雑所得とは?該当する7種類の収入や計算方法・具体例をわかりやすく解説
- 雑所得とは?
- 雑所得の計算方法は?
- 雑所得と他の所得との違いは?
雑所得とは、所得税における課税所得の区分の1つです。副業から得た所得は多くの場合、雑所得として所得税の確定申告を行います。雑所得は、一定の金額を超えると確定申告が必要になるものの、判断が難しい部分があるため注意が必要です。
この記事では、雑所得の計算方法がわからない方や副業を行っている方向けに、雑所得の考え方、税率や計算方法を紹介します。記事を読み終えた後には、雑所得の概念や種類、計算方法などについて理解が深まり、不安が解消されるでしょう。
「雑所得の具体例を知りたい」「雑所得の計算方法を知りたい」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。
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雑所得は「公的年金等」と「公的年金等以外」に分類される
雑所得は一般的に「公的年金等」と「公的年金等以外」に分類されます。「公的年金等」の収入は、所得税法で雑所得として規定されています。年金や恩給などを受け取る際に、収入から控除額を引いた金額が雑所得です。
「公的年金等以外」の雑所得には、副業や個人年金の受け取りなどによる所得が該当します。給与所得や事業所得には当てはまりません。
所得税法により、所得は10種類に区分されています。雑所得は、以下の9種類に該当しない所得です。
利子所得 | 預貯金の利子や、公社債投信の収益の分配などから生じる所得 |
---|---|
配当所得 | 株主が受ける配当や、投資信託の収益の分配などから生じる所得 |
不動産所得 | 不動産や船舶、航空機などの貸付による所得 |
事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などから生じる所得 |
給与所得 | 勤務先から受ける給料、賞与などの所得 |
退職所得 | 勤務先から受ける退職手当の所得 |
山林所得 | 取得から5年経過後の山林を譲渡することによって生じる所得 |
譲渡所得 | 土地や建物などの資産を売却することによって生じる所得 |
一時所得 | 懸賞や競馬の払戻金、生命保険の一時金などの所得 |
参照:国税庁
雑所得は幅広い収入を包括し、公的年金や副業などさまざまな形態が該当します。所得の種類ごとに計算方法が異なるため、確定申告の際には適切な計算が求められます。
雑所得に該当する7種類の収入
雑所得には、下記の7種類の収入が該当します。
- 公的年金の収入
- メルカリやネットオークションなどから得た収入
- 講演料・原稿料・印税など
- 個人年金保険の収入
- 暗号資産(仮想通貨)で得た利益
- FXの取引で得た利益
- その他
1. 公的年金の収入
公的年金の収入は所得税法で雑所得に該当します。雑所得として区分される主な公的年金は、次の4つです。
- 国民年金
- 厚生年金
- 会社から支払われる年金
- 確定拠出年金
iDeCoをはじめとした個人型確定拠出年金も「公的年金等」に該当します。生命保険契約の個人年金は雑所得の求め方が異なるため雑所得には該当しません。「公的年金等の収入金額」から「公的年金等控除額」を差し引いた金額が対象です。
公的年金等の収入金額−公的年金等控除額=公的年金等の所得額
確定申告時には適切な区分けが必要です。
2. メルカリやネットオークションなどから得た収入
メルカリやネットオークションなどから得た収入は雑所得に該当します。収入から商品の仕入れや材料費を差し引いた金額を雑所得として計上可能です。
具体的には以下のケースが該当します。
