ブラック企業は就業規則がない?就業規則でわかるブラック企業の見分け方

OGI社会保険労務士事務所
監修者
OGI社会保険労務士事務所 社会保険労務士 荻島 稔
最終更新日:2023年03月14日
ブラック企業は就業規則がない?就業規則でわかるブラック企業の見分け方
この記事で解決できるお悩み
  • ブラック企業に就業規則がないのは本当?
  • ブラック企業はどのような特徴があるの?
  • 自社の就業規則はブラックになっていない?

「入社した会社が実はブラック企業だった…」と判明するのは、誰にでも起こりうる話です。この記事では、就業規則を例にしてブラック企業が持つ特徴を徹底的に解説します。事前に特徴を知っておくことで、ブラック企業との関わりを避けられます。

企業が注意したいブラック企業とならないための就業規則作成ポイントも紹介します。就業規則の作り方で悩んでいる方も、ぜひ最後までお読みください。

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就業規則から見るブラック企業の特徴5選

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就業規則は、労働者が守らなければいけないルールです。労働基準法89条により、労働者が10名以上いる事業所は規則作成が義務付けられています。

就業規則は常に社内に備え付けてあり、誰でも閲覧可能です。 実際に働き始める前でも、就業規則の閲覧を請求すると見せてもらえる可能性もあります。

会社がブラック企業かどうかは、就業規則からも判断可能です。就業規則から見るブラック企業の特徴を5つ紹介します。

  • 退職時の申し出日が長い
  • みなし残業代の規定がない
  • 社員に告知せず就業規則が変わる
  • 就業規則を見せてもらえない
  • 就業規則がそもそもない

1. 退職時の申し出日が長い

民法627条1項では「雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と規定されています。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ) 第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

引用:民法|e-gov法令検索

民法の規定では、2週間前までに意思表示をすると退職できるとされています。退職の意思は半年〜1年前に伝えるというように、退職までの期間が長い場合はブラック企業といえるでしょう。

2. みなし残業代の規定がない

就業規則に残業代の規定がされていない、もしくは残業代が出ないと記載されている場合は、ブラック企業といえます。

「みなし残業代」の採用は違法ではないため、みなし残業代の規定があるだけではブラック企業とはいえません。みなし残業があるにも関わらず、みなし残業代の規定がない場合は違法です。みなし残業代が支払われない場合はブラック企業確定といえます。

みなし残業代とは、業務内容に残業が見込まれているため基本給と同時に支払われる残業代のことです。労働基準法89条では、賃金の決定や計算方法の就業規則を作成するよう義務付けられています。「残業代○時間まで○○円」と、就業規則に定めなければなりません。

3. 社員に告知せず就業規則が変わる

労働基準法106条1項の規定により、就業規則が変わった際は社員に周知しなければなりません。社員に告知せず就業規則を変える会社は、ブラック企業の可能性があります。特に就業規則を社員に不利な方向へと変える場合は、要注意です。

4. 就業規則を見せてもらえない

労働基準法106条1項により、就業規則は「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と規定されています。

就業規則を見せてもらえないのは、法律違反です。法律を遵守しない会社の場合、ブラック企業の可能性が高いでしょう。

5. 就業規則がそもそもない

就業規則は、労働基準法89条により、労働者が10名以上いる事業所に作成が義務づけられています。労働者が10名以上いる場合に就業規則がないのは、法律違反です。

就業規則に載せなければならない3つの事項

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就業規則には、法律で記載が義務付けられている事項があります。記載が義務付けられた「絶対的記載事項」は次の3点です。

労働時間に関する取り決め事項 始業と終業の時間、休憩時間、休日や休暇
賃金に関する取り決め事項 給料の計算方法、給与支払の方法や時期、昇給
退職に関する取り決め事項 退職の規定、解雇の事由

就業規則には、絶対的記載事項だけではなく、会社で守るべき規則をすべて記載しましょう。

就業規則の作り方やメリット・デメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。

ブラック企業とならないための就業規則作成ポイント

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ブラック企業とならないためには、就業規則を作る際にポイントを押さえる必要があります。ブラック企業とならない就業規則を作るポイントは、次の6点です。

  • 適用範囲を明確にする
  • 残業代や手当の額を正確に記載する
  • 有給休暇の申請方法を明記する
  • 振替休日や代休の取得方法を明記する
  • 退職に関する規定を明記する
  • 就業規則は全員が閲覧できる場所に置いておく

上記を就業規則で取り決めることで、無用なトラブルを避け、ブラック企業と呼ばれることを防げます。

適用範囲を明確にする

就業規則では、適用範囲が明確でないことからトラブルとなるケースがあります。

就業規則によると、賞与や退職金の適用対象は正社員のみの場合がほとんどです。適用範囲を正社員とパートで切り分けていなかったため、退職金をパートに支払うことを命じられた判例もあります。

