残業削減のアイデア7選!成功事例や取り組む際の注意点を徹底解説

マネーライフワークス
監修者
最終更新日:2024年04月30日
残業削減のアイデア7選!成功事例や取り組む際の注意点を徹底解説
この記事で解決できるお悩み
  • 残業削減のアイデアとは?
  • 残業が多くなる原因とは?
  • 残業削減の成功事例や注意点とは?

労働環境を改善させる働き方改革関連法案が施行されてから、企業は従業員の残業時間削減に向けた取り組みを行っています。残業時間を削減させる重要性は理解しているものの、削減のアイデアがない・効果が出ないなどの課題を持っている企業も多くあるでしょう。

当記事では、残業削減に取り組みたい経営者や人事担当者に向けて、残業削減のアイデアを紹介します。記事を読み終わったころには、自社の残業における課題が理解でき、適した対策を取れるようになるでしょう。

残業が多くなる原因や成功事例も解説するため、参考にしてください。

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残業時間に関する現状

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厚生労働省の「労働時間制度について」を読み取ると、2023年度の一般労働者の残業時間は年間で120時間です。総労働時間は10年前と比較すると100時間程度減少しており、働き方改革やテレワークの普及で残業時間が減少したと推測できます。

残業時間が多くなると法令違反になるだけではなく、社員の健康を害したり生産性が低下したりするため注意しましょう。時間外労働が月45時間を超えて長くなるほど、脳・心臓疾患との発症との関係が強まるといわれています。社内の残業状況を確認し、現状に満足せず残業削減に積極的に取り組む必要があります。

参照:厚生労働省「STOP 過労死!」

残業時間削減のアイデア7選

残業時間削減のアイデアを7つ紹介します。

  1. 残業の事前申請と管理
  2. 自己申告によるノー残業デーの設定
  3. 取引先を含む業務効率化推進
  4. 能力開発による業務平準化
  5. 人事評価制度と連動したインセンティブ導入
  6. 業務効率化の目標設定・提案
  7. ノンコア業務のアウトソーシング活用

残業を削減するためには、残業が当たり前になっている社員の意識改革が重要になるでしょう。

1. 残業の事前申請と管理

残業を減らすために「残業を事前申請制」にし、残業申請と実施状況を「上司・チームリーダーが管理する」といいでしょう。

終礼時までに時間を区切り、残業をしたい場合はその理由・内容と共に申請させます。管理者は理由・内容を踏まえ、残業を許可するか翌日に持ち越すか判断して月の残業時間を逐一管理する方法です。

仕事が終わらないからとダラダラ残業を許可するのではなく、申請する一定のハードルを与えましょう。従業員に「残業する必要があるのか」「残業しないためにどうすべきか」を考えさせる効果が期待できます。

2. 自己申告によるノー残業デーの設定

残業を減らすアイデアとして「ノー残業デー・ウィーク制度を設けて、自己申告制にする」方法があります。ノー残業制度は、比較的多くの企業が採用している一般的な残業削減への取り組みですが、形骸化しているケースも多いでしょう。

ノー残業の日・週を自己申告制にしてチームでスケジュールを共有しましょう。残業しない雰囲気を醸成できる、メンバーのスケジュールを考慮しながら日程を決められる、などの効果が得られます。働き方を従業員の自主性に任せることにより、仕事のやり方を見直すことにもつながるでしょう。

3. 取引先を含む業務効率化推進

「取引先の理解を得たうえで、お互いのメリットになる業務効率化に取り組む」ことが残業減少につながります。取引先から業務量調整の協力が得られれば、取引先都合での残業リスクはなくなるでしょう。

たとえば、取引時の書類のやり取りを簡略化させる、書式を共通の様式に変更するなどが挙げられます。1社のみでは効果が薄い可能性がありますが、協力の得られる企業が増えていけば効果も高まるでしょう。

4. 能力開発による業務平準化

従業員の能力開発に注力し、業務の平準化を推進によって残業を削減でき、会社全体のパフォーマンスを底上げできます。

従業員ができることを増やし、お互いの業務領域を超えてカバーし合える状況をつくり業務の平準化を進めていきます。だれか1人に頼らなければならない属人的な業務をなくすことで、残業削減が期待できるでしょう。

