社会保険の2カ月ルールとは?適用条件や2024年の拡大範囲を解説
- 社会保険の適用はいつから始まる?
- 社会保険の2カ月ルールが適用されるケースは?
- 社会保険の2カ月ルールが適用されないケースはある?
「社会保険は2カ月で適用されるって本当?」「自分の会社や事業所には適用されるの?」とお悩みの方、必見です。
2022年の法改正により、雇用期間が2カ月以内であっても更新見込みがある場合は社会保険への加入対象になりました。社会保険は労働者を守るために重要であり、経営者は法律にしたがって運用する必要があります。
この記事では、社会保険の2カ月ルールの概要や適用されるケースと適用されないケースについて解説します。企業の経営者や経理担当者はぜひ参考にしてください。
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2022年10月の改正による社会保険の適用拡大とは?
2022年10月の改正により、社会保険の適用拡大が行われました。これまで2カ月以内の期間を定めて雇用される有期雇用労働者は社会保険の対象外でしたが、改正後は雇用期間が2カ月以内でも適用されます。
具体的なポイントは、以下のとおりです。
- 2カ月以内の雇用契約は更新見込みで社会保険の対象になる
- 短期間労働者の適用要件である「勤務期間1年以上」が撤廃される
2カ月以内の雇用契約は更新見込みで社会保険の対象になる
2023年現在、最初に締結した雇用契約が2カ月以内であっても契約の更新が見込まれる場合には社会保険への加入が必要です。契約書に、契約を更新する記載がある場合や、同様の契約で採用者を更新した実績がある場合に該当します。
法改正により、雇用契約が短期間でも将来の更新が予想される場合には社会保険の対象です。企業側は2カ月以内の雇用契約でも適切に社会保険に加入させる必要があります。
短時間労働者の適用要件「勤務期間1年以上」が撤廃される
法改正により、短時間労働者の適用要件の1つである「勤務期間1年以上」が撤廃されました。一般の被保険者と同様に、契約更新により勤務期間が2カ月を超える場合、社会保険加入の対象となります。
2023年現在、以下の条件すべてを満たす短時間労働者は加入対象者です。
- 従業員が101人以上の事業所に勤めている
- 所定労働時間が1週間のうち20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 継続して2カ月を超える雇用の見込み
- 学生以外
パートやアルバイト、有期契約社員などの短時間労働者を抱えている事業者は、勤務期間要件の変更を必ず認識しておきましょう。
勤務2カ月未満で社会保険が適用されるケース
勤務2カ月未満で社会保険が適用されるケースは主に以下の2つです。
- 更新が見込まれるケース
- 更新が見込まれていたが契約期間の途中で更新をやめるケース
社会保険が適用されるケースで保険に加入させていない場合、罰則が課せられるおそれがあるため注意しなければなりません。
1. 更新が見込まれるケース
最初に締結した雇用契約が2カ月以内であった場合でも、契約の更新が見込まれる場合には社会保険への加入が必要です。契約書に「契約を更新する」もしくは「契約を更新する場合がある」などの記載があるケース、同様の契約で採用者を更新した実績があるケースに適用されます。
ただし、労使間で契約を更新しないことが書面で明示されている場合にはこの限りではありません。
2. 更新が見込まれていたが契約期間の途中で更新をやめるケース
更新が見込まれていたものの、契約期間の途中で更新をやめるケースでも社会保険が適用されます。更新しないことが明らかであれば社会保険が適用されないように思われますが、そうではないため注意が必要です。
契約期間の途中で被保険者資格は喪失しないため、最初の契約時に更新が見込まれていたケースでは、従業員を社会保険に加入させなければなりません。
2カ月以内の雇用契約で社会保険加入の対象にならないケース
2カ月以内の雇用契約で、社会保険加入の対象にならないケースは主に以下の2つです。
- 労働契約の期間が2カ月以内かつ更新が見込まれないケース
- 従業員が常に5人未満であるケース
社会保険加入の対象かどうかは厳密な管理が必要です。社会保険に加入させなければならないケースとあわせてしっかり確認しておきましょう。
