造成工事の種類と費用相場
造成工事とは、これから利用する土地を用途に合わせて整えることです。たとえば、畑として利用されている土地に家を建てたい場合、石やゴミを取り除き、土地を平らにしなければなりません。
一般的に行われる造成工事の種類と費用相場は以下のとおりです。
1. 整地の費用相場
整地とは土地を平らに地固めすることです。費用相場は1?あたり600円〜700円前後になります。
利用されていない土地のほとんどには傾斜やデコボコがあるため、平らにすることで利用しやすくしなければなりません。重機を使って土地を平坦にし、転圧して踏み固め、建物を建築できるようにします。
聖地の方法は主に3つあります。
- 単に土地を平らにする方法
- 砂利を敷き詰めて転圧する「砂利造成」
- コンクリートやアスファルトを敷き詰めて整備する「舗装」
他の造成工事を実施する場合も、最後は整地が行われることがほとんどです。
2. 伐採・防草の費用相場
長期間放置されていた土地、山林にある土地では、草木を取り除くために伐採・防草の造成工事が必要です。費用相場は1?あたり1,000円〜1,100円程度です。
植物は根から取り除かないと、家を建てる際に支障となったり家を傷めたりするため、土地を利用する前に対処します。雑草程度であれば、以下の方法で対処するのが一般的です。
山林の場合、木を伐採した後に抜根処理が必要です。木の根を残しておくとシロアリ発生の原因ともなるため、すべて除去しなければなりません。
3. 地盤改良の費用相場
利用する予定の土地の地盤が軟弱な場合、地盤改良工事を行わなければなりません。費用相場は1?あたり1,500円〜2,500円程度です。とくに、もともと田畑として利用されていた土地は、水分が多く含まれているため地盤沈下や液状化の恐れがあります。
地盤改良の代表的な工事は以下の3つです。
土地の利用方法や地盤の状況によって工法が変わるため、費用も変動します。表層改良工法がもっとも費用が安く、柱状改良工法と鋼管杭工法は同程度の費用です。
4. 土盛の費用相場
土地が傾斜している場合、高低を調整するため行われる造成工事が土盛りです。低い土地に土を入れることを土盛もしくは盛土、高い土地から土を取り除いて調整することを切土(きりど)と呼びます。
土盛や切土は重機を使った造成工事になるため、費用が高額になりがちです。1㎥あたり6,500円〜7,500円程度の費用がかかります。
土盛や切土を行った場所は地盤が軟弱になる恐れがあるため、地盤改良工事も同時に行わなければならないケースがあり、さらに費用がかかるかもしれません。
5. 土留の費用相場
土盛や切土をした場所では、隣接地への土砂の流出や流入を防ぐため土留(どどめ)が必要なケースがあります。土留は土盛をした部分にブロック塀や擁壁を作り、土砂が崩れないようにする造成工事です。
簡単なブロック塀であれば費用はあまりかかりません。土盛の量が多かったり、傾斜角が大きかったりすると分厚い擁壁を作らなければならず費用が高額になります。擁壁1?あたり6万円〜8万円前後の費用がかかると考えておくといいでしょう。
造成工事でかかる追加費用2つ
造成工事では、通常の工事費用に加えて追加費用がかかる場合があります。主な追加費用は次の2つです。
1. 残土処分費
造成工事のために不要な土を取り除くと、残土処分費がかかります。造成工事によって出た残土がすべて土であれば問題ありませんが、通常は石や木、ゴミといった異物が混じっているものです。異物が入っている残土は、産業廃棄物として処理しなければなりません。
残土処理にかかる費用は、1?あたりもしくは1㎥あたりではなく、重さで決まるのが一般的。異物の量によっては1?あたり、1㎥あたりの処理費が大きく変わってくるためです。残土処理の費用相場は以下のとおりです。
2. 整地にかかる費用
整地の費用は1?あたり600円〜700円ですが、単に掘削した場合です。砕石を入れたり、アスファルト舗装したりするのであれば、さらに費用がかかります。
整地にかかる追加費用の相場は以下のとおりです。
造成工事の費用を抑える4つのポイント
造成工事の費用を抑える4つのポイントをご紹介します。
- 造成工事の少ない土地を購入する
- 自分で造成業者を選定する
- 相見積もりを取る
- 固定資産税減税の特例を利用する
造成工事では多額の費用がかかることがあるため、費用を抑えるポイントを知っておくことは重要です。
1. 造成工事の少ない土地を購入する
造成工事の費用を抑える最大のポイントは、そもそも工事が少なくて済む土地を購入することです。山林や田畑だった土地は安く購入できるかもしれませんが、造成工事の費用を考えるとお得ではないことがあります。
造成工事が少なくて済むのは、以下のような土地です。