5. 人事評価制度と連動したインセンティブ導入

人事評価制度と連動したインセンティブを導入し、従業員の頑張りに報いることで残業削減につながります。現在、賃金の伸びが停滞している日本では、残業代を貴重な収入源と捉える従業員も少なくありません。

残業を減らすことによる生産性向上が従業員の評価につながり、収入としてリターンが得られることを理解してもらいます。業務効率化を推進する原動力が従業員個々のパフォーマンスを高め、会社の成長につながる好循環を生み出すでしょう。

6. 業務効率化の目標設定・提案

個々の従業員に業務効率化の目標を設定させる・業務効率につながる提案をさせることで残業削減につながるアイデアです。

たとえば、四半期や半期に1度業務を振り返りる時間を設け、上司と共に業務効率を高める方法を検討します。業務効率化に向けた従業員の自主性を促せるだけではなく、現場ならでは効率化アイデアが生まれやすくなるでしょう。

従業員のモチベーションを高めるためにも、人事評価制度と連動したインセンティブと併用をはじめとする工夫が必要です。

7. ノンコア業務のアウトソーシング活用

アウトソーシングをうまく活用して従業員がコア業務に集中できる環境が整えば、業務効率化による残業削減効果が得られます。

アウトソーシングすると自社内に業務ノウハウが蓄積されないデメリットも存在する点には注意が必要です。アウトソーシングする前には、自社業務をよく分析し、ノンコア業務の選定は慎重に検討する必要があります。

残業が多くなる3つの原因

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残業が多くなる原因は、以下の3つです。

  1. 仕事量が多い
  2. 無駄な仕事をしている
  3. 残業への意識が薄い

個人では仕事量が多いことを気づきにくいため、客観的にわかるよう数値化するといいでしょう。

1. 仕事量が多い

1人が担当できる仕事量が多いと残業が多くなるでしょう。残業は、1人に割り当てている仕事の量が多い場合と、仕事の量と人数のバランスが取れていない場合に起こりやすくなります。

仕事が多いだけで人を増やすのではなく、仕事量を数値化し客観的に判断できるようにしましょう。

2. 無駄な仕事をしている

仕事が効率化されていないと、無駄な仕事が増えてしまいます。やらなくてもいいことを現場で判断できず、無駄な仕事をしていると残業が多くなりやすいです。

実際に働いている人は取り組んでいる業務の無駄に気付きにくいため、業務改革のプロジェクトチームを立ち上げると効果的です。プロジェクトチームでは、第三者の立場で残業の原因を可視化し、優先順位をつけて対策に取り組みます。プロジェクトチームは、残業削減に取り組む部門で削減効果が発揮されたかを見届けましょう。

3. 残業への意識が薄い

社員の残業への意識が薄いと、残業が多くなりやすいです。残業代が生活費の一部になっている社員は、残業削減しようとせず、少しでも収入を増やしたいと考える場合もあります。

社内全体で残業削減に取り組むことと、残業削減の意図を明確に提示しましょう。たとえば、全社の残業代コストを社員に公開してコスト意識を持たせる方法や、残業削減の成功事例を紹介する取り組みなどが効果的です。

残業削減の成功事例3選

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残業削減の成功事例を3つ紹介します。残業削減に取り組む各社の特徴は、複数のアイデアや施策を組みあわせて実行している点です。

  1. 群馬県太田市の運送業B社
  2. 茨城県の食品製造業D社
  3. 東京都の宿泊業F社

参照:厚生労働省「時間外労働削減の好事例集」

1. 群馬県太田市の運送業B社

群馬県太田市の運送業B社では「自己申告制による毎週1日のノー残業デー設定」「半期ごとの業務効率化目標設定」の2つの施策を実施しています。

自己申告制としたノー残業デーは、事業所内の従業員全員で確認できるようにスケジュールを共有します。定時で帰宅できるよう周囲が配慮する雰囲気が醸成されノー残業デーの実施率が向上、1人あたり月20時間程度で推移する結果となりました。

