テレワークの就業規則は必要?見直す必要性と変更方法・必要事項6つを解説
- テレワークには特別な就業規則が必要?
- 就業規則の変更方法や記載事項は?
- 就業規則を見直す際の注意点は?
「通年でテレワークを導入することになった企業の就業規則は、どうすればいいの?」とお悩みの方必見。
テレワーク導入時にテレワーク用の就業規則が必要な場合があります。作成の必要がなくてもトラブル軽減のために作成することがおすすめです。
本記事では、テレワーク導入を検討している経営者向けに、テレワーク導入時における就業規則を見直すべき理由や就業規則変更時の注意点を解説します。記事を読み終わる頃には、適切な方法で就業規則の見直しができるでしょう。
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テレワークを導入するなら就業規則の変更が必要?
テレワークを導入する場合、就業規則の変更が必要かどうかは現行の規則と新しい働き方により決まります。
労働条件が同じであれば変更は任意で、条件が変わる場合は就業規則を変更する必要があります。
労働条件が通常勤務と異なる場合は変更が必要
労働時間や条件が通常勤務と異なる場合は、就業規則の変更が必要です。在宅勤務への変更による減給をはじめ、従業員にとって不利益な方向に変更することは原則として認められていません。
仕事量の減少で、所定労働日数・所定労働時間を通常の従業員よりも減らす場合、従業員と協議する必要があります。基本給においても、割合に応じての減額に合意してもらわなければいけません。
変更する場合、法令・労働協約の確認や全体をとおして矛盾・違反がないかの確認が必要です。
労働条件が通常勤務と同じ場合は変更が任意
労働条件が通常勤務と同じ場合は、変更は任意です。ただし、テレワークの頻度によって通勤手当の支払い条件が変わるため、基本的には就業規則を変更した方がいいでしょう。
明記義務がある労働条件に変更が発生しない場合、就業規則の変更義務はありませんが、変更すると労働者とのトラブルが減ります。
テレワークの就業規則に記載すべき6つのポイント
テレワークに関する就業規則の変更で、留意すべきポイントを6つ紹介します。
- 定義・対象者
- 服務規程
- 労働時間
- 労務管理
- 賃金
- 費用負担
1. 定義・対象者
就業規則は、テレワークを認定する条件・期間・対象者を明確に規定する必要があります。企業や事業所の方針により、一部対面形式を維持し、完全にテレワークへシフトしないケースもあるためです。
たとえば「曜日指定して出社勤務する」「勤務時間の一部のみを在宅勤務にする」などのケースが挙げられます。従業員の希望で勤務形態を選ぶことができる制度にすると、希望者が多くなって事業に支障が出るおそれもあります。
はじめて導入する際は「会社が認定した場合に限る」「一定期間に限る」などの認定制度にするといいでしょう。全従業員に導入しない場合は、対象職種を設定する必要があります。
テレワークの定義・対象者の就業規則に記載すべき文章例
【テレワーク勤務規程(在宅勤務の定義)】
在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)において情報通信機器を利用した業務をいう。
〈在宅勤務者の定義〉
規定例では「自宅」のほかに「その他自宅に準じる場所」を勤務場所としていますが、自宅に準じる場所とは、例えば従業員が自宅以外の場所で親の介護を行っている場合は、介護している親の家と考えられます
【テレワーク勤務規程(在宅勤務の対象者)】
在宅勤務の対象者は、就業規則第〇条に規定する従業員であって次の各号の条件を全て満たした者とする。
・在宅勤務を希望する者
・自宅の執務環境及びセキュリティ環境が適正と認められる者
在宅勤務を希望する者は、所定の許可申請書に必要事項を記入の上、1週間前までに所属長から許可を受けなければならない。会社は、業務上その他の事由により、前項による在宅勤務の許可を取り消すことがある。第2項により在宅勤務の許可を受けた者が在宅勤務を行う場合は、前日までに所属長へ実施を届け出ること。
2. 服務規程