- 土地の形が四角形
- ハザードマップや地盤サポートマップで地盤が強固
- 雑草や木が生えていない
- 隣接地や道路と高低差がない
- 近くに海や川、田がない
2. 自分で造成業者を選定する
造成工事の費用を抑える別の方法は、自分で造成業者を選定することです。家を建てる場合、建設業者にすべて任せて、造成業者を自分で選ばない方も少なくありません。
ハウスメーカーや建設業者は、造成工事を自社では行わず、下請けに依頼しているケースがほとんどです。建設業者に任せきりでは仲介手数料がかかり、費用がかさみます。自ら調査して最適な造成業者を見つける方が、費用を抑えられるでしょう。
3. 相見積もりを取る
自分で造成業者を見つけるだけでなく、複数の業者から相見積もりを取ることも重要なポイントです。3社もしくは4社程度の業者から見積もりを取ることで、造成工事の費用相場を見極められます。
一番安い見積もりを出した業者に工事を依頼したいところですが、必ずしもベストではない点に注意が必要です。他社と比べて安すぎる見積もりは、手抜き工事の危険があります。適正価格の見積もりを出した業者の中から、信頼できるところを選びましょう。
4. 固定資産税減税の特例を利用する
造成工事の費用を抑えられるものではありませんが、固定資産税減税の特例を利用すれば課税標準額を減額可能です。現在、「1月1日時点で住居として使用している土地」に対しては、課税標準額が1/6に減額される特例措置が設けられています。
元の住居を解体して造成工事を行い、翌年1月1日までに住居を完成させれば、課税標準額が1/6に減額します。事前に工事スケジュールを調整しておけば、造成工事を含む支払い総額に大きな差が生じるでしょう。
造成工事が必要な3つのケース
造成工事はどんな土地にも必要というわけではなく、特定の土地に必要な工事です。造成工事が必要となるケースは主に3つです。
- 土地が変形地であるケース
- 地盤が軟弱なケース
- 傾斜や高低差があるケース
1. 土地が変形地であるケース
土地が変形地である場合、造成工事が必要になるかもしれません。どのような土地であれ、もっとも効率よく利用できるのは四角形です。三角形や五角形の土地は、造成工事によって四角形に整えた方がいいでしょう。
とくに住宅を建設する場合、四角形に整えるのが一般的。もともとの形に特別な目的がない限りは造成工事を依頼するのが賢い方法です。
2. 地盤が軟弱なケース
地盤が軟弱であれば、地盤強化のために造成工事が必要です。田畑として使われていた土地は、水分量が多く地盤が弱いことがあります。
川の近くや重さを支える岩盤層がない土地では、地盤が弱いことも。埋立地は一般的に地盤が軟弱で、地盤改良が必要なケースがあります。
2階建ての住宅を建てる場合には、表層改良工事や数十m程度コンクリートの柱を打ち込む柱状改良工事を行います。アパートやマンションなど、より重い建築物になると、岩盤層まで杭を打ち込むため費用が高額になりがちです。
3. 傾斜や高低差があるケース
土地に傾斜や高低差がある場合、造成工事によって土地を利用しやすい状態にします。山林にある土地は、傾斜や高低差があり、木の伐採が必要になるかもしれません。
切土や盛土によって高低差をなくし、住宅が建てられるような工事を行います。盛土によって地盤が緩くなってしまえば地盤改良、土砂の流出を防ぎたいのであれば土留といった追加の工事を行わなければなりません。
造成工事の注意点3つ
造成工事を行う際には、注意点について覚えておかなければなりません。造成工事で留意すべき注意点は以下の3つです。
- 近隣住民への配慮を忘れない
- 造成費用は住宅ローンの対象外になる
- 宅地造成等規制法に注意する
1. 近隣住民への配慮を忘れない
造成工事では、近隣住民への配慮を忘れてはなりません。造成工事が始まると、重機やトラックによる騒音や粉塵によって近隣住民に迷惑をかけてしまうことが予想されます。
造成工事を始める前に、必ず近隣住民に挨拶し、どのような工事が始まるのか説明しておくのが得策です。建設業者や造成業者が行ってくれる場合もありますが、可能であれば施主が同行して直接挨拶するのが望ましいでしょう。
2. 造成費用は住宅ローンの対象外になる
造成費用を賄うため、ローンを組みたいと考える方は少なくありません。造成工事は担保の対象とならず、住宅ローンが組めないのが一般的です。住宅ローンを当てにしていたら融資を断られてしまったケースもあります。
造成費用捻出のため、住宅ローンがはじまる前に一時的に借入できる「つなぎ融資」も利用可能です。つなぎ融資は通常住宅ローンよりも金利が高く、年利3%前後です。造成工事の計画段階で借入金をどのように返済するかについても考えておくようにしましょう。
3. 宅地造成等規制法に注意する