業務改善の目標設定は仕事に向かう姿勢にも好ましい影響がありました。業務におけるミス削減にも役立っており、今後は施策のマンネリ化を避けるために、新たなアイデアの実施も検討しています。

2. 茨城県の食品製造業D社

茨城県の食品製造業D社では、残業で実施すべきか事前申請で判断できる体制を構築し、工場長のトップダウンで5S活動を推進しています。5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5Sを掲げ、業務を無理なく・無駄なくできるよう取り組む活動です。

「5S」により醸成された従業員の意識がさまざまなムダを排除し、時間管理の徹底や時間外労働の適正化をより効果的なものとしました。過去には、月30時間の残業時間を半減させる成果を上げています。

3. 東京都の宿泊業F社

東京都の宿泊業F社では、特定の従業員に業務が集中しないように積極的なローテーションを行っています。ほかの従業員の仕事内容が理解できたことでお互いにサポートしあい、業務の平準化につながりました。

業務ローテーションには、従業員のコミュニケーション良化にも効果がありました。チームワークがよくなったため、業務効率化にもつながっている好事例です。

残業削減への取り組みに向けた手順・ステップ

残業削減への取り組みに向けた手順・ステップは、以下のとおりです。

  • 業務の分析と現状の把握
  • 残業の原因となるボトルネックを特定
  • 業務手順の見直し・業務設計
  • ツールの導入・環境の整備
  • アイデア・施策の実行

現状の業務を把握し、残業の原因となっているボトルネックを特定しましょう。

業務の分析と現状の把握

それぞれの業務がどのようなプロセスで実行されているのか、棚卸しをして現状の把握からはじめます。

1つの業務を遂行するためにどのような作業を要しているのか、工数を明確にし個人差があれば原因を探っていくことも重要です。残業が少ない人・多い人それぞれの働き方が可視化されることで現状を分析しやすくなります。

残業の原因となるボトルネックを特定

現状の業務プロセスを分析した結果から、残業の原因となっているボトルネックを特定します。残業が減らない原因が「業務プロセス」だけにあるとは限らないことに注意が必要でしょう。

上司が帰らないから帰りづらい・残業が当たり前になっている、などの「企業文化」が大きな原因である場合も少なくありません。残業代がないと生活が成り立たない従業員側の思惑が原因の場合もあるでしょう。

業務プロセスに問題がないのであれば、従業員への聞き取り調査をしてみることも1つの方法です。

業務手順の見直し・業務設計

残業削減に向けてボトルネックとなっている課題をどう解決するのかを念頭に、業務手順を見直し、理想のかたちとなる業務設計を進めていきます。

たとえば、二度手間になっている手順を簡素化する・必要ではない作業は省くなどを徹底するだけでも、残業削減につながる業務効率化になるでしょう。

企業文化や従業員の思惑などのボトルネックを解消するには、社内の意識を変える教育を実施します。人事評価制度と連動したインセンティブを導入する施策が必要になる場合もあるでしょう。

ツールの導入・環境の整備

業務手順を簡素化して業務効率を高めた後、さらなる効率化を推進するために「ツールの導入」を含めた働きやすい環境の整備が重要です。

たとえば、残業を減らすために残業を含めた従業員の勤怠状況をリアルタイムに確認できる仕組みを構築します。ワークフロー機能が搭載された勤怠管理システムの導入は、従業員の勤怠状況を把握できるだけではなく、残業の事前申告制度も採用しやすくなるでしょう。

自己申告制によるノー残業デー・ウィークや業務効率化の目標設定・提案を採用する場合、グループウェアが適しています。手間のかかる経費申請・清算を合理化したい場合は、経費清算システムの導入がおすすめです。

アイデア・施策の実行

残業削減に向けた取り組みの最後のステップが、残業を減らすアイデア・施策の実行です。残業が削減できない原因を特定し、業務効率化を推進しやすい環境が整っていなければ、施策を実行しても効果は発揮されません。

残業削減への取り組みを進めるなかで社員の意識改革を進め、残業削減に社員全員で取り組む環境を構築しましょう。

残業削減への取り組みで注意すべきポイント

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残業削減への取り組みで注意すべきポイントは、以下のとおりです。