就業者が遵守すべき項目が就業規則の内容に記載している場合は、テレワーク導入時に不可欠な服務規定を追加しましょう。服務規定は通常勤務者と同様に、テレワーク従事者も遵守しなければいけない項目であるためです。
就業時間中は仕事に集中し、職務以外のことに時間を割かないように明記しましょう。トラブルを未然に防ぐため、規定を明記すると安心です。
テレワークの服務規律に記載すべき文章例
【テレワーク勤務規程(在宅勤務時の含む規律)】
・在宅勤務者は就業規則第〇条及びセキュリティガイドラインに定めるもののほか、次に定める事項を遵守しなければならない。
・在宅勤務中は業務に専念すること。
・在宅勤務の際に所定の手続に従って持ち出した会社の情報及び作成した成物を第三者が閲覧、コピー等しないよう最大の注意を払うこと。
・第2号に定める情報及び成果物は紛失、毀損しないように丁寧に取扱い、セキュリティガイドラインに準じた確実な方法で保管・管理しなければならないこと。
・在宅勤務中は自宅以外の場所で業務を行ってはならないこと。
・モバイル勤務者は、会社が指定する場所以外で、パソコンを作動させたり、重要資料を見たりしてはならないこと。
・モバイル勤務者は、公衆無線LANスポット等漏洩リスクの高いネットワークへの接続は禁止すること。
・在宅勤務の実施に当たっては、会社情報の取扱いに関し、セキュリティガイドライン及び関連規程類を遵守すること。
3. 労働時間
始業時間・終業時間や賃金額の計算方法など労働時間においても就業規則で規定しなくてはいけません。オフィスでの対面勤務から変更がなければ、変更する必要はありません。
テレワークでは、業種・業態などでさまざまな労働時間制の適用が考えられます。通常の労働時間制(1日8時間・週40時間以内)のほかに下記があります。
- 事業場外みなし労働時間制
- フレックスタイム制
- 裁量労働時間制
「事業場外みなし労働時間制」は「労働時間を算定しづらい従業員」に限定して適用できるため、適用できる業務内容かどうかの判断が必須でしょう。
在宅勤務の場合に「事業場外みなし労働時間制」が適用可能な条件
在宅勤務の場合、以下のすべてに当てはまる場合に「事業場外みなし労働時間制」が適用可能です。
- 業務が自宅で行われる
- 使用するPC・携帯電話は企業から常に通信可能にしておくことが指示されていない
- 業務が常に企業の具体的な指示に基づいておこなわれていない
4. 労務管理
労務管理に関する記録・報告などを連絡する方法も就業規則に記載しましょう。テレワーク時の労務管理は、以下の内容を管理する必要があります。
- 始業・終業時間の記録
- 報告を実施する勤怠管理
- 労働している時間の在席管理
- 業務遂行状況を把握する業務管理
勤怠管理システムを導入し、インターネットをとおして打刻・申請ができるツールの導入が必須です。在席管理は、業務報告・在席報告をかねてチャットツールを活用するケースもあります。
5. 賃金
テレワーク勤務は、都道府県で定めている最低賃金を支払う必要があります。社内での勤務から在宅勤務に変わる場合、基本給の減額は不利益変更にあたるため基本的にはできません。とくに賃金の見直しに関して、以下の手当の検討が必須です。
- 通勤手当
- 固定残業手当
- 皆勤手当
就業規則・賃金規程に定期代の金額においての項目の記載がある場合、在宅勤務用の規律を明記する必要があります。
オフィス勤務者には固定残業手当支給の規律があり、在宅勤務には勤務事業場外労働のみなし労働時間制を適用する場合も同様です。皆勤手当は、皆勤の判断方法をあらかじめ明記しましょう。
6. 費用負担
従業員に自宅のインターネット接続費用・光熱費を負担させる場合、就業規則の見直しが必須です。企業側が負担する際は、限度額・従業員からの請求方法なども明記しなければなりません。
費用負担は、企業側と従業員側で折半・片方が負担する以外に、テレワーク手当を設定して支給する方法があります。
テレワーク導入で就業規則を見直すべき3つの理由
厚生労働省によれば、テレワークの導入は就業規則の見直しを推奨しています。主な理由は次の3つです。
- 人事評価基準が変わるため
- テレワークにかかる費用負担を規定するため
- テレワーク下で業務トラブルを解消するため
1. 人事評価基準が変わるため