1. 労働契約の期間が2カ月以内かつ更新が見込まれないケース
労働契約の期間が2カ月以内で更新がないと決まっているケースでは、社会保険への加入は基本的に不要です。2カ月の契約で、それ以上の更新はしないと書面で合意がある場合、社会保険に加入させなくても問題ありません。
重要なのは、メールを含む書面での合意が必要であることです。口頭で説明した場合や従業員に圧力をかけて書面を作成した場合、無効と判断されます。
2. 従業員が常に5人未満であるケース
2022年10月以降、従業員が常に5人未満の個人事業所は、健康保険および厚生年金保険の適用事業所から除外されます。従業員が5人未満の個人事業主は、社会保険への加入は必要ありません。
加入要件の変更により、従業員数が限られている個人事業主は、運営上の負担が軽減される点が大きなメリットです。個人事業主自身が適用対象となる場合、個別の加入要件に従って手続きを行う必要があります。
従業員数に応じた社会保険の加入要件変更を確認し、適用範囲であるのかチェックしましょう。
3カ月目に社会保険の適用を開始しないと違法になる
2カ月を超えて雇用の見込みがある従業員に対し、契約当初から社会保険に加入させなかった場合には違法となります。加入要件を満たしている従業員を適切に加入させないと、6カ月以下の懲役や50万円以下の罰金が科されるおそれがあるでしょう。
加えて、社会保険への加入に関して罰則が適用されると、会社のイメージダウンにつながります。「新規雇用が難しくなる」「すでに働いている従業員の早期離職を招く」など不利益を被るため、社会保険の運用は適切に行うべきです。
社会保険の適用される事業所とは?
社会保険が適用される事務所は強制適用事業所と呼ばれ、必ず社会保険に加入しなければなりません。強制適用事業所は、常時5人以上の従業員を抱える農林漁業やサービス業以外の事業所を指します。国・地方公共団体・法人で常時従業員を雇用している事業所も強制適用事務所です。
一方、社会保険への加入が任意の任意適用事業所もあります。任意適用事務所は主に農林漁業やサービス業の事務所のことです。該当する事業主は、事務センター(年金事務所)で手続きを行い、任意適用事業所として認められる必要があります。
2024年10月に社会保険の適用が拡大される予定
社会保険の適用範囲は順次拡大されており、2024年10月からさらに拡大される予定です。2022年10月から従業員数が101人以上の企業が対象ですが、2024年10月から企業規模が51人以上に引き下げられ、より多くの企業が社会保険の適用範囲となります。
社会保険の被保険者数が同じ法人番号の企業に51人以上いた場合には、社会保険が強制的に適用される予定です。従業員数に増減がある企業では、直近12カ月のうち6カ月以上で基準を上回っていれば適用されます。
頻繁に法律の改正があるため、弁護士や社労士の助けを借りながら最新の制度を確認していきましょう。
まとめ
社会保険は、2カ月以上の労働契約を結ぶ正社員や労働時間が4分の3を超えるパート・有期雇用労働者に適用されます。
更新がないと明確に書面で決められていなければ社会保険の対象になる可能性があるため、十分な注意が必要です。知らないうちに違法状態とならないよう、細心の注意を払って法改正を確認しましょう。
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保有資格:社会保険労務士、行政書士。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
被用者(勤め人)が加入する健康保険は、傷病手当金や出産手当金が支給されるなど、自営業者等が加入する国民健康保険より手厚い補償を行っています。厚生年金も国民年金に上乗せする形で支給される年金であるため、老齢年金はもとより、障害年金や遺族年金においても支給額が増加することになり、社会保険に加入すれば、より安心して働くことが可能です。
しかし社会保険は制度自体が複雑であることに加え、改正も多くなっていることから、正しく手続きを行うには、専門的知識が必要となってきます。社会保険は、今後も加入対象の拡大が予定されており、自社での対応が難しいと感じているのであれば、社会保険の専門家である社労士に相談することをお勧めします。
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