就業規則の適用範囲を明確にし、パートや契約社員に支払う賃金の範囲を明らかにしておきましょう。

参照:大阪高等裁判所判決(平成9年10月30日)|全国労働基準関係団体連合会

残業代や手当の額を正確に記載する

就業規則内の残業代や手当の額、計算式が間違っているケースもあります。みなし残業代も「この役職は○時間まで×円」のように、就業規定に明確に記載しましょう。

従業員の生活を支える賃金の計算間違いはトラブルの元です。賃金の規定には特に気を配り、間違いのないようにすることが大切です。

有給休暇の申請方法を明記する

有給休暇や休日の申請の方法が記載されていない就業規則が多く、会社との間でトラブルになりがちです。申請の方法が曖昧では、無断欠勤と認識される可能性もあります。

自分は有給休暇を取ったつもりなのに無断欠勤になってしまったという認識の違いは、トラブルの元です。就業規則には、有給休暇の申請方法を記載しておきましょう。

振替休日や代休の取得方法を明記する

振替休日と代休の取り方は、就業規則に明記しておくことが必要となります。振替休日と代休の最大の違いは、賃金の有無です。振替休日と代休の取り方を決めていないことからトラブルになる例もあります。

振替休日と代休の違いには気をつけて就業規則を作成しましょう。

退職に関する規定を明記する

民法では、2週間前に退職の意思を伝えることで退職可能です。実際は、2週間前の告知では引継ぎや諸手続きが間に合わず、退職してからも連絡を取り合う可能性が発生します。

退職した後で前職場と連絡を取るのは、避けたいものです。会社・従業員双方にとって円滑に退職手続きを進めるためにも、退職の際は何日前までに伝えるという規定を設けることも大切です。

就業規則は全員が閲覧できる場所に置いておく

労働基準法106条1項には、就業規則は「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること」と規定されています。就業規則は、キャビネットや書庫、共有フォルダなど、いつでもだれでも見られる場所に保管しておきましょう。

新入社員には、入社時に就業規則がある場所を伝えておくことで、いつでも就業規則が閲覧できるようになります。

就業規則作成が不安な場合は外注も可能

就業規則の作成は、社会保険労務士(社労士)や弁護士に依頼可能です。すべて自社で製作する必要はありません。社労士は労働基準法や社会保険に精通しているため、法律を遵守した就業規則が作成できます。

社労士に依頼する場合のポイントや費用相場は、こちらの記事で解説しています。

まとめ

就業規則は、10名以上の労働者がいる企業であれば、労働基準法にのっとって作成しなければならないものです。就業規則の未作成も、労働基準法違反の就業規則に沿った経営も、どちらも「ブラック企業」 といわれてしまいます。

ブラック企業に就職してしまった場合は、社会保険労務士に相談できます。自社の就業規則がブラックになっていないか不安な場合や、これから就業規則を作る場合も、社労士への相談がおすすめです。

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監修者のコメント
OGI社会保険労務士事務所
社会保険労務士 荻島 稔

1971年生まれ。埼玉県川口市出身。法政大学理工学部建築学科卒業。大学卒業後は某ビールメーカーの飲食部門を始め、数社の飲食チェーンにて、店長、スーパーバイザー、営業推進、人事総務部門で勤務する。これらの経験を経て、企業における人材の重要性を再確認し社会保険労務士として独立開業する。得意な業界は出身である飲食業界をはじめ、建設業や小売業など。モットーは「満足度重視」「誠実対応」「迅速対応」。

就業規則は労働者が会社で働く上でのルールです。しかしブラック企業と呼ばれる会社の就業規則には下記のような規定が時々見られます。

・有給休暇はパート・アルバイトに付与されないことになっている
・責任や権限のない人まで管理監督者として定義し、残業代の対象としていない
・解雇事由に到底認められないであろう事由まで規定されている
・本人のミスにより残業した場合は、残業代は支払わないと規定されている
・本人の過失による労災は適用しないと規程されている

以上のように、規定すれば何でもルールとして適用されるというと、そうとは限りません。つまり労働基準法の水準に達していなかったり、労働者の権利・利益を不相当に制限していた場合は就業規則に規定しても無効となります。またそのような内容の就業規則を労働者が読んだときに、会社に対する信用が揺らいだり、モチベーション低下を引き起こしかねません。

是非とも法令を遵守し、会社の実情に沿った就業規則を作成してください。最後に、就業規則は従業員に周知しなくてはいけません。就業規則はあるが、意図的に従業員に見せない会社もブラック企業と呼ばれる可能性があります。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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