確定申告の損益通算とは?やり方やメリット・デメリットを解説!
- 損益通算のメリット・デメリットは?
- 損益通算の方法は?
- 確定申告ではどのような損益通算する?
「投資の損失を損益通算したい」「損益通算の方法は?」とお悩みの方、必見です。年間で多くの損失を出してしまった場合でも、損益通算することで所得を圧縮し、所得税額を減らせる可能性があります。
この記事では、損益通算できるケースやメリット・デメリットについて詳しく解説します。最後まで読むことで、損益通算の概要から損益通算の方法まで把握できます。
確定申告を控えている方はぜひ参考にしてください。
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損益通算とは同一年度内の損失と利益の合算
確定申告の損益通算とは、同一年度内に発生した損益を合算し、最終的な所得額を計算する方法のことです。たとえば、事業や株式投資などで発生した損失と利益を合算し、最終的な課税所得額を算出できます。
損益通算を行うと、確定申告の際に所得を圧縮して節税ができるのみならず、ある年度の損益と他年度の損益を合算して所得を減らすことも可能です。節税には必須の知識であるため、確定申告する前に確認しましょう。
損益通算できる所得4つ
損益通算できるのは以下の4つの所得です。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
上記の所得で損失が生じた場合、他の所得との損益通算が可能です。たとえば、600万円の給与所得を得ている会社員が不動産経営をして200万円の赤字を出したとしましょう。損益通算により、課税所得は「600万円−200万円=400万円」として確定申告できます。
確定申告で損益通算するメリット2つ
確定申告で損益通算するメリットは主に以下の2つです。
- 節税に役立つ
- 投資判断に役立つ
給与所得以外の所得を得ている方は、2つのメリットを理解することで節税が行えます。
1. 節税に役立つ
損益通算を利用することで、大幅な節税が可能になる場合があります。所得税は収入ではなく所得に対して課税されるため、損益通算で課税対象の所得を減らせれば、所得税の還付を受けられるケースもあるでしょう。
たとえば、給与所得900万円の会社員が不動産賃貸で200万円の赤字を出したとします。損益通算の有無による所得税の違いは以下のとおりです。
損益通算の有無によって所得税額に46万円もの差が生じます。効果的な節税のために、可能な場合は損益通算を利用しましょう。
本年分の損出を控除しきれない場合、繰越控除が行えます。確定申告で繰越控除を行った場合、3年間の税額シミュレーションは以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
2. 投資判断に役立つ
損益通算により、所得を正確に把握し投資判断に役立てる方法もあります。株式投資や不動産投資を行っている方は、損益通算により損失を利益と相殺し、最終的な投資収益を把握できるでしょう。
特定の分野の投資で利益を出していても、他の分野の投資の赤字が大きい場合、損益通算すると収支はマイナスになります。赤字の大きな分野を縮小・撤退する、利益を出している分野により多くの資金を投じるなどの判断材料となるでしょう。過去の投資の成功や失敗を客観的に評価し、投資戦略を立てるための参考にもなります。
確定申告で損益通算するデメリット2つ
確定申告で損益通算すると以下の2つのデメリットがあります。
- 時間や手間がかかる
- 税負担や保険料負担が増えるおそれがある
損益通算は節税に役立ちますが、ケースによっては税負担が増えることもあるため注意が必要です。
1. 時間や手間がかかる
確定申告で損益通算する大きなデメリットは、時間や手間がかかる点です。損益通算では、それぞれの所得の収益を計算しなければなりません。所得の種類が少ないことは問題になりませんが、種類が多いと負担も増えます。
給与所得を得ている人が事業所得・不動産所得との損益通算をする場合、すべての所得を把握したうえで損益を相殺します。確定申告はかなりの時間と労力が必要ですが、損益通算でさらに時間が取られる可能性があるでしょう。
2. 税負担や保険料負担が増えるおそれがある
確定申告の損益通算では、税負担が増えるおそれがあります。上場株式の売買で得た配当所得や特定口座内の譲渡所得は確定申告の必要がありません。確定申告をしない場合、国民健康保険料の算出に配当所得・譲渡所得は加味されないことになります。
損益通算や繰越控除の適用を受けるため確定申告した場合、配当所得・譲渡所得が国民健康料の算定対象となるでしょう。加味される所得の金額によっては、国民健康保険料が大幅に上がる可能性があります。損益通算によって所得税の節税が可能になりますが、その他の負担が増えないかどうか慎重にチェックすべきです。