  • トップダウンによる強いリーダーシップが必要
  • マインドセットの変革が必要
  • 会議・ミーティングは徹底的に見直す
  • 人件費削減を前提に残業を減らさない

残業削減の取り組みを現場に任せるのではなく、経営者自ら発信するリーダーシップが求められます。

トップダウンによる強いリーダーシップが必要

残業が当たり前となってしまった企業にとって、残業削減はいわば変革です。これまでと異なる変革を推し進めるためには、強いリーダーシップが必要であり、経営者自ら指揮をとるトップダウン方式が望ましいです。

トップダウン方式だからといって、経営者自ら業務分析して対策を講じることではありません。部署・チームを束ねる管理者と残業削減の目的・意義を共有し、経営者の考えが末端までいきわたるよう陣頭指揮をとることが重要です。

たとえば、経営者自らが工場内を視察して改善指示を出す、従業員の意見を取り入れて設備投資するなどが効果的でしょう。

マインドセットの変革が必要

残業対策の施策が形骸化している企業では「残業が当たり前」「長時間労働が評価される」文化が根づいてしまっている可能性があります。残業削減の取り組みでは、旧来からある「長時間働く=一生懸命」マインドセットを変革する必要があります。

ある程度の歴史がある中小企業の場合、企業文化の変革は容易ではありません。業務効率化による労働時間短縮がいかに会社にとって有意義なものなのか、従業員に理解してもらえるようていねいに教育しましょう。業務効率化が人事評価に反映される制度を作り、社員の意識を変えるトップダウンによる強いリーダーシップが必要です。

会議・ミーティングは徹底的に見直す

業務効率化を推進するためには、作業の簡略化や必要のない作業の削減が重要です。通常業務のなかで、意外と見落としがちな業務が「会議・ミーティング」でしょう。

報告・連絡はチャットツールやグループウェアを活用し、会議・ミーティングは「その場でしか解決できないこと」に限定するべきです。報告のための会議・ミーティングが多い会社は、残業削減を実現できないばかりか、会社の成長が期待できません。

人件費削減を前提に残業を減らさない

働き方改革関連法案の本来の目的は労働者の働きすぎ防止であり、生産性を高めて経済を成長させることです。単に人件費を削減するための方法として残業を抑制するのは、ビジネスの成長を阻むマイナス要因となります。

人件費削減ではなく最適化を目指し、業務効率化・生産性向上によるビジネスの成長を目指すことが残業削減の本質です。ビジネスを成長させるためには、従業員のモチベーションを高める制度づくりも必要です。

まとめ

残業が増えると健康被害や生産性を低下させる原因になり、脳・心臓疾患のリスクが高まります。残業の事前申請制やノー残業デーなどのアイデアを活かし、経営者がリーダーシップをとって改善に取り組みましょう。

「比較ビズ」では、さまざまな企業の残業削減アイデアに詳しい社会保険労務士を簡単に探せるため、比較して相談できます。残業削減に取り組みたい責任者の方は、ぜひ利用してください。

監修者のコメント
マネーライフワークス
岡崎 壮史

1980年3月23日生まれ。社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者。令和3年度 中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業) 派遣専門家。大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。

働き方改革の最大の目的の一つとして「長時間労働の削減」つまり、「残業時間の削減」が挙げられます。

具体的な残業削減に向けた取り組みとしては「定時退社の徹底」や「業務内容の見直し」といったことなどが挙げられますが、残業時間の削減効果は限定的であることが多く、まだまだ、取り組みに向けた課題が多いといえます。

労働基準法の改正などによって、具体的な残業時間の上限が設定されてきましたが、労働者と使用者との間の残業時間に対する認識にずれがあるため、改めて、残業時間の削減に向けた取り組みを労使間で協力して取り組むことが大切だといえます。

令和5年4月からは、運送業などの一部残業時間の上限規定が猶予されていた業種についても、残業時間の上限が設けられるようになることなどを鑑みると、残業時間の削減に向けた取り組みは、働き方改革において、より一層重要な取り組みになるといえます。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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