアップにつながってきます。内容をしっかりと把握して不条理な格差をつくらないように心がけましょう。
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保有資格:社会保険労務士、行政書士。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
賃金において不合理な格差があれば、労働者のモチベーションも上がらず、生産性の向上も望めません。また賃金だけでなく、福利厚生も労働者の労働条件にとっては重要となってくる事項です。
同一労働同一賃金は、賃金だけでなく、福利厚生においても不合理な格差を設けることを禁止しており、派遣労働者等に対しても正社員と同様の待遇を求めています。合理的な理由があれば、賃金や福利厚生における格差を設けることも許容されているとはいえ、出来得る限りは同一の内容とすることが、モチベーションアップによる生産性向上にも繋がるでしょう。
福利厚生を含めた待遇において、正社員と不合理な格差のない企業は、派遣社員や短時間労働者にとって働きやすい職場となります。また同一労働同一賃金の遵守は、生産性の向上のみならず、企業のイメージアップにも繋がってくるため、内容をしっかりと把握して不合理な格差を作らないように心掛けましょう。
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