テレワークでは、個人の業務遂行状況を管理すること、労働で発揮される能力を把握することが難しい傾向にあります。
既存の人事評価の仕組みが就業規則に記載されており、その仕組みがテレワークの枠組みのなかで機能しづらいと判断された場合は、変更が必要です。テレワークでは従業員の業務態度を観察することが困難なため、評価基準の変更が想定されます。
ただし、テレワークではなくオフィスに出勤していることを理由に、人事評価を上げる対応は正当な評価ではありません。差別化のない評価基準を検討しましょう。
2. テレワークにかかる費用負担を規定するため
テレワークに必要なPCやVPN導入費などの経費を、どのように処理するかを明らかにし、就業規則に記載するといいでしょう。通信機器はセキュリティ対策が必要であり、個人で用意したものは十分な安全対策が講じられていない可能性があります。
企業がセキュリティ対策済みの備品を用意し、従業員がストレスなく業務をおこなう環境を築くことは、テレワーク導入の基盤です。備品の費用負担に関する取り決めは、事前に決めて就業規則に明記しましょう。
3. テレワーク下で業務トラブルを解消するため
テレワークで業務をしている際に問題が起こった場合、業務トラブルを解消するために、就業規則を見直すべきです。
たとえば、テレワーク中にPCが故障した際、故障後の対処方法が明記していないと、業務に支障がでるでしょう。
PCの故障が原因で社外秘の共有フォルダが破損したり、外部に漏えいしたりしないためにも、事前にトラブル解消方法を記載しましょう。
テレワーク導入における就業規則の変更方法
テレワーク導入による就業規則の変更には、次の3つの方法があります。
- 既存の就業規則にテレワークの規定を追加する
- 新たに「テレワーク勤務規程」を作成する
- 労働者と個別に労働契約を締結する
既存の就業規則にテレワークの規定を追加する
すでに就業規則があるケースでは、追加でテレワークに関する規定を記載できます。たとえば勤務場所に関する規定があれば下記のように追記します。
「会社は従業員に対し、業務上その他の事由により、従業員の自宅における勤務(以下「在宅勤務」という。)を命ずることがある。」
テレワークに関する細かい規定をすべて記載すると、就業規則が読みづらくなるため、簡潔に要点をまとめた記載が大切です。勤務場所のほかに、テレワーク導入に必要な費用負担に関する規定を記載しましょう。
新たに「テレワーク勤務規定」を作成する
既存の就業規則とは別に「テレワーク勤務既定」を新たに作る方法があります。「テレワーク勤務既定」を作成する場合、既存の就業規則に付属するものであることを明記することで、就業規則の一部となります。
テレワーク用の就業規則を作成する場合、在宅勤務中の労働時間や給与、教育訓練など複数の項目に分けて細かく規定可能です。
新たに作成する場合は、Wonder.Legalの「テレワーク勤務規程」のひな形を参考にして、自社に適した就業規則を作成するといいでしょう。
労働者と個別に労働契約を締結する
就業規則に「就業の場所」が明記されていない場合、テレワーク導入により必ずしも就業規則を変更する必要はありません。就業規則を変更しない代わりに、個別に労働契約を結ぶ方法があります。
個別の労働契約とは、覚書を通じてテレワークにおける働き方の取り決めをおこなうことです。とくに従業員10名以下の企業・事業所には就業規則を作成する義務がないため、テレワーク導入の際は労働契約の個別締結で対応できます。
テレワークの就業規則変更・作成の3つの注意点
テレワーク導入の準備で注意するべき点は以下の3つです。
- 所轄の労働基準監督署に届け出る
- テレワーク勤務の諸条件を雇用契約書に明記する
- テレワーク導入後は法令を遵守し勤怠管理する
1. 所轄の労働基準監督署に届け出を提出する
就業規則は、作成するだけではなく労働基準監督署への届け出が必要です。労働基準監督署への届け出をしないと罰金の対象になります。
就業規則の変更と労働基準監督署への届け出は、原則的に社労士の独占事業と考えられているため、社労士に相談する必要があります。
2. テレワーク勤務の諸条件を雇用契約書に明記する