- 自身で開設したネットショップを通じて得た収入
- ネットオークションやフリマアプリなどで得た収入
たとえば、ハンドメイド作品を販売した場合、材料費や仕入代などの経費が差し引かれた金額が雑所得に該当します。販売した商品の売上がすべて所得となるわけではありません。
洋服や食器・家具など、自宅にある不用品を販売・譲渡した場合の収入は雑所得に該当しません。自宅にある不用品の販売や譲渡は「生活用動産」に該当します。「生活用動産」とは、生活に必要とされる不動産以外の財産であり、販売や譲渡した収入は課税対象にはなりません。
3. 講演料・原稿料・印税など
講演料や原稿料、印税などによる収入は雑所得に含まれます。必要経費を差し引いた金額が申告対象です。
講演料や原稿料、印税などによる雑所得は、下記が該当します。
- 雑誌やWeb媒体に寄稿した原稿料
- セミナーに登壇した講演料
- ウーバーイーツをはじめとした業務委託により得た収入
- フリーランスとして企業から仕事を請け負って得た収入
支払われた名目が「謝金」や「車代」であっても、実態が原稿料や講演料の場合は雑所得として扱います。
4. 個人年金保険の収入
個人年金保険の収入から経費を差し引いた金額が雑所得となります。一括で支給された場合は「一時所得」として扱われます。年金型ではなく一括で受け取った場合は、雑所得ではなく「一時所得」として申告が必要です。
5. 暗号資産(仮想通貨)で得た利益
暗号資産(仮想通貨)で得た売却益は雑所得として課税対象となります。暗号資産(仮想通貨)の取引は都度課税の対象となり、他の雑所得とは異なる税率がかかります。
暗号資産(仮想通貨)は保有しているだけでは課税対象にならず、売買で得た利益にのみ課税される仕組みです。仮想通貨(仮想通貨)における税金の計算方法は、以下の2種類です。
移動平均法 | 購入のたびに合計購入金額と数量で価格を計算する方法 |
---|---|
総平均法 | 年内に購入した仮想通貨の価格を合算した数字をもとに購入単価を計算する方法 |
「移動平均法」は、リアルタイムで購入価格を把握することが可能で、年間の取引数が多い投資家の場合は細かい計算が必要になります。
「総平均法」は、計算が楽な分「移動平均法」と比較して計算方法が大雑把になりやすく、税金を多く支払う可能性があります。
6. FXの取引で得た利益
FXの取引で得た利益は雑所得です。FXの為替差益やスワップポイントは雑所得の「先物取引に係る雑所得等」に区分され、異なる税率が適用されます。スワップポイントは、取引をする通貨間における「金利の差」です。
FXで得た利益は「先物取引に係る雑所得等」に区分されます。所得税15%と地方税(住民税)5%がかかり、一律20%で課税されます。
所得税15 % + 地方税(住民税)5 % = 20 %
所得税15 % × 復興特別所得税 2.1% = 0.315 %
20% + 0.315 % = 20.315%
他の雑所得とは異なり「申告分離課税」が適用され、税率20.315%がかかります。「申告分離課税」は、他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。FXの取引で得た利益は、独自の取り扱いが必要です。
7. その他
その他に還付加算金や非営業貸金の利子、動産貸付による所得などが雑所得に該当します。営利目的でない貸付によるものも含まれます。
還付加算金 | 税金の払い過ぎによって還付金が得られた場合の利子相当分 |
---|---|
非営業貸金の利子 | 個人的に金銭を貸した際に得られた利子 |
事業所得以外の動産貸付による所得 | 車をはじめとした不動産以外の資産を個人的に貸した際に得た収入 |
雑所得と他の所得の違いとは?