造成工事を行う際には、宅地造成等規制法に注意しましょう。切土・土盛、大規模な造成工事を実施する際に許可が必要になります。特定の地域・区域では工事が制限されるケースもあります。自治体によって基準が異なるので注意が必要です。
たとえば、東京都では以下のような規制があります。
許可が必要な造成工事 |
・1メートルを超える崖が生じる土盛
・2メートルを超える崖が生じる切土
・2メートルを超える崖が生じる切土・土盛
・切土・土盛の面積が500?を超える |
宅地造成工事規制区域 |
世田谷区、板橋区、八王子市、三鷹市、青梅市、調布市、町田市、小金井市、日野市、東久留米市、多摩市、稲城市、あきる野市の一部 |
造成工事業者を選ぶ4つのポイント
造成工事業者を賢く選ぶポイントは以下の4つです。
- 詳細な見積もりをしてくれるか
- 実績が豊富か
- 対応がスピーディーか
- アフターフォローが充実しているか
1. 詳細な見積もりをしてくれるか
信頼できる造成業者を見極める1つのポイントは、詳細な見積もりを出してくれるかという点です。ただ単に「造成費」「人件費」「廃材処理費」といった記載ではなく、どんな工事を行うのか、何人が働くのかを明確に記載している業者は信頼できます。
詳細な現地調査を行ってから見積もりを出す業者を選ぶことも重要です。造成工事は、土地の面積、地質・状態、道路・建物を含む周囲の状況などによって費用が大きく変動します。
現地調査せずに見積もりを出すことは不可能なため、電話のみで費用を伝えてくる業者は避けましょう。
2. 実績が豊富か
造成業者は、できるだけ実績が豊富なところから選びましょう。造成工事は建物の強固な土台を形成するための非常に重要な工事です。切土・土盛、地盤改良が必要な場合、実績や経験が豊富かどうかを確認することが重要です。
切土・土盛が適切に施工されないと、地盤沈下が発生し建物が傾いたり倒壊したりしてしまう恐れもあります。造成業者のホームページでどのような実績があるかを確認する、過去の事例を担当者に問い合わせる、口コミを見るといった方法がおすすめです。
3. 対応がスピーディーか
造成業者を選ぶ際には、対応がスピーディーかどうかも重要なポイントです。造成工事は専門的な知識がないと理解するのが難しいことも多く、たくさんの疑問が湧いてくるかもしれません。
質問したらすぐに回答してくれる、専門用語ではなくわかりやすい言葉を使って教えてくれる業者は信頼できます。
造成工事では、近隣住民とのトラブルが起こることも珍しくありません。トラブルや問題を放置せず、素早く施主とコミュニケーションを取り、解決策を講じてくれる業者を選びましょう。
4. アフターフォローが充実しているか
造成工事では、アフターフォローの充実度も大切です。地盤改良や盛土・切土、土留の工事では、工事完了後に思わぬトラブルが発生することがあります。地盤沈下や土砂の流出は、その後の土地利用に悪影響を及ぼすでしょう。
こうしたトラブルが発生したときに、すぐに対応してくれたり、低コストで追加の工事を引き受けてくれたりする業者を選ぶことが重要です。
造成工事の費用まとめ
造成工事は、整地や地盤改良、盛土・切土などの種類によって費用が大きく変動します。とくに盛土をした後の擁壁による土留は、費用が高額になることがあるでしょう。
造成工事が少なくて済む土地を選ぶ、自分で造成業者を選定する、相見積もりを取るといった方法で、少しでも費用を減らしましょう。
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よくある質問とその回答
監修者のコメント
花沢 雅樹
宮城県の一級建築士事務所。建築物について調査・リフォーム設計・コンサルティングを行う。耐震性能、省エネ性能、劣化のしにくさ、維持管理のしやすさの観点にて、計画をされている設計内容を、図面や見積書のチェックなど、第三者視点にて中立な立場でアドバイスを行う。
土盛(盛土)や土止(土留め)が必要な傾斜地に建物を建てる場合は注意が必要です。土盛を行った部分は地盤が軟弱なので、一般的に建物の下部に地盤補強工事が必要です。また、土止を行った部分は擁壁工事が必要になります。
平坦でない土地の場合は、土を買ったり、土を処分したり、土を押さえたり、建物を補強したりと、様々な部分に費用が発生します。傾斜地で造成工事を行い土地を平坦にしても、その土地の周辺状況により建物の新築が困難になる場合もあります。
例えば、土地を切土で平坦にしても、その切土の断面が30°を超える場合は崖地条例が適用され建物の建築制限(建物の新築ができない範囲が指定される)を受けることがあります。特に、土地の面積が狭い場合は、造成工事後に実際に建物が建てられる範囲をあらかじめ調べておく必要があります。