投資で損失が出た場合の損益通算方法
投資で損失が出た場合、損益通算することで効果的な節税が可能です。損失が発生した場合の損益通算を5つの投資種類ごとに詳しく解説します。
- 株式投資
- 投資信託
- FX
- NISA
- 仮想通貨
株式投資
株式投資で損失が出た場合、その年の利子・配当所得と損益通算できます。以下2つの点に注意しましょう。
- 利子所得・配当所得以外の所得とは相殺できない
- 上場株式のみ損益通算が可能である
株式投資を異なる金融機関にある複数の口座で行っている場合、口座間での損益通算も可能です。口座間の損益通算をするためには金融機関が発行する特定口座年間取引報告書が必要となります。報告書をもとに口座ごとの収入や損失を計算し、源泉徴収額を適用することで、最終的な所得と所得税の計算が行えるでしょう。
投資信託
投資信託の売買損益や解約償還損益、収益分配金は、確定申告時に損益通算可能です。投資信託同士だけではなく、株式の譲渡損益や配当金・分配金・利金等との損益通算も行えます。
「源泉徴収あり」の特定口座を利用していることが条件の1つとなります。特定口座を利用している場合、自動的に損益通算可能です。源泉徴収されない一般口座を利用しているのであれば、自分で確定申告し損益通算しなければなりません。
FX
FXでも損益通算は可能ですが、その対象は「先物取引に係る雑所得等」に限られます。「先物取引に係る雑所得等」に該当する取引の例は以下のとおりです。
- 現物先物取引
- 商品オプション取引
- 日経225先物取引
- 日経225先物オプション取引
- 商品先物取引
異なるFX業者での利益や損失を相殺して所得税額を減らすことも可能です。たとえば、A社で30万円の利益、B社で10万円の損失があった場合、FXの所得は20万円となります。加えて、FXでも最大3年間の損失の繰越控除も利用できます。損失の繰越控除を受ける場合は、損失を出した年だけではなく繰越控除を利用する間ずっと確定申告を続けなければなりません。
NISA
NISAで上場株式の売却損が出た場合、損益通算はできません。NISAとは投資における税制優遇制度であり、投資で得た利益を一定期間非課税で受け取れます。NISA口座での購入金融商品は最大600万円まで所有できるため、節税効果が期待できるでしょう。
NISAは税制上の優遇制度ですが、NISA口座内で損失が発生しても税務上その損失は「ないもの」と見なされます。したがって、NISA口座内の損失を別の口座で生じた上場株式の売買益や配当金と損益通算することはできません。
仮想通貨
仮想通貨は雑所得に分類され、同じ雑所得同士であれば損益通算可能です。たとえば、仮想通貨で得た利益や損失は、確定申告時に原稿料やアフィリエイトなど他の雑所得と損益通算できます。
異なる仮想通貨の取引で出た損益を通算することも可能です。ビットコインで利益、イーサリアムで損失が出た場合、損益通算して雑所得額を抑えられます。雑所得は特別控除がなく、赤字の繰越もできないため、損益通算によって少しでも節税することが重要です。
確定申告で損益通算できないケース4つ
以下の4つの所得は損益通算できないケースがあります。
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 山林所得
- 雑所得
損益通算できないケースを把握しておくことで、確定申告のトラブルを防げるでしょう。
不動産所得
不動産所得で発生した損失は給与所得や事業所得の利益と損益通算できますが、例外が存在します。土地の取得に要した負債利子は損益通算の対象外です。借入金の返済利息は経費に含まれるため、損益通算できません。
趣味や娯楽、保養を目的とする不動産の貸し付けで発生した赤字は損益通算できません。たとえば、別荘を貸し出していたものの、大規模な修繕が発生して大きな支出があったとします。このケースでは、赤字が出ても他の所得との損益通算は認められません。
譲渡所得
譲渡所得は通常損益通算が認められますが、以下の3つのケースでは損益通算が行えません。
生活に通常必要ではない資産 | ・競走馬、競輪や競艇などに用いられる動産 ・別荘の保養や趣味の目的で所有する不動産やゴルフ会員権などの動産 ・生活用動産のなかで価額が1個もしくは1組あたり30万円を超えるもの |
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申告分離課税の株式 | ・株式以外の所得との損益通算 ・上場株式と一般株式の損益通算 |
土地建物の譲渡 | 土地建物を譲渡損失は別の土地建物の譲渡益とのみ損益通算が可能 |