雑所得と給与所得、一時所得は混同されやすいため注意が必要です。
- 雑所得と給与所得との違い
- 雑所得と一時所得の違い
雑所得と給与所得との違い
雑所得と給与所得の違いは「雇用関係に基づく給与であるか」が区別の対象です。給与所得は勤務先からの給料やボーナスなどを指し、雑所得には含まれません。給与所得とは、源泉徴収する前の給料やボーナスなどの収入金額から、給与所得控除額を差し引いた金額です。
会社員やアルバイトが勤務先から得る給与は給与所得に該当し、副業で得た収入は雑所得に含まれます。
雑所得と一時所得の違い
雑所得と一時所得の違いは「営利目的の所得を含むか」が区別の対象です。雑所得は労働や役務による対価が含まれています。一時所得は一時的に得られた所得であり、営利目的の所得を含みません。
一時所得に該当される収入には下記が挙げられます。
- 馬券や車券の払戻金
- 法人から贈与される金品
- 懸賞金・クイズの賞金
- 保険の満期金
- 遺失物を拾った人が受け取る謝礼
- 借家人が立ち退いた際にもらう立退料
雑所得と一時所得は「確定申告時の計上方法」においても違いがあります。雑所得は特別控除額がなく、所得分がそのまま課税対象です。
一時所得は「収入−収入を得るためにかかった費用」から最大50万円を特別控除として差し引けます。たとえば、懸賞で50万円当たった場合は、特別控除で50万円が差し引かれるため、確定申告が不要になります。
雑所得で経費計上できる費用3選
雑所得で経費計上できる費用には、次の3つが挙げられます。
- 備品の購入費用
- 打ち合わせや移動にかかる費用
- 場所やサービスにかかる費用
1. 備品の購入費用
備品の購入費用は、雑所得で経費計上が可能です。副業で使うパソコンや撮影機材などは全額経費となります。
雑所得として経費計上できる備品の購入費用には下記が挙げられます。
- Webライティングをするためのパソコン
- イラストを描くためのペンタブレット
- 写真を販売するための撮影機材
- 取材時に使う文房具
2. 打ち合わせや移動にかかる費用
打ち合わせや移動にかかる費用は経費として計上が可能です。打ち合わせや移動にかかった費用は、業務に不可欠なため必要経費として認められます。
- 打ち合わせの際に発生した飲食代
- 打ち合わせ場所に移動するための交通費
- 取材に向かう際の交通費
3. 場所やサービスにかかる費用
場所やサービスにかかる費用は経費計上が可能です。自宅で副業している場合は家賃や光熱費も経費になります。
経費として計上する際には「家事按分」が必要です。「家事按分」とは、プライベートと業務を兼ねている支出に対し、業務の利用割合を算出して経費計上することを指します。
たとえば、家賃の場合、自宅を事業用に使っている床面積の割合を算出し「地代家賃」として計上できます。
経費計上可能な費用例は、下記のとおりです。
- 副業を行っている自宅の家賃の一部
- クラウドソーシングで副業を行う際のインターネット料金
- コワーキングスペースの料金
雑所得の所得額と所得税額(納税額)の計算方法
雑所得の計算方法は下記2つがあります。
- 雑所得の所得額の計算方法
- 納税額の計算方法
雑所得の所得額の計算方法
雑所得は「公的年金等の雑所得」と「業務に係る雑所得・その他の雑所得」で所得額の計算方法が異なります。
収入金額 - 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
総収入金額 - 必要経費 = 業務に係る雑所得・その他の雑所得
参照:国税庁
計算した結果、雑所得を含む所得額が20万円以上であった場合は、確定申告により所得税を納付する必要があります。
納税額の計算方法
納税額の計算式は下記のとおりです。
総所得額 - 所得控除額 = 課税所得額
課税所得額 × 税率 = 所得税額
所得税額 - 税額控除額 = 納税額
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照元:国税庁
代表的な計算事例3ケース
雑所得における代表的な計算事例として、以下の3つのケースを解説します。
- 公的年金を受け取っている人
- 年末調整のない個人事業主やフリーランス
- 副業収入が20万円を超えている会社員
1. 公的年金を受け取っている人
公的年金の収入がある場合、収入金額から「公的年金等控除額」を差し引いた金額が雑所得です。控除額は、年齢や収入金額によって異なります。
65歳未満の公的年金のうちの雑所得の金額、および計算方法は下記のとおりです。
公的年金等の収入金額の合計額 | 公的年金のうちの雑所得の金額 | |
---|---|---|
65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
60万円〜130万円未満 | 収入の合計額−60万円 | |
130万円〜410万円未満 | 収入の合計額×0.75−27万5,000円 | |
410万円〜770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85−68万5,000円 | |
770万円〜1,000万円未満 | 収入の合計額×0.95−145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 収入金額の合計額−195万5,000円 |
65歳以上の公的年金のうちの雑所得の金額、および計算方法は下記のとおりです。