就業規則の変更以外に、雇用契約書への明記も必須です。在宅勤務の場合であっても、通常勤務の従業員と同様に勤務時間や賃金などの条件において、雇用契約書に定義する必要があります。労働基準法・労働関連法が適用されるためです。
就業場所・労働時間においては、労働条件を書面で従業員に伝えなければいけません。雇用契約書・労働条件通知書など書面で伝えましょう。従業員の同意があれば、メールで伝えることも可能です。
3. テレワーク導入後は法令を遵守し勤怠管理する
テレワークを導入する場合、労働関係法令を遵守して適切に労働時間管理をおこなう必要があります。導入の際は、在宅勤務用の従業員の勤怠管理においてルールを定めましょう。労働時間は原則として、通常の労働時間制(1日8時間、週40時間)が適用されます。
変形労働時間制・フレックスタイム制も活用可能です。裁量労働制は採用できますが、労働時間の配分や業務の遂行方法の指示ができないため、労働管理に配慮が必要となります。
事業場外みなし労働時間制を導入する際は、導入条件が複雑のため社労士に相談した方がいいでしょう。
就業規則の変更・作成に強い社労士を見つけるポイント
就業規則の作成・変更に不安がある方は、下記のポイントを参考にして、自社にとって強みになりそうな社労士に依頼しましょう。
- 就業規則の見直しに関する実績がある社労士を選ぶ
- 自社の業界を得意としている社労士に依頼する
- 複数の社労士に見積もりを依頼する
1. 就業規則の見直しに関する実績がある社労士を選ぶ
就業規則の見直しに関する実績がある社労士を探しましょう。過去にどのような会社の就業規則を作成・変更していたかを、サイトに具体的な記載をしている社労士は、信用できる可能性が高いです。
テレワークの就業規則の作成や変更を社労士に依頼したい場合は、就業規則をどのように作成・変更したのかを、社労士に確認をとりましょう。
2. 自社の業界を得意としている社労士に依頼する
自社の業界を得意としている社労士を見つけてみましょう。たとえば自社がWeb業界の場合は、飲食店業界に強い社労士に依頼するよりも、Web業界に特化して業務をしていた社労士に依頼する方が安心できます。
また、依頼するまでに気づかなかった就業規則に記載すべき内容を、精査してくれる可能性があるため役立つでしょう。
3. 複数の社労士に見積もりを依頼する
複数の社労士に見積もりを依頼しましょう。価格やサポート内容は社労士ごとに異なるため、注意深く検討する必要があります。
5社〜10社ほど見積もりを依頼し、自社にとって条件や予算に適した社労士を見つけていきましょう。
まとめ
テレワーク導入における就業規則の変更はトラブルを減らすために、就業規則の見直しとすり合わせ、明確に条件を記載することが大切です。
就業規則の作成や変更に不安がある場合は、社労士に依頼しましょう。効率的に複数社の見積もりをとるためには、ぜひ無料一括見積もりができる「比較ビズ」にご相談ください。
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1971年生まれ。埼玉県川口市出身。法政大学理工学部建築学科卒業。大学卒業後は某ビールメーカーの飲食部門を始め、数社の飲食チェーンにて、店長、スーパーバイザー、営業推進、人事総務部門で勤務する。これらの経験を経て、企業における人材の重要性を再確認し社会保険労務士として独立開業する。得意な業界は出身である飲食業界をはじめ、建設業や小売業など。モットーは「満足度重視」「誠実対応」「迅速対応」。
例えば、「テレワーク勤務を認める従業員の範囲」「在宅勤務中の光熱費や通勤手当の取扱い」「テレワーク勤務での労働時間管理方法」「会社秘密情報の取扱い方法」などです。本来、テレワーク勤務は柔軟な働き方が可能となり、生産性向上や労働力確保といった様々な効果が期待できるものです。
円滑にテレワーク勤務を導入し有効な制度として運用できるように、テレワーク勤務に関するルールをきちんと就業規則に規定して、自社にとっての最適化を目指しましょう。
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。
もしも今現在、
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