土地建物の譲渡損失は、土地建物の利益とのみ損益通算できます。生活に通常必要ではない資産の災害や盗難被害は、その年の譲渡所得から差し引くことが可能です。災害や盗難の被害額が大きく、譲渡所得から差し引いても足りないケースでは、翌年に限り赤字を繰り越せます。
山林所得
山林所得は基本的に給与所得や事業所得との損益通算が可能です。伐採や譲渡の面積で所得区分が変わり、損益通算の方法が変化します。50ヘクタール以上の山林を取得後、5年以内に譲渡する場合、事業所得と見なされ損益通算可能です。
50ヘクタール未満の山林を取得してから5年以内に譲渡する場合、雑所得に分類されます。雑所得は他の所得とは損益通算ができない点に注意しましょう。
雑所得
雑所得は、同一年度内に発生した総合課税の対象である場合にのみ損益通算できます。雑所得は、必要経費が所得額を上回るケースがあまり考えられず、損益通算のメリットがあまりないと思われるため、他の所得との損益通算が認められていません。
現在では収入の種類が多様化しており、FXや仮想通貨による大きな損失が生まれることもあります。雑所得は他の所得との損益通算ができません。
確定申告で損益通算する方法
確定申告で損益通算する方法は以下のとおりです。
- 必要な書類を準備する
- 所得金額を計算する
- 損益通算を行う
- 税金を計算する
- 確定申告書を提出する
確定申告の準備をするなかで損益通算が行えます。複雑な計算が含まれることもあるため、十分な時間を取りましょう。
1. 必要な書類を準備する
損益通算を行うため、はじめに必要な書類を準備します。確定申告書は、国税庁のホームページから最新のものを入手しましょう。
株式投資やFX、仮想通貨の損益通算に必要な書類は、各証券会社のホームページや取引プラットフォームで入手できます。年間取引報告書は証券会社により対応が異なり、電子交付が一般的であるため、紙面での発行を希望する場合は注意が必要です。
2. 所得金額を計算する
確定申告で損益通算するために、所得金額を計算します。所得金額は、損益計算書で算出した総所得から、経費や控除額を差し引いた金額です。
経費には、利益を出すために費やした費用がすべて含まれます。たとえば、株式やFX取引の手数料、通信費、勉強するための書籍代などが挙げられます。確定申告で所得から差し引かれる控除は、医療費控除や教育費控除、寄附金控除などが挙げられるでしょう。収入から経費と控除を引くと課税所得金額が算出されます。
3. 損益通算を行う
確定申告の課税所得を計算したあと、損益通算を行います。証券会社から売買取引履歴や配当金額が記載された書類を受け取り、納税者自身が売買取引の損益を計算しなければなりません。損益通算を行う際、約定価格や手数料などを加味することを忘れないようにしましょう。
同じ年度内に売買した有価証券の取引履歴を事前に整理することで、損益通算をスムーズに進められます。計算が複雑な場合、税理士サービスを利用することも検討しましょう。
4. 税金を計算する
損益通算を行ったあと、最終的な所得額を算出し、納付すべき所得税額を確定します。所得額別の税率は、国税庁のホームページで確認しましょう。確定申告書の欄外にある「納税額(確定申告書に記載する場合)」の欄に、税務署が指定する口座に納めるべき税金額を記入します。
5. 確定申告書を提出する
最後に、確定申告書を提出し手続きが完了です。確定申告書は、税務署の窓口に持っていく、税務署へ郵送する、電子申告e-Taxを利用するの3種類の方法で提出可能です。
確定申告の内容が認められれば、還付金が指定する口座へ振り込まれます。
まとめ
確定申告の損益通算とは、同一年度内の損失と利益の合算することです。所得を圧縮でき、節税につながります。損益通算できる所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つです。損益通算を行うのが不安な方は、税理士サービスの利用がおすすめです。
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また、純損失が生じた前年において課税所得金額が生じていた場合、前年の課税所得金額を限度とし、その純損失を繰り戻して前年分の所得税の還付を受けることも可能です。
これを「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求」と言います。この純損失の繰戻し還付の手続きを行うことで、前年に納付した所得税が還付されるため、翌年以降に繰り越すよりも資金繰りが改善されます。
翌年以降に大きく利益が出る可能性があるのであれば、純損失を繰り越しても大きなロスとはなりませんが、翌年が赤字となる可能性や、3年以内に損失を吸収できるだけの所得がでる見込みがない場合は、繰り戻し還付の手続きをするほうがいいでしょう。
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