公的年金等の収入金額の合計額 | 公的年金のうちの雑所得の金額 | |
---|---|---|
65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
110万円〜330万円未満 | 収入の合計額−110万円 | |
330万円〜410万円未満 | 収入の合計額×0.75−27万5,000円 | |
410万円〜770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85−68万5,000円 | |
770万円〜1,000万円未満 | 収入の合計額×0.95−145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 収入金額の合計額−195万5,000円 |
参照:国税庁
※公的年金等以外の所得の合計が「1,000万円超2,000万円以下」「2,000万円超」の場合、計算表は異なります。
給与所得者で年金を受け取る場合は「所得額調整控除」があります。公的年金には「公的年金等に係る確定申告不要制度」があり、以下の条件を満たしている場合は、確定申告は必須ではありません。
- 公的年金の合計収入が400万円以下で、すべてが源泉徴収の対象
- 公的年金以外の所得の合計額が20万円以下
2. 年末調整のない個人事業主やフリーランス
年末調整のない個人事業主やフリーランスは、広告収入や業務委託で得た収入から必要経費を差し引いて課税所得を計算します。
課税所得の計算方法は以下のとおりです。
課税所得 = 総収入金額 - 必要経費 - 基礎控除(最大48万円)
3. 副業収入が20万円を超えている会社員
副業収入が20万円を超えている会社員の場合、年末調整後の給与所得に雑所得を加え、所得税率を乗じて所得税額を計算します。本業の給料で源泉徴収している金額を差し引いて、納税額を求めます。
参照元:国税庁
300万円+100万円=400万円
400万円×20%(所得税率)−42万7,500円(控除額)=37万2,500円(所得税額)
37万2,500円-30万円=7万2,500円
所得税は37万2,500円、納付額は7万2,500円です。会社員で雑所得が20万円以下の場合は、確定申告は必須ではありません。
雑所得で確定申告が必要になる3つのケース
雑所得で確定申告が必要になるケースには、次の3つが挙げられます。
- 給与所得を受け取っている場合
- 公的年金を受け取っている場合
- 公的年金以外の48万円を超える雑所得の場合
1. 給与所得を受け取っている場合
給与所得を受け取っている際は、雑所得を含めた所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要です。給与所得以外の所得が雑所得のみの場合、雑所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。
給与取得者で医療費控除や寄附金控除を受けたい場合は、確定申告をすることで控除を受けられます。
2. 公的年金を受け取っている場合
公的年金による収入は雑所得に該当するため、一定の金額を受給した場合は確定申告が必要です。以下の条件に該当する場合はの場合は「確定申告不要制度」の対象になることがあります。
- 公的年金等の収入金額合計:400万円以下(公的年金等の全部が源泉徴収の対象)
- 公的年金以外の所得額:20万円以下
「確定申告不要制度」とは、確定申告の負担を軽減させるために、一定の要件を満たしていれば確定申告が不要になる制度です。
3. 公的年金以外の48万円を超える雑所得の場合
公的年金以外の雑所得の場合、雑所得を含めた所得が48万円以下であれば、確定申告は不要です。給与所得や公的年金を受け取っていない個人事業主やフリーランスに代表されるケースです。
雑所得が48万円を超える場合でも、以下の計算において課税所得額がなければ確定申告は不要となります。
総所得額 - 所得控除額 = 課税所得額
課税所得額 × 税率 = 所得税額
所得税額 - 配当控除額 = 納税額
まとめ
雑所得とは、事業所得や給与所得、不動産所得などに分類されない所得です。主婦やサラリーマンなどが副業をして稼いだ収入は雑所得に含まれます。他の所得と比べて含まれる範囲が広く、分類の判断に困ることがあります。
雑所得の計算は煩雑になりやすいため、不明点が解消できない場合は、専門家に相談することがおすすめです。
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1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。
雑所得の確定申告を行うポイントは下記のとおりです。
・利益が20万円を超える場合に申告が必要
・総合課税として、給与所得など各種の所得と合計した金額に対して課税
・損失が出た場合、他の利益と相殺できない
・生じた損失は翌年以降の利益と相殺できない
また業務委託案件などで雑収入を得ている場合、報酬から源泉徴収税を差し引かれている場合があります。すでに源泉徴収で所得税を支払っていても、追加の納税もしくは還付の可能性もありますので、源泉徴収の有無や源泉徴収された金額に係らず、雑所得のある方は原則として確定申告が必